ゲゲゲの鬼太郎 クロスオーバー集   作:SAMUSAMU

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ゲゲゲの鬼太郎6期の放送完結から、ちょうど2年。
終わってしまった本編、そこから続くストーリーを自分なりに考え、ずっとアイディアを温めてきました。

そして今日、本小説もようやくここまで来れました。
あの最終回の続き……これが作者が考えた、鬼太郎『3年目』のストーリーです。

前回の『ブラック・ジャック』から日本復興編と銘打ってきましたが、今回から明確な続編として話を構成していきたいと思います。

鬼太郎とまな。あの10年後の再開に向けて……今後とも話を綴っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。


そして今回のクロスオーバーは『少年陰陽師』です。

原作は角川ビーンズ文庫より刊行されているライトノベル小説。
かなりの長期作品であり、本編以外の短編や外伝を含めると50巻以上が刊行されています。
メディアミックスもされており、自分はアニメを全話視聴させてもらい、今回の話を書かせてもらっています。

本編の舞台は平安時代なのですが、番外で『現代編』なるものが2巻ほど書かれています。今回はその現代版を主軸に、クロスオーバー設定を盛り込んでいます。

平安版の本編の方はかなり長く、今から入るにはちょっと大変かもしれない作品。
そのため、今回はアニメ前編の話を主軸にストーリーを組み立てました。
原作が未読な(自分のようなにわか)な人にもきっと楽しんで頂けるかと。

また、今回は鬼太郎6期の続きとしてもお楽しみいただけるよう、鬼太郎本編での伏線や設定の回収などを試みています。
作者なりに考察した結果なので、解釈違いなどもあるかと思いますが、そこはご容赦下さい。

では、どうぞ……続編の物語を。




少年陰陽師 其の①

「——いかがですかな? ——殿?」

『…………』

 

 巨大な宮殿内、対峙する二つの影。

 片方は老人。一見すると人間のようにも見えるがその眼光は鋭く、纏う気配も人間ではなく妖怪のそれだ。口元には人を食ったような笑みが浮かべられており、決して油断ならない相手であることが窺い知れる。

 

 対するもう片方は巨大、あまりにも巨大な怪物。

 この宮殿の主なのだろうか。怪物は玉座に腰掛けており、老人を見下すように睨め付けていた。老人も玉座の主に失礼がないよう、片膝をついてこうべを垂れている。

 

 両者が向かい合う構図はまさに王に謁見する臣下、もしくは下民といったところだろう。

 

『…………』

『…………』

『…………』

 

 そして、二人の周囲には異形の化け物たちが控えている。

 

 化け物どもは各々、目を血走らせたり、鼻息を荒くしたりなど興奮状態に陥っている。宮殿の主が『待て』と命令していなければ、即座に老人へと襲い掛かっていたことだろう。

 もっとも、周囲をそんな化け物どもに囲まれていながらも、老人は平然としている。

 平然と、玉座の怪物に向かって何事かを進言している様子だった。

 

「西洋妖怪を率いていたバックベアードの敗北、奴が世界中に撒き散らした被害、妖怪の認知による人間社会の混乱……世界情勢は、まさに混沌の極みに達しております」

 

 老人は語る。世界が今、かつてないほどの混乱に陥っているということを——。

 

 バックベアードという、西洋妖怪の一大勢力を築いていた首領が打ち倒された。

 そのバックベアードは破滅の間際、自身の体液を流星群のように降らせ、決して小さくない被害を世界中にもたらした。

 そして妖怪の存在が公的にも認知され、人間社会は否が応でも変革が求められようとしている。

 

「貴方様が覇権を握るまたとない好機! この機会を……逃す手はないと思われますが?」

 

 この混乱に乗じ、勢力を拡大させることが出来れば覇権を——世界の主導権を握ることができるだろう。

 眼前の怪物に今こそ奮起するときだと、老人は熱く語る。

 

「私も……微力ながらお手伝いさせて頂きますよ?」

 

 そのためならば自分も力を貸すと。

 老人は頭を低くしながら、怪物へと耳障りのよい言葉を囁いていく。

 

 

 しかし——

 

 

『——失せよ、日本妖怪』

「……!」

 

 怪物の目が鋭く細められる。その言の葉に殺意すら乗せ、怪物は老人の提案を一蹴した。

 

『我が異界に無断で忍び込んできたその度胸に免じ……この場は見逃してやろう』

 

 自身の宮殿——『異界』に許しもなく侵入してきた老人。本来であればその無礼を咎めるところだが、侵入してきたという事実を率直に褒め称える。

 侵入そのものが容易いことではないと自負しているだけに、その老人の能力には目を見張るものがあった。

 もっとも、それで怪物は老人に気を許したりはしない。玉座に腰掛けたまま妖気を昂らせ、吠えるように吐き捨てる。

 

『だが、貴様の甘言に乗るつもりはない。お前がそのバックベアードとやらにした裏切り……我が知らぬとでも思っているのか?』

 

 怪物は知っていた。

 老人が何気なく口にしたバックベアードという妖怪が、どうして滅びの道を辿ったのか。

 

 西洋妖怪のトップであった彼は、この老人の仕掛けた策略にまんまと嵌められて破滅したのだ。

 自分に対して同様「お手伝いをする」だのと、調子の良いことを口にしながら、用済みになった途端に暗殺紛いの卑劣な手段でバックベアードに毒を盛ったのだ。

 そのような輩をどう信用しろというのか。怪物が老人の提案を袖にしたのは当然の判断である。

 

『早々に立ち去れ! さもなくば……この場でこやつらの餌にするぞ?』

 

 寧ろ、問答無用で八つ裂きにしなかっただけ寛大だろうが、それもここまで。それ以上くだらない戯言を口にするようであれば、躊躇なく周囲の化け物どもをけしかけると脅しを掛ける。

 

『キシャアアア!!』

『ブルゥウウ!!』

『グルゥウウウ!!』

 

 主の意志に呼応するよう、化け物たちも唸り声を上げる。

 様々な獣たちが、それぞれ独特な鳴き声を発している。主の許しさえあれば、即座に老人へとその牙を、爪を突き立てることだろう。

 

「……分かりました。どうやら時期尚早だったようです。この場は……大人しく下がらせていただきましょう」

 

 怪物を動かすことが出来ないと悟るや、老人はあっさりと退いていく。

 あれほど言葉を尽くしてはいたが、特に残念がってはいない。堂々とした足取りで、無防備にも化け物たちに背中を見せながらその場から退席しようとし——

 

 

「……ああ! そうそう!! ひとつ、貴方様に手土産となる話を……」

 

 

 わざとらしく、何かを思い出したような仕草で老人は足を止めた。

 

「貴方様の好みそうな獲物について、耳寄りなお話がありましてね……」

『…………』

 

 怪物は何も言わない。だが『聞くだけなら聞いてやる』というのが態度から伝わってくる。怪物の許しを得たことで老人は、彼の好きそうな『獲物』とやらについての情報を話していく。

 

「貴方様の力の糧となり得る……『強い霊力』を持ち、尚且つ……『髪が長い』年頃の娘……」

『ほう……』

 

