福神と死神が!   作:十握剣

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長い長い長いな、本当に長いな。これもう更新しねぇんじゃねぇの? 作者忘れてんじゃねーの?

と、思われても仕方ないくらい亀さんよろしく更新で、久しぶりに投稿です!

また誤字脱字がありましたらすみません(;_;)

どうか、読んでいってくださいまし╭( ・ㅂ・)و


Round8「死神との邂逅・・・・できんのですか?」

「掴んだぜ、たんぽぽ」

 

もう、一瞬にして思考が真っ白になってしまった。

 

粉々にして殴り潰して、全部壊そうとしたこの決意が、簡単に白紙に戻ってしまった。たんぽぽは呆然としたように一護と視線を交差させていた。

 

「超痛てぇな、オイ」

 

一護は絶対に離さないように強く、だが痛めないよう気遣うようにして一護はたんぽぽのよく知っている綺麗な手首を握り締めていた。

 

そして突如の闖入者に困惑気味になっていた桜市子と艶光路撫子はその場で一護とたんぽぽを直視していたが、

 

「あ~あ駄目やろ、それ」

 

そう耳に、脳に声が届いた瞬間に毛穴から始めとするあらゆる穴から冷や汗が滝のように流れ出た。

ガバッ! と市子と撫子が振り返れば、そこには白い着物のような服装に身に包んだ一人の白い死神。

 

その男が、その死神が、その市丸ギンという神が近付いた瞬間に、

 

(・・・っ!?・・・またァ!?)

 

(か、ふぅッ!・・・?・・・・な、何ですのこの圧力!?)

 

市子は再び、撫子は初めての『霊圧』に圧され膝足が砕けるように腰が地に付いた。

 

「あらら、珍しい。日本人が紫色の髪って凄いわ」

 

「ヒィっ!?」

 

髪を、いや頭を撫でようとした市丸の掌に撫子は当然のように恐怖の顔で拒絶の反応を示す。

 

「中々な反応やないの~♪ 嬉しくなるやない」

 

ニヤニヤと心底嬉しそうに微笑む市丸に撫子は一層恐怖を身に染み込ませる。

 

この市丸ギンという男がどんな()物なのか撫子は何も知らないだろう、いや知らない(・・・・)から〝恐怖(こわい)〟のだ。

 

市丸はゆっくりと歩を進めさせて撫子に近寄ろうとするが、脇からヒョイっと出てきた金山姫によって遮られた。

 

「余計な事はしなくて良いのよん、死神(あなた)がふざけるだけで周囲がどれほど迷惑を掛けるか理解しているのかしらん?」

 

「いやいや、理解も見解も何も、これはただの悪ふざけですわ、悪ふざけ」

 

「尚、(たち)が悪いわん」

 

金山姫が遮ったことで市丸は的を変えるように、一護とたんぽぽの方向にへと顔を向ける。

 

「ちょいっとお二方、そらぁちいっとばかり都合良すぎるやろ、随分良い(トコ)で間ぁ入りよる、どういう心算(つもり)してそうなったん?」

 

「・・・・・だから?」

 

一護は怪訝な眼差しを一寸も変えず、ただ市丸を睨む。この男が何かと間を空けて話すのに良い展開なんて望める筈が無い。

一護は再び口を開こうと、そう顎の筋肉に脳から命令を発そうとした瞬間だった。

 

バァキィィイイイイイイイイイイイイインンッッ!!!

 

一瞬にしてその場が甲高い金属音が()ぜた。

 

(はああああああああああああああっっ!!?)

 

よくぞ反応してみせた自分ッ!! と(せま)った白き狂刃を弾き返した瞬間に自画自賛しようと思考を巡らせようとした一護だったが、間を絶たず隙間を空かせないような忙しさで急所の雁首目掛けて“射ぬかれた”。襲う剣の矢に目を奪われる。

 

「敏感やなァ」

 

連刃を正に神業の如く躱した一護に、ニヤニヤと精神的にというか琴線的に(ついば)むあの微笑攻撃してくる市丸に、いい加減怒り、いや憤怒を覚える一護はすぐに漆黒に煌めく黒刀【天鎖斬月】の柄を握り締め、

 

「てめぇえッ! 市丸ッ!!」

 

