自分、ナンジャモのドンナモンジャTVに釣られて予約購入した身ですが、買って良かったと楽しんでプレイしています。
今回のポケモンは他にも戦闘狂のネモや、一見だとまず女性だと分からないチリ。
さらにはサラリーマンの哀愁が漂うアオキなど。魅力的なキャラが勢ぞろいしています。
ポケモンから一時距離を置くことになった人にもオススメの一本ですので、是非手に取ってみてください。
今回は『夜廻』の中盤。
一応、全三話で確実に完結するような物語構成になっています。
今年中には最後の話を投稿したいと思いますが……間に合うかは分からない。
年末は本当に忙しくて……ただfgoのボックスガチャが終わっていることがせめてもの救いです。
「…………香凛、学校来なかったね……」
「なんか家にも帰ってないって……職員室で先生たちが話してて……」
調布市の中学校、午前の授業が終わった昼休み。
皆が思い思いの昼休憩を過ごす中、一組の女子グループの子たちが不安そうな表情を浮かべていた。
彼女たちは、山根香凛と特に仲が良い子たちだ。
妖怪を恐れて昨日の遊びの誘いこそ断ったものの、決して香凛のことを嫌っているわけではない。寧ろ友達として素直に好感を抱いており、その友人が学校はおろか、家にも帰っていないという話を小耳に挟み、とても心配している。
携帯に連絡しても、一向に出る気配がない。
まさかとは思うが例の事件——妖怪が関わっているかもしれない、未成年の失踪事件に巻き込まれたのではと、嫌な予感が脳裏を過ぎった。
「香凛……」
香凛の不在に不安を抱いていたのは、犬山まなも同じだ。
昨日彼女と口論になってしまったとはいえ、クラスメイトがいきなりいなくなって心穏やかでいられるわけもない。
「…………」
「…………」
大多数の生徒たちも同じ思いなのだろう。クラス全体がどんよりと暗い空気に包まれていた。
「…………香凛ちゃん」
勿論、その中の一人に彼女——夜野田コトモも含まれている。
彼女も特に香凛と親交が深いわけではないが、それでもいなくなってしまったクラスメイトの名前を心配そうに呟いている。
「……ちょっといいかな、夜野田さん」
「え……な、何かな……犬山さん?」
すると、そんなコトモにまなは声を掛けていた。
いきなり話しかけられて戸惑うコトモだが、まな自身も少し緊張気味だ。まだ打ち解けていない転校生。例の左目のこともあるが、それ以上に夜野田コトモという少女には浮世離れした部分があった。
ただの大人しめの少女などではない。
自分たちと同じ中学生でありながらどこか成熟している、達観したような雰囲気。
あるいはそういったところに壁を感じ、未だにクラスメイトたちとも馴染めていないのかもしれない。
だが今回はその壁を越えてでも、コトモに聞いておきたいことがあった。
「ええっとね……よまわりさんって……何なのかなって……」
「えっ……?」
「ほら……昨日言ってたじゃない? よまわりさんがどうとかって……」
まなが気になっていたのは、コトモの昨日の発言だ。夜遅くまで遊び歩こうとした香凛に向かって、彼女が当たり前のように口にした言葉。
『——よまわりさんに、連れていかれちゃうからね……』
誰もが『妖怪が……』などと曖昧な定義でしか不安を表せなかった中、彼女だけは『よまわりさん』なるものの名を明確に口にした。
記憶が不鮮明なまなは、それが有名な妖怪の名前なのかとも思ったが、雅たちにも心当たりはないらしい。
家に帰ってからネットで検索してみたりもしたが、該当するものは一件もヒットしなかった。
完全にコトモしか知らないような存在——よまわりさん。
いったいそれがなんなのか。この際はっきりさせなければと、まなは思い切ってコトモに直接尋ねたのだ。
「よまわりさんは……よまわりさんだよ? ええっとね……」
まなの問い掛けに対し、コトモは色々と悩みながら何とか言葉を絞り出していく。
よまわりさんについて自分が知っていること、感じたこと。
昨日も『猫娘』なる女性相手に語った、そのときの会話を思い出しながら——。
「——よまわりさんって、何者なのかしらね?」
「えっ……?」
昨夜のことだ。鬼太郎がよまわりさんを追いかけている間、夜野田家のアパートに残っていた猫娘が姉妹にそのような問いを投げ掛けていた。
猫娘の問いに、姉妹の姉であるトモコなどは一瞬戸惑いを見せる。だが、彼女なりにどうにかして自分の意見を言葉にしようと口を開いていく。
「そ、そうですね。よまわりさんは……他のお化けたちとは明確に違う。何か別の基準、別の行動原理で動いていると思うんです……」
夜になると人ならざる化け物たちが徘徊するようになる——『あの町』。
あそこに棲まう怪異どもは、夜道を歩く人間を見つけるや見境なく襲い掛かってくる。基本的に意志の疎通は困難であり、鬼太郎たちのような知性を持った妖怪でも会話は不可能であった。
