ゲゲゲの鬼太郎 クロスオーバー集   作:SAMUSAMU

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クロスオーバー集の第一作目は『深夜廻』。

日本一ソフトウェアという会社が出しているゲームが原作です。
ちなみに作者はゲームは未プレイ。興味がないわけではなかったのですが、かなり難しく、結構ホラー描写がえぐいとかで手が伸びず。
その代わり、小説の方をしっかりと読ませていただきました。
本小説も、そちらの内容を参考に書かせてもらっています。

時間軸について。
ゲゲゲの鬼太郎に関しては、話毎に時間軸がバラバラになります。一応、毎話それがいつ頃の話なのか、明言はしていきます。

後書きの方で、TVシリーズのような次回予告。クロスオーバー先の解説などを入れていくつもりです。



幕間の物語
深夜廻 其の①


 

 幽霊族の末裔たる少年――ゲゲゲの鬼太郎。

 これは彼が犬山まなという人間の少女と出会う前に遭遇した物語の一つである。

 

 

 

「鬼太郎! ポストに手紙、入ってたわよ」

 

 ゲゲゲの森にある鬼太郎の家――ゲゲゲハウス。鬼太郎の仲間の一人である猫娘が手紙を片手に家の中に上がり込む。スレンダーな長身の美少女、どこかツンツンした雰囲気を纏いながら、彼女は鬼太郎宛の手紙を卓の上に置く。

 

「ああ、ありがとう猫娘」

 

 わざわざ手紙を持ってきてくれた彼女に、横に寝っころがっていた鬼太郎が起き上がりながら礼を言う。早速手紙の封を切り中身を読もうとする鬼太郎に、猫娘は椅子に腰掛けながらおもむろに溜息を吐く。

 

「ほんと、アンタも物好きよね。こんな人助け……いつまで続ける気なのよ」

 

 鬼太郎の元に届く手紙。それは『妖怪ポスト』から送られてきた人間からの依頼の手紙である。

 

 鬼太郎は妖怪に困らされている人間の依頼に応え、人助けをしている酔狂な妖怪でもあった。

 もっとも、必ずしもその人間を助けるというわけではない。その人間の相談に乗っても、人間側に非があったり、あまりにも道理に外れるような頼みであれば断り、見捨てることもある。

 それでも、人間の相談に乗るだけでも他の妖怪から見れば酔狂であり、鬼太郎と親しい間柄である猫娘から見ても物好きであることに変わりない。

 

「……約束だからね」

 

 猫娘の疑問に鬼太郎はそれだけを短く答える。

 

「ふ~ん、約束ね……で? 手紙には何て書いてあるのよ?」

 

 鬼太郎の口にした『約束』という言葉。

 昔、赤ん坊の頃に彼を助けた水木という人間の青年が関係しているらしいが、鬼太郎も彼の父親である目玉おやじも決して多くを語ろうとはしない。

 猫娘はそんな彼の過去を知りたいと思いながらも、今一歩踏み込む勇気が持てず、代わりに依頼内容について質問する。

 

「――夜に連れ去られた娘を捜し出してほしい」

 

 鬼太郎は手紙に書かれていた内容をそのまま声に出して読み上げる。

 

「夜に連れ去られた? なんとも奇妙な言い回しじゃな……」

 

 その内容に茶碗風呂に浸かっていた目玉おやじが首を傾げる。娘が行方不明になってしまったから、見つけて欲しいという捜索の依頼だろう。

 しかし、『夜に連れ去られた』とはいったいどういうことか?

 

 疑問に思いながらも依頼主に話を聞くべく、鬼太郎たちはその日のうちに家を出た。

 

 

 

×

 

 

 

「無理についてこなくてもよかったんだぞ、猫娘?」

「べ、別に……暇だっただけだし! 鬼太郎だけじゃ、頼りないだろうし!」

 

 鬼太郎と猫娘はカラスたちに連れてってもらい、目的地へと向かう。

 鬼太郎のことを物好きと言いつつも、猫娘は彼のことが心配で一緒についてくることが多い。今回も猫娘が同伴、目玉おやじを加えた三人で依頼のあった田舎町の上空へと来ていた。

 

 そこは周囲を山に囲まれた田舎町。

 日が沈み、既に町には『夜』が訪れていた。

 少女を連れ去ってしまったという夜。闇が広がるその町の中に、鬼太郎たちは降り立つ。

 

「ふむ、見たところ普通の町並みに見えるが……」

 

 町に入った第一印象を目玉おやじが口にする。

 時刻が時刻なだけあって人気はないが、町の雰囲気にこれといって変わったところはない。

 住宅地には古びた家屋が並び建ち、公園には楽しそうな遊具が集まっている。主婦たちが毎日のように買い物にやってくるスーパー。子供たちが通う通学路の向こうに、少し古いが立派な校舎がそびえ建っている。

