真目譜理子とサーカス世界   作:tres

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17.「Meeting again」

「キミならきっと辿り着けると思っていたよ」

 

「…早く構えて」

 

「まあまあ焦らずに。キミがどのようにしてボクのメッセージを解き明かしたのか、是非とも聞かせて欲しいな」

 

「…」

 

ピエロはわたしの返答を待つ。デュエルディスクを構える気配は一向に無い。

 

どうやら話さないと先に進まないらしい。わたしはじれったい気持ちを抑えながら話すことにした。

 

 

 

 

 

「スケールが同じものは全て繋がる。唯一のヒントはこの一文」

 

「だけど下2行の余白を埋める独り言があからさまに怪しい。間違いなくこれもヒント」

 

「そう思ってわたしは何度も読み返しながら解いていった」

 

 

 

「赤のPゾーンには王冠。青のPゾーンには僕…当初は何を言ってるのかさっぱりわからなかった」

 

「Pゾーンは何を意味してるのか、何故王冠なのか、どうして僕が置けるのか…」

 

「でも王冠という単語の意味を考えた時、ふと思い浮かんだ」

 

 

 

 

 

「王冠という意味の英単語、クラウン(CROWN)が」

 

「思い浮かんだ時は偶然かと思った。たまたま手品師の名前と一致したのかと。どちらもクラウンだから、たった1個の違いも無いし…ね」

 

「それに王冠が赤のPゾーンに欲しい理由もわからない…って考えながらデュエルディスクの赤のPゾーンを見た瞬間、パッと閃いたの」

 

 

 

 

 

「別のクラウンをね。クラウンはカタカナだと1種類の表記しかないけど、英語だといくつか種類があるんじゃないかって…わたしが知らないだけで」

 

「クラウンという4文字だけでも、クはcかk、ラもlかr、ウだってuとかwとか…カタカナで表した音が一緒でも英語での綴りが異なる単語は、いくらでもあるから」

 

「だけどただ他のクラウンの可能性をあげてたらきりがない。ましてやそのクラウンは青のPゾーンの僕だから固有名詞だし…」

 

「だからここで重要なのは2つ。違いはたった1個ということと、赤のPゾーンがどこに位置してるかということ」

 

「Pゾーンの位置は言うまでもなく、プレイヤーから見て青が左で赤が右。そのことを踏まえて王冠と同じように、左右をそれぞれ英語に変換すると…」

 

 

 

「左、LEFT…右、RIGHT。頭文字はそれぞれLとR。英語はその1文字でも左右を表す」

 

「つまり右の赤のPゾーンにRのCROWNを置くなら、必然的に左の青のPゾーンにはLのCLOWN」

 

「CROWNとCLOWN。違いはたった1個だけでスケールも何もかも同じ。ここまでが1行目の独り言」

 

 

 

「なるほど。そのように推理していったんだね」

 

「けれどそれ自体は何の意味も持たないよね?LとRも一見正しい推理のように思えるけど、仮定にしか過ぎないでしょ?」

 

 

 

「そうね…この時点では何も確定していない。でも2行目の独り言を解く材料にはなった」

 

「2つのクラウン、このカード、テントの中にいるもう1人…全てスケールが同じ、つまり共通点がある」

 

「ただCROWNとCLOWNじゃ共通点が多すぎる。だから共通点を絞るために、このカードが何なのかをはっきりさせる必要があった」

 

「デュエルディスクに張り付いていた5枚目のこのカード。少し悩んだけど、これまでの4枚がトランプのスートだったことを思い返したらすぐに気付いた」

 

 

 

 

 

「何にでもなれるトランプのカード、ジョーカーの存在に」

 

「ジョーカーは元々英語でアルファベットにするとJOKER。これを含めると共通点はかなり絞られる」

 

「Oの文字が入る単語、始まりと終わりが子音の単語、そして5文字の単語…思い付いたのはこの3つ」

 

「そのうちスケールが同じという言葉の意味を考えたら、残る候補は5文字の単語、の1つだけ」

 

「だってスケールは数字だから、スケールが同じってことは数字が同じって意味になるでしょ?」

 

「これで共通点はほぼ確定。もう1人の正体は、英語のアルファベットにすると5文字の単語になる存在」

 

 

 

「わたしがここで目覚めてから出会った人たちの中だと、スペードとハートの2人がどっちもアルファベットで5文字」

 

「でもどっちも違う気がした。1人じゃないし、そもそもその名前はわたしが勝手につけたものだから…」

 

「もしかしたらまだ出会ってないのかも、って思って舞台や客席に入っていいか案内人さんに聞こうとしたその時」

 

 

 

 

 

「突然降ってきたように案内人さんの言葉を思い出したの」

 

 

 

 

 

「ボクは案内人、ここのガイド…」

 

 

 

 

 

「ああっ!って、つい声に出しちゃった。もう1人の正体が判明したこともそうだけど、無意識に案内人さんを出会った人にカウントしてなかったことにも驚いてね」

 

 

 

 

 

「ガイドをアルファベットにすると、GUIDEで5文字」

 

 

 

 

 

「この瞬間、全てが繋がった」

 

 

 

「スケールが同じものは全て繋がるというヒントから」

 

 

 

 

 

「CLOWN(本物の手品師)=JOKER(偽者の手品師)=GUIDE(案内人)」

 

 

 

 

 

