蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

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十八話

 五車学園の校庭で小太郎君の急激すぎる成長(というか進化?)を目撃した日から三日後。俺は今日も獅子神と一緒に対魔忍の任務で東京キングダムに来ていた。

 

 いつもだったら命やら貞操の危機に気が重くなる任務だが、今回に限りそうではなかった。あの小太郎君の成長、そして原作崩壊の切っ掛けが一ヶ月前に俺が彼に言った言葉だと思うと気が重くなり、その事を考えるくらいならまだ任務を行なっている方が気が楽だったからだ。要するに一種の現実逃避である。

 

 ……それにしても嫌な現実から目を逸らす為に仕事(任務)に没頭するなんて、俺ってば色々な意味で末期かもしれないな。

 

 とりあえず今回の任務はいつも通り、武装勢力のアジトから二キロ程離れた廃墟のビルの一室から電磁蜘蛛を送り込み、その後はアジトに忍び込んだ電磁蜘蛛の視線からライトイーターを作り出して暴れさせる事で終了した。しかし今回の任務もそうだけど、最近俺に与えられる任務って、魔族の武装勢力の殲滅とかいかにも対魔忍っぽい物騒な任務ばかりじゃないか?

 

 ライトイーターがアジトにいた魔族を全て排除したのを電磁蜘蛛の視線から確認した後、俺は電磁蜘蛛とライトイーターを消して、側で護衛をしてくれていた獅子神に声をかけた。

 

「任務終了。アジトにいた魔族は全て排除。確認や後処理はいつも通り後から来る部隊に任せて……獅子神?」

 

 早くこの場から撤収しようと言おうとした俺だったが、獅子神は俺の方を見ておらず、二つある部屋のドアを睨みつけながら腰の刀に手をかけていた。

 

「……ごめんなさい、五月女先輩。ここまでの接近を許してしまいました」

 

 俺は獅子神の言葉に「何の?」なんて間抜けな質問はしなかった。彼女の視線の先、部屋のドアに視線を向ければ複数の人の気配が感じられた。

 

「いや、気にしなくてもいいよ。……おい! 部屋の外にいるのは分かっているんだ。姿を見せたらどうだ?」

 

 俺は獅子神にそう返した後、部屋の外にいる気配の主達にそう声をかけた。すると二つのドアから十人程の男達が部屋に入ってきた。

 

 その男達は全員、ボロボロの服を着てガスマスクをつけており、手には銃器を持って武装していた。……こいつら、武装難民か?

 

 武装難民というのは、魔界からの流民やら最下層に落とされた浮浪者などが集まって闇の町で手に入れた武器で武装した集団で、この東京キングダムではよく見かける存在だ。もしかしてこの廃ビルって彼らの縄張りだったのか? だとしたら失敗したな。武装勢力のアジトから程よく離れているいい位置にあったから使ったのだが、もっとよく調べておくんだった。

 

「ここは俺達の縄張りだ。そこに勝手に入ってきて、お前達一体何者だ?」

 

「えっと、俺達は「あっ!? こいつら対魔忍だ!」アレ?」

 

 武装難民のリーダーと思われる男の質問に、俺がなんて答えようか考えていたら、別の武装難民が獅子神を指差して叫ぶ。

 

「わ、私?」

 

 獅子神を指差して叫んだ武装難民は、思わず呟く彼女の姿を見ながら言葉を続ける。

 

「あの男はよく分からんが、この女の格好! まるで『どうぞ襲ってください』と言っているようなエロい格好は間違いなく対魔忍だ!」

 

『『っ!』』

 

 その武装難民の言葉に他の武装難民の仲間達も「成る程!」といった様子で獅子神を見て、俺は内心で額に手を当てて天を仰ぎ見ていた。そうだよなぁ……。こんなぴっちりしたスーツを着ている人間なんて対魔忍くらいしかいないもんなぁ……。

 

「確かにあんな露出狂みたいなエロい格好をしたのは対魔忍だ……!」

 

「格好だけじゃなくて身体つきもエロいしな」

 

「あのサキュバスとタメを張れる露出度、正に対魔忍」

 

「うん、ある意味裸よりエロいから対魔忍に間違いない」

 

「あれで対魔忍じゃなかったらただの変態だな」

 

「……………!」

 

 口々に「エロい」と言う武装難民達。それに対して当の本人である獅子神は、両腕で体を隠してバイザーで分かりにくいが顔を真っ赤にして、プルプルと震えていた。

 

 もうやめてあげて! 獅子神のライフはもうゼロなんだ!


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