(空箱っていうのはさっきわたしが倒したクラウンのこと。このメッセージの内容から、既に手品師本体はどこか別の場所…)
(とにかくその本体を見つけないと…倒すこともできないし)
(居場所を突き止める唯一のヒントは、スケールが同じものは全て繋がる、の一文だけ…いや)
(どう考えてもその次の2行もヒントだよね…怪しすぎる。絶対ただの独り言なんかじゃない)
(そもそもスケールって何…?何を意味してるの…?)
「…」
===どう?何かわかりそう?
「…今のところは、全く」
(ちょっと舞台の方覗いてみよう)
(…うん、何も変わってないよね…手がかりも特になさそう)
===何か見つけられたかい?
「いや…」
===そっか。
(やっぱりカードに書かれたこのメッセージだけが手がかりかな…)
「…」
(3回くらい読み返してるけど…進まない)
(何か見落としてる?それとも考え方がだめ…?一度頭をリセットしてもう1回…)
(「赤のPゾーンには王冠が欲しいな。そしたら青のPゾーンには僕を置こう」)
(赤のPゾーン、王冠…)
(…やっぱりだめ、浮かばない)
(そもそも何で王冠なの?王冠って西洋の王様がかぶる冠でしょ?それにどういう意味がーーー)
「!…」
(あれ…?これって、ただの偶然…?)
(「青のPゾーンには僕」…「違いはたった1個だけ」…)
(うん、偶然かな…だって違いが1個じゃなくて、0だから全く同じだし…)
(それに王冠が赤のPゾーンに欲しい理由もーーー)
(…いや、ちょっと待って…!赤のPゾーンの位置は…)
(ってことは頭文字がそれを意味するから…)
(!…そっか、そうだとしたら確かに違いは1個だ…!)
(うん、やっと進んだ感じ…!)
(だけどそれが何を意味してるかは、よくわからないまま…)
(「スケールも何もかも同じ」…うん、確かにメッセージの通り、1個を除いて同じ…スケールに限れば後半の2つも、さらに同じ)
(だからこのメッセージにおけるスケールが何を意味してるかがわかれば、一気に答えが近付く…!ような気がする)
===進展有り、って顔だね。
「うん…でも答えまでは、まだ遠そう」
(2行目の独り言が全く解けてないからね…ただ、方向性は見えてきた)
(「スケールといえばこのカードも同じ」…このカードっていうのは今わたしが持ってる手品師と文章が書かれたこのカードのこと)
(で、このカードは、違いがたった1個だけの前の2つとスケールが同じ…つまり何か共通点があるってこと)
(そしてその共通点は、テントの中にいるもう1人にもある。何故ならそれも同じスケールだから)
(ってことはそれらに共通する何かを見つけられれば、そのまま答えへと繋がるはず…!)
(…問題は共通点と成り得るものが多すぎること。あの2つはほぼ同じようなものだし…)
(だからその共通点を絞るためにも、まずこのカードが何なのかをはっきりさせないと…!)
(テントの中にいるもう1人の方は、ぼんやりとしすぎててこのカード以上に正体不明だし…うん、このカード1択だ)
(そもそもこのカードって何だろう…1回おさらい)
(写ってるのはクラウンこと偽者の手品師。メッセージを書いたのは本物の手品師…それ以外は空白。裏面は見慣れたデュエルのカード)
(トランプの4枚と同じように、このカードもデュエルディスクに張り付いてた。出現したのはおそらくクラウンとのデュエルが終わってから)
(5枚目のこれも裏面は同じなんだけど…対戦した相手が写ってるし、光らないし、このメッセージだしでこれまでと全然違うわけで…)
(はぁ…最初からデュエルディスクに張り付いてた4枚はトランプのスートだったのにこのカードはーーー)
「!…」
(あっ…!何で気付かなかったんだろ…)
(存在するじゃないの…!何にでもなれる5つ目が…!)
(もしそうだと仮定すると共通点は…)
(…うん、絞れた、というかほぼ確定かな。でも肝心のもう1人が掴めない…)
(だって1人だけじゃないし…どっちも違うような気がする)
(もしかして、わたしがまだ出会ってない人…?同じスケールのもう1人って…)
(…舞台とか客席の方には行けるのかな?案内人さんに聞いてーーー)
<<<===ボクは案内人、ここのガイドさ。>>>
「ああっ!」
===どうしたの?
「解けた…」
===本当かい?すごいね。
(やっと見つけた…あとは)
===フフフ、舞台が騒がしくなりそうだ。
カーテンを勢いよく開けて舞台に上がると、パフォーマーたちは演技を中断した。
突然の乱入にざわつくかと思ったけど、誰ひとり何も喋らない。まるで時が止まったみたいに静まり返ったまま。
そんな状況の中、わたしはメッセージの贈り主…
さっきは居なかったピエロに向かってデュエルディスクを構えた。
「ピエロ、あなたの正体は…」
「偽者の手品師であり、クラウンであり」
「真なる僕こと本物の手品師で」
「わたしを最初からずっと見ていた案内人だ!」
わたしがそう叫ぶと、デュエルディスクにセットしておいたクラウンのカードが眩い光を放ち始めた。
「うっ…!」
光が収まったのを確認しながら、ゆっくりと目を開ける。
その瞬間、前方からパチパチパチ、という乾いた音が聞こえてきた。
「…!」
いつの間にかわたしの前に立っていたピエロが、わたしに向けて拍手を送る。
「フフフ、大正解だよ。譜理子ちゃん」
そして聞き慣れた笑いと共に嬉しそうな声を上げた。