蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

43 / 49
四十三話

 明日には退院できると医者に言われた日の夜。俺は不思議な夢を見た。

 

「ここは一体何処なんだ?」

 

【貴方ノ、闇ノ勢力ニオケル認知度ガ一定以上上回リマシタ】

 

「………!?」

 

 いつの間にか俺はどこかで見たような何もない真っ白な大地いて、周囲を見回していると突然耳元に、忌々しい声が聞こえてきた。

 

 それはこの世界に転生した時と邪眼に目覚めた時、そしてあの悪夢の時に聞いた、例の光の玉の機械のような声で、それが聞こえた瞬間俺は即座に両耳を手で塞いだのだが、それでも光の玉は頭の中に響いてきた。

 

【コレニヨッテ貴方ノ、歴史ニ影響ヲ与エル因子トシテノ格ガ上ガリマシタ】

 

「………!」

 

 ここまで聞いたところで俺は全身から大量の冷や汗が吹き出るのを感じた。こ、この流れはまさか……。

 

【結果、貴方ノ人生ノ難易度ガ「ノーマル」カラ「ハード」ニ変更サレマシタ。コノ人生ノ難易度ハ貴方ノ意思デハ変更スル事ハ出来マセン】

 

 やっぱりかよ!? いや、ふざけんなよ! ただでさえハードモードの人生を送っていたつもりだったのに、更に難易度が上がるのかよ、俺の人生!?

 

 というかこれ以上難易度上がらないよな!? ゲームでも大体「イージー」、「ノーマル」、「ハード」の三段階くらいだし、流石にこれ以上は……。

 

【アト、貴方ノ人生ノ難易度ハ「イージー」、「ノーマル」、「ハード」、「ベリーハード」、「ナイトメア」、「ルナティック」、「DEATH」ノ七段階アリマス】

 

 ………。

 

 ……………。

 

 …………………。

 

 

 

「ふざけるなぁ!」

 

 夢から目覚めるのと同時に俺は、病院のベッドの上で絶叫を上げた。

 

 時計を見るとまだ深夜で、俺は今の絶叫が誰にも聞かれていないかと周囲を確認してから深呼吸をして乱れた息を整える。

 

「はぁー……! はぁー……! ま、まったく……なんて悪夢だよ……」

 

 口では悪夢と言う俺だが、あれがただの悪夢だとは思えなかった。何しろあの光の玉の声が聞こえてきたら本当に邪眼に目覚めたり、人生の難易度が上がったような災難に見舞われたからな。

 

「それにしても……俺の人生の難易度が七段階あって、まだ下から三つ目の難易度だなんてどんな冗談だよ? これ以上どんな災難があるっていうんだ? ……もしかして、エドウィン・ブラックのような原作のボスキャラと戦ったりするはめになるんじゃ……?」

 

 そこまで考えたところで怖くなった俺は、頭を何度も横に振って考えを中断し、代わりにこれからのことを考えることにした。

 

 今まで俺は、我慢の限界がきたら対魔忍の生活なんか捨てて、ヨミハラ辺りで情報屋とかをやっておけばいいと思っていた。しかし今回の悪夢でそれが甘い考えだと気づかされた。

 

 今更だがここは対魔忍の世界だ。大気中に極小の死亡フラグが何十万と漂っていて、本当に安全な立場や場所なんて存在しない対魔忍の世界だ。

 

 そんな世界で例え対魔忍を辞めて安全な生活を送れるかと聞かれたら、確率は良くて二割くらいだろう。

 

 ならばどうしたらいいのかと考えた結果、俺が出した結論は強くなることだった。

 

 正直こんな結論しか出ないなんて、脳筋な他の対魔忍に毒されているみたいで嫌なのだが、今回ばかりはこれが正解だと思う。実力さえつければどんな敵が来ても戦って勝つ、あるいは逃げることが出来て生存率が上がるはずだ。

 

「そうと決まると弱点の克服だな……」

 

 幸い、さくら達は休養を取らせる意味で少しの間任務を入れないと言っていた。この時間を使い、俺は自分の弱点を少しでも克服することを堅く誓った。

 

 見てろ、俺は絶対この世界で生き残ってやるからな。絶対肉バ○ブになんてならないからな……!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。