「ほらほら、さァさァ・・・・・・・・死合(しあ)おうや、伽籃菜」

 

 

 

 

一刀の元に、薙いだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「あらあら、始めちゃったわねん・・・・」

 

「・・・・どォーいう事だよ、ロリチビッチ」

 

「とんでもない呼び方しないで欲しいわんッ!?」

 

ギロリッ! と金山姫に対して向けたその眼は『憎悪』『嫌悪』などの悪意ある眼差しでは無く、

 

「はぁ~・・・・・何よん、その情けない眼は」

 

思わず溜め息を吐いてしまいそうになるほど小さな、まるで雨に打たれた捨てられ子犬のように助けを求めるようなもの眼差しだった。

 

それもそうかもしれない。

 

このたんぽぽという福の神は人間に、人という可能性に絶望した。だから上司(うえ)の命令で、福の神では到底やれるような仕事じゃない《裏》で“桜市子”という人間を抹消する為に人間界にやって来たのだ。

 

そもそも上司(うえ)の失敗した尻拭いなのだが、それは最早どうでもいい、とたんぽぽは考えていた。

この哀れで愚直で愚か過ぎる人間共を不幸のどん底に落とせるのだから、願いの為に愚鈍な行動を起こす生き物・『人間』を───。

 

─────神から視た『人間』は如何に愚かに視えていたのだろうか?

如何に滑稽で莫迦(ばか)に見えただろうか。

 

だがその滑稽で莫迦な人間の、愚かで甚だしく醜悪な生き物が。

 

果てしなく純粋に、

何処までも和やかに、

彼方まで清らかに、

此方まで朗らかに笑うその顔、その姿がどれだけたんぽぽの脳裏に焼き付いたか。

 

結局は曲がらず折られず、(ひね)くれず、最後まで足掻く人間に、本来の福の神(せいしつ)を忘れずに居たたんぽぽは、苦しむだけだった。喜ぶことが出来なかった。

 哀れで惨めで無様で汚い人間を抹消しても、身の根底にある『福』は消えなかった。

 

───どうして破滅への道に進むの?

 

───どうして幸福になったのに不幸になっていくの?

 

───どうして、幸せになれないの?

 

たんぽぽの中から『疑問(どうして)』が消えない。心の中で聞いてくる幼い自分が聞いてくる。何度も何度も何度も聞いてくる。

 自分が一番知りたいのに聞いてくる。

 

苛々する。

 

むかついてくる。

 

壊したくなってくる。

 

だから────だから────もう、聞かないで・・・聞きたくない。見せないで・・・見たくない。

 

理解できない。

 

たんぽぽの根底に眠る本音は一体どっちなんだ?

 

人間を幸福にして幸せになりたいのか。

 

人間を不幸にして幸せになりたいのか。

 

 

 

 

 

一 体 ど っ ち な ん だ ?

 

 

 

 

 

「たんぽぽォ!」

 

「────────ッッ!!!?───────」

 

白い球体が空飛ぶ宝船を直撃しそうになった時、ビルの屋上に降りて眺めていた金山姫により気付かされる。意識を戻らせ、また発射された元を辿れば、あの石蕗恵汰という男からの攻撃だった。

 

いつの間にやら全員が集結されており、今の構図ではたんぽぽと金山姫の二柱(ふたり)しか居ない。

 

(・・・あのロリ神は動かないみたいだけど・・・働く気あんのかアイツ)

 

先程の思考がまだ消えていないが、たんぽぽは直ぐに抹殺モードにへと切り替わる。仕事と私事を分けるのが出来る女の美点よん! と誰かが叫んでいた。

 

攻撃してきた石蕗に、奪還された市子や人間共を見る。

 

(・・・はっ!)

 

そうだ、とたんぽぽはまた黒い感情を浮き立てくる。

 あの石蕗という男は自分に敵意や殺意があるに違いない。家族との関係を可笑しくしていき、挙句の果てに末の弟が死にそうになったのだ。敵意があって当然だ。

 

「はは! なんだいお兄さん・・・・。まぁ分かるよ? 弟をあんな目に遭わされたんだもんね。刺し違えてでもたんぽぽに一矢報いたいってところだろ?」

 

「・・・いや? 別にそんなつもりはねぇよ。何つうか俺はただ・・・・お前に一言・・・礼を言おうと思って?」

 

 

 

 

─────────は?

