(レベル11のアークモンスター、かつペンデュラムモンスター…!?)
(攻守が?ってことは、変化する効果がある…?でも守備表示、それってつまり…)
(変化しても大きな数値にはならない…もしくは、そもそも効果が戦闘向きじゃない…?)
「それじゃあ、行くわよ!真の闇をたっぷりと味わいなさい!」
「Z(ズィリス)のモンスター効果発動!このカードがアーク召喚に成功した時に発動する」
「相手フィールドのモンスターを全て破壊し、自分は破壊したモンスターのレベルの合計×500LP回復する」
「う…」
(召喚と同時に全破壊…しかも回復まで…!)
「あはは!レベルの高いモンスターを並べてくれてありがと。おかげで受けたダメージ以上に回復したわ!」
アイリスLP1000+19000=20000
「っ…!」
(LPが20000…)
「まあでも喜びなさい、破壊と回復の代償はちゃんとあるわ」
「その後、相手はこの効果で破壊されたモンスターの数だけデッキからドローする。破壊したのは5体だから5枚ドローできるわよ!」
「…」
(一気に5枚ものドロー…これだけあれば、次のターンで立て直せる)
(だけど、それは自分のターンに回ってきたらの話…その前にアイリスがこのターンで決めるつもりなら…!)
「《アシンメトリアル・ダークネス》の効果発動!Z(ズィリス)を対象にデッキから《アシンメトリアル・G(グリード)》を手札に加える!」
「ふふ、これで6姉妹コンプリートね!ほら、もう1枚ドローしなさい!」
(どれだけ手札が増えても同じ…!)
手札がさらに1枚増えて、これで合計8枚となる。
しかし、その蓄えられた手札を使う機会が訪れることは無かった。
「カードを1枚セットしてZ(ズィリス)のモンスター効果発動!このカードがアーク召喚に成功したターンのメインフェイズに相手の手札が5枚以上存在し、自分の手札がある場合、このカード以外の自分フィールドの「アシンメトリアル」カード1枚をデッキの一番下に戻して発動できる」
何故なら、それは幻でしかなかったから。
「自分の手札の数と同じになるように、相手の手札をランダムに捨てる」
「!?」
「アタシは《アシンメトリアル・リカバリー》をデッキの一番下に戻して発動!」
「アタシの手札は1枚だけ。ふふ、ちょっとくらいは夢を見れたかしら?」
譜理子手札→墓地《シンメトリアル=T(テーブル)・キーパー》《シンメトリアル=V(ヴォイド)・テレポーター》《シンメトリアル=I(イメージ)・ペインター》《シンメトリアル・スイッチ》《シンメトリアル=W(ホイール)・ローラー》《シンメトリアル・ブラスト》《シンメトリアル=H(ハンマー)・スインガー》
「…」
アイリスによって引かされたカードたちが、アイリスによって墓地へと送られる。それも余分に1枚多く。
(大丈夫、悲観することなんてない。ターン開始時に2枚だった手札が、1枚になった…それだけのこと)
(…手札からPモンスターを直接墓地へ送られた分を除けば、だけど)
「うう…」
思わず声が漏れる。幻とはいえ一度手にしたものを手放すのは…きつい。
(墓地から再利用するのは…今の状況じゃ厳しい。わたしのデッキに眠ってる未だ見知らぬカードが、墓地に落ちたカードを活用できるような…そんな効果を持ってることを願うだけ)
「さあ、続きよ!Z(ズィリス)のモンスター効果発動!自分のEXデッキの表側表示の闇属性以外の属性が異なる「アシンメトリアル」モンスター4体を除外して発動できる」
「自分のEXデッキの表側表示のカード名が異なる闇属性「アシンメトリアル」モンスターを可能な限り相手フィールドに特殊召喚する!」
「…!」
「アタシはJ(ジェット)、N(ニードル)、R(リング)、S(シールド)の4体を除外して発動!EXデッキのB(ベイン)、C(ケイオス)、D(ディスペア)、E(エンヴィ)、F(フェイト)を特殊召喚!」
《アシンメトリアル・B(ベイン)》攻撃表示
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/植物族/攻2700/守2200
《アシンメトリアル・C(ケイオス)》攻撃表示
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/海竜族/攻2600/守2300
【モンスター効果】
このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。
(1):このカードは相手フィールドの水属性または風属性のモンスター1体をリリースし、手札から相手フィールドに特殊召喚できる。
(2):自分スタンバイフェイズに発動する。このカードのコントロールを相手に移す。
《アシンメトリアル・D(ディスペア)》攻撃表示
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/恐竜族/攻2500/守2400
《アシンメトリアル・E(エンヴィ)》攻撃表示
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/昆虫族/攻2400/守2500
《アシンメトリアル・F(フェイト)》攻撃表示
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/アンデット族/攻2300/守2600
「うっ…!」
(闇属性アシンメトリアルが、一瞬で5体も…!)