 アスファルトの道路を照らす街灯が申し訳ない程度に点滅し、少し足元が心許ない気がしたものの、歩く分には問題無い。

 どこにでもあるような、ごくありふれた田舎町の夜の風景である。

 

「ふ~ん、ちょっと田舎すぎるけど、普通の町じゃないのよ」

 

 猫娘も概ねそんな意見だ。特に何を思うこともなく辺りを見渡す。しかし――鬼太郎だけは違った。

 

「いえ、父さん……この町、何かが変です」

 

 鬼太郎はこの町に降り立った瞬間から、その異変に気がついていた。

 彼の妖気を探知する『妖怪アンテナ』に反応があったからだ。

 

「何か……いる! 気をつけろ、猫娘!」

「っ!」

 

 鬼太郎は猫娘に警戒を促し、彼のただごとならぬ表情に猫娘が爪を伸ばして構える。

 

 次の瞬間――それは電柱の影から現れた。

 

「な、何よ! コイツ!?」

 

 白い『モヤ』のようなものが揺れ動いている。

 最初は煙のように形を持たなかったそれが、明確な意志を持って人の顔のようなものを形成していく。目や口に該当する部分には『孔』が空いており、そこから唸り声のようなものを上げ、近くにいた猫娘へと迫ってくる。

 

「このっ!」

 

 向かってくるそれに猫娘は爪を突き立てる。すると人影はあっさりと霧散し、霞のように消え去っていく。

 

「……消えた?」

 

 あまりにもあっさりと撃退できたことに拍子抜けする猫娘だが、隣に立つ鬼太郎は警戒を緩めない。

 

「気をつけろ、まだ来るぞ!」

 

 暗闇の向こうから聞こえる四足歩行の足音。目の前に現れたそれは『黒い犬』だった。その犬には目玉が一つだけ、子供を丸呑みできそうな大きな口を広げ、鬼太郎たちを呑み込もうと飛びかかってくる。

 

「髪の毛針!」

 

 鬼太郎は毛針を飛ばす。毛針は全て犬の大きな目玉に突き刺さり、犬はたまらずひっくり返る。子犬のような悲鳴を上げ、闇の中へ尻尾を巻いて逃げていく。

 

「鬼太郎、上じゃ!」

「!!」

 

 今度は目玉おやじが何かに気づき、鬼太郎に呼びかける。父の言葉に慌ててその場から飛び退く鬼太郎。次の瞬間、彼がさっきまで立っていた場所に「キャー!」と悲鳴を上げながら、女性が飛び降りてきた。

 どこから降って来たのか、地面に落下したにも関わらず五体満足のまま。女性はその場で手足をクネクネとばたつかせ、暫くすると唐突に消えていなくなってしまう。

 

「……なんなのよ、この町」

 

 立て続けに現れる『怪異』に、妖怪である猫娘が茫然と呟いていた。

 

 

 

×

 

 

 

「ゲゲゲの鬼太郎さん……ああ、お待ちしておりました……」

 

 鬼太郎たちは疲れ切った表情の女性、依頼主である深川由紀子の自宅へと訪れていた。

 

 出迎えの際、彼女は玄関に立っていた鬼太郎と猫娘を前に戸惑うように目をしばたたかせる。

 どう見ても子供な見た目の鬼太郎と、見ようによっては保護者のお姉さんという感じの猫娘。ただの人間と思われてもおかしくない二人組。

 だが、由紀子は鬼太郎たちの纏う『人ならざるモノ』の空気を感じ取ったのか、素直に彼らを居間へと通す。

 

 そうして訪れた深川由紀子の家――そこは、まるでゴミ屋敷のようであった。

 

 脱ぎ散らかされた衣服、空のペットボトルとコンビニ弁当の空箱が無造作にビニール袋に詰め込まれている。台所はお酒の空き瓶で埋め尽くされ、いたるところに煙草の匂いが染み付いていた。

 

「…………」

「…………」

 

 とても一つの家庭を支える女性が住む場所と思えず、一瞬言葉を失う鬼太郎たち。

 だが、今はそれよりも優先すべきことがあると、鬼太郎はこの町に来てから抱いていた疑問をぶつける。

 

「深川さん……この町はいったいどうなっているんですか?」

 

 鬼太郎たちが由紀子の家に辿り着く間、幾度となく彼らは『怪異』に遭遇していた。

 

 無気味な『赤ん坊の群れ』が、泣き叫びながら道を横切っていた。

 赤身がかった『影』のようなものが、左右に揺れ動きながら近寄って来た。

 体に目玉を無数に付けた、腕だけが血のように赤い『巨大な化け物』に襲われたりなど。

 

 鬼太郎たちですらまともに意思疎通の出来ない異形が、次から次へと現れては消えていく。

 

 幸い戦闘能力はあまり高くなく、鬼太郎たちなら問題なく撃退可能だ。

 しかし、これは妖怪である彼らからして見ても異常事態。こんな『人ならざるモノ』たちが夜とはいえ、人里を堂々と闊歩するなど。数百年前ならいざ知らず、闇の薄まった現代でこれは明らかにおかしい。