その在りようはまさに亡霊、悪霊。恨みや憎しみに駆られるまま他者を襲う、それがあの町に蔓延る異形たちの大きな特徴だ。
しかしよまわりさんは、それらとは明確に違う雰囲気を纏っている。
今しがたあれと遭遇したばかりの猫娘も、確かにそれを感じ取っていた。
「私も……色々と手を尽くして調べはしたんですけど……噂話以上のことは何も……」
トモコが言うに、よまわりさんの存在はあの地域でも噂話でしか伝わっていないらしい。ただの噂話として、子供たちの間で広くその存在が知れ渡っているとのことだ。
『それは夜の町を見回っている それが狙うのは子供だけ。
それに近づいた子供は 大きな袋に入れられてどこかへと連れていかれてしまう。
だから子供は 一人で夜の町を歩いてはいけない。
もしそれに狙われたら 目を合わせないようにしてすぐに家に帰らなければならない』
まるで親が子供に躾で言い聞かせる怖い話の見本のように、その存在を恐れることで子供たちも夜の怖さを学んでいく。
だがそれ以上のことは、噂以上のことは誰も知らない。というか、知ろうとすらしない。
あの町に住む人々は夜の町から目を逸らし、それ以上『アレ』について深く調べようとも、関わろうとも思わない。
故に何も分からず、何も理解出来ていない——それが『よまわりさん』という存在の全てだ。
「お姉ちゃん……そういうことは、あんまり深く考えない方がいいと思うよ?」
「……コトモ?」
と、そこまでトモコが話したところで、それまで黙っていたコトモが口を開く。彼女は姉と猫娘を交互に見つめながら、よまわりさんについて自身の見解を述べる。
「よまわりさんは、ああいうものなんだから……。そういうふうに認めてあげないと……しんどいよ?」
「そ、それは……」
あれこれ考えようとするトモコや猫娘を尻目に、コトモはあくまでよまわりさんを『ああいうもの』だと割り切って考えていた。
よまわりさんはああいうものだと、アレがよまわりさんなのだと。
それは恐怖から目を背け、夜の町に怯えて何もしない大人たちの対応とも少し違う。よまわりさんの存在をああいうものだと認め、その上で納得している。
「…………」
コトモの堂々としたその態度に、猫娘ですら呆気に取られた。
先ほどもそうだったが、彼女はよまわりさんが家の中に上がり込んでいても毅然としており、こうしている今も全く動揺した素振りを見せない。
少なからず怯えた態度を見せる姉よりも、妹の方がよまわりさんとの向き合い方が上手いようだ。
「……もう一つ、聞いてもいいかしら?」
そういったコトモの言葉もあってか、猫娘もよまわりさんが何者であるかという思考を一旦置く。
代わりに別の切り口から、よまわりさんと関わることになった姉妹へと、とある疑問をぶつけた。
「コトモちゃんが……よまわりさんに『見張られてる』って言ってたわよね? それって、どういう意味なのかしら?」
「そ、それは……」
その問い掛けにトモコは言い淀んでしまったが、元はと言えば彼女が言い出したことである。鬼太郎が依頼を受ける際、実際にトモコの口から——『妹はよまわりさんから見張られている』と。
鬼太郎からその話を又聞きした猫娘には、それがどういうことなのかという疑問が浮かんだ。
まさかあの町に住む子供が、コトモだけというわけでもあるまい。
何故、コトモだけが『よまわりさんから見張られる』ような事態になってしまったのか。そのきっかけになるような出来事があった筈だろう。
「…………」
質問に、トモコは何も答えてはくれない。
心当たりはあるようだが、それを言葉にするのを躊躇っているように見える。
「——それは……わたしが悪い子だから……」
すると、沈黙を貫く姉に代わってコトモが口を開く。
先ほどまでの平静な様子とは打って変わり、彼女の声は震えていた。年相応に怯えた態度、コトモが決して人生を達観した大人などではない、ただの少女であることを思い出させる。
「わたしがあの日、夜に向かって飛び出したから……お姉ちゃんの言いつけを破って、お姉ちゃんを……ポロを探し回ったりしたから……」
「……ポロ?」
初めて聞く名前に首を傾げながらも、猫娘はコトモの話に黙って耳を傾けていく。
ポロというのは、昔あの町で彼女たちが飼っていた愛犬の名前だ。母親がおらず、父親も仕事で家を留守にすることが多い夜野田家。長女のトモコも家事などで忙しく、当時小学生だったコトモは常に寂しい思いをしていたという。
そんなコトモの良き遊び相手となっていたのが、白い犬のポロだ。
どんなに寂しいときも、ポロはいつも側にいてくれた。コトモにとっても、トモコにとってもポロは誰よりも頼りになる『家族』だった。
そのポロが——ある日、唐突にいなくなった。
幼いコトモはそれを『いなくなった』と表現したが——真相は事故によるもの。