「が成立。ここまでが手品のタネを解き明かした経緯」

 

 

 

「なるほど。豊かな想像力を持つだけにとどまらず、優れた発想力にこの状況に置いての抜け目の無さと冷静さ、キミは聡明だね」

 

「だけどその推理に1つ疑問点。どうしてピエロがボクだとわかったのかな?」

 

「舞台にいるパフォーマーはあなたを入れて5人。あなたを除く4人のパフォーマーたちはそれぞれトランプの人たちが使ってた切り札と同じ姿をしてた」

 

「パフォーマーたちがトランプのスートの象徴的存在なら、唯一残ったピエロがジョーカーなのは明らか」

 

「そうだね。途中キミは舞台の方に行って確認してたよね。まあその時ボクは分身を残して舞台から消えてたけど」

 

(分身…あの偽者の手品師は分身だったんだ)

 

「でも意外だったな。キミのことだからクラウンって名前の時点でピエロと関係があることに気付いてる、って思ってた」

 

「…どういうこと?」

 

「やっぱりキミはCLOWNの意味を知らないようだね」

 

「知らない…意味あるの?」

 

「さあ、どういう意味だろうね。帰ったら調べてみるといいかもね」

 

「…」

 

「フフフ、それにしても」

 

「…なに?」

 

 

 

「ホリゾンタル(HORIZONTAL)とヴァーティカル(VERTICAL)を知っててCLOWNを知らなかったとはね、ちょっと予想外だったよ」

 

「…だからどういう意味なの?」

 

「サーカス好きなら知っておいて欲しかったな。そしたらもっと早く辿り着いたかもしれなかったのにさ」

 

「…教える気がないなら、もう意味は聞かない」

 

「いい心掛けだね。まあ、それはさておき」

 

「…?」

 

 

 

 

 

~~~そう。そっちが本体だったってわけね。

 

「!?」

 

『アイリス…!?』

 

~~~やっとアナタと話せたわ。

 

『何かあったの…?急に話せなくなって…心配した』

 

~~~ちょっと面倒なことになってね。でももう大丈夫よ!アタシなら心配いらないわ!

 

『そっか…!良かった』

 

「フフフ、再会したようだね。では改めて」

 

 

 

「ようこそ、手品師のテントへ。ボクの名はクラウン。質問があるなら受け付けよう」

 

「…ちゃんと答えてくれる?」

 

「もちろん。ボクに答えられる質問なら何でも答えてあげるよ。ここまで辿り着いたキミへのご褒美さ」

 

「…」

 

(何がご褒美よ…)

 

「それにお客さんも見てるからね」

 

「!…ねえ、これまで一体何人もの人を連れてきたの…?」

 

「数えたことないからわかんないや。3桁は超えてるんじゃないかな」

 

「っ…!何のために連れてくるの…!?こんなところに閉じ込めて…!わたしたちに何か恨みでもあるの!?」

 

「個人的な恨みだけでこんなに多くの人を連れてくると思うかい?それにもし本当に恨みがあったとしたら、こんな回りくどい方法は取らないと思うなあ」

 

「…じゃあ何のために?」

 

「このテントを維持するためだよ。サーカス世界において唯一このテントだけがボクの生きられる場所なんだ」

 

「でも困ったことにテント側が維持費として定期的にデュエルと人を要求してくるんだよね。ステージを盛り上げろ、空席を埋めろ、ってさ。だから仕方なくご招待してるんだ」

 

「わたしたちが、維持費…」

 

~~~嘘よ!クラウンには別の目的があるわ!

 

『!…アイリス、どういうこと?別の目的って…?』

 

 

 

~~~世界征服よ!客席の人間たちはそのための操り人形!クラウンは連れてきた人間を利用してアナタたちの世界を乗っ取ろうと企んでるの!

 

「!?」

 

『そんな…まさか…!?』

 

~~~本当よ!客席をよく見ればわかるわ!みんな瞬きひとつしてないでしょ!?あれはもう自分では動けない状態になってるの!

 

「!…」

 

(この客席のみんなが…操り人形…)

 

「どうしたの?客席に何か面白いものでも見つけた?フフフ、それともお客さんたちに挨拶でもするのかな?」

 

「…」

 

「残念だけどリアクションは期待しない方がいいかもね。舞台は静かに観賞するのがここでのマナーだからね」

 

「っ…!」

 

『…ねえ、アイリス』

 

~~~ん?なに?

 

『クラウンを倒したら、わたしたちみんな元の世界に帰れるんだよね…?』

 

~~~うん!帰れるわ!それは心配しないで!

 

『うん…わかった』

 

「他に何か質問はあるかい?」

 

「…いい。聞きたいことはもう無い」

 

「あら?もういいんだ。せっかくボクが色々答えてあげようと思ってたのに」

 

「…早く構えて」

 

「キミがいいならいいんだけどさ。それじゃあ」

 

 

 

「最終幕へと移ろうか」

 

「!」

 

(来る…!)

 

「フフフ、キミもすぐに案内してあげるよ。キミのために用意したとっておきの特等席にね」

 

「させない…!あなたを倒してみんなで元の世界に帰る…!」

 

~~~そうよ!クラウンに勝って全てを終わらせましょ!

 

「ボクにどこまで迫れるか見物だね。さあ、ショーの始まりだ」

 

 

 

“DUELSTART”

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