 それが怪物の好みだ。人間を、特に高い霊力を持つ人間を喰らえば喰らうほど、怪物はその妖力を高めていく。

 しかしこの現代においては、そういった獲物を調達するのも一苦労。怪物が暴れ回っていた何千年前とは違い、満足のいく獲物の確保にもなかなか難儀している。

 

 老人はその弱みをついていく。

 

 その話を聞けば怪物は必ず動く。

 必然的に『ヤツ』ともぶつかることになるであろうと。

 

「その娘の名は——」

 

 

 口元をいやらしく歪めながら、その少女の名と彼女の所在を告げていく。

 

 

 

×

 

 

 

 雨が降っていた。

 

 ゲゲゲの森の上空に暗雲が垂れ込み、ポツポツと小雨を降らせ続ける。その雨でじめじめと湿った、どんよりとした空気。

 まさに現在の彼らの心境を表しているようだ。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 ゲゲゲの鬼太郎と猫娘。そして西洋の魔女・アニエス。

 ゲゲゲハウスの前に集まった皆の心にも暗雲が立ち込め、それが重苦しい空気となってさらに彼らの気持ちを押しつぶしていく。

 

「鬼太郎……お前さんのせいじゃないぞい……」

「そ、そうじゃ! 猫娘もアニエスも、そう気を落とすでない……」

 

 そんな空気を見かね、子泣き爺や砂かけババアが鬼太郎たちに声を掛ける。

 彼らも鬼太郎たち同様に落ち込んではいるものの、年の功というやつか。自身の感情にある程度整理を付けることができている。

 

「いや……ボクのせいだ。ボクが……まなから記憶を奪ったようなものだ……」

「鬼太郎の……せいじゃないわよ……」

「…………まな」

 

 しかし、妖怪としても年若い面子には、未だその苦悩と折り合いを付ける術が思い浮かばない。

 

 まなと特別仲の良かった猫娘やアニエスは勿論。

 鬼太郎などは自分が彼女から『記憶』を奪ったのだと、己自身を責めていた。

 

 

 そう、犬山まな。

 人間でありながらも鬼太郎たちと友好を深めた少女。これまでの多くの困難、先の戦争でも彼女のおかげで鬼太郎は救われ、ひいては日本が、世界が助かったと言っても過言ではなかった。

 

 だが、その犬山まなが——鬼太郎たちと過ごした二年間の記憶を丸々失ってしまった。

 

 あらざるの地で全てに絶望し、自らの記憶に蓋を閉じていた鬼太郎。

 彼の記憶と心を呼び覚ますために、彼女は自らの記憶を——『思い出』を捧げたのだ。

 

 それによって鬼太郎は大切な記憶の全てを思い出したが、その代償として——犬山まなは鬼太郎たちとの思い出を何もかも忘れてしまった。

 

 

「まなちゃんの御両親の話によると、日常生活には何一つ不便はしとらんらしい……不幸中の幸い……じゃな」

「……父さん」

 

 目玉おやじがボソッと呟いたように、知識面については特に問題ないらしい。

 まなの両親からこっそりと教えてもらったことであり、まなの周囲の人たちは今でも鬼太郎たちのことを覚えている。

 

 やはり、まなだけが鬼太郎たちとの思い出を含め、妖怪についての出来事を忘れてしまっている。

 今のまなは二年前。妖怪をまったく信じていなかった、鬼太郎と出会う前の彼女なのだ。

 

『——め、目玉が喋った!? な、なんで浮いてるの!? ありえないっ! ありえない!!』

 

 目玉おやじのような存在が喋ることに、一反木綿が宙に浮いていることに驚いていた。

 あれほど慕っていた猫娘や、友人のアニエスに泣きつかれても戸惑うばかり。

 

 今のまなにとって、まさに妖怪などあり得ない存在——化け物も同然なのだろう。

 

「…………」

 

 これにはさすがの鬼太郎もだいぶこたえており、未だに立ち直る気配を見せていなかった。猫娘もアニエスも、戦争終結から数日経過した今になってもしょぼくれていた。

 

 

「——だぁああ、もう!! いつまでもくよくよしてんじゃねぇーぞ!! てめぇら!!」

 

 

 そんな鬼太郎たちを見るに見かね、ついに一人の男が声を荒げた。

 

「ね……ねずみ男……」

 

 そう、ねずみ男だ。

 彼はいつまでも落ち込んだままの鬼太郎や猫娘に活を入れる。

 

「忘れちまったもんはしょうがねぇだろ!! おめぇらがここで項垂れてて、それであの子の記憶が元に戻んのかよ!?」

「う、うむ……それはそうなんじゃが……」

 

 ねずみ男のはっきりとした物言いには、目玉おやじのような年長者ですらも目を見張る。

 

 勿論、ねずみ男とてまなが記憶を失ったことにショックを受けていないわけではない。ときには金儲けや我が身可愛さのため、鬼太郎やまなを売り飛ばすこともある彼だが、それでも彼らに対する確かな情というものがある。

 それは先の戦争でも、彼自身の活躍によって証明された。

 

 しかし、他の誰よりも現実主義的なところのあるねずみ男だ。

 彼は悲しむよりも先に出来ることがあるのではないかと。叱りつけるように鬼太郎たちへと叫んでいた。

 

「ここでウダウダしてても何にもなんねぇ!! 一銭にもなりゃしねぇんだよ!!」

 

 

 

「こんなところでボケっ~っとしている暇があったら!! まなちゃんの『記憶を元に戻す方法』でも考えてみたらどうだ!!?」

 

 

 

「——!!」

「——!?」

 

 その発言に——それまでどんよりと沈んでいた一行が勢いよく顔を上げる。

 

「そ、それじゃ!! ねずみ男の言う通りかもしれん!!」

「な、なにがだよ……」

 

 目玉おやじがグイっと反応を示すも、発言した当の本人がその食いつきに驚いている。

 

「ねずみ男……お前さんにしては妙案じゃ!」

「う~む……わしも、その発想はなかったぞ!」

 

 しかし、その考えには砂かけババアや子泣き爺も感心するように唸っている。

 

 

 そうだ、記憶を元に戻す。

 一見すると無茶なことに思えるが、アイディアとしては一番建設的な意見のように思えてくる。

 

 鬼太郎とて一度は記憶や思い出を失い、それを取り戻した身。その際はまなが代償を支払ったが、そんなものなくとも、記憶を呼び覚ます方法が他にあるのではないか。

 全てが手遅れだと結論付けるのは、早計ではないだろうか。

 

 

「鬼太郎!!」

「…………そうだな……試して見る、価値はあるかもしれない!!」

 

 猫娘も表情を明るくして鬼太郎に呼び掛ける。鬼太郎も決意に満ちた表情で顔を上げた。

 

 幸い時間ならある。

 バックベアードやぬらりひょんといった主だった敵が倒れ、あれだけの戦争が終わった直後だ。何かしらの事件が起きているという話もない。調べごとをする時間くらいは確保できるだろう。

 

 そう思い立つや皆の行動は早かった。

 

「わ、ワタシ! アデルお姉様に色々と聞いてみるわ!!」

 