 

「ああ……貴方がたも、あのお化けたちをご覧になられましたか……」

 

 だが由紀子は鬼太郎の問い掛けに、さも当たり前のように答える。

 

「この町には……昔から『とある決まり事』がありまして――」

 

 それは『日が完全に沈んでから、明け方に日が昇るまでの間、決して外を出歩いてはならない』という、いつの頃からか囁かれるようになった暗黙のルールである。

 

「この町……というより、この辺り一帯の土地には、昔から……夜になると、あのお化けたちが歩き廻って夜道を歩く人間を追いかけてくるんです。いつ頃から……と聞かれると困るのですが、少なくとも……私が子供の頃からずっとこうでした」

 

 由紀子はこの町の出身だったが、幼い頃から『あれら』はずっと夜になると現れる。故にこの町の住人はそれを当たり前のものとして受け入れ、特別に騒いだりはしない。

 夜に出歩かないことを徹底し、子供たちにもそう言って聞かせる。

 

 それがこの町の住人にとっての常識であった。

 

「そう……娘にも、ユイにもそれはわかっていた……わかっていた筈なのに!!」

 

 途端、それまで淡々と話していた由紀子がヒステリックに声を荒げる。ボサボサの髪をかきむしり、涙声で表情を歪める。そんな彼女に対し、鬼太郎はあくまで冷静に話を進めていく。

 

「ユイ……いなくなった、娘さんですね」

「ええ……」

 

 夜に連れ去られたという娘――ユイというのが、いなくなった子供の名前だろう。由紀子は懐から一枚の紙切れを取り出しテーブルの上に置く。

 

『小学生の女の子が行方不明になっています――』

 

 それは行方不明者の情報提供を求めるチラシであった。掲載された写真には、頭に包帯を巻いた小学生くらいの赤いリボンの少女が映っている。この子がユイなのだろう。

 

「二週間ほど前です。私が……仕事から帰ってくるいつもの時間に……ユイがいなかったんです」

 

 由紀子は夜中に働いており、明け方までは家を空けているらしい。帰宅した日の朝、家の中にユイの姿はどこにもなかったという。

 

「娘さんの行き先に、心当たりはありますか?」 

 

 一応、ただの家出という可能性を考え鬼太郎が質問する。

 

「ありません……あてにできるような親戚も、この近くには住んでいません」

 

 その問いに由紀子は首を振る。

 

「失礼ですが……旦那さんは?」

 

 次に鬼太郎は彼女の旦那、ユイの父親について尋ねる。先ほどからそれらしい人の姿が見えないし、気配も感じない。娘がいなくなっても、仕事で出かけているのだろうか。

 

「夫、ですか……」

 

 するとその問いに対し、眉間に皺を寄せて表情の険を強める由紀子。

 

「夫なら二年前に出て行きました……私と、ユイを捨てて!!」

「…………」

 

 怒りを隠し切れない様子で由紀子が吐き捨てる。

 どうやら、父親も蒸発してしまっていたらしい。由紀子の怒りようから『それがどういった事情』なのかを察し、迂闊な質問をしてしまったことに口を噤む鬼太郎。

 黙り込む彼に、由紀子は身を乗り出して詰め寄る。

 

「ユイは……きっとこの町の夜に連れ去られてしまったんです。鬼太郎さん! お願いします! 娘を、娘を捜し出して下さい! 私には……もう、あの子しかいないんです!」

「……わかりました」

 

 母としてユイの身を案じ、自分に縋り寄ってくる彼女に鬼太郎は静かに頷く。

 

 鬼太郎たちはいなくなってしまった少女・ユイを捜すため、すぐに夜の町を捜索することにした。

 

 

 

×

 

 

 

「――リモコン下駄!!」

 

 脳波でコントロールするリモコン下駄で、鬼太郎は道端で待ち伏せをしていた『刃物を持った異形』を打ち倒す。凶悪な顔のそのお化けはすっころび、その姿を瞬く間に霧のように消してしまう。

 

「ふむ……それにしても、本当におかしな町じゃのう、ここは……」

 

 その光景を見つめながら、目玉おやじは腕を組む。

 彼は由紀子との会話の際、彼女を驚かせぬよう鬼太郎の髪の毛の中に隠れていた。彼女の話を聞いてから目玉おやじはずっとこの調子で考え込んでいる。

 

 ユイを捜すため町へ繰り出した鬼太郎たち。彼らは幾度となく異形に遭遇する。

 

 当初、鬼太郎たちはお化けたちに話を聞き、ユイの行方を尋ねようとした。妖怪である鬼太郎たちになら、彼らも耳を傾けてくれるのではと、淡い期待を抱いたからだ。

 

 しかし、その試みは無駄だった。彼らは鬼太郎たち相手にすら、容赦なく襲い掛かってくるのだ。

 