 

 

 

 

「いやホントいい経験させてもらったよ。あんな豪邸普通じゃ一生かかっても住めねぇと思うし・・・・・・・でも・・・・住んでみて分かったよ。あの家には俺の欲しかったものはなかった・・・何つうのかな。それだけじゃダメって言うか・・・・・・・・・・本当はな。俺が欲しかったのは前の、ボロくて小っちゃいアパートにあったんだ・・・・本当は、ずっと」

 

石蕗は晴れた青空のように、笑顔では無く。『心底そう思ったんだよ』と感じさせる顔で、

 

「ずっと昔からそこにあったんだ」

 

思うのは愛しい弟妹(ていまい)の出迎えてくれる笑顔だった。

 

「すげえ大切なことだよ・・・な? 気付くキッカケくれたのはお前だろ・・・ありがとな・・・・」

 

その言葉が、その心の言葉(こ と ば)が、他意の無い言葉がたんぽぽの心臓を、たんぽぽの心像(トラウマ)を、たんぽぽの真像(ほんとう)をズタズタに切り裂かれるような、引き千切られるような、殴り打たれるような。

 本当に様々な感覚をたんぽぽを襲い。精神状態が破裂しそうな脳を護る為に、唯一主張出来る人間に対する【悪意】と【失意】を盾に、たんぽぽは揺らぐ意思を突っぱねて石蕗を睨んだ。

 

・・・・嘘をつけ、と。

 

「は・・・!! お前馬鹿じゃないの!? 馬鹿だろははっ!! バーカ! バーーカ!!」

 

嘘を、つけ、と。

 

「バーカ・・・・バーカ! バーカ!! バーカ!!! バーカ!!!! 強がってんじゃねーよ人間っ!!!!」

 

何年、何十年、何百年と、裏切られたか、

 

「本当はそんなこと微塵も思ってないくせにさァっ!!! どうせ本音じゃたんぽぽを殺したい程ムカついてるんだろ!!?」

 

そうだ、それしかない。とたんぽぽはやはり人間を憎まずには居られない心根がしっかりと根底の(ずい)まで確かめた。

 それを促し煽るように、まだあるんじゃないか!!? と石蕗を睥睨(へいげい)する。すると、気圧されながら汗を滴る石蕗は、

 

「そんなこと言われてもなぁ・・・嘘はついてないし、()()は」

 

『半分』という言葉に、たんぽぽは人間はやはり綺麗事ばかり言える生き物なんじゃない、と喜びと同時に『安心』を無意識にしていた。細緻ながらも人間から『敵意』やら『悪意』を受けられないと、非情にへとなれないから。

 

「半分!!? ははっ! じゃあ残り半分は何だって言うのさっ!!?」

 

「今言う話じゃねぇって意味だよ。気付け馬鹿、時間稼ぎだ」

 

口から切れた血を流しながら、勝利へと繋ぐ為に、“時間を稼いだ”人間・石蕗恵汰は、倒すべき(てき)の頭上より天高くに指差せば。

 なにやら風を突っ切る音が響いてくる。

 

 

 

 

 

 

戦いはこれからだ。

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

カキンッ!!! ガキィン!!! 鳴り止まぬ黒刃(ヤイバ)白刃(ヤイバ)のぶつかり合い。

 (そら)を踏み場に捌く脚の歩は見えない。

 ただ踏み込んで斬る只の其(タダノソレ )のみ。

 

その絶え間無く続く剣戟に、死神達は叫ぶ。

 

「ウォラァ折れろォ!!」

 

「アカンアカン、あーアカンわ。確かにボクら真剣(シリアス)醸し出して格好良く居なくなったけど、いざ戦うとアカン。あーダメや─────────────()いだ」

 

「クソがぁ折れろや折れろこのゴラァ!!」

 

『や、止めぬか、一護!』

 

端から見れば完全に戦闘場面(バトルシーン)の所なのだが、白い死神さんが次第に最初のシリアスさを霧散させていき、最終的に飽きてきて『へいへ~い、テケトーにやりまひょ~、もうエエわー、アきたわー』とブラブラし始めた時、一護は本気で雁首を斬り伏せようと思った。(だが市丸は余裕でその斬撃を避けたことで一護怒りメーター+1)