 アニエスが箒で空へと飛び立つ。

 今は席を外している姉のアデルのところへと赴き、彼女と共に何かないかと考えを巡らせるつもりのようだ。西洋の魔女である彼女たちであればこそ、思いつく閃きや蓄えた知識があるかもしれない。

 

「こうしちゃおれん!! 子泣きよ、わしらも調べるぞ!!」

「合点承知じゃ!!」

 

 砂かけババアと子泣き爺も急ぎ駆け出していく。

 二人が向かうのはゲゲゲの森の奥にある図書館だ。古文書などの古い資料や記録、数多くの文献が残されているあそこなら、何かしらヒントになる書物が見つかるかもしれない。

 

 そうだ、きっとどこかにある筈だ。あの子の記憶を呼び覚ます方法が。

 その手段を探し出すためにも、各々が出来る限りの知恵を絞っていく。

 

 

 

「ねずみ男……アンタにしちゃ、珍しく良いこと言うじゃない」

「ウルせぇな! 俺は常に良いことしか言わないのさ!」

 

 ねずみ男の言葉には猫娘でさえも感心せざるを得なかった。ねずみ男は心外だとばかりに言い返すが、互いに険悪な空気はない。

 犬猿の仲、もとい猫と鼠という相容れぬ両者だが、今回の件に対する思いだけは一致している。

 

「よし……わしらも行くぞ、鬼太郎よ!」

「はい、父さん!」

 

 鬼太郎も目玉おやじも一緒だ。

 皆で調べればさらに効率も上がるだろうと、砂かけたちの後を追い図書館へと向かおうとする。

 

 だが——

 

「——お~い! 鬼太郎しゃん~!!」

「……一反木綿?」

 

 彼らが駆け出そうとしたとき、上空から鬼太郎のことを呼びながら、一反木綿がヒラリと舞い降りてくる。

 

「どうしたのよ、一反木綿? 街の方で何かあった?」

 

 一反木綿にはここ数日、人間たちの街の被害などを見てもらっている。しかし定時連絡で帰ってくるのにはいささか早すぎる時間帯だと猫娘が疑問を抱く。

 何か不測の事態でもあったのかと、少し心配になりながら問い掛ける。

 

「鬼太郎しゃんに、客が来とるばい」

「ボクに……?」

 

 一反木綿が口にしたのは来客の知らせだった。

 直接鬼太郎の元に来るのではなく、わざわざ一反木綿を仲介してでの来客。

 

「いったい誰だよ、こんなときに……」

 

 そのまどろっこしさにねずみ男が悪態を吐く。これから忙しくなるというのに、いったいどこの誰だと不満そうに口を尖らせる。

 

「それが……」

「……?」

 

 するとそれらの反応に対し、一反木綿も若干言いづらそうに。

 

 

 その客人の『人間』の名前を口にしていた。

 

 

 

×

 

 

 

 調布市の調布ヶ丘に『布多天(ふだてん)神社』という社がある。

 調布市内でも指折りのパワースポット。古きよりこの地に鎮座する由緒ある神社であり、神聖な空気感を現代にも保っている。

 この神社では経営、酒造、温泉、医学など。非常に幅広い分野で活躍したとされる神『少名毘古那神(スクナヒコナノカミ)』や、学問の神として有名な『菅原道真公(スガワラノミチザネコウ)』を御祭神として祭っている。

 一年を通しての様々な年中行事から、結婚式やお宮参りなどとの個別の訪問にも対応している。

 広い境内にはたくさんの高木が生い茂っており、観光地としても、地域のちょっとした散歩スポットとしても多くの人間たちから愛されてきた土地である。

 

 しかし、その存在が広く知られている一方で、その本殿の裏手に広がる森が——あの『ゲゲゲの森』に通じているということを知るものは意外と少ない。

 鬼太郎たちを始めとした多くの妖怪たち。彼らにとってもこの地は大切な住処なのである。

 

「…………」

『…………』

 

 そんな布多天神社の本殿の前にて。一人の人間の青年とその背後に浮かぶ霊が一体、鬼太郎が来るのを待っていた。

 青年は現代人らしくスマホで待ち時間を潰している。ここ最近の時事ニュースなどにさらっと目を通す、片手間の情報収集。青年が弄るスマホを、背後霊が興味深げに見つめている。

 

「……鬼太郎、来た……」

 

 青年と少し距離を置いて佇んでいた巨体、ぬりかべが鬼太郎の来訪を青年に告げる。

 すると青年はスマホから顔を上げ、敵意とも好意とも違う。何とも言い難い視線を鬼太郎へと向ける。

 

「よお、ゲゲゲの鬼太郎……」

 

 一応は顔見知りのため挨拶をするが、決して馴れ馴れしいわけではない。ある程度の距離感は当然、彼の立場を考えればそれも仕方がないことだったりする。

 

「石動零? それに伊吹丸も……」

 

 待ち人相手に鬼太郎も意外そうな顔になる。

 鬼太郎を呼んでいた相手は鬼道衆・石動零。その背後には彼の師匠的なポジションに収まっている鬼童・伊吹丸の姿もあった。

 

 過去に幾度となくぶつかり合った間柄。色々と思うところはあるものの、今の両者に争い合う意志などない。

 もっとも敵でなくとも、味方ではない。先の戦争でも協力こそしたが、少なくとも石動零は鬼太郎を全面的に信頼しているわけではない。

 そういった感情が傍目から見ても分かるからこそ、鬼太郎はやや戸惑っていた。

 

 この青年が自分をわざわざ呼び出す。いったい、そこにどのよう思惑があるのだろうと。

 

「この手紙を……とある『お偉いさん』から預かっていてな。お前に渡してくれと頼まれた」

 

 石動はまどろっこしい話を抜きに、単刀直入に鬼太郎へと用向きを伝える。

 彼が懐から取り出したのは一通の手紙であった。鬼太郎に手紙——本来であれば、それは妖怪ポストを介すればそれで済む話だったのだが。

 

「お前……妖怪ポストが壊されたままだったぜ? あのままにしておくつもりかよ?」

「あっ……」

 

 石動の指摘に鬼太郎が表情に暗い影を落とす。

 

 あの戦争、第二次妖怪大戦争が始める直前。バックベアードが宣戦布告に放った一撃により、人間側に多くの死傷者が出てしまった。

 あの一撃で人間たちの間に妖怪に対する怒りや憎しみが増大。政府も妖対法——妖怪を殲滅することを目的にした法案を正式に施行。

 世間の風潮は、まさに『反妖怪』一色に染め上がってしまったのだ。

 

 その流れに乗ってか、鬼太郎が人間の依頼を受けるために設置していた妖怪ポストが、何者かの手によって破壊されてしまった。

 おそらくは『妖怪である鬼太郎の手など借りない』という意思表示であったのだろう。

 

 騒動の後も、鬼太郎はその妖怪ポストを未だに修理していない。

 直す暇がなかったというのもあるが、単純に——直す気が起きなかったというのもある。

 

「これからも人助けをするつもりなら、とっとと直しておくんだな。そうすれば、俺がお前に手紙を渡すなんて手間も省ける」

「…………」

 

 憎まれ口を叩きながらも、石動は妖怪ポストについてどうするか言及してくる。鬼太郎はそれに明確な返事が出来ないでいる。

 彼の中で迷いがあるのだ。戦争が終わったとはいえ、人間たちの手によって破壊された妖怪ポスト。

 

 それをもう一度直し、以前のように人助けのために役立てるのか?

