蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

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二十五話

「……どうやら先走ったヤツはいなさそうだな」

 

 俺と銀華とさくら、そして小太郎君を始めとする中等部の対魔忍見習い四人と高等部の対魔忍見習い四人による、不安と期待がごちゃ混ぜになった任務の当日。俺と銀華は攻撃対象である武装勢力のアジトから一キロ離れた所から偵察を行っており、偵察をしながら味方が功を焦って暴走していないことに胸を撫で下ろしていた。

 

 任務前のブリーフィングでは、中等部のグループと高等部のグループの間にピリピリとした空気が漂っていたから、てっきりどちらかのグループ……というか高等部のグループ(中等部のグループは小太郎君が上手くまとめてくれているだろうから)が暴走すると思っていたのだが。

 

「ええ、本当によかったです……」

 

 俺の言葉に銀華も安心した表情で頷く。彼女もまた俺と一緒に任務を行なっているうちに、暴走した対魔忍の先輩方に迷惑をかけられていたのだ。

 

「……でも頼人先輩? 今更なんですけど、任務の最大の障害が味方の暴走ってどうなんです?」

 

「本当に今更だな……。そんなこと、報告書を書く度に『任務の達成を最優先にするように徹底させろ』と書いているよ」

 

「それでその結果は?」

 

「……以前、アサギ校長とさくら先生と紫先生の三人がいた時に聞いたことがある。そしたら三人揃って土下座せんばかりの勢いで頭を下げてきた。三人とも直角九十度の綺麗なお辞儀だった。……あとは察してくれ」

 

「うわぁ……」

 

 俺の言葉に何とも言えない表情になる銀華。いや、本当に彼女の言う通りだ。任務の最大の障害が敵からの妨害とかではなくて、味方の暴走ってどうなんだと俺だって思う。

 

 そういえば、どの様な所でも馬鹿な味方が一番厄介で頭がいい敵の方がまだマシだ、みたいな事を昔の誰かが言っていたような気がするけど、本当にその通りだ。昔の人はいい事を言う。

 

 そんな事を考えながら偵察を終えた俺は敵の戦力を、武装勢力のアジトの近くで待機しているさくら達に報告した。

 

「偵察が終わりました。敵の数は三十人程。ほとんどはオークで武装はアサルトライフルとショットガン。ただし一人だけ用心棒なのか鬼族の戦士がいます」

 

『オッケー。皆、聞いていたね? それじゃあ突入開始!』

 

 無線機でさくらに報告すると、無線機越しにさくらが他の皆に突入合図を出したのが聞こえてきた。

 

 俺と銀華の任務は偵察だけだ。さて、それじゃあ皆の戦いぶりを見せてもらおうか。

 

 武装勢力のアジトに潜り込ませた電磁蜘蛛の視界から見る皆の戦いぶりはかなり手際がよかった。

 

 さくらは当然として中等部のグループも高等部のグループも、己の忍法を利用した戦いを見せて武装勢力のメンバーであるオーク達を次々と倒していく。そして小太郎君は……。

 

 

 武装勢力で一番強いとされる用心棒の鬼族と、一人で対峙していた。

 

 

 ふぁっ!? な、何をしているの小太郎君? 何で武装勢力で一番強そうな鬼族の戦士と対峙しているの? 時間稼ぎだとしても一人だけなんて無謀すぎるだろ?

 

「ほう? この俺に一人で挑もうとは……。人間の子供にしては中々度胸があるようだな。お前の名前を聞いておこうか」

 

「俺か? 俺はふうまの誇り高き魔獣、ふうま小太郎だ」

 

 ハイ、アウトォ! 小太郎君、◯ック・リー化が深刻なレベルにまで進行していないか? これって俺のせいか? 小太郎君がロック・◯ー化したのって俺のせいなのか!?


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