 

『一護、市丸(ヤツ)のペースに呑まれるな。ああやって此方の集中力を散らす戦法やもしれぬ』

 

「くっ! 悪い斬月、確かにそうだな。一旦落ち着いて────────────」

 

「あーきた飽きた、飽きたから戦うん止めへん? コレ絶対意味あらへんよ? 干し柿食べたい」

 

「うがああああああああああああああああああああ!!! テメェが仕掛けてキタんだろうがああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

 

 嗚呼、ダメだ。『あ』を連続で連呼し続けて出して来たからコレ完全に戦闘継続無理な方向にメリメリ入り込んでいってるよ、と斬月は刀状のままにて奇っ怪な溜め息を吐く。

 相手する市丸のペースに流れるがままに流されまくっている一護の元に、ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンッッ!!! と風を切りながらぶっ飛んできた物体を、一護の瞬発的に反応してみせ、『瞬歩』でそれを避けた。

 

 

 

 なんだ!? 反応を示す前に、市丸は面白そうに微笑んでいたことに気付く一護。

 

「テメェ、また何か考えて・・・」

 

 いるのか、と言い終える前に。市丸は白い着物を眩ませて瞬歩する。先程の突き抜けて飛んでいった物体の方にへと向かったのだろう。移動する僅かな『瞬歩』を見切った一護だったから分かったのだ。

 

「確か向こうには・・・・っ!!・・・・あの野郎ッ!!」

 

既に卍解状態だった一護は、市丸が向かった方向に誰が戦っているのかを思い出し、僅かな歩幅を踏ませた(のち)、消えた。

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

「貧 乏 神 が ぁ !」

 

時間稼ぎかよ畜生っ! とたんぽぽは天から降ってきた貧乏神・紅葉により見事、宝船と桜市子を二つ同時に奪われてしまっていた。

 そして市子と共に仏女津市のビルの屋上に叩き落ちているが、貧乏神が福の神道具(アイテム)強欲戒(ごうよくいまし)メンタル』に気付いた。

 

莫迦(バカ)が、バカ野郎が・・・・無駄だよ、ふざけやがって。あの貧乏神が戻ってきたからって今更何かが変わるハズ無いだろうが、皆無だよ)

 

両の手に納まるぬいぐるみを動かし、一切表情を変えず、紅葉と市子から視界を外さず睥睨を止まない。

 

たんぽぽは最早、歯向かうこの人間と神共を抹消しなければ任務を終えられない事を明確に決め、どうやって再び人間(コイツ)らをどうやって絶望に落とすか思案しようとするが、

 

(・・・・うん?)

 

市子を助け出したと言うのに、貧乏神は今現状の桜市子に大いに不満があるらしく、急激に助けにきた事を気怠(キダ)るそうにしていた。

 『神』は基本から気分屋なのだから、『助けにきたけど、面倒だからやっぱやめる』というのも零では無い。だが明らかにあの貧乏神は、

 

(気分屋だが“気分屋じゃない”、助けると言ったら“助ける”方の部類だろう・・・・)

 

人間もそうだが、言う事をきちんと聞く者を皆は邪険にするだろうか? 神も基本言う事を聞いてくれる人間に対しては寛大だ。神にも依るが寛大だ。

 気分屋だがプライドあるあの貧乏神はきっと助ける。たんぽぽは何百年培ってきた経験により分かった。

 

(チィッ! 何か対抗策があるな・・・・・・・)

 

だが関係無い、とたんぽぽはすらりとした四肢に力を入れ、威圧を纏う。

 

そしてある程度、二人の言動を見て聞いて分かった。

 

「私の知ってるあなたは・・・馬鹿で自己中でどうしようもない人間ですが、ピンチを打開する力は人一倍持ってた筈ですけどね? 守られるよりも先に襲ってきたヤツ()()ちゃうのがあなたでしょう? 道を塞ぐ壁があったら飛び越えて進むのがあなたでしょう!? 石橋叩いて壊れちゃっても泳いで渡るのがあなたでしょう!!? それを私に対して『まさか助けに来てくれたの?』だあ!!?? 誰だお前はっ!!!? ()ってんじゃねーよ!! それに首輪の電撃が「痛い」なんて言ってますけどね、どォうせその巨乳に神経回路の大半取られてるんだからお前にとっちゃ「痛い」と「臭い」の違いなんて対して変わらんだろーが!! ちょっとくらい我慢しろよっ!!!」