 果たしてそれを、人間たちが心の底から望んでいるのだろうかと?

 

「……それで? いったいどこの誰からよ、そのお偉いさんってのは!?」

 

 石動の問いに鬼太郎が答えられないでいるのを見かね、代わりに猫娘が相手の手から手紙を引ったくる。

 わざわざ石動を小間使いにし、鬼太郎に一方的に手紙を送りつけてくる、そのお偉いさんとやら。

 いったいどこの何様かと、猫娘には苛立ちがあった。

 

「……! ちょっと、これって!?」

「ああん……? おいおい、マジかよ!!」

 

 すると、その手紙に書かれていた『差出人』。その『名称』に目を通すや、猫娘とねずみ男の顔が強張っていく。

 

 

 その手紙の裏には差出人の名称として——『内閣府』と記載があったのだ。

 内閣——即ち、行政機関。

 

 

 この国の首相——内閣総理大臣が所属する組織からの招待状である。

 

 

 

 

 

「……ケッ!! あのババア!! どの面下げて今更手紙なんざ!!」

「…………」

 

 手紙の差出人が判明するや、一拍遅れでねずみ男が激怒する。鬼太郎でさえも咄嗟に言葉が出てこない。

 

 人間と妖怪同士の争いが本格的に激化する間際、鬼太郎とねずみ男はなんとかその争いを回避しようと人間側の代表——つまり総理大臣へと直談判しに、首相官邸へと乗り込んでいった。

 鬼太郎たちを出迎えた総理は老齢の女性であった。日本初の女性総理大臣ということで色々と話題になったこともある政治家なのだが——

 

 

『——嫌いなものは嫌いなんです』

 

『——この国に、妖怪はいらない!!』

 

 

 待っていたのは拒絶の意志。平和的に話し合おうとした鬼太郎たちに対し、彼女は銃口で応えたのだ。

 

 その銃は日本政府が妖対法の下に制作した、対妖怪用の特殊拳銃である。

 如何なる技術でそのようなことが可能なのかは定かではないものの、その銃によって撃たれた妖怪は『魂』そのものに致命傷を負うことになる。

 

 不意をついた総理の至近距離からの銃撃、鬼太郎はそれを無抵抗に受けてしまった。ねずみ男を庇うため、あくまで平和への思いもあったために反撃も出来ず。

 

 銃弾をしこたま浴びせられた鬼太郎の肉体は限界を迎え——消失。

 絶望と失望のあまり、その魂は地獄へも落ちず、あらざるの地へと流されることになってしまったのだ。

 

 

「こいつの……こいつのせいで鬼太郎が!! まなが!!」

 

 その事実を前に、猫娘が本性を剥き出しに激怒している。

 まさにあの総理こそが鬼太郎を殺め、間接的にまなが記憶を失う要因を作った相手とも言える。

 

 戦争の虚しさから、憎しみが何も生まないことは彼女とて理解はしている。しかし、気持ちの面でその怒りを完全に抑え切れることができない。

 瞬間的に、受け取った手紙を破り捨てたい衝動に駆られていく。

 

 

 ところが——

 

 

「何だお前ら? ニュース……見てねぇのか?」

「……?」

 

 鬼太郎たちの反応に石動零が不思議そうに首を傾げる。未だに何も知らない鬼太郎たちに、石動は何気なくその情報を伝えていた。

 

 

「あの婆さん、総理なら……死んだよ」

「「「————っ!!?」」」

 

 

 初耳の話に目を見張る鬼太郎たち。もっとも、人間社会ではとっくに広まっている情報だ。

 

「あの西洋妖怪の親玉が撒き散らした体液の爆発に巻き込まれたらしくてな……主だった官僚共々、亡くなったってニュースで報道されてたぜ」

「バックベアードの……そうか……」

 

 バックベアードの暴走、バックベアード爆弾とでも言うべきか。

 ヤツの溢れ出した体液が首相官邸にも降り注ぎ、そこで陣頭指揮を取っていた総理や官僚たちを吹き飛ばしてしまったという。

 

 総理である彼女は、最後まで妖怪との徹底抗戦を唱えていた。

 バックベアードも、人間たちをどこまでも見下していた。

 

 認め合わぬもの同士が互いに撃ち合い——最後には両者共に滅んだのだ。

 

「…………」

 

 後味の悪い結末に、鬼太郎の表情がいかんとも言いがたいもので固まる。

 猫娘もねずみ男も。総理への怒りこそあれど、既に亡くなった相手をそれ以上罵倒することもできず。

 

 行き場のない怒りは霧散し、どうしようもない虚しさだけが心中に残されていく。

 

 

 

 

 

「まあ……そういうわけだ。今は政府も大慌てでな……。臨時の総理を立てたりなんかして、なんとか対応しようとしてる」

 

 押し黙る一行に対し、さすがに気まずさを感じながらも石動が話を前へと進めていく。

 

「その手紙はその臨時総理からだ。まあ……俺もそいつから直接受け取ったわけじゃない。その総理代理の……顧問ってやつから、お前にそれを渡すように頼まれた」

「……顧問?」

 

 総理代理の顧問。それはいったい『どういう立場の人間』なのだろうと、ちょっとした疑問が鬼太郎の脳裏を過ぎる。

 

「実際に会ってみれば分かる……何というか、驚くとは思うが……」

 

 石動はその顧問とやらについて詳しくは話さなかった。会えばわかると、それ以上のことは説明する義理もなく。

 

「じゃあな……確かに渡したからな」

 

 そのまま素気なく、その場から立ち去ろうと鬼太郎たちに背を向けていく。

 

 

 

『……暫し待て、零よ』

 

 その際、それまで沈黙を貫いていた伊吹丸が石動に待つように言った。

 

『ゲゲゲの鬼太郎、犬山まなどうしておる?』

 

 彼が気にしていたのは、犬山まなの様子だ。

 伊吹丸にとってまなは色々と迷惑を掛けたり、世話になったりした人間だ。『彼女の記憶が失われても、命があっただけ良しとせよ』何てことを言ってはいたが、やはりあれからどうしているか気にはなるのだろう。

 

「…………」

 

 これには石動も足を止める。彼の方も、まなのことが気に掛かってはいるようだ。

 

「まなちゃんは相変わらずじゃ……今は皆で、あの子の記憶を取り戻す方法が何かないか調べているところじゃよ……」

 

 伊吹丸の問い掛けに目玉おやじが答えた。ついでに、自分たちがまなの失われた思い出を取り戻そうとしていることも話す。

 

『記憶を取り戻すか……果たしてそれで……』

 

 これに伊吹丸は表情を崩さなかったが、含んだ物言いで何かを言いかける。

 

『いや、今は人間たちとの話し合い……それが何事もなく終わることを切に願う』

「…………」

 