「あはは!アナタが全員コストにしてくれたおかげよ!」
(!…そっか、パフォーマーたちのコストでリリースされたアシンメトリアルは4体とも違う属性…そしてそれらを除外ゾーンから呼び出したのは、《アシンメトリアル・リノベート》…)
(まさかこんな形で噛み合ってたなんて…つまりアイリスにとってはわたしのフィールドに並んだアシンメトリアルを一掃されたとしても、別に構わなかったってことだ…)
(だってこうしてまた5体並べることができるのだから…!)
「消されたら、こうやってまた出すまでのこと。アナタのモンスターゾーンは何度でもアタシが埋めてあげるわ」
(そして5体存在するということは…)
「《アシンメトリアル・センサー》の5体の場合に得られる効果を発動!」
「自分はフィールドのモンスターの数×1500LP回復する。6体いるから9000回復ね!」
アイリスLP20000+9000=29000
「《アシンメトリアル・センサー》の4体以上の場合に得られる効果を発動!」
「相手は自身の手札・フィールドの「アシンメトリアル」モンスター以外のカード1枚を墓地へ送らなければならない」
「…わたしはPゾーンのU(アンブレラ)・ハンガーを墓地へ送る」
「《アシンメトリアル・センサー》の1体以上の場合に得られる効果を発動!」
「自分の墓地かEXデッキのPモンスター1体を手札に加え、自分はそのモンスターのレベル×300ダメージを受ける」
「アタシはEXデッキのQ(クオーツ)を手札に加える!」
アイリスLP29000-900=28100
(っ…《アシンメトリアル・センサー》を何とかしないと…!毎ターン5体分もの効果は耐えられない…!)
「アタシはこれでターンエンド!そして自分エンドフェイズにZ(ズィリス)のモンスター効果発動!」
「!…」
「自分はフィールドの「アシンメトリアル」カードの数×500LP回復する!」
(うっ…また回復…これ以上差を広げられたら…!)
「フィールドの「アシンメトリアル」カードはアナタのモンスター5体とアタシのフィールドの3枚で8枚!よって4000回復!」
アイリスLP28100+4000=32100
「さらに《アシンメトリアル・ダークネス》の効果発動!アナタの闇属性「アシンメトリアル」モンスターは5体だから3500回復!」
アイリスLP32100+3500=35600
EX0 墓地7 除外9
アイリス LP35600 手札2
◇ ア イ ◇ 裏
◇ 場 ◇
◇ ◇ Z ◇ ◇
ア=《アシンメトリアル・センサー》
イ=《シンメトリアル・セット》
場=《アシンメトリアル・ダークネス》
Z=《アシンメトリアル・Z(ズィリス)》表側守備
TURN13→14 アイリス→譜理子
B=《アシンメトリアル・B(ベイン)》攻撃表示
C=《アシンメトリアル・C(ケイオス)》攻撃表示
D=《アシンメトリアル・D(ディスペア)》攻撃表示
E=《アシンメトリアル・E(エンヴィ)》攻撃表示
F=《アシンメトリアル・F(フェイト)》攻撃表示
場=《エンタメトリアル・シアター》
Y=《シンメトリアル=Y(ヴァーティカル)・ライナー》赤スケール1
B C D E F
◇ 場 Y
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
譜理子 LP2300 手札1
EX13 墓地16 除外1
(何か…せめて耐性の無い《アシンメトリアル・センサー》を破壊できるカードを…!)
「ドロー…!」
(!…ここで、このカード…)
「スタンバイーーー」
「あれ…?」
(スタンバイフェイズなのに、闇属性アシンメトリアルのコントロールが移らない…!?)