「わたしがあのとき……小石なんて投げたから……それを取りに行ったポロが……トラックに……」
コトモの不注意のせいでポロはトラックに撥ねられ、その小さな命を一瞬にして散らしたのだ。
「でもわたしは……そのことをお姉ちゃんに話すのが怖くて……ポロが死んだことが、認められなくて……」
「コトモ……」
けれど、幼かったコトモはその事実を受け入れることが出来ず、一人家に帰ってからも姉にはポロがいなくなったとだけ話した。
自らの罪を悔いる罪人のように、そのときの心境を告白するコトモをトモコは優しく抱きしめた。
優しい姉に慰められて心が安らいだのか、コトモはあの日の続きを語っていく。
『——私、探してくる』
あの日、トモコは妹の言葉に何かを察しながらも、ポロを探しに夜の町へと繰り出した。当時から彼女は夜の町が危険だと理解していたが、それでも妹のために、ポロを見つけ出さなければならないと考えたのだろう。
さらには、姉を追いかける形でコトモも夜の町へと足を踏み出した。
「そこで、わたしは初めて出会ったんです……夜のお化けたちに……」
そうして、コトモも初めて思い知ることになる。夜の町があんなにも恐ろしいもので溢れているということを。
ポロだと思って近づいた犬は、人間の顔をした人面犬だった。
髪の長い女が、呻き声を上げながら追いかけてきた。
巨大な百足も怖かったけど、あれは商店街を守ってくれる神様だ。
廃工場に集まる子供たちの霊が、楽しそうに苦しそうに笑い声を上げていた。
全てあの町の夜に巣くうものどもだ。無知なコトモには何もかもが恐怖の対象でしかなく、何度心が挫けそうになったことだろう。
けれど、それでも彼女はポロを探して、姉を探して。恐怖に怯えながらも夜の町を彷徨い歩いていく。
「だって……わたしの自業自得だから……わたしが全部悪かったから……」
もっとも、コトモがそんな怖い思いをすることになったのも、元を正せば彼女自身の不注意と心の弱さが原因であった。
コトモがポロが死んだという事実を素直に受け入れていれば、そもそもポロを死なせていなければ姉が夜の町に飛び出す理由もなかった筈だと。
「だから……これは罰なんです。よまわりさんに見張られるようになったのも……この左目も……」
「——!!」
そのため、コトモは自分自身を責め——その罪の証であると『左目』の眼帯を捲り上げた。
左目は眼球から潰されていた。痛々しい少女の容貌に猫娘も思わず息を呑む。
「その目は……よまわりさんが?」
猫娘はそれがよまわりさんの仕業によるものかと、僅かに怒りを滲ませながら問い掛ける。しかしその問いに、コトモははっきりと首を横に振った。
「ううん……これは違う。これは忘れられた神社の、ひとりぼっちな神様の仕業……」
「神様……?」
どうやらよまわりさん以外にも、姉妹に対して何かしら危害を加えようとした『神様』とやらがいたらしい。
その神様は山の奥の、トンネルの向こうに社を構える山の神様。昔から人間を生贄として求め、その証として片目を抉るんだとか。
その神様の生贄として選ばれたのか、あるいは神様に逆らって祟られたのか。コトモは左目を失い、その目は二度と光を見なくなった。
「その神様とよまわりさんって……実はとっても仲が悪いんです」
その山の神と、例のよまわりさんが敵対関係にあるらしく。
生贄の証をコトモに刻んだ山の神、そのコトモを渡すまいと彼女を見張るよまわりさん。
そういった両者の図式も、今のような状況を作り出した要因の一つであったかもしれない。
×
「……そうか。あの姉妹も……あの町の夜を駆け巡ったんじゃな。ハルちゃんのように……大切なものを探して……」
「そうですね、父さん……」
よまわりさんと遭遇した、翌日の正午。
太陽の光が真上から照りつける陽の光の中。ゲゲゲハウスでは目玉おやじや鬼太郎が猫娘の話を聞き、しみじみと考え込んでいた。
以前もあの町の夜と関わったことのある鬼太郎たちは、夜野田姉妹が経験した過酷な夜の話にハルという少女のことを思い返す。
幼い身でありながらいなくなった友達を探し、夜の町を駆け抜けた少女。そのハルと同じように、コトモも愛犬や姉を求めてあの町の夜を巡ったのだ。
大人ですら下手に歩けぬあの町の夜を、年端も行かない無力な少女がたった一人で。相当な恐怖、並々ならぬ勇気を振り絞る必要があったであろうことは想像に難くない。
残念ながら愛犬のポロは既に亡くなっていたが、トモコは無事だった。姉妹は夜を乗り越え、二人で日常への帰還を果たしたのだ。
「トモコさんの話によると……その事件から、コトモちゃんは私たちみたいな妖怪が日常的に見えるようになってしまったって……」
だが『夜』に深入りし過ぎた代償なのか。コトモは左目を奪われ、よまわりさんからも目を付けられるようになった。おまけに、コトモの左目は光を映さないだけではない。妖怪や幽霊が蠢く『真夜中の世界』を映すようになった。