 しかし今はただ、総理との話し合いが無事に終わることを願いながら。

 石動と共にその場から静かに立ち去っていく。

 

 

 

×

 

 

 

「……どうするの、鬼太郎?」

 

 石動と伊吹丸がいなくなった後、猫娘は手紙の『中身』を確認しながら鬼太郎の判断を仰ぐ。

 

 総理代理とやらがよこしてきた手紙には『直接会って話がしたい』と、場所と時刻が記載されていた。話があればそちらから出向けばいいものを。政治家という奴は本当に偉そう、豪華な椅子で踏ん反り返っている——というイメージが猫娘の頭の中に浮かんでくる。

 

「う~む~、この期に及んで騙し討ちなどないとは思うが……」

 

 目玉おやじも腕を組みながら頭を悩ませている。

 さすがにこれ以上は人間側も無益な争いなどしたくはないだろうが、だからといって無条件に信用できる相手とも思えない。

 

「ケッ!! やめとけ、やめとけ! どうせ碌な話じゃねぇ! 会うだけ時間の無駄だって!!」

 

 ねずみ男は明らかに不機嫌に吐き捨てる。

 前総理に目の前で鬼太郎を殺されているせいか、それと同じ役職に就いたという人間には不信感しかない。

 

 皆それぞれ、人間側からの誘いには否定的な意見を口にしていた。

 

 

「…………いや、会ってみよう」

 

 

 だが仲間たちの言葉に耳を傾けながらも、鬼太郎は熟考の末、この人物と会うことに決めた。

 

「もう一度……話をしてみようと思うんだ……」

 

 決して盲目的に人間を信じているわけではない。

 差し出した手をはねのけられた失敗を、忘れているわけではない。

 

 けれども、たとえ何度裏切られたとしても、信じること自体を諦めたくはない。

 

 

 きっと——記憶を失ったあの子も、それを望んでいる筈だから。

 

 

「——なら、私も行くわ!!」

「——俺もだ!!」

 

 鬼太郎が総理代理に会うと決心するや、猫娘とねずみ男が間髪入れずに同行を志願する。

 特に猫娘は必死だ。先は鬼太郎に何もかも背負わせてしまい、それが彼を失うきっかけになってしまった。

 もう二度とあんな思いをしたくはない。待っているだけなのは御免だと、鬼太郎に引っ付いて行く。

 

「よし! では出発じゃな!!」

 

 勿論、何も言わずとも目玉おやじも一緒である。

 

「……分かった。みんな……よろしく頼む」

 

 皆の同行に対し、今回ばかりは鬼太郎も黙って頷く。

 

 大勢で押しかけては相手を警戒させる。皆を危険に巻き込みたくはないと。前回はそれで失敗し、危うく取り返しのつかない事態にまで発展してしまった。

 今度はそのようなことにならないよう、十分に警戒した上で仲間たちと共に行く。

 

 

 素直に皆の力を借りる。『仲間との信頼が、その絆が自分たちの強さ』だと。以前にも言われ、先の戦争でそれを改めて気付かされたからこそ遠慮はしなかった。

 

 

 こうして、鬼太郎は総理代理と会うことになった。

 他の仲間たちにも、とりあえず総理のところに行くとは伝えたが、これ以上の人数でぞろぞろと押しかけるのはさすがに躊躇われた。過剰な戦力を引き連れれば、それこそ争いの火種になりかねない。

 それに、他の仲間たちにもそれぞれ役割がある。

 

 壊れた街を見て回ったり、他の妖怪たちが無茶をしないように目を光らせたり。

 まなの記憶を取り戻すという、本当に大切なことに時間を割いてくれるものたちもいる。

 

 当初の予定通り、鬼太郎は目玉おやじに猫娘、ねずみ男の三人と共に目的地へと向かっていく。

 

 

 

 

 

「——お待ちしておりました、どうぞこちらへ……ご案内致します」

 

 総理代理が待っているというその場所は、都内にある緊急災害対策本部、その予備施設とのことであった。その施設の門の前で秘書を名乗る男性が鬼太郎たちを丁重に出迎え、建物内を案内してくれる。

 

「…………」

 

 道すがら、施設内で働いている人々の動きが鬼太郎たちの目に止まる。

 

 様々な人々が難しい表情で顔を突き合わせ、忙しなく動き回っていた。戦争が終わっても、それにより発生した被害までもが消えてなくなるわけではない。

 

 戦後処理、被害の把握や人々の救援に努めている職員たち。

 誰もが自分に出来ることをしようと、必死に汗水を流して働いている。

 

「っ!!」

「おっと……」

 

 だが、そんな忙しさの中にあっても、人間たちは鬼太郎らの姿を見かけるやその足を止め、チラチラと視線を向けてくる。

 妖怪である鬼太郎がここにいることへの戸惑い。妖怪たちのせいで被った被害などへの憤り、一方でゲゲゲの鬼太郎には日本を救ってもらったという感謝もある。

 例えようのない、言葉にしようもない複雑な感情が妙な緊張感としてピリピリ伝わってくる。

 

「…………」

 

 無用な衝突を避けるためにも、そんな人間たちの横を鬼太郎たちは素通りしていく。

 

 

 

 

 

「この部屋の中でお待ちです」

 

 そんな人々の視線に晒されながらも、とりあえず総理代理が待っているという部屋には何事もなく辿り着いた。しかし、案内役であった男性はそのままどこかへと行ってしまう。

 鬼太郎たちだけで部屋に入れということだろう。一瞬、罠か何かの可能性が脳裏を過ぎるが——

 

「……失礼します」

 

 ここで立ち往生していても仕方がないと、鬼太郎は覚悟を決めてドアをノックをする。

 

「——どうぞ~」

 

 部屋の中からは、声音だけで結構な歳を感じさせる渋みな返答が返ってくる。どうやら今度の総理は男性らしいと、そんなことを考えながら鬼太郎たちが室内へと足を踏み入れていく。

 

 

「やあ、やあ~! よく来てくれたね、待ってたよ! うんうん!!」

 

 

 部屋の中では年老いた男性が椅子に腰掛けていた。

 

 かなりの高年齢で見た目からも年齢を感じさせる、おじいちゃんといった風貌。政治家にしては、なんとも緩い空気感が漂っている。

 とてもではないが一国の総理、臨時とはいえそれが務まるような雰囲気、責任感といったものを第一印象からは感じ取ることができなかった。

 

「……? あの……すみません——そちらの方は?」

 

 本来であれば、その総理代理を相手に色々と話を始めるところなのだが。

 

 このとき、鬼太郎は総理の背後——彼に付き添うように立っている、もう一人の老人に自然と目がいってしまった。

 その老人は、どう見ても政治家には見えない。

 

 神職に類ずる人間——『宮司』の格好をしていた。

 おまけに佇まいからも、どこか只者ではない気配を感じさせる。

 

「初めまして、ゲゲゲの鬼太郎殿……お噂はかねがね聞き及んでおります」

 

 鬼太郎の問いに答える形で、その白髪の老人が口を開いた。

 総理よりも先に、自分が何者であるかを名乗ることで、鬼太郎たちにその存在感を示していく。

 

 

「——私は……名を安倍晴明(あべのせいめい)と申します。以後お見知り置きを……」

 

 

 

×

 

 

 

 安倍晴明。

 

 世代、人間・妖怪という種族も問わず、その名を知らないものはこの日本にいないだろう。そう言えるだけの知名度を誇る『陰陽師』の名前である。

 陰陽師という職業がどういうものなのか、詳しくは知らない現代人でも、彼の名を一度は耳にしたことがある筈。

 

 数多の妖異を調伏したとされる、様々な伝説に彩られた天才。

 その活躍は人の器に収まらず、死後にもその存在が神格化され、彼という神を祀る神社が建立された。

 

 そう『死後』だ。平安時代に活躍したとされる彼は、既に千年前に亡くなっている。

 安倍晴明には妖狐の血が混じっているという伝説もあるが、それでも彼は死んだとされている。

 

 では、この人物は?