「Z(ズィリス)のモンスター効果。このカードは戦闘では破壊されず、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手フィールドの闇属性「アシンメトリアル」モンスターの効果は無効化され、お互いが受ける戦闘ダメージは0になる」
「!…」
「ま、そういうこと。無効化されてるからアタシのフィールドには移らないわ」
「…メイン」
(…Z(ズィリス)が存在する限り、闇属性アシンメトリアルはわたしのフィールドに居続ける…)
(しかもZ(ズィリス)は戦闘では破壊されず、お互いが受ける戦闘ダメージも0になる…)
(つまり戦闘ではどうやってもZ(ズィリス)を突破できない上に、このまま何もしなければわたしのモンスターゾーンがアシンメトリアル5体で固まってしまうという最悪の状況…)
(とはいえ減らす方法が無いわけじゃないし、Z(ズィリス)の全容もほぼ見えた。この永続効果で既に5種類目。効果外テキストでも(5)までだったし、流石にもう効果は無いはず…)
「E(エンヴィ)、F(フェイト)を守備表示に変更」
《アシンメトリアル・E(エンヴィ)》攻撃表示→表側守備
《アシンメトリアル・F(フェイト)》攻撃表示→表側守備
「カードをセット、もう1枚セット」
(何にしても、このターンわたしにできることは…これだけ)
(あとは次のターン、伏せたこのカードで…!)
「ターンーーー」
「待ちなさい!メインフェイズ終了時にZ(ズィリス)のモンスター効果発動!」
「えっ…!?」
(まだ効果あるの…!?しかもわたしのターンに発動って…!)
「自分のPゾーンにカードが存在しない場合に発動できる」
「このカードを自分のPゾーンに置く。この効果は相手ターンでも発動できる」
アイリスが効果発動を宣言した直後、ゆっくりとZ(ズィリス)が立ち上がる。
そしてずっと閉じていた両目をぱっちりと開けた。
「…!?」
Z(ズィリス)のその目に、わたしは目を見開いて驚いた。
===譜理子ちゃんにも見えたようだね。
『うん…』
===どう思った?
『どう思ったって言われても…正直言えば、驚いたかな。あんな目をした人は初めて見たから…』
===そっか。
『あと、綺麗って思った。あんなに鮮やかな目も初めて…』
===綺麗で鮮やかな目、ボクも同感だよ。
『その、生前のアイリスの目もやっぱり…』
===そうだよ。あんな目をしていた人間は、きっと世界中でただ一人だけだっただろうね。
『…』
世界中でただ一人。わたしもその言葉の通りだと思う。
少なくともわたしは見たことがない。
青い左目と赤い右目を持つオッドアイの人間なんて。
===あの目には人を惹きつける魅力がある。自分の意思とは無関係にね。譜理子ちゃんもあの目をしてたんだよ。
『わたしも、アイリスと同じ目を…?』
===繋がっている間はその証明として、体の一部が変化するみたいなんだ。綺麗で鮮やかだったからすぐにわかったよ。
『えっ…ってことは、クラウンと繋がってる今も…?』
(あ…あの時の目の色が変わったって発言は、そのままの意味だったんだ…)
===そうなってると思うよ。ただボクと繋がったのは譜理子ちゃんが初めてだから、必ずそうだとは言い切れないんだよね。
===もっとも、今の譜理子ちゃんは着ぐるみを着てるから誰にも見えないんだけど。
『…そうだね』
(綺麗で、鮮やかな目…)
特異な性質を持つ人間は嫌でも目立ってしまう。特にそれが見た目でわかりやすいものなら、なおさらに。
おそらくアイリスもそんな人間の一人だったのだろう。ふと頭にそう過ぎった。
直後、クラウンがポツリと呟く。
===誰にも見えない存在だったならば、待ち受ける運命も変わっていたのかもしれない。
『クラウン…?』
===ああ、気にしないで。さあ、デュエルを続けよう。
『…うん』
フィールドではPゾーンの方へと歩き出していたZ(ズィリス)が、たった今Pゾーンへと足を踏み入れていた。
Z(ズィリス)はPゾーンの中心に立つとその場に腰を下ろし、再び両腕で膝を抱えて座る。今度は片目だけを閉じて。
閉じたのは右目。開けたままの左目は自らの足元へと視線を向ける。その目の色は、自らが座るPゾーンと同じ色。
しかし、その目に光は無かった。
《アシンメトリアル・Z(ズィリス)》
【Pスケール:青-/赤-】
このカード名の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。