蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

17 / 41
十七話

 校庭で小太郎君と、彼に挑戦した対魔忍見習いの男子生徒が対峙する。

 

 小太郎君は空手の構えに近い構えをとっていつでも行動に移せるようにしているが、その表情には余裕があった。それに対して小太郎君に挑戦をした対魔忍見習いの男子生徒は、これまでに十人以上の対魔忍見習いの生徒が彼に倒されたのを見ていたせいか、緊張した顔で小太郎君の一挙一動に注目していた。

 

 小太郎君と対魔忍見習いの男子生徒のにらみ合いはしばらく続き、やがて焦れた男子生徒が先に行動を起こす。

 

「……! 俺から行くぞ!」

 

 男子生徒はそう叫ぶと、対魔忍スーツに備わっているポーチに両手を入れ、左右の手にそれぞれの五本ずつクナイを持つと、その合計十本のクナイを空中に投げ出す。すると十本のクナイは空中で停止して、次の瞬間には男子生徒の手の動きに従って空中を飛び回る。

 

(あれは念動力(テレキネシス)の類いか? ……いや、違う。恐らく磁力で手裏剣とクナイを操っているみたいだな)

 

 電磁蜘蛛の視界から小太郎君の戦いを見物している俺は、男子生徒が空中に投げ出したクナイが奇妙な電磁波を纏っていることに気づいた。

 

 どうやらあの対魔忍見習いの男子生徒は、磁力を生み出して鉄製の武器を操る忍法の使い手みたいだ。

 

 俺が男子生徒の忍法を分析していると、男子生徒が放ったクナイの五本が小太郎君の周囲を取り囲み、残った五本は上空から彼を狙う。そしていつでも攻撃できる準備が完了すると、男子生徒は勝ち誇った笑みを小太郎に向けた。

 

「どうだふうま? 少しは速く動けるみたいだけど、こうやって周囲を取り囲んでしまえばどうしようもないだろう? 降参するのだったら今のうちだぜ」

 

 確かに自分の周囲を取り囲まれて一斉に攻撃をされたら、どんなに戦いなれた者でも苦戦するだろうし、うまくいけば一撃で敵を倒せるかもしれない。あの対魔忍見習いの男子生徒が自信ありげな笑みを浮かべるのも無理はないだろう。

 

 だが、それでも小太郎君は余裕の表情のままであった。

 

「降参? するわけないだろう? それより準備ができたのだったら、さっさとご自慢の忍法を使ったらどうだ?」

 

「……っ!? 喰らえっ!」

 

 小馬鹿にするような口調で言う小太郎君の言葉に、男子生徒はあっさりと逆上して忍法を発動する。周囲と上空から合計十本のクナイが同時に矢のような速度で小太郎君に襲いかかり、それと同時に小太郎君の体がその場で凄まじい速さで横に回転する。

 

「はっ!」

 

「…………なぁっ!?」

 

 その場で高速で回転した小太郎君は、回転の速度を乗せた掌底で自分に襲いかかるクナイを全て叩き落とし、それを見た男子生徒が目を限界まで見開いて驚く……てっ!? 驚いたのは俺もだよ! あれってもしかして日向◯ジの回天!? 小太郎君ってば◯ック・リーの要素どころか日向ネ◯の要素まで取り込んでいたの!?

 

「さあ……。次は俺の番だな」

 

「う、うわあああっ!?」

 

 十本のクナイを全て叩き落として獰猛な笑みを浮かべる小太郎君に、男子生徒は半狂乱になって新たなクナイを投げつける。しかし焦りと驚きにより狙いなんてついていないクナイなど小太郎君に当たるはずもなく、小太郎君はクナイを余裕で避けると男子生徒に肉薄してその拳を振るう。

 

「はあああああっ!」

 

 小太郎君は一度身を低くすると、全身のバネを利用して先程クナイを叩き落とした時と同じく独楽のように回転しながら、回転の速度を乗せた拳を叩きこむ。その拳は凄まじい勢いの上に徐々に速さを増していき、二撃四撃八撃十六撃三十二撃六十四撃と、合計で百二十六撃の拳を僅か数秒の内に男子生徒の体に叩き込んだ。

 

 ……回天の次は八卦六十四掌かよ。

 

「………!」

 

「これでトドメだ!」

 

 あまりの拳の勢いに吹き飛んだ男子生徒を追うように、小太郎君が男子生徒に向かって跳躍をする。気のせいか「も、もうヤメて……」という声が聞こえてきたような気がしたが、その時には小太郎君はトドメの技を繰り出していた。

 

「せいっ!」

 

「………!?」

 

 小太郎君が繰り出したのは上段後ろ回し蹴りと下段後ろ回し蹴りのコンビネーション技であった。……はい、どこからどう見てもロッ◯・リーが得意としていた木の葉旋風です。そしてもはや避ける力が残っていない男子生徒は、小太郎君の蹴りを二発ともまともに喰らい吹き飛ばされ、地面に激突すると気を失ってしまった。

 

『『……………』』

 

 模擬戦の結果は言うまでもなく小太郎君の圧勝であった。

 

 忍法が使えないのに体術だけで相手の忍法を完全に防ぎ、怒涛の攻めで叩きのめす小太郎君の姿に対魔忍見習いの生徒達だけでなく、教官役の対魔忍も絶句。あとついでに俺も絶句。

 

 ……え~と、確か原作での小太郎君はやる気のない落ちこぼれの生徒で、そのせいで親友兼臣下であった二車骸佐が彼を見限り、ふうま再興の為の反乱を起こすって言うのが「対魔忍RPG」の序盤のシナリオだったよね?

 

 これって原作崩壊起こってない? それもかなり深刻なレベルで?

 

 誰だ!? 小太郎君をロック・◯ーと◯向ネジを合わせたトンデモ対魔忍に改造した馬鹿は!?

 

 

 

 

 

 ……ちなみにこれは後日知った事だが、どうやら小太郎君は武術だけでなく、手裏剣やクナイや鎖鎌、鉤爪といったいかにも忍者が使いそうな武器……所謂暗器の修業も行なっていてそちらもかなりの実力らしい。そしてそれを知った俺は「◯ンテンの要素も追加!?」と心の中で叫んだのだが、それはまた別の話。


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。