真目譜理子とサーカス世界   作:tres

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15.「Message」

(勝った…)

 

===おめでとう。またしても大逆転勝利だ。キミは本当にすごいね。

 

「ありがとう…」

 

(これで…帰れるんだよね…)

 

「おめでとうございます。見事な逆転劇を演じられましたね」

 

「…」

 

「まさかこの私をも退けるとは…恐れ入りました。お嬢様は私の想定を越える程の力の持ち主ということなのでしょう」

 

 

 

 

 

「増々手放したくなくなりましたよ。その力の行く末を見届けたいものです」

 

「!…そんな、あなたを倒したら帰してくれるってーーー」

 

(っ…!また光が…)

 

 

 

 

 

===消えちゃったね。

 

「帰してくれるって…元の世界に戻してくれるって言ったのに…」

 

===そんな暗い顔しないで。

 

「だって…!手品師を倒したのに帰れないなんてそんなの…!」

 

 

 

===倒してないんじゃないかな。

 

「…えっ?」

 

===思い出してごらん。

 

(どういうこと…?思い出すって何をーーー)

 

 

 

 

 

<<<===ここから脱出する方法はひとつ。手品師を倒すこと。>>>

 

 

 

(あっ、そっか…!案内人さん自身が手品師を倒せば帰れるって言ってたんだ)

 

(じゃあまだ倒してないってこと?デュエルで勝ったのに…?)

 

「ねえ、案内人さん。どうすれば手品師を倒せるの…?」

 

===フフフ、キミが知らないわけないでしょ。

 

「…デュエルで勝ったのに、倒したことになってないから聞いてるんだけど…?」

 

===じゃあそれが答えだよ。

 

(もう、どういうことなの…?それじゃまるで、わたしがさっき倒した相手が手品師じゃないみたいにーーー)

 

 

 

 

 

「…あっ!」

 

(もしかして手品師って複数いるの…?あのさっきのクラウンって人以外にも…)

 

(だとしたら、まだまだデュエルで勝ち続けなきゃいけないってこと…?そんなの…無理…!)

 

===心配しないで。手品師はひとりしかいないよ。

 

「えっ…?」

 

===ひとりだけじゃない、って考えてたでしょ。

 

「…うん」

 

===フフフ、もしそうだったら手品師たち、って言い方をしたかもね。

 

「…」

 

(手品師はひとり…そのひとりは既に倒した…でも案内人さんの言葉が確かなら、まだ倒してない…)

 

(一体どういうこと…?何か情報が抜け落ちてたりーーー)

 

 

 

 

 

<<<(間違いない…この人が手品師…!)>>>

 

 

 

<<<===じゃあそれが答えだよ。>>>

 

 

 

 

 

(!…そっか!)

 

 

 

「偽者…!」

 

(うん…それなら合点がいく…!そもそもクラウンって人自体が自分のことを手品師だなんて1回も言ってない…わたしの思い込み…!)

 

===偽者だとしたら本物がいるよね。

 

「…そうね」

 

(また自分で探せってことかな…やっぱり舞台の方?いや、今回も何か降ってきたり…)

 

「うん…?」

 

===どうしたの?

 

 

 

「…カードが張り付いてる。裏向きで1枚…」

 

===本当だ。デュエルディスクの丸まった部分にまた張り付いてるね。

 

(さっきまでは無かった…いつから張り付いてたんだろう…?)

 

===剥がしてみる?ペリペリって。

 

「…制限時間は?」

 

===今回は無いみたいだね。

 

「そう…じゃあちょっと心の準備が整うまで待って」

 

===ご自由にどうぞ。

 

 

 

(このカードをめくったら、きっと本物の手品師が現れる…)

 

(ここまで勝ってきた…どんなピンチも逆転してきた…!)

 

(次が最後の1戦…これまで通り最後まで諦めずに、全力で戦えば勝てるはず…!)

 

(準備はいい?わたし…)

 

 

 

「ふう…」

 

(うん、行こう…!)

 

===フフフ、準備が整ったみたいだね。さて何が描かれているのかな。

 

 

 

 

 

「!…これは」

 

 

 

===シルクハットに仮面にスーツ。まさについさっきキミが倒した相手が描かれてるね。

 

「うん…」

 

(描かれてるというよりは、写真みたい…写ってるのは間違いなく手品師、いやクラウンそのもの…でも何で?)

 

(というか戦った相手がカードに描かれてるって、あのトランプの4枚とはむしろ逆だよね…)

 

(しかも光る気配がないし…いや、また現れてもそれは困るんだけど)

 

「…あれ?」

 

===どうしたの?

 

「カードの下部分に小さく何か書かれてる」

 

===本当だ、文章が書かれてるね。ボクからはちょっと見えないからキミに読んで欲しいな。

 

「うん、えっと…」

 

 

 

 

 

5連勝おめでとう。ここまで勝ち進んだ君には僕から惜しみない拍手と、ちょっとしたメッセージを贈ってあげよう。

僕は何にでもなれる存在だ。残念ながら君が剣を貫いたのは空箱。

真なる僕を倒さない限り、本当の意味で僕を倒したことにならない。

もし僕の正体を当てることができたなら僕に向かってこのカードをセットしたデュエルディスクを構えてごらん。相手になってあげる。

特別にひとつ手品のタネを解き明かすヒントをあげよう。スケールが同じものは全て繋がる。あとは余白を埋める独り言。

赤のPゾーンには王冠が欲しいな。そしたら青のPゾーンには僕を置こう。違いはたった1個だけ。スケールも何もかも同じ。

あ、スケールといえばこのカードも同じだったね。そういえばテントの中に同じスケールがもう1人いたような。

 

 

 

 

 

「…」

 

===どういう意味だろうね。

 

「さあね…でもさっきのクラウンとは違うこれを書いた本物の手品師を探し当てないと倒せない、っていうのは理解した」

 

===文章通りならそうだね。

 

(何が手品のタネを解き明かすヒントよ…こんな謎解きゲームみたいなこと…!)

 

(…だめ、冷静にならなきゃ…頭に血が上っちゃったら、解けなくなる)

 

(それに手品師はたぶん今もどこかでわたしを見ながら、謎解きに右往左往するわたしを心待ちにしてるはず…)

 

(わたしの反応を楽しみながら高みの見物かと思うとむかつくけど…感情はなるべく抑えて、自分のペースで解いていかなきゃね)


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