蜘蛛の対魔忍の受難   作:小狗丸

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四十五話

「くっ! 銀華! こっちだ!」

 

「は、はい!」

 

 病院を退院してから一ヶ月後。俺と銀華は東京キングダムの路地裏を必死に走っていた。

 

 今回、俺達は退院して最初の任務を行なっていて、任務は武装勢力の偵察といういつもの内容だったが、それは罠だったのだ。どうやら東京キングダムにある複数の犯罪組織や武装勢力が俺を殺すためだけに結託して、使い捨ての武装勢力を囮にして俺を誘き寄せたらしい。

 

 いつも通り武装勢力の偵察をして、先走って罠に嵌まった突入部隊の対魔忍達の代わりに武装勢力の殲滅をして、任務が終わったと思った矢先に複数の狙撃手の狙撃を受けて、こうして銀華と一緒に逃げているのだ。

 

 え? 同じ部隊のきららと翡翠と佐那はどうしたのかって?

 

 ……アイツらだったら、敵の罠に嵌まった突入部隊の対魔忍達の救助に向かっているよ! 俺がそうするように指示したんだよ! ついでに言えば捕まった対魔忍達には凛子もいるんだよ!

 

 クソっ! 今回の任務、最初から怪しいと思っていたんだよ! 取り扱っている武器の質と量は高くて多いのに、それに比べて武装勢力の人員の質と数はお粗末で少なすぎたから変だな、と銀華達も話していたのに!

 

 それなのに突入部隊の連中、全く疑問を覚えずに! そしていつもの如く俺の報告をろくに聞きもせずに突撃して捕まりやがって!

 

 凛子の奴なんて突撃する前に「特訓の成果を見せてやる」とかキメ顔で言いやがるし! 確かに武装勢力の大半を瞬殺するのは凄かったけど、結局敵を殺して油断したところを催眠ガスで眠らされてるじゃねぇか! お前のその自信は一体何処からくるのか小一時間くらい聞きたいよ!

 

 と、いつまでも心の中で愚痴を言っても仕方がない。ここは一刻も早く追手を撒いてきらら達と合流しない……と……!?

 

「はぁい♩ 貴方が蜘蛛の対魔忍さんね? 会いたかったわ」

 

 俺がどうやってきらら達と合流するか考えながら走っていると、物陰から一人の女性が現れて親しげに話しかけてきた。

 

 その女性はその豊満なスタイルを強調するような身体にピッタリと張り付くスーツを着ていて、顔の下半分を隠すマスクを装着しており、頭にはガンマンのような帽子を被っていた。

 

 うわぁ……。あんなエロくて恥ずかしい格好をする人が対魔忍以外にもいるなんて……って! そうじゃない!

 

「……『死神』のアンリード」

 

「あら? 私の事を知っているんだ? 流石噂の蜘蛛ちゃん。嬉しいね」

 

 俺が目の前の女性、アンリードの名前を口にすると彼女は嬉しそうに頷く。

 

 アンリード・ボニー。

 

 前世で遊んだ「対魔忍RPG」に登場したキャラクターで、ストーリー上でも実際の戦闘システムでも屈指の実力者だ。確かに彼女はガンマンで賞金稼ぎという設定だったから、東京キングダムの組織に雇われる可能性も否定出来ないが、どうしてそれが俺の前に現れる!?

 

 あれか? これが人生の難易度が上がった結果だとでもいうのか? 俺の人生ってクソゲーすぎない? 難易度的な意味で。

 

「私の事を知っているなら、ここで貴方達の前に現れた理由も分かるでしょ? 私は貴方達を殺しに来たの」

 

「……!? そんな事はさせない!」

 

 アンリードの言葉に銀華がほとんど反射的に忍者刀を抜いて彼女に斬りかかろうとするのだが……。

 

「邪魔よ」

 

 銀華の動きよりも、アンリードが腰のホルスターにある凶悪な破壊力を誇る拳銃ジェットリボルバーを引き抜く動きの方が速かった。俺はとっさに銀華を引き留め、彼女を庇おうとするのだが、そんな事をしてたとこで二人仲良くアンリードに撃ち殺されて終わりだろう。

 

 チクショウ! 俺の人生、これで終わりかよ。対魔忍らしいと言えばらしいけどさぁ……!

 

 

 

 

 

『フム。ドウヤライヨイヨ拙者ノ出番ノヨウデスナ?』


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