今のように妖怪の存在が当然のように人々から認知される以前から、見える人間にしか『見えないもの』が、コトモには常に視認できるようになったというのだ。
『見えない』というのは不便に思えるかもしれないが、見えないおかげで保てる正気というものもある。あの町に蔓延るお化けたちなど、それこそ外見からしてもかなりキツいものが多い。
そんなお化けたちの姿を、コトモの左目は昼夜問わず映し続けているとのことだ。ただの人間が日常を怪異によって浸食される恐怖。それは鬼太郎たちのような妖怪では、共感することができない恐ろしさだろう。
コトモは、もう何年もそんな日々を過ごしているという。あの歳にしてあの落ち着きようも、それなら頷ける。
「あの子たち姉妹は、未だに……あの町の夜に生き方を縛られているのかもしれんな……」
「…………」
目玉おやじが心配そうに呟き、鬼太郎も表情を曇らせる。
あの町の夜に、たった一夜にして生活を一変させられてしまった夜野田姉妹。よまわりさんに見張られていることを含め、苦悩の日々は続いている。
それはあの町を離れ、東京に越して来た現在になっても変わらないのだろう。彼女たちが本当の意味で陽の光に照らされる日々が果たして来るのだろうかと、目玉おやじはその行く末を案じていた。
「……それで? どうするつもりよ?」
しかし、心配ばかりしていてもしょうがないと。ここで猫娘が話を当初の問題へと戻す。
「結局、よまわりさんのことは何も分からなかったけど……奴を止めないといけないことに変わりはないわよ?」
猫娘とて姉妹の境遇に思うところがないわけではないが、今は目の前の問題——よまわりさんへの対応が最優先であると意見を出す。
東京までコトモを追って来たあの正体不明の『何か』に、これ以上の被害を出させないためにも対処していかなければならない。
「うむ、そうじゃな……とはいえ、今のわしらにできることといえば……夜の見廻りを強化することくらいじゃが……」
目玉おやじも猫娘の意見には賛成だ。だが肝心のよまわりさんについて、彼らは碌に知ることができなかった。
一応、アレが出没する時間帯が夜だということは確実。夜に街中を見廻り、奴が姿を現すのを辛抱強く待つしかないだろう。
「みんなにも声を掛けておきましょう、父さん」
一応の対策として、鬼太郎は他の仲間たちにも応援を頼むことにする。見廻りの人数を増やせば、それだけよまわりさんに遭遇する確率も上がるだろう。
今のところ、できることはそのくらいだ。
今はただ——再びよまわりさんが出没するであろう『夜』が来るのを待つしかなかった。
そうして、夜は訪れる。
「ごめんね、まな! 遅くまで付き合わせちゃって……」
「ううん、わたしは平気!! 雅を一人で残すわけにもいかないしね!!」
一日の終わり、暗い夜道を二人の少女が歩いていた。
犬山まなと桃山雅だ。彼女たちとて、本当ならばこんなに辺りが暗くなるまで学校に残ってなどいたくなかったのだが。
「全く……学校側も、こんなときくらい委員会の仕事なんてやらせなくてもいいのに!!」
まながぷんぷんと怒った様子で、学校側の不手際への文句を口にする。
彼女たちに夜遅くまで残ることになった原因を作ったのは委員会だ。
雅が所属する、選挙管理委員会の会議が予想以上に長引いてしまったことにあった。まなはその委員会の所属ではなかったが、雅を一人で帰らせるわけにもいかないと彼女を待つことにしたのだ。
そうした理由もあり、今は二人だけで人気のない住宅地を並んで歩いていく。
「急いで帰らないと……じゃないと……」
「よまわりさんに連れてかれちゃう……かもしれない?」
「う、う~ん……どうだろう……」
二人は真っ暗な中、不気味な沈黙が続くのを嫌い常に言葉を交わすよう意識していた。
その会話の中で、自然と今日のお昼休みに同級生・夜野田コトモに聞かされた『よまわりさん』なるものの話題が出る。
よまわりさん。コトモが住んでいた地域で子供を攫う怪異として、人々から恐れられきた存在らしい。
コトモはまなには噂話程度の話しかしなかったが、それでも不思議と妙なリアリティを感じた。実際、今起きている失踪事件もそいつの仕業である可能性が0ではないのだ。そう考えると自然と身震いもしてくる。
「と、とにかく……早く帰ろう!!」
まなは込み上げてくる恐怖を何とか抑え込みながら、雅と一緒に帰宅への道を急いでいく。
本当によまわりさんとやらがいるというのならば、それと遭遇することがないよう心の中で祈りながら。
「……まな、本当にいいの? なんなら、うちのお父さんに送ってもらえるか頼んでみるけど……」
急いだ甲斐もあってか、何事もなく雅の家までは辿り着くことができた。だが帰宅ルートの関係上、ここからまなは自分の家まで一人で帰らなければならない。
