蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

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二十四話

 五車学園の地下にある対魔忍の任務のブリーフィングに使われている部屋。そこに八人の男女が集まっていた。

 

 八人の男女は五車学園に在学している対魔忍見習いの生徒達であり、今回行われる任務の参加者だった。そして八人は四人が高等部で、残り四人が中等部と綺麗に二つのグループに分かれていて、中等部はグループの一人が落ち着かない様子で辺りを見回しながら口を開く。

 

「うわぁ……。一体どうして俺達が任務のメンバーに選ばれるんだよぉ……」

 

 口を開いたのは、中等部のメンバーで一番背が小さい上に茶色の髪を長く伸ばしていることから女性のようにも見える男の対魔忍見習い、上原鹿之助であった。

 

 鹿之助の声は今にも泣きそうなくらい震えており、それを聞いて彼の隣の席に座っていた女性の対魔忍対魔忍見習い、相州蛇子が話しかける。

 

「何を言っているのよ、鹿之助ちゃん? 任務を達成して皆に認めてもらえるチャンスじゃない」

 

「それはそうかもしれないけど、魔族と戦うかもしれないんだぞ!? 怖いに決まっているじゃないか? そもそも俺達まだ中学生なんだぞ?」

 

「情けない事を言うな鹿之助」

 

 相変わらず震える声で蛇子に反論しようとする鹿之助に、燃えるように赤い髪をした男の対魔忍見習い、二車骸佐が声をかける。

 

「蛇子の言う通りだ。これは俺達の力を知らせる絶好の機会だ。どんな任務だろうと関係ない。腕がなるぜ」

 

 不敵な笑みを浮かべて言う骸佐だが、そんな彼の言葉を高等部のグループが鼻で笑う。

 

「はっ! 何が『腕がなるぜ』だ。格好つけやがって」

 

「そうだな。口だけなら何とでも言えるさ」

 

「何だと!?」

 

 明らかにこちらを馬鹿にしている口調の高等部のグループの言葉に、骸佐は思わず席から立ち上がろうとする。しかし……。

 

「落ち着けよ、骸佐」

 

 そんな骸佐を中等部グループ最後の一人、ふうま小太郎が止める。

 

「言いたい奴には好きに言わせておけばいい。忍びは言葉や力ではなくて、行動で示すものだ」

 

 小太郎の声は決して大きな声ではなかったが、それでも今この部屋にいる全員の耳に届いた。

 

 対魔忍の中でも屈指の歴史を持つふうま宗家の嫡男に生まれながらも、未だに邪眼に目覚めていない落ちこぼれ。それが今までの小太郎の評価だったのだが、この二ヶ月くらいで急激に力を増し、今では体術と武術だけで忍法を使う同世代の対魔忍見習いと同等以上の実力を持つようになった。

 

 この事実は中等部だけでなく高等部の学生達の間にも広まっており、その事から小太郎を不気味な存在と感じるようになった高等部のグループは全員口を閉ざした。そしてそれを見て骸佐は内心で満足げな笑みを浮かべた。

 

(そうだ、それでいい。小太郎は未だに邪眼に目覚めていないが、それでも体術と武術を磨いたことで自信を持ち、こうして覇気を感じられるようになった。それに小太郎は昔から格段に頭がキレるからな。今の小太郎ならふうまの頭領であることに文句を言う奴はいないだろう)

 

 小太郎の発言により部屋の中は静寂に包まれた。そして誰も話さなくなってから数分後、突然一人の女性が扉を開けて部屋に入ってきた。

 

「皆、待たせちゃってごめんね。ちょっと準備に手間取っちゃって」

 

 部屋に入ってきたのは井河アサギの妹で、五車学園の教官でもある現役の対魔忍、井河さくら。彼女が今回の任務のリーダーであった。

 

「ほら、君達も早く入って。君達で最後だよ」

 

「分かりました」

 

「はい」

 

『『……………………!?』』

 

 さくらに続いて二人の男女が部屋に入ってきて、それが誰なのか見た小太郎をはじめとする、すでに部屋にいた八人の対魔忍見習い達は全員驚きで目を見開いた。部屋に入ってきた二人の男女、五月女頼人と獅子神自斉は五車学園で現在注目を集めている生徒だったからだ。

 

 五月女頼人。

 

 中等部三年に在学する対魔忍見習いだが、五車学園に入学してすぐに現役の対魔忍達と共に任務に参加しており、いくつもの偵察任務と暗殺任務を全て成功させている。更に元々は普通の眼だったが、両目とも邪眼に変化したことから、既に対魔忍でも上位の実力を持っていると噂されている。

 

 獅子神自斉。

 

 彼女も中等部二年に在学している対魔忍見習いだが、千年に一人しか使い手が現れないとされる神遁の術の使い手であり、対魔忍達に広く伝わっている剣術「逸刀流」の達人でもある。現在は頼人の護衛として彼と二人一組で行動しており、相性がいい事から頼人の評判が高まるごとに彼女の名前も知られるようになっていた。

 

 そして小太郎にとって五月女頼人は特別な人物で、彼と同じ任務につく事に驚きを隠せなかった。


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