 伝説と化した大陰陽師を名乗るこの老人はいったい何者なのか。

 

 

「……っ!!」

「…………!」

 

 妖怪である鬼太郎たちは警戒心を隠しきれず、身構えた姿勢で安倍晴明を名乗った老人と対峙する。

 

「あ~……驚いちゃった~? 驚いちゃったかな~……まあ、無理もないか~」

 

 するとその緊張感をぶっ壊すように、総理代理である老人が間伸びした声で待ったを掛ける。

 彼はおどけた態度で、鬼太郎たちにその人物がどのような『血筋』にあたるかを説明をする。

 

「いやね~、安倍晴明って言っても、あの晴明さんとは別人だよ~? この人は安倍家の人間で、たまたま晴明って名付けられただけ……ただの子孫ってだけの話なんだから~」

「安倍晴明の……子孫!?」

 

 とりあえず彼は千年前に死んだとされる『安倍晴明』本人というわけではないようだ。しかし、全くの無関係というわけではない。

 

「はい……恐れながら。彼の偉大なる先祖と同じ名を頂きました。既に引退した身ではありますが……今も陰陽師の端くれとして、細々と活動させてもらっております」

 

 彼はあの安倍晴明の子孫、れっきとした『安倍家』の人間だ。

 石動零などと同じ、妖怪や怪異といったものたちに対抗する術を持った術者。千年前から続いていることが確かであれば、その歴史と伝統の重みは他者の追随を許さないだろう。

 

「あんまり大きな声では言えないんだけど……安倍家の人たちとは昔から付き合いがあってね~。今回は立会人ってことで、わざわざ来てもらったんだよ~」

 

 臨時で総理に就いたこの老人は、古くからその安倍家と交流があるとのこと。というよりも、安倍家自体が昔から政界や財界と深い結びつきがあるというのだ。

 

 

 政治の世界は権謀術数、人の心の闇が魑魅魍魎の如く跋扈する世界だ。いつの世も、そんな政治屋たちの闇、恨みや嫉妬といった醜い感情に引き寄せられるように、本物の怪異たちがひっそりとだが集まってくるとのこと。

 そういった『表向き』には出来ない薄汚い闇と、安倍家の人間は人知れず戦ってきたという。

 

 

「……けっ!! 安倍晴明の子孫だか、なんだかしらねぇが……今更どの面下げて出てきやがった!?」

「……ねずみ男?」

 

 するとそんな安倍家の人間に対し、ねずみ男が苛立ちを露わにする。

 

「政界と陰陽師が繋がってただぁ~!? だったらなんで、今まで何もしてこなかった? 国の危機だってときに、てめぇらは何をしてやがった!? 面倒なことは全部鬼太郎に任せて……それでも陰陽師かよ!?」

 

 ねずみ男は怒っていた。今の今まで——お前たちは何をやっていたんだと。

 

 

 先の戦争のときもそうだが、これまで安倍家の陰陽師とやらが活躍しているところを見たことがない。ここ数年、立て続けに起きたこの国の根幹を揺るがす事件も、大抵は鬼太郎が解決してきた。

 

 八百八狸の政権奪取に、バックベアード軍団による日本侵略。

 地獄の四将による現世への甚大な被害、玉藻の前の策略によって危うく外国と戦争にもなりかけた。

 そして、此度の戦争におけるぬらりひょんの暗躍。

 

 本当に政界に繋がりがあったというのであれば、何故これらの事件の際に姿を見せなかったのかと、ねずみ男は彼らを責めていた。

 

 

「——返す言葉も御座いません。誠に申し訳ない」

 

 これに安倍晴明は素直に頭を下げる。言い訳の一つもせず、自分たちの無力さを正直に謝罪した。

 

「っ!! 謝ればそれで済む話じゃ——」

 

 それでもねずみ男の怒りは一向に収まらず、さらに口汚い言葉で相手を罵ろうとし——

 

「まあまあ、そう怒らないでちょうだいよ~。安倍家の人たちにも、色々と事情があったんだからさ~」

 

 その罵倒を総理代理がやんわりと止める。

 

「君たちは知らないと思うけど……実はあの戦争、東京だけで起きてたわけじゃないんだよね~」

「——!?」

「全国各地で一斉に妖怪が暴れ始めたらしくてね~。安倍家を含めて色んな人たちが、その対応に追われていたんだよ~」

 

 それは鬼太郎たちには初耳であったが、確かな事実である。

 

 鬼太郎たちが東京での決戦に意識を裂かれていた間、実は他の地域でも似たようなことが起きていた。

 関東のみならず、関西、九州、四国、東北、北海道、沖縄と。ありとあらゆる地域で、同時多発的に妖怪によるテロ活動が行われていた。

 まるでタイミングを見計らったかのように、闇に潜んでいた連中が一斉に動き出したのだ。

 

「父さん、もしや……!」

「うむ……おそらく、ぬらりひょんの仕業じゃろう……」

 

 これを鬼太郎はぬらりひょんの仕業だと推測し、それに目玉おやじも同意する。

 

 ぬらりひょんは全国各地から妖怪の同志たちを集めていた。彼であれば、全国に散らばらせておいた同胞たちに号令を掛け、一斉に動かすことが可能であろう。

 本命である東京に相手方の戦力を集中させないよう、各地の同志たちを捨て駒にしてでも陰陽師や退治屋といった連中の視線を地方へと釘付けにしておく。

 どこまでも用意周到。ぬらりひょんらしい、実に卑劣で嫌らしい策略である。

 

「今までのことだってねぇ~……ボクなんかは、すぐにでも安倍家の人たちにお願いしようとしたんだよ~?」

 

 それから、これまで表舞台に出てこれなかった件について。それに関しても大人の事情があるのだと総理代理は愚痴をこぼす。

 

「けど、レイミちゃん……ああ、前総理の名前ね!! 彼女がそれを許さなかったんだよ~」

「レイミちゃんって……」

 

 あの前総理を「ちゃん」付けで呼ぶ気軽さに猫娘が呆れている。

 どうやら政治家としてはこの総理代理の方が年季が入っているようだ。有能かどうかはさておき、この老人、かなりの年月を政界で生き抜いてきたらしい。

 

 しかし相手は総理大臣。党のトップであり、選挙で選ばれた政治家たちの代表だ。

 その代表たる彼女の意向により——『国としては安倍家の手は借りない』という方針が打ち出されていたという。

 