雅は流石に心配だと、自分の父親にまなを送らせることを提案したのだが。
「大丈夫だよ!! 家までもうすぐそこだし!!」
まなは、その申し出を強がりの笑顔で断る。
ここからまなの家まで十分とかからない。この程度の距離であれば、仮によまわりさんとやらが現れたところで走って家まで逃げ込めばいいと。
このときのまなは、そのように甘い考えでいた。
「……なにも出てきませんように!」
一人になった途端、周囲の静けさが気になり始めたのか、まなは独り言を呟きながら歩いていく。
「家に帰ったら……TV見ないと!! 今日の晩御飯、何かな~!?」
少しでも気を紛らわせようと、色々と楽しいことを考えて恐怖を和らげようと試みる。
「…………なんだろう。この道って……こんなに長かったけ?」
だが意識すればするほど、かえって不安が募っていく。
普段から通う通学路が、いつもは全く気にならない夜道が、平然と一人で通り抜けられていた馴染みの住宅地が。まるで別世界のように感じられてしまうから不思議だ。
「…………怖い」
たった一言で表現できる、シンプルな感情がまなの心を支配していく。
幼い頃にも感じた闇夜という未知に対する畏怖。暗闇の向こう側から『何か』が飛び出してくるのではという不安が、まなの心を縛ろうとする。
「……!! は、早く……帰らないとね!!」
だがそれでも、彼女はここで立ち尽くしていても意味はないと。込み上げてくる恐怖心を必死に振り払い、気合いを入れ直すように力強い一歩を踏み出していく。
ところが、その一歩を踏み出した次の瞬間。
まなの耳に——シャラン、シャランと鈴の音のような金属音が響いてくる。
「……えっ? ……なに、この音?」
唐突に聞こえてきたその音に、まなは思わず立ち止まってしまった。歩みを止めた彼女の足元から——ゆっくりと真っ暗な『闇』が迫る。
まなはまだ気付いていない。続けて聞こえてきた、カツンカツンと杖を突く音に気を取られ、自分の足元にまで注意が行き届かなかったのだ。
地面からまなを呑み込まんと、足元の暗黒はさらなる広がりを見せる。
ところが、その闇が犬山まなの足に触れようとした——その刹那。
「——きゃあ!?」
『——!!』
まなと闇との間に青白い火花が散り、両者が反発するように弾かれた。まなは衝撃に尻もちをついてしまうが、広がっていた闇も大きくのけ反った。
すると、その闇の奥から——。
『——な、なにっ!?』
「えっ……?」
くぐもった声が聞こえてきた。年老いた男性の確かな意志で呟かれたその声は、忌々しげに舌打ちらしき音を鳴らす。
『ちっ……結界とは……なかなか味な真似をしてくれやすね……!?』
その声の主は、一度の失敗にもめげずに暗闇を操作。その闇でまなを呑み込もうと試みる。しかし何度接触しようとも、闇はまなに触れることができずに退けられていく。
「なになに!? 何が起きて……!?」
状況についていけず、混乱気味のまなは地面にへたり込んだままだ。すると、彼女は懐から何かが光を放っていることに気付き、それを取り出した。
「これって……お父さんがくれた、お守り……?」
光を放つものの正体。それはまなが父親の裕一から、肌身離さず持っているように言われていた『お守り』だった。
まなは知らぬことだが、そのお守りは鬼太郎が高名な陰陽師に頼み、彼女の手に渡るように用意してもらったものだ。お守りが結界としての役割を果たし、まなを害そうとする妖怪を、それが使役している闇を跳ね除けているのだ。
『くっ……なんの、これしき!!』
しかし、声の主はなんとしてでも結界を突破しようと、懲りずに闇をまなに向かって伸ばす。高名な陰陽師渾身のお守り、そう簡単に壊れる結界ではないのだが。
「い、いやっ!! なんで……なんだっていうのよ!?」
だが、その行動は開かない扉を外側からガンガンと打ちつけられているようで、まなにプレッシャーを与える。突然のことで頭も回らず、彼女はその場から動けないでいた。
そんなときだ。
「——大丈夫、落ち着いて」
「——え……?」
あと少しで恐慌状態に陥りそうになったまなに、優しく声を掛けるものがいた。どこか聞き覚えのある女の子の声だ。彼女はまなの側に駆け寄るや、対面する暗闇に向かって懐中電灯の光を照射する。
『——ぐむっ!?』
いきなり、しかも最大光量で浴びせられたライトの光に、一瞬とはいえ闇とそれを操る声の主が怯んだ様子を見せる。
「こっち……走って!!」
「う、うん!!」
その隙を巧みに突き、少女はまなの手を引いて彼女を立ち上がらせた。そして、一気に全速力でその場から走り出していく。
「はぁはぁ……!!」
「まだだよ、振り返らないで……」
無我夢中で走るまな。一緒に走っている少女は平静な声音だが、息そのものは上がっている。苦しそうにしているのは少女も同じ。
それでも今は立ち止まるわけにはいかないと、少女はまなを叱咤しながら自らも足を動かしていく。