 中にはただボーッと突っ立ているだけのモノや、進路をただ塞ぐだけのモノなどもいたが、大半のモノが鬼太郎たちの姿を見かけるや、唸り声を上げながら向かってくる。

 まるで、自分たちを目の敵にでもするかのように、憎しみに駆られるかのように――。

 

「彼らは……妖怪というより、亡霊や悪霊に近いのかもしれん」

 

 まともに言葉すら通じないこの町の異形に対し、そのような印象を抱く目玉おやじ。

 

 妖怪と一言に言っても、様々なモノがいる。

 鬼太郎のように由緒正しき妖怪の一族『幽霊族』。

 かつて人間だった少女が猫との因果を持ってしまったため、妖怪になった『猫娘』。

 ぬりかべや一反木綿のように、朽ちた壁や布が年月を経た『付喪神』。

 

 そして、この町の妖怪は『かつて人だったモノ』なのではないかと、目玉おやじは推察する。

 事故、あるいは事件によって理不尽にその命を散らした者たち。そういった者らは未練や生への渇望から、成仏することができず、この世を彷徨うことになる。

 そして、それらは時として生者を妬み、自分たちと同じ目に遭わせようと、人を呪ったり祟ったりするのだ。

 中には直接的に生者を襲い、死へと引きずり込んでくる悪霊などもいる。

 そういった『モノ』たちの溜まり場。死者が死者を産みだし、それがこの町の悪循環を廻している。

 

 ここは『そういう町』なのだ。

 

「本来、こういったものたちの魂を回収するのが死神たちの仕事なのじゃがな……職務怠慢じゃぞ、これは!」

 

 亡霊や地縛霊などの人間の魂を回収し、地獄へと送る役目を帯びた『死神』という妖怪。この町の異変に気づかず、放置している死神たちの怠慢に目玉おやじは憤りを露にする。

 

「そうですね、父さん…………? 猫娘、どうした?」

 

 父の言葉に同意しながら、ふと鬼太郎は隣の猫娘へと目を向ける。

 

「……………………」

 

 あれから、深川由紀子の家に入ってからというもの、猫娘はずっと黙り込んだまま。お化けたちを撃退するときも、どこかここに心あらずといった様子で何かを考え込んでいる。

 鬼太郎に声を掛けられ、猫娘は暫し躊躇いながらも、その口を静かに開き始める。

 

「……ねぇ、鬼太郎。さっきの、由紀子さんの家だけど……」

「ああ、あの家か……」

 

 鬼太郎たちがお邪魔した彼女の家。お世辞にも綺麗とは言い難いゴミが散乱した室内。確かにあの荒れようは気になるところではある。しかし――

 

「仕方あるまい。愛する我が子がもう二週間も帰ってこないのだ。家事など手もつかんだろう……」

 

 目玉おやじは『仕方がないこと』と考えないようにしていた。

 突然いなくなった一人娘。鬼太郎たちが対面した彼女は心労で随分とやつれている様子だった。髪もぼさぼさで、衣服も皺だらけ。身なりを気遣う余裕もないのだから、部屋の片づけなど気を回せる余裕もないのだろう。

 同じ子を持つ親として、目玉おやじは由紀子の心情を痛いほど理解できた。

 しかし、猫娘の考えは違っていた。

 

「果たして、本当にそれだけでかしらね……」

「…………? どういう意味だ、猫娘?」

 

 彼女の言わんとしている意図が分からず、鬼太郎は首を傾げる。

 猫娘は女性として、自分があの部屋に足を踏み入れて抱いた印象を男二人に話していく。

 

「あの部屋のホコリの溜まり具合……とても二週間くらいとは思えないわ。少なくとも一ヶ月以上……半年はまともに掃除してないんじゃないかしら」

「なんじゃと?」

 

 その話に目をパチクリさせる目玉おやじ。

 これは、常日頃から自身の部屋をキチンと掃除している猫娘だからこそ気づいた視点だ。由紀子の部屋――あの散らかり具合は娘がいなくなる以前から、部屋の掃除をしていないと。由紀子がずっと家事の類をサボってきた痕跡だと言うのだ。

 さらに、猫娘は嫌悪感を表情に出して続ける。

 

「それだけじゃないわ。あの部屋、男の人の匂いがした。しかも、複数……」

「そ、それは!?」

 

 その言葉の意味を察し、目玉おやじが動揺する。

 二年前に夫がいなくなったと由紀子は言った。ならば猫娘がその嗅覚で感じ取った男の匂いはいったい誰のものなのか――――考えるまでもなく、わかることである。

 

「ユイって子がいなくなる前から……あの家はまともな家庭環境、だったのかしらね……」

「…………」

 

 猫娘の皮肉な予想に鬼太郎も黙り込んでしまう。

 

 蒸発した父親。

 部屋の掃除もろくにせず、男を連れ込む母親。

 そして、いなくなってしまった一人娘。

 

 この町の夜は確かにおかしいが、原因はそれだけではなさそうだと、鬼太郎たちは考えを改めさせられる。だが――

 

「とりあえず、ユイって子を捜そう。話はそれからだ……」

 

 鬼太郎はそのことについて一旦考えるのを止め、ユイの捜索に専念する。

 確かに猫娘の予想が本当なら、鬼太郎もあの母親に向ける感情を考え直すかもしれない。だが、それで幼い少女の行方がどこに行ってしまったのか、調べない理由にはならない。

 

 少女の身に何があったのか? 