 

「うるせえええええええーーーーっ!!!!!」

 

(あの貧乏神がァ、一体何考えて・・・・)

 

 間違いなく今この現状を考えてみれば、桜市子を見殺しにする訳ではないことを理解していたたんぽぽは、一歩を踏み出そうとすると、

 

「大人しくしてりゃいい気になりやがってこの貧乳神がぁああああ!!!! 眉目秀麗頭脳明晰無病息災のこの私がどうしてあんたにそこまでいわれないといけないワケえええええええええっ!!!!」

 

 たんぽぽから見ても、周りから見てもあれは単に煽って強欲戒メンタルに刺激を与えているのに気付くが、

 

(無駄だっしょ? 小娘如きが耐えきれる痛みじゃないっての)

 

「う・・・うああっ・・・・こんな・・・こんな痛みが何よ・・・・っ!!! こんなのよりずっと・・・宙汰の方が、梨香ちゃんの方が! 石蕗の方がずっと・・・ずっとずっと痛かったんじゃないかああああああああああああああああっっっ!!!!」

 

ビシッビシッ!

 

 桜市子を、人間を縛り付けていた福の神道具(アイテム)『強欲戒メンタル』を粉々に砕け弾かせたのだった。多少の最小限の砕かれた破片によって衣服をやぶれたものの。見事に《大破》させてみせた。

 たんぽぽは歯を軋ませ、完全に怒りが頂点に達する。

 

「ふふふ、やれば出来るじゃないですか。やっぱりあなたはそっちの方がらしい(・ ・ ・)ですよ」

 

 やれやれ、といった感じに紅葉は肩を竦ませる。自分は気付いてましたよ、といった風を醸し出して紅葉はドヤ顔でキメる。

 

「さぁ! 反撃開始です!!」

 

 そして市子もキッと力強い、曇りを晴らした顔になり、眼にも力を入れ、空気を沢山吸って・・・、

 

「よくも好き放題言ってくれたわねこの貧乏神がぁあああっ!!!!」

 

「ええええええええええっ!!? まだ怒ってるよコイツ!!!!」

 

 ボッキュウウウウゥ!! と顔がもげる勢いで殴られた紅葉は大回転を決めながら横転していく。神じゃなきゃ首の骨を折れかねない威力の右ストレートだった。

 『あのね、これはあなたの本気を引き出す作戦でね』と紅葉が弁解をはかるも『それくらい分かってるわよ! それとこれとは話が別!』と互いの殴り合いにへと流れていった。

 

 そんな和やかな雰囲気を醸し出すかのように毎日の喧嘩をやり始めた紅葉と市子。

 

 

 

 

「随分と、能天気に和むねぇ君らァ。たんぽぽも我慢の限界だァよ?」

 

 

 

 

 カツンッと、黒塗りの吉原下駄が周囲に響く。

 

ほぼ下駄には歯と呼ばれる接地用の突起部があるのだが、たんぽぽが履いているのは厚い歯の下駄。到底ビルからビルに飛び移ることなど出来るはずないのは周囲の認識なのだが相手は『神』なのだから神技(しんぎ)だと思えば少なからず最小限に納得の呻き声くらいは出るだろう。

 だがそんな下駄特有のカラコロと音を鳴らすそれよりも、桜市子や紅葉たちの認識はすぐに福の神にへと向けられる。

 

「もしかして・・・闘うのかい? ハハハ、また闘うの? 弱っちくて惨めで愚かな人間がまたたんぽぽと闘うの? 言っとくけどさァ、君ら二人共一度・・・・・・・・・たんぽぽに負けてるよね?」

 

 肉眼からでも視認できるくらいに、たんぽぽの神格、いや、もとい神の威によるものか余波が空気に渡り振動と共に分かるくらいに、威圧を纏っている。

 両の手に納まるヌイグルミに力を入れ、圧倒的力を確認させるかのように放つ。もう一度あの