「こっち」
「ああ!?」
ややあって、急な進路変更。見通しのいい道路から、目に付いたアパートの敷地内へと移動。
「静かに……じっとしてて」
「……!」
そこの外階段を遮蔽物にして身を隠すや、静かにという少女からのジェスチャーがあった。
まなは慌てて両手で口元を押さえ込み。呼吸すら、心臓の鼓動すら止める思いで息を潜める。
「………………大丈夫、もう行ったみたいだから」
「ぷはぁ! はぁはぁ……」
数十秒ほど経過したところで、少女からもういいという許しが出た。どうやら脅威は去ったようだと、まなは口から手を離して新鮮な空気を肺に取り込んでいく。
未だに心臓がバクバクと高鳴っているが、なんとか危機を乗り越えたことようやく一息入れることができた。
「怪我とかない、犬山さん?」
「はぁ……はあ…………えっ!?」
すると、呼吸を整えているまなに向かって、少女はその名前を当たり前のように呼んでいた。
反射的に顔を上げるまな。その少女は見覚えのある赤いリボンとカチューシャで髪を纏めていた。さらに特徴的だったのは——左目の眼帯だ。
「……って、夜野田さん!?」
そう、まなを助けたのは夜野田コトモだった。
まなや香凛に夜は危険だと。遅くまで出歩いていると『よまわりさんに連れて行かれてしまう』と言っていた本人が、夜の街に繰り出し、まなの危機を救ったのである。
「犬山さん……どうして、こんな夜遅くに出歩いてるの?」
自分のことをそっちのけで、コトモはまなにどうしてと心底不思議そうに尋ねていた。
×
「やはりなんの手掛かりもなしでは、ちと厳しいかのう……」
「そうですね、父さん。せめてどこに現れるか、ある程度範囲を絞り込めればいいんですが……」
暗い夜道、鬼太郎と目玉おやじは周囲を警戒しながら探索を行なっていた。今宵も現れるかもしれないよまわりさんの魔の手から子供たちを守るため、これ以上犠牲者を増やさないためにもしっかりと目を光らせていく。
だがいかんせん、見て廻らなければならない範囲が広すぎる。この東京の街、未成年が通りそうな人気のない夜道など探せばいくらでもある。その全てを見張るなど、仲間たちの手を借りたとしてもカバーしきれるものではない。
このままでは徒労に終わるだけかもしれない。そう思いながらも、万が一を考えて見廻は続けていかなければならない鬼太郎たち。
すると、ほどなくして動きがあった。
「鬼太郎!!」
「猫娘? 何か見つかっ……て、トモコさん?」
別行動をとっていた猫娘が血相を変え、鬼太郎の元へと駆け込んできたのだ。彼女の隣には——夜野田トモコの姿もあった。
「何故外に? 妹さんと一緒に、アパートで待っていてくれと言っておいたじゃろうに……」
これに目玉おやじが目を丸くする。
今回、夜の見廻は鬼太郎たちだけで行うことになっている。夜野田姉妹が夜道を歩いていたら、それこそよまわりさんに連れていかれてしまうと。彼女たちには家で待っているよう、お願いしていた筈だ。
それがどうして猫娘と一緒にいるのかと。疑問を抱く鬼太郎たちだったが、そんな彼らの戸惑いもお構いなしにトモコは叫んでいた。
「き、鬼太郎さん!! コトモが……コトモが家からいなくなってるんです!!」
「!!」
一緒にいる筈の妹のコトモが家のどこにもいないと、そう訴える彼女の顔面は蒼白だった。
「まさか……よまわりさんに!?」
これに鬼太郎は真っ先によまわりさんの仕業かと疑いを持つ。
昨日も夜野田家の玄関に、何の前触れもなく姿を現した奴のことだ。またも家の中に侵入し、コトモを連れ去っていった可能性がある。
「アパートの見張りは!? 確か……子泣き爺が護衛で付いていた筈じゃぞ!?」
しかしそうならないため、用心で仲間の一人・子泣き爺を護衛として残していた筈だと。彼が何をしていたのか目玉おやじが問う。
すると、その疑問に対しては猫娘が微妙な表情で答える。
「…………酔っ払って寝てんのよ……子泣き爺……」
赤ん坊のように泣くことで石となり、どんな敵とでも果敢に立ち向かってくれる子泣き爺。その実力を頼りにしている鬼太郎たちだったが、一方で彼の酒癖の悪さに頭を抱えることもある。
どうやら今日は特に酔いのまわりが早かったらしく、早々に酔い潰れて眠ってしまったらしい。
「……………………」
これには、流石の鬼太郎も呆れた表情をするしかなかった。
「それが……あの子の外出用の持ち物が一式なくなっていました。あの子……自分の意思で家を出ていったみたいなんです……」
しかし、子泣き爺だけが問題ではなかった。
トモコの話によると妹のカバンや懐中電灯、お出かけ用の衣服などが見当たらないとのこと。どうやらコトモは連れ去られたのではなく、自らの意思でアパートの外に飛び出しまったらしい。
「実はあの子……あの事件があった後も、時々家を抜け出して……夜の町を探索することがあったんです……」