 せめて、手掛かりの一つでも持ち帰らねばと、夜の町の探索を続ける。

 

「…………ええ、そうね」

 

 言い出しっぺの猫娘も鬼太郎の言葉に同意していた。

 

 

 

 既にいなくなって二週間。

 もはや『手遅れ』なのではと、心の奥底で思いながらも――。

 

 

 

×

 

 

 

「――それにしても、よく気がついたのう、猫娘」

 

 目玉おやじは感心するかのように呟く。

 鬼太郎たちは夜の探索を続け、裏山の麓近くまで来ていた。そこは人の生活圏から離れているため、街灯の明かりも少なく、妖怪である鬼太郎たちですら足元が不安定なため、由紀子から手渡されていた懐中電灯を使って進む。

 突然現れる怪異にも多少慣れ始めていた鬼太郎たち。周囲に警戒の目を向けながらも、目玉おやじは沈黙を嫌ってそのように声を発していた。

 

「気がついたって……何がよ?」

 

 目玉おやじが何の話題について口にしているのか、猫娘は聞き返す。

 

「由紀子さんのことじゃよ。部屋の散らかり具合から、男性の気配。よくそこまで洞察したもんじゃ」

 

 彼が話題としていたのは、猫娘の鋭い洞察力についてだ。部屋の中を少し覗いただけで、よくぞあそこまで見抜いたものだと、目玉おやじはしきりに頷く。

 

「別に……これくらい普通じゃないの?」

 

 もっとも、褒められた猫娘は嬉しくもなんともない。

 女性として、あれくらい察するのは当然のことであったし、見破った内容が内容なだけに自慢にもならない。

 しかし、目玉おやじは余程感心したのだろう。何を思ってか息子に厳しい口調で言い聞かせる。

 

「よいか、鬼太郎! 将来、お前も誰か女性とお付き合いすることになる。決して浮気などするものではないぞ! 猫娘のように立ちどころに見破られてしまうからな!」

「しませんよ、父さん……」

 

 父親のお小言にやや関心薄く、鬼太郎は溜息を吐く。恋もまだ経験したことのない彼にとって、そういった男女の話しは完全に他人事である。

 隣で猫娘が「……当り前じゃない、鬼太郎に浮気なんて……」と小声で呟いていることにも気づけていない。

 

「……ん?」

 

 そこでふと、鬼太郎は立ち止まった。

 山への入口付近。そこにはいくつかの立て看板があった。鬼太郎は何となくそれらが気になり、懐中電灯を向けてそこに書かれている文字を目で追っていく。

 

『命を大切に――』『思い出して、家族の笑顔――』『安らぎは生きているものにこそ――』

 

「父さん、これは……」

「ふむ……自殺防止の呼びかけ、ということじゃろう……」

 

 それらの看板が設置されている意味を、鬼太郎と目玉おやじが悟る。

 

 人は――追い詰められると自ら死に場所を求める。

 これはそういった人たちへと向けた誰かの言葉だ。

 自殺の名所などでよく見かけるもの。ここにそれが設置されているということは、この山では自殺者が多いのかと鬼太郎は考えを巡らせながら、それらに目を通していく。

 すると、その文字列の中に一つだけ、一風変わった注意書きがあった。

 

 

『山で何かに語りかけられても、決して言う事を聞いてはいけない』

 

 

「父さん、これは?」

「ううん? 山に語りかけられても……はて、どういう意味じゃ?」

 

 直接自殺を呼び止めるでもない、抽象的な言葉。『山に語りかけられる』。普通であれば一笑に付すであろう曖昧な言葉。しかし、こんな怪異が蔓延る町ではそれが返って気にかかってしまう鬼太郎たち。

 ついついその場で足を止め、考え込んでしまう。

 

「――鬼太郎!」

 

 すると、思案を巡らせる鬼太郎を猫娘が呼びかける。

 彼が振り返ると、暗闇の向こう。遠くからぼんやりと光が、こちらに向かって迫ってくるのが見えた。

 

 今まで遭遇した怪異の中には、ゆらゆらと暗闇の中を揺らめく『人魂』のようなものもいた。

 それらは突如、闇の中から出現して鬼太郎たちに燃え移ろうと迫ってくる。またもそれと似たような怪異が現れたのかと、警戒する鬼太郎たち。

 だが、その光は人魂ではなく、人口のもの。鬼太郎たちの持っている懐中電灯とまったく同じ光であった。

 

「はぁはぁ……鬼太郎さんっ!!」

「深川さん?」

 

