任務で敵の組織の罠にはまった上、凄腕の賞金稼ぎとして有名なアンリード・ボニーに殺されそうになったが、八つ目のロボット……俺の右眼の邪眼の力でなんとかアンリードを倒すことができた。そしてその後、俺と銀華はアンリードを捕縛してから捕まった味方の対魔忍を救助して任務を完了させた。
敵の組織の罠にはまって危うく殺されかけたが、そのお陰で右眼の邪眼も一応使えるようになったのは不幸中の幸いだろう。
これからはもっと慎重になって、右眼の邪眼も使いこなせるよう努力しよう。そうすれば、もう今回のような危険はそうないはずだ。
………と、考えていた時期も俺にもありました。
だけど、どうやらこの世界は俺が平和に生きるのが許せないらしく、任務が終わってすぐに俺個人に対してピンポイントで頭が痛くなってくる厄ネタを用意してきた。……それも二つも。
今、俺は学校の朝会に出ているのだが、クラスメイト達と同じように校庭に立っていると、周りから他の生徒の会話が聞こえてきた。
「おい。アイツ、五月女だよな。珍しいよな、いつもは任務で学校に来ないのに」
「そうだな。……そういえば聞いたか? 五月女の奴、右眼の邪眼も使えるようになったらしいぜ」
「それ、俺も聞いたな。……もう、同学年でアイツに勝てる奴いないんじゃないか?」
「同学年どころか現役の対魔忍でも勝てる奴はほとんどいないよ」
「だよな……五月女の奴が次の対魔忍のリーダーに指名されるかもって噂、本当かもな……」
…………………………っ!!
周囲から聞こえてくる生徒の会話に俺は思わず頭痛がしてきた。
そう、これがこの世界が俺のために用意してくれやがった厄ネタの一つ。
どういうわけか俺が右眼の邪眼が使えることがすでに学校中に広まっており、それが原因で学校の生徒や教師の一部が俺のことを次の対魔忍のリーダー候補とか、訳の分からない噂が出てきたのだ。
お前らホント、二重の意味でふざけるなよ。何で機密情報であるはずの右眼の邪眼の情報が速攻で広まっているんだよ? 何で俺が次の対魔忍のリーダー候補なんだよ?
前者の件はまだ我慢できるが、後者の件は絶対に嫌だからな。何で俺が対魔忍のリーダーにならないといけないんだよ? 何で俺がこんないつ沈没してもおかしくない泥舟の船長にならないといけないんだよ?
本当、こんな噂話を聞いているだけでも頭が痛いのに、目の前にはもう一つの厄ネタがあった。
「初めまして、室井光彦です。急な編入ですがどうかよろしくお願いします」
俺の目の前ではいきなりこの学校にやって来た若い男の保健医が俺達生徒に挨拶をしていた。
室井光彦は爽やかな笑顔を浮かべている人の良さそうな人物に見えるが、俺は彼の正体を知っている。
彼の正体はエドウィン・ブラックの部下である魔界医フュルスト。
五車学園を壊滅させるために人間の保健医、室井光彦に変装して五車学園に潜入しており、フュルストが沢木浩介をアサギを攻略するための「駒」にしたのが「対魔忍アサギ3」のストーリーの始まりと言えた。
対魔忍アサギ3のバッドエンドには五車学園がエドウィン・ブラックの支配下に置かれるパターンがあり、そうなれば五車学園の生徒達は命こそ助かっても魔族に利用されるだけの道具となり、人としては死んだも同然だろう。
つまり俺は今、五車学園ごと死ぬか生きるかの瀬戸際に立たされていると言うことだ。