蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

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三十話

 皆さん、お久しぶり。あるいは初めまして。五月女頼人です。

 

 今俺はいつも通り対魔忍の任務中なのですが、皆さんに一つ質問がしたいのですがよろしいでしょうか?

 

 質問というのは俺の対魔忍見習いとしての待遇についてです。

 

 対魔忍見習いは基本的に五車学園の学生で、普段は五車学園で対魔忍としての訓練を受けると同時に中等部から高等部の授業を受けている。そしてその学生の中で特に強力、便利な忍法が使えたり成績が優秀な学生が、五車学園の高等部を卒業して「一人前」とされた対魔忍達と同じように任務を与えられる。

 

 五車学園は国からの援助を受けているので授業料を払う必要は無く、五車の里に家がない生徒には学生寮が用意されている。そして前回の話で少し言ったかもしれないが、任務に参加した対魔忍見習いには通常の対魔忍より安いが日当で五万円が支払われる。

 

 授業料、生活費の全額を国が負担してくれて一回の任務で日当五万円。これだけを聞けばかなりの好条件に思えるかもしれないが、よく考えて欲しい。

 

 ここでいう生活費とは学生寮の家賃や食費などの必要最低限のものだけで、それ以外に個人的に必要だと思うものは自腹で購入するしかない。

 

 そして対魔忍の任務というのは目的地への移動、作戦行動の下準備、作戦行動時間までの待機、そして作戦の実行等と色々時間がかかり、ほとんどが二十四時間労働。日当五万円と言っても時給にすれば50000÷24=2083.3で、二千八十三円となる。

 

 対魔忍の任務は一歩間違えば大怪我……いや、大怪我で済めばまだいい方で、任務に失敗すれば敵に殺されたり輪姦されたりする危険なものばかりだ。その上、任務が終われば報告書を作って提出する義務があり、報告書作成の時間の事を考えれば時給は更に下がる。

 

 トドメに俺の任務は電磁蜘蛛を使っての遠距離からの偵察と暗殺。そして今回は魔族の武装勢力の偵察をして、それを突入班に知らせてサポートする任務だったのだが……。

 

『んほおおぉっ!? そこは駄目ぇっ!』

 

『こ、壊れちゃううっ!』

 

『もう入らない! お願い! 犯さないデェ!」

 

 突入班の対魔忍は相変わらず、俺が渡した情報をろくに聞いておらず全員で真正面から敵のアジトに突入。その結果、突入班は全員敵の罠にはまって捕まってしまい、現在敵の魔族達に輪姦されているのを俺は電磁蜘蛛の目から見ていた。

 

 ちなみに今回の任務、武装勢力のボスだけはなんとしても始末するように厳命されていて、突入班が全滅した以上は俺が電磁蜘蛛とライトイーターを使って、武装勢力のボスを暗殺しなければならなくなったわけだ。

 

 いくら遠距離からの活動に徹していて危険は少ないものの、それでも万が一失敗すれば即座に人生終了。しかも仲間のほとんどは協調性が無くこちらの足を引っ張って、その尻拭いは全てこちらがしなければならない。

 

 そんな仕事を日当五万円、時給にしたら二千八十三円で週一でしなければならない学生生活。果たしてこれは恵まれているのだろうか?

 

 皆さんはどう思うのか是非教えて欲しい。

 

 

 

「頼人先輩? 泣いているみたいですけど、どうしたんですか?」

 

「いや……。対魔忍の先輩方がいつもの如く全滅しているのを見ていたら、なんだか虚しくなってな……」

 

「それは……。が、頑張ってください、頼人先輩。私はいつも先輩を支えていますから」


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