 息を切らしながら全力疾走でこちらに走ってきたのは、依頼人の深川由紀子だった。

 

「どうして外に? ここは危険です。すぐに戻って下さい」

 

 家で待っているよう彼女に鬼太郎は忠告する。

 鬼太郎たちだからこそ、平然とこの夜の町を歩くことができるのだ。人間である彼女があの化け物たちに捕まれば最後、命はないだろう。

 

「だ、大丈夫です。その気になれば、逃げるくらい私にもできますから……それより、これを見て下さい!!」

 

 確かに由紀子の言う通り、出現する怪異の大半の動きが緩慢だ。十分に注意を払ってさえいれば、大人の足で彼らを振り切ることもできるだろう。

 だが、危険であることに変わりはない。それはこの町の住人である彼女が一番よく分かっているだろうに。

 何故、わざわざ鬼太郎を追いかけて来たのか――その理由を、彼女は切羽詰まった様子で差し出してくる。

 

「ついさっき、何かの手掛かりになるかと娘の部屋を探していたんです。そしたら……こんなものが机の引き出しの奥から……」

「これは……日記、ですか?」

 

 子供たちが使うような学習帳などではない、飾り気のない古びた黒いノートだ。

 鬼太郎がページを捲ると、そこには大人の字で様々なことが書かれていた。

 

「夫の字です……間違いありません」

 

 娘のユイの部屋から出てきたというそのノート。既に中身を読み終えているのか、由紀子は不安を隠し切れない様子で鬼太郎へノートに目を通すように促す。

 

『〇月×日。まただ、またあの声が聞こえてくる』

 

 鬼太郎は猫娘たちにも伝わるよう、書かれていた内容をそのまま読み上げていく。

 

『日に日に呼ぶ声が強くなっている。あの声にはどうにも逆らえない。頭の中に直接響いてくる声。研究のためとはいえ、私は禁忌に近づきすぎた』

 

「夫は、大学で神社や神様……民俗学の研究者をしていました」

 

 ノートに書かれている内容を補足するかのように、由紀子は説明を加える。

 彼女の夫は大学の研究者。学者として、この町の夜について調べていたらしい。この町がこうなってしまったのには必ず理由があると。それを解明することで、この町を救おうとしていた。

 彼女の声に耳を傾けながら、鬼太郎は続きを読み上げていく。

 

『×月×日。あれは巧みな話術を持っている。いかにも私が選択の権利を持っているかのように勘違いさせ、結果、自分の都合の良い選択をさせる』

 

『こともあろうに、あの声は私のみならず、家族をも連れていくと言い出した。妻と娘まで欲しだしたのだ。当然、拒否した。私にそんなことできるはずがないと』

 

『だがどうだ。人間の心は果てしなく弱い。心の奥底でそれも悪くないと考えている私がいる。だがそれだけは駄目だ。絶対に駄目だ。私に向けられた呪いに家族は巻き込めない。絶対に――』

 

「…………私は、ずっと夫が余所に女を作って私たちを捨てたと思っていました……けど!」

 

 蒸発した夫を由紀子は責めていた。自分たちを捨てて、浮気相手と共に町の外へと逃げ出したんだと。

 だがもし、この日記の内容を信じるのなら、事実は全くの真逆だったということが理解できる。

 

『×月×〇日。今日、私は禁断の方法を使うことにした。『コトワリさま』に家族との縁を切ってもらったのだ』

 

「ことわりさま……?」

 

 そこに書かれていた、聞き慣れぬ単語に猫娘は眉を顰める。

 由紀子に対して密かに嫌悪感抱いていた猫娘。だが、鬼太郎が日記の内容を読み進めていくたび、その瞳が揺らいでいく。

 

『愛する妻と娘のため、愛する彼女たちのために、私から縁を断ち切ったのだ。コトワリさまの「もう一つのルール」により、引き換えに左手を失うことになったが構わない』

 

 

 

 

 

『これで安心して私一人、あの声のもとにいける』

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 日記の内容を読み終えた鬼太郎の表情は暗い。

 

 文脈からでも読み取れる。この手記を残した者の強い想いが。妻と娘をどれだけ愛していたのか。

 愛する家族を守るため、この日記の持ち主は「コトワリさま」とやらに頼み、左手を差し出してまで家族だけでも守ろうとしたのだと。

 

『あの声』とやらの魔の手から――。

 

「父さん……あの声とは、もしや?」

「うむ、あの立て看板にあった注意書き……」

 

 鬼太郎たちはそこで、先ほど見つけた看板のことを思い出す。

 

『山で何かに語りかけられても、決して言う事を聞いてはいけない』

 

 それは何かの例えではない。『何か』が本当に語りかけてくることを危惧した、何者かが残したメッセージなのだ。ひょっとしたら、その立て看板を残した人物も『あの声』とやらに囁かれていたのかもしれない。

 