「あの子は妖怪も嫌ってたけど~……それと同じくらい、陰陽師とかも敬遠してたんだよねぇ~」

 

 前総理が妖怪の存在を毛嫌いしていたことは周知の事実だが、それと同じくらい、彼女は『そういったもの』に関わる職業の人々も快く思っていなかったのだ。

 陰陽師や霊媒師、拝み屋といった人々をうそんくさい連中だと。決して国の大事に関わらせなかった。

 

「政府として頼めない以上、大っぴらに動いてもらうわけにはいかないでしょ~? これも人間社会のしがらみ……仕方がないことなのよ~」

 

 安倍家という歴史と伝統のある家柄だからこそ、勝手なことは許されない。彼らが依頼でもないのに自己の判断で妖怪討伐になど乗り出せば、政府の立場がなくなってしまう。

 そのような悪目立ちをすれば、安倍家の人たちは政治的、社会的に各方面から袋叩きにあってしまう。

 人間社会で生きている以上、周囲との関係を無視はできない。妖怪である鬼太郎や、フリーの術者である石動零のように、その場その場の感情だけで動くわけにはいかないのだ。

 

「いえ、全ては私たちの不徳の致すところ。今までお役に立てず……本当に申し訳ございませんでした」

 

 それでも、安倍晴明自身は決して言い訳をしなかった。全ては自分たちの不甲斐なさが原因だと。

 ただ伏して、鬼太郎たちに許しを請うかのように謝罪を続ける。

 

 

 

「…………」

 

 これにはねずみ男も何も言えない。

 人間社会のそういったわずわらしさであれば、ねずみ男もそれなりに経験がある。彼の場合、面倒になればゲゲゲの森にでも逃げ込み、ほとぼりが冷めたところでまた出て来ればいい。

 

 けれども、安倍家の人たちは逃げるわけにもいかないのだ。

 自分たちの立場、生活、家族などを守るためにも、制約があっても耐え続けるしかない。その立場を甘んじて受け入れなければならないのだ。

 

「……分かりました。そのことに関しては、ボクたちもこれ以上は何も言いません」

 

 安倍家の事情をそれとなく察し、鬼太郎もそれ以上は何も言わなかった。

 とりあえず安倍晴明の同席を容認し、総理代理と話を続けていく。

 

 

 

 

 

「——まあ、話って言っても、そこまで大したことじゃないんだよね~」

 

 総理が勧めるまま、応接用のソファーに腰掛ける鬼太郎たち一行。向かい側に総理が座り、安倍晴明が立ったままその後ろに控える。

 

「この機会にこれからは仲良くしましょうって……まあ、和平交渉? 停戦協定? 呼び方はどうだっていいんだけどね~」

「そ、そうなんですか……」

 

 随分と適当な感じで話を進める総理代理。それが彼という人間の気質なのか、声を聞いているだけでなんだか力が抜けてくる。

 陰陽師も同席している会合だ。油断してはならない、もっと気を張っていなければならないと分かっているのだが、どうにも緊張感が保てない鬼太郎たち。

 

 しかし、肝心の部分で手を抜く気はないのか。

 総理は瞬間——真摯な気持ちを言葉に乗せ、はっきりと意見を口にする。

 

「とにかく、これ以上は争いたくない! ……ってのが、お互いの共通認識だと思うんだけど~……これはいいよね?」

「ええ、それは勿論……ボクたちも、戦争なんて……もうたくさんですから……」

 

 鬼太郎も総理のその言葉にはしっかりと頷いた。

 戦争などしたくない。これは人間にも妖怪にも言えることである。

 

 だからこそ、そのためにも例の法案——この争いの原因となった『あの法律』をどうにかしてほしいと、鬼太郎も意見を口にした。

 

「でしたら、妖対法を……ボクたち妖怪を虐げるこの法律を、どうか撤回してください」

 

 妖対法は前総理が政治生命を賭けてでも成立させたいと言い放ち、世論の後押しもあって施行された法律だ。

 妖怪を一方的に排除するために作られた法案。この法律がある限り、この国の妖怪に安らげる場所はない。

 

 妖怪側の当然の要求として、鬼太郎はこの法律の取消を求める。

 

「う~ん……今すぐ妖対法を無効にするのは……ちょっと難しいかな~?」

 

 しかし、総理も安易には頷かない。

 

「妖怪の脅威が完全に拭い切れたわけじゃないんでしょ~? そういった脅威から迅速に国民を守れるようにするためにも、現時点で妖対法を白紙化することはできないのよ~」

 

 戦争は終結したが、全国各地で暴れ回っていた妖怪など。未だ闇の中で蠢く脅威が見え隠れしている。

 それに現状、妖怪の存在を公認した上で動くことのできる法律はこの妖対法だけである。この法律がなければ、そもそも妖怪がいることを『事実』として認めることができないのが、今の政府の在り方なのだ。

 

「まあ、法改正したり~、別の法案を通したりでバランスを取ることはできると思うけど……それも今すぐは無理かな~」

 

 いずれは何かしらの形で調整が入るかもしれないが、今はそれを即座に実行に移すことができるような状態ではない。

 

「復興にも時間が掛かるだろうしね~。所詮、ボクはピンチヒッターの代理総理だから……そんなに勝手なことはできないのよ~」

 

 今は戦争の被害、その爪痕を修復することに尽力する期間だ。少なくとも総理が臨時である間は、そこまで大きく法改正などの手を加えることは出来ない。

 所詮、自分は政治的空白を埋めるための中継ぎ程度でしかないと。何一つ重大な決定権を持っていないことを愚痴っていく。

 

「けどね~……そんなお飾りの総理でも、出来ることがあるんだな~」

 

 しかしここで代理だからと。何もせずに終わらないのが、この老人の強かなところである。

 臨時とはいえ総理という立場を利用し、彼は鬼太郎たちをこの場へと招き入れた。

 

「一国の総理として、こうして君たちと顔を突き合わせて話し合う……今はその事実が重要なんじゃないかな~……って思ってる」

 

 本来であれば、話し合う余地などなかった人間と妖怪。

 しかし今、戦争の終結をきっかけに、こうして同じ席に着いて言葉を交わし合う機会を得た。

 

 これは非公式の場だが、鬼太郎たちが来ていることはこの施設の職員たちの目にも堂々と触れられている。

 人の口に戸は立てられぬ。鬼太郎と臨時総理が一緒になって何事かを話し合っている。その事実が人々の間に噂となって広まっていく。

 その噂話が友好的なものであれば、後々の政権にも少なからず響いてくるだろう。

 

「とりあえず、握手でもしよっか~? こうした既成事実が後々効いてくると思うからさぁ~」

「既成事実って……」

 

 互いに歩み寄る第一歩として、総理代理は鬼太郎へと手を差し伸べた。

 総理の言いように鬼太郎は苦笑を浮かべるも、差し出されたその手を取る。

 

 

 総理代理の飄々とした態度。どこまで本気でどこまで冗談なのか分からず、腹の底までは見えてこない。

 もしかしたら、調子の良いことを言って鬼太郎を騙しているだけかもしれない。

 

