蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

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二十二話

 ちなみにその後、俺は何とかもう一度八つの目のロボットを呼び出そうと一晩中色々試してみたのだが、結局アイツが現れる事はなかった。

 

 一体何なんだよ、アイツは? 能力者バトル漫画で最強もしくは反則技の能力? 能力者バトル漫画なんて今と昔を合わせれば、それこそ山の様にあるぞ。世界に誇る日本の漫画文化ナメるな。

 

「頼人先輩? さっきから何をしているんですか?」

 

 俺が内心でイライラしながら作業を続けていると、横で椅子に座りながらこちらを見ていた獅子神が声をかけてきた。

 

「ああ、獅子神か。これは「銀華」……え?」

 

 俺が獅子神の質問に答えようとした時、彼女の声が俺の言葉を遮った。

 

「銀華。それが私の本当の名前。自斉というのは父親から受け継いだものだから、これからは銀華と呼んでくれませんか」

 

「え? 何でいきな「銀華」……別に名字でもいいんじゃ「銀華」……分かったよ、銀華」

 

「はい♪」

 

 なんというか下手に逆らったら後が怖そうなので本人の言う通りに名前で呼ぶと、獅子神……いや、銀華は嬉しそうに返事をしてきた。

 

 一体どうしたっていうんだ、彼女は?

 

「それで頼人先輩? さっきから触っているそれは何ですか?」

 

「これか? ドローンだよ。以前から装備科に開発注文していて、ようやく今日試作品が届いたんだ」

 

 そう言って俺は、先程から機体を触ったり、マニュアルを読んで確認作業を行っていたドローンを手にとって銀華に見せた。

 

「ドローン? それって確かラジコンみたいなものでしたっけ?」

 

「……うん。まあ、そんなところだ」

 

 銀華はドローンについて、いまいちよく分かっていないようだったが、それでも基本的には間違っていないし他の対魔忍に比べたらマシな方なので、俺は若干脱力しながらもそう答えた。

 

「でも何でドローンなんかを使うんですか? そんなもの使わなくても、頼人先輩には電磁蜘蛛がありますよね?」

 

「その電磁蜘蛛のサポートにこのドローンを使うつもりなんだよ」

 

 そう前置きすると俺はドローンを必要とする理由を説明した。

 

「確かに電磁蜘蛛は下手なドローンより高性能だ。だけど全ての任務に適しているわけじゃない。例えば敵の重要情報をパソコンから抜き取ったり、他にもターゲットの姿や汚職政治家の裏取引の現場の撮影とか、電磁蜘蛛では出来ないことは色々ある。それらに対応するためにドローンを用意したんだよ」

 

 俺がそう言うと銀華は感心したように頷く。

 

「なるほど……。でも忍者が機械に頼るって、らしくないっていうか……」

 

 相変わらずバイザーのせいで分かり辛いが、ドローンを見ながら戸惑った表情を浮かべる銀華。しかし彼女の言葉は俺にしてみれば少し的外れに感じた。

 

「おいおい、何を言っているんだ? 忍者はその時代で最先端の装備を整えて任務を遂行していたんだぞ?」

 

「え? そうなんですか?」

 

「昔の忍者は撤退時や敵を撹乱する時に煙玉を使っていたって記録は銀華も知っているだろ? 考えてみろ。その時代での煙玉は、専門の知識と火薬というその量が戦争の勝敗を決めるとまで言われた重要な素材で作られたハイテク兵器だったんだぞ?」

 

「あっ!?」

 

 そこまで説明すると銀華は今気づいたといった表情になる。

 

 そう、忍者という存在は任務をより確実に成功させる為に、その時代で最も性能が良い武器や道具を揃えてきた。だから俺がドローンといった道具を用意しても別に不思議ではないということだ。

 

「なるほど、納得しました。……でもあれですね? やっぱり頼人先輩って……」

 

「ん? 俺がやっぱりどうしたんだ?」

 

「何というか頼人先輩ってやっぱり対魔忍にしては珍しく忍者らしいですよね」

 

 …………………………。

 

「銀華」

 

「はい? どうしました、頼人先輩?」

 

「その言葉、自分で言って虚しくならないか?」

 

「………ごめんなさい」

 

「いいんだ」

 

 これ以上なく悲痛な表情になって深々と頭を下げて謝ってくる銀華。そんな彼女に俺は俺はそう返事をする事しかできなかった。


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