「私は……ずっと夫を恨んでいました。夫が……私を裏切ったんだって。だ、だから私も……私もあの人を忘れてやるんだって。あの人との思い出を、全部ドブに捨ててやるんだって。へ、部屋に、家に男を連れ込んで……」

 

 日記を読み終えた鬼太郎たちの前で由紀子は泣き崩れる。猫娘が睨んだとおり、彼女は他の男との逢瀬で現実逃避をしていた事実を、懺悔するように鬼太郎たちに告白する。

 

「…………」

 

 猫娘は彼女の行いを責めることができなかった。彼女と同じ立場だったのなら、もしかしたら自分も――と、思わず考えてしまう。

 

「きっと……ユイが出て行ったのもそのせいなんです。私が……不甲斐ないばっかりに……」

 

 由紀子は自分を責めるのを止めなかった。娘のユイが家を飛び出したのも、きっとそんな自分に嫌気がさしたからだと、良心の呵責に苛まれる。

 

 そして、とうとう耐え切れなくなった由紀子は天に向かって絶叫する。

 

「どうしてよ!? どうして、私たちがこんな目に!? 私たち家族が、何をしたっていうのよ!?」

 

 彼女の泣き叫ぶ声。それはきっと、住宅地にも届いていただろう。だが、この町の夜の怖さを知る住人たちは家の中から出てこようなどと思わない。 

 彼女の下へと駆け寄り、その悲しみに寄り添える人間など、誰一人としていなかったのだ。

 

「ふふ……もうたくさんよ、こんな町……」

 

 その事実に由紀子の心が折れる。

 

 自分たち家族がこんなにも苦しんでいるのに、地獄を味わっているのに誰もが見て見ぬふり。

 この町を覆う闇に、真夜中を闊歩する化け物たちに、自分たちの苦しみも知らずに眠りこける住人たちに向かい、由紀子は心の底から憎しみを込め、声を張り上げていた。 

 

 

 

 

 

「――もう、嫌よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジョキン。

 

 

 

 

 

 

「――っ!?」

 

 その時、金属を擦るような音が鬼太郎の耳に届き、同時に彼の『妖怪アンテナ』が強い妖気を探知した。

 

 この町に来てからというもの、怪異のオンパレードですっかり麻痺していた鬼太郎の危機感。並大抵の怪物が相手なら、彼はもう驚きはしなかっただろう。

 だが、この時感じた妖気の質は、それまでとは明らかに違っていた。

 

「気をつけろ、猫娘。何か……何か来るぞ!!」

「――っ!」

 

 その嫌な予感に彼は猫娘にも注意を呼びかけ、二人で揃って身構える。

 

 

『それは』――何もない虚空から、染みのように浮き上がってきた。

 

 

 赤黒い煙のような固まり。腐った巨大な指のようなものが何本もそこから生えている。

 その指の先端は人間の腕のようになっており、二本の太い腕で大きな血塗れの鋏を支えている。

 真ん中の本体の奥には歯並びの悪い大きな口が見える。その口から生暖かい息を鬼太郎たちに吹きかけてくる。

 

「ひっ!?」

 

 そのあまりの不気味な様相に、由紀子は腰を抜かして、その場にへたり込んでしまった。

 その異形は、震え上がって動けないでいる彼女に向かい、人間など容易く切断してしまえそうなほどに巨大な鋏を広げ、襲いかかってきた。

 

「霊毛ちゃんちゃんこ!!」

 

 鬼太郎はその凶刃を止めるべく、腕に先祖の霊毛で編んだちゃんちゃんこを巻き付け、鋏に向かって殴りかかる。

 ぶつかる鋏とちゃんちゃんこ。ちゃんちゃんこはその頑丈さで鋏を受け止めるが、衝突の衝撃で鬼太郎の体が後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐっ!?」

「鬼太郎……うにぁあ!?」

 

 猫娘は鬼太郎を気遣いつつ何とか応戦するも、彼女もその鋏を受けきれず、猫のような悲鳴を上げて地に伏せる。邪魔者二人を排除し、化け物は鋏をジョキジョキと鳴らしながら、由紀子へと迫る。

 

「あ、ああ…………ああ……」

 

 自分を守ってくれる者がいなくなり、無防備となる由紀子。

 そんな彼女の恐怖をゆっくりと味わうかのように、化け物は空中で不揃いの歯をガチガチと鳴らす。その様子がまるで笑い声を上げているように見える。

 そして数秒後――怪物は巨大な鋏をジョキリと開閉させながら突っ込んでくる。

 

「逃げ、ろっ!」

「由紀子さん……」

 

 鬼太郎と猫娘はダメージが抜けきっておらず動けない。

 由紀子がその鋏の餌食となる光景を、ただ見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

「――危ない!!」

 

 

 

 

 

 刹那、何者かの声が響く。

 何かが暗闇の向こうから飛び出し、化け物と由紀子との間に割って入る。

 

 

 ジョキンッ。

 

 

 その何かを、異形の鋏が切断した。

 