「…………」

 

 けれど、固く握られた掌からは確かな力強さを感じた。

 彼個人は決して争いなど望んでいないと、その掌から伝わってくる熱さが教えてくれる。

 

「……ええ、よろしくお願いします」

 

 その熱さに応えるように、鬼太郎もその手を強く握り返した。

 まだまだハードルは高いかもしれないが、それでも自分たちはこうして話し合えた。

 

 

 人間と妖怪。

 きっといつか、こうやって多くのものたちが和解し合えるようになると——今は信じるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼太郎が総理代理と握手を交わしていた頃。

 災害対策本部で大勢の人たちが働いていたように、街中の現場でも多くの人間たちが駆けずり回っていた。

 

「——クレーン車!! こっちだこっち!!」

「——生存者を確認!! 手を貸してくれ!!」

 

 戦争によって多くの被害がもたらされた東京の街。争いが終結して数日は経過したが、未だに復興の目処などは立っていない。

 崩れた建物の瓦礫の撤去に、その瓦礫の下に埋もれてしまっている人々の救助。助かる人もいれば、手遅れな人もいる。負傷者、死者ともに日を追うごとに増加していくのが現実だ。

 

「痛い……痛いよ!!」

「お父さん!? なんで……どうして!?」

 

 怪我や病気で苦しむ人々の叫び、亡くなった犠牲者に遺族たちが嘆き悲しんでいる。

 悲しみに暮れる人々の涙は、まだまだ一向に癒える気配がない。

 

「大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」

「医療班!! ストレッチャーを早く!!」

 

 それでも、救助隊や自衛隊が必死になって作業を進めていく。

 一人でも多く、助けられる命を助けるために。

 

 

 自らの危険すらも顧みず、彼らは危険な現場を駆けずり回っていく。

 

 

 そんな、人々が懸命に足掻く災害現場に——

 

 

『……グルルルゥウ!!』

 

 

 化け物たちが姿を見せる。彼らは——まるで動物の群れのようであった。

 

 牙を剥き出しにした凶暴な猿たち。

 鼻息を荒くした猪に、肉食獣のように目が血走った山羊。

 三ツ首の鶏や一つ目の虎といった、明らかに尋常ではない見た目のものもいる。

 

 そういった動物紛いの化け物たち。多種多様な怪物どもが、どこからともなく大量に湧き出てくる。

 

「ひっ!! ば、化け物!?」

「で、出たぁぁあ!! 妖怪だ!!」

 

 戦争直後で、妖怪たちへの恐怖が色濃く残っている人間たちは戦慄する。

 やはり妖怪は信用できない。この機会にきっと自分たちを皆殺しにするつもりだと。

 

 

 

 

 

「——妖怪め……来るなら来やがれ!!」

 

 そんな中、逃げる人々の前に出る形で、化け物に立ち向かっていくものがいた。

 妖怪の残党を警戒して配備された、警官隊の一人だ。妖怪どもが現れても即座に対処できるよう、支給されていた特殊拳銃で対抗する。

 

 妖怪の魂にすら致命傷を与えるその銃であれば彼らを倒せる。連中の思い通りにはさせないと、決死の覚悟で引き金に指をかける。

 

「死ねぇええ!! 化け物!!」

『グギャア!?』

 

 妖怪への憎しみを叫びながら放った銃弾が、化け物の一匹に命中する。化け物は苦悶の表情を浮かべながら、その魂すらも霧散させていく。

 

 

 しかし——それだけだ。

 

 

 群れの一匹が死んだところで、化け物たちは止まらない。仲間の死などまるで気にした様子もなく、我先にと人間へと襲い掛かっていく。

 

「くそっ!! くそっ!! なんなんだ……なんなんだよ、こいつらは!?」

 

 警官は尚も発砲を続けながら困惑した。

 

 この化け物たち、先の戦争でも全く見かけなかった連中だ。群れとして完全に統率されており、まるで一つの生き物のように集団が蠢いている。

 一匹一匹を始末したところで全く勢いが削がれない。恐れも慈悲も知らぬのか、一才の躊躇も迷いもなく、人間たちをその牙の餌食としていく。

 

「ちっ……ちぐしょうぉおおおおお!!」

『ゲギャギャギャッ!!』

 

 抵抗を続けていた警官も、その群れの前に成す術がなかった。

 

 ついには喉元を食いちぎられ、その命を無惨に散らしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『——違う』

 

『——こんなつまらぬ命ではない』

 

 

 動かなくなった警官の血肉を貪りながら、化け物たちが吐き捨てた。

 

 彼らにとって人間こそが最高のご馳走。その肉を貪り、その血を啜ることで飢えを満たし、その妖力を高めていく。

 しかし、どんな人間でもいいというわけではない。彼らにも食の好みがあり、こんな平凡な人間では到底満足できぬと。

 今しがた命を奪った警官の遺体を無造作に投げ捨てながら、次なる標的へと狙いを定めていく。

 

 

『このような矮小な血肉では満足できぬ……』

 

『主もお喜びになられぬ……』

 

 

 彼らは探していた。

 もっといい獲物を——『主』に献上するのに相応しい贄を探していた。

 

 

『探せ……探し出せ!』

 

『見つけるのだ……そして献上せよ!』

 

 

 きっとこの地にいる筈だ。

 極上の霊力を宿した人間が、主の好みでもある髪の長い娘が——。

 

 

 その娘を見つけ出せと、全ての化け物どもに——主から命が下る。

 

 

 

『——犬山まなとやらを……探し出せ!!』

 

 

 

 その命を果たすため、異形の化け物どもが一斉に街中へと解き放たれていった。

 

 

 




人物紹介

 安倍晴明
  もはや説明不要。日本で一番有名な陰陽師。
  ですが作中での解説にもありますように、平安時代の本人ではありません。
  あくまでそっくりさん。生まれ変わり……ぽい人。
  少年陰陽師の現代版設定では、こうしたそっくりさんがたくさん登場します。
  作品タイトルにもありますよう、次回からは『少年』陰陽師が登場しますのでお楽しみに。

 総理代理
  アニメ本編で吹っ飛んでしまった前総理。
  その代わりとなるべく、急遽立てられた代理の総理。
  名前は記しませんでしたが、『シン・ゴジラ』とは何も関係がありません。  
  あくまで!! 似たような感じの人ってだけですので!!
 
 前総理
  アニメ本編で大活躍?をした日本初の女性総理大臣。
  人間側の悪い部分を象徴するよう、とってもアレに描かれてました。
  妖怪に終始振り回され、最後には吹っ飛んだある意味で可哀そうな人。
  本編では名前がないですが、一部では担当声優から「れいみ総理」とか呼ばれているらしい。
  担当声優さんには申し訳ありませんが、今回はその案を採用させていただきました……本当に御免なさい!


 最初の話として、其の①では敵妖怪の名前など出てきませんでした。
 ですが、今回は3年目の最初ということで、それなりに大物妖怪が出てきます。
 きっと少年陰陽師本編を知っている人であれば察しが付くと思いますが、とりあえず現時点では秘密。
 次回をお楽しみにお待ちいただければと……。
  
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