「何じゃと!?」
これにトモコは申し訳なさそうに、妹には夜の町に出歩く『癖』があったことを正直に告白する。これには目玉おやじも驚くしかない。
例の事件から左目を失い、よまわりさんから見張られるようになったあの後からも、コトモは夜の町に一人で繰り出すことが度々あったというのだ。
トモコが何度も注意し、中学生になってからはパッタリと止めるようになったらしいのだが、その悪癖がここに来て再発してしまったのか。
「とにかく探しましょう。よまわりさんに見つかるよりも……先に!」
何故そんな危険な真似を、しかもこのタイミングでするのか。鬼太郎としても疑問しかなかったが、だからといって放置するわけにもいかない。
家を飛び出してしまったコトモを探し、さらに一向は夜の街へと足を踏み入れていく。
「そっか……桃山さんを家まで送ってたんだね。その後で……今のやつに襲われたの?」
「う、うん……夜野田さんは、どうして外に? よまわりさんが危ないって言ってたのに?」
未だ物陰に隠れ続けながら、コトモとまなが互いに事情を話し合う。
まなは雅を一人で帰らせないため、仕方なく遅くまで学校に残り、その帰り道で先ほどの『謎の闇』に襲われてしまった。
だがコトモは、よまわりさんに連れて行かれてしまうから早く帰ったほうがいいと、香凛にもそう注意していた筈の彼女がどうして出歩いているのか。
彼女の方こそよまわりさんが怖くないのかと、まなはコトモの表情を窺う。
「探さないとと思って。もしもよまわりさんの仕業だとしたら……わたしからお願いして、返してもらわなきゃと思ったから……」
「……?」
だがパッと見、コトモが恐ろしさに震えている様子はない。それどころか、彼女は毅然とした態度でよまわりさんに会わなければならないようなことを口にする。
「けど、違ったみたい。香凛ちゃんを……皆を連れ去ってたのは……よまわりさんじゃなかったんだ!」
さらにコトモはその表情を険しいものへと変え、先ほどの闇に対して怒りを滲ませながら呟く。
「えっ……? 今のが……よまわりさんじゃないの!?」
コトモの言葉に、まながキョトンとなった。
よまわりさんの姿形を知らなかったまなは、さっきも闇の奥から聞こえてきた声が例のよまわりさんだと思い込んでいた。
あの闇が自分を連れ去ろうとし、きっと他の少年少女を連れ去った張本人だと。
「ううん、あれはよまわりさんじゃない。わたしも知らない……別の何かだよ」
しかし、コトモは今のはよまわりさんではないと首を振る。
あの闇は子供たちの失踪事件の犯人かもしれないだろうが、少なくともアレはよまわりさんではない。いったい何者なのか、その正体はコトモにも分からない。
「……犬山さん、静かに!!」
「——!!」
と、そこまで話したところだ。コトモは咄嗟に、まなに静かになるよう小さな声で警告を促した。
まなは再び息を呑む。注意深く辺りを観察すると——遠目にだが、先ほどの闇が蠢いているのが見えた。
『やれやれ、どこへ隠れたのか。さっさと諦めて出てきてくれませんかね……』
くぐもった老人の声も聞こえてくる。まだまなたちのことを諦めていないのか、彼女たちを見つけ出そうと周囲を探り回っているようだ。
「どうしよう! このままじゃ……」
今はまだ大丈夫だが、このままではいずれ見つかってしまう。すぐそこまで確実に迫っている魔の手に、まなが戦々恐々と肩を震わせる。
「……わたしに任せて、犬山さん」
「え……?」
すると、そんなまなの姿を見かねたのか。コトモはまなを安心させるよう、その肩に手を置いた。
「わたしがあいつを引きつけるから……その隙に、犬山さんは真っ直ぐ家まで帰るの……いい?」
「そ、そんな!? そんなの……」
コトモは自分が囮になると。その間にまなに安全な場所まで逃げ込めと言い出したのだ。流石にそれはダメだと、まなはコトモの提案を拒否しようとする。
「わたしは大丈夫だから、心配しないで……行って!」
だが、まなの返事を聞く前にコトモは飛び出していた。その際、彼女は地面に転がっていた小石を一つ拾い上げ、それを明後日の方角へと投げていく。
『むっ!?』
一瞬、闇を操る声の主が石の転がった方向へと意識を向ける。しかしそれはブラフに過ぎず、そこには勿論誰もいない。
「残念……こっちだよ!」
相手が小石に気を取られているうちに、コトモは走った。そこからさらに注意を引きつけるため、軽く挑発の言葉も投げ掛けていく。
『おのれ……逃がしはしませんよ!!』
小石などに注意を逸らされた憤りもあってか、闇はムキになって迷わずコトモを追いかけた。コトモも相手の意識が自分に集中したことを感じ取ったのか、すぐにでもその場から駆け出していく。
作戦通り自身が囮となることで——コトモはまなを助けたのだ。
「ど、どうしよう!? な、なんとかしないと……」
コトモに救われる形でその場に取り残された犬山まな。既にその場からはコトモも、蠢く闇の気配もなくなっていた。
まな以外誰もいない夜道で、彼女は暫しの間立ち尽くす。
「け、携帯……連絡しないと!!」
だがすぐに我に帰ったまなは、早く携帯で連絡を入れなければと。ほとんど反射的に懐からスマホを取り出していた。
そのスマホから、頼りになる『誰か』に助けを求めなければと思ったのだろう。
「…………連絡? ……誰に? 誰に……連絡すればいいの……?」
ところが、そこでまなの思考はフリーズする。
スマホを手に取ったはいいが、こんなとき誰に助けを求めればいいかそれが分からなかったのだ。
「お父さん? お母さん? それとも……やっぱり警察?」
まだ中学生であるためか、親の存在が真っ先に頭に浮かび上がるが、それは両親をいたずらに危険に晒すだけだ。
ならば公的機関に頼るべきかとも思ったが、それも違うような気がする。
「……誰か? 誰かって……誰だったけ……? あれ、わたし……こんなとき、どうしてたっけ……」
こんなとき、頼りになる誰かがいる筈だと彼女の心が訴えていたような気がした。
だが携帯の履歴をいくら調べたところで、そんな相手は見つかる筈ない。
余談だが、まなが現在所持しているスマホは最近になって買い替えたものだ。
まなの記憶が失われる以前——あの戦争の騒動の折、彼女は前に使っていたスマホを紛失しまっていた。
故にそのスマホは中身のデータを引き継いでいない。正真正銘、まっさらな状態を一から作り直したものだ。
だから、家族や友人の名前を新しく登録し直した電話帳にも——『頼りになる筈の誰か』の名前が残されていないのが道理。
「……なんで……こんな気持ちに……」
何かが足りない、でも何が足りないのかが分からない。
こんな状況ながらも、まなは欠けてしまった『何か』に人知れず涙を流していた。
「——やれやれ、今日は碌な食い物が残ってねぇな。これも不景気のせいかね……はぁ~」
その日、薄暗い裏路地できったない布切れを纏った男が残飯目当てでゴミを漁っていた。
他の誰でもない、ねずみ男である。
いつもの如く金儲けに走ろうとし、そして失敗した。
無一文の素寒貧。ゲゲゲの森に帰るのもばつが悪いタイミングだったため、人間社会の端っこで飢えをしのごうとゴソゴソと食えそうなもの、使えそうなものがないかとゴミを物色していく。
「……ん?」
「はぁ、はぁ……!」
そんな彼の視界に、ふと必死に夜道を駆け抜けていく少女の姿が飛び込んできた。
数メートル先の暗がりであったため、詳しい容姿などは見えなかった。だが一瞬見えた、左目の眼帯が妙に印象に残る少女だった。
「うおっ!? なんだありゃ!?」
するとその少女のすぐ後を、地面を這うように蠢く『闇』があった。その闇もまた、一心不乱な様子で少女を追いかけていく。
距離があったこともあり、両方ともねずみ男のことには一切気づかず、一瞬で走り去ってしまう。
「おうおう……おっかないね~。くわばらくわばら……」
なんだか緊迫したような状況。もっとも、それを目撃したところで助けに行こうなどとは思わないのがねずみ男である。
触らぬ神に祟りなしと、何も見なかったことにしてゴミ漁りを再開していく。
ところが——。
「——待ちやがれ、小娘!!」
「——!?」
続け様、聞こえてきた怒鳴り声に思わず顔を上げた。
少女とそれを追いかける蠢く闇。そのさらに後を——大きな人型の『何か』が駆け抜けていたのだ。
その怒声の内容から察するに、あの人型も闇と一緒になって少女を追いかけているようだ。
乱暴そうな、思慮が浅そうな若者の声。
その声もそうだったが、一瞬見えたそのシルエットに——ねずみ男は目を剥く。
「今のは……まさか!?」
それは、ねずみ男が残飯漁りの手を止めてしまうのに十分なほど。
彼にとっても、見覚えのある顔であった。
人物紹介
山の神
今回は登場しませんが一応紹介。原作におけるラスボス。
『深夜廻』にも山の神が登場しますが、あれとは違う別の神様。
コトモの左目を奪った張本人。ほんと……あの町の神様は碌なことをしない。
さらに小説版だと、コトモたちの母親を殺害した犯人だと判明しています。
よまわりさんとは明確に敵対しており、顔を合わせるやコトモそっちのけで喧嘩を始める。
今回の黒幕
話を読んでもらえば分かると思いますが、今回はよまわりさんが子供たちを連れ去った犯人ではありません。
今回の犯人の声には……二種類あります。
年老いた老人の声に、頭が悪そうな若者の声。
片方はゲスト枠ですが、もう片方は既存のキャラクターです。
次回でその正体が判明しますので、色々と予想してみてください。
前書きでも述べましたが、『夜廻』のクロスに関しては何とか今年中に。
そして来年、新年一発目にやるクロスも既に決めていますので次回予告もお楽しみに!