「……えっ?」

 

 すると、不思議なことに化け物は鋏を動かすのを止め、まるでもう用は済んだとばかりに、由紀子に何もすることなく、暗闇に溶け込むように消えていく。

 

「消えた……大丈夫か、鬼太郎!?」

 

 目玉おやじは息子である鬼太郎に呼びかける。

 

「はい、父さん。しかし……今のはいったい?」

 

 鬼太郎は何とか立ち上がりながら、化け物が消えた虚空を見つめる。

 既に妖怪アンテナは何の反応も示さず、異形の姿は影も形も見えなくなっていた。

 変わりに、その場には化け物の鋏が切断した『首の無い藁人形』が落ちている。

 

「これは……あの妖怪がやったんでしょうか。けど、どうして……?」

 

 人形の首もその場に落ちており、首と胴とで切り離されている。あの鋏によって切断されたのだろうが、どうしてそんなものを切断しただけで、あの怪物は姿を消したのか。

 疑問を抱く鬼太郎たち。そんな彼らに向かって、闇の向こうから懐中電灯の光が近づいてくる。

 

 

「――あなたたち、何してるの。だめだよ、こんな夜中に出歩いてちゃ」

 

 

 先ほど叫び声を上げ、藁人形をあの怪物に投げつけた人物。

 同じように夜中に出歩いている自分のことを棚に上げ、その子供――少女が鬼太郎たちに咎めるような視線を向けてきた。

 

「――き、君は……」

 

 その少女を目の前にし、鬼太郎も目玉おやじも、猫娘も由紀子も目を見張る。

 

 それは、純粋な驚きによるもの。

 その少女は年端もいかない小学生。そう、鬼太郎たちが捜しているユイと同年代の子供だったのだ。

 青いリボンを付け、ウサギのナップサックを背負った幼い少女。

 そんな少女が怯えた様子も薄く、平然とこの町の夜を歩いている事実に彼らは驚きを隠せない。

 

「わん、わんわん!」

 

 その少女に寄り添うように、一匹の茶毛の子犬が跳ねまわっている。

 子犬は少女を守ろうと、鬼太郎たちへ懸命に吠えて威嚇する。

 

「こらチャコ、吠えちゃダメだよ! この人たちは……大丈夫みたいだから、ね?」

 

 子犬――チャコを宥める少女。

 その子犬の頭を撫でようと、彼女は右手に持っていた懐中電灯を脇に抱え、わざわざ右手でチャコの頭を撫でる。

 

 

 彼女には――左手がなかったからだ。

 

 

「あ、あなた……その手っ!」

 

 左側の衣服の袖から見える筈のものを失くしたその痛ましい姿に、思わず駆け寄る猫娘。

 その視線に、その少女は特に動揺する素振りもなく平然と答えて見せる。

 

「? ああ、大丈夫だよ。もう痛くないから」

「い、痛くないって……そういう問題じゃっ!」

 

 この町の夜を彼女のような子供が歩いているだけでも驚きなのに、片腕がないという不自由な状態で、少女は鬼太郎たちに助け舟を出したのだ。

 先ほどの藁人形、あれをあの『鋏を持った化け物』に投げつけて――。

 

「……君は、いったい?」

 

 鬼太郎が少女と向き合う。

 

 妖怪アンテナに反応はない。少女は紛れもない人間。

 ただの人間の少女が自分たちの危機を救った事実に、鬼太郎は困惑するしかなかった。

 

 すると、戸惑っている鬼太郎に少女は声を掛ける。

 

「あっ、こんばんわ。わたし、ハルって言います。あなた……お名前は?」

 

 今になって挨拶をしていないことに気が付いたのか、少女は慌てて頭を下げ、鬼太郎の名前を聞いてくる。

 

「ゲゲゲの鬼太郎だ……」

「ゲゲゲの……変わった名前だね?」

 

 鬼太郎の名前を聞き、小首を傾げるハルと名乗った少女。

 そんな愛らしい動作をするハルに、鬼太郎はたまらずその問いを投げかけていた。

 

「君は……こんな夜中に何をしているんだい?」

 

 大人たちでさえ怯え、恐れ慄く異形たちが蔓延る町中。

 そこを子犬のチャコと共に探索する少女。

 ハルは、鬼太郎の問い掛けに暫し悩んだ末、少し寂しそうな声で答えていた。

 

「……………友達を捜しています」

 

 

 

 

 

 

「あの日サヨナラした友達に……ユイに、もう一度逢いたくて……」

 

 

 

 

 




次回予告

「異形たちが徘徊する夜の町。
 そこに友達を求めて彷徨う、青いリボンの少女。
 父さん、あの少女はいったい?
 
 次回――ゲゲゲの鬼太郎『深夜廻』 見えない世界の扉が開く」


 本来であれば、この次回予告は各章の終わりに次章の内容について書くつもりです。今回は一話目ということで、特別に。次回からは『深夜廻』の解説を後書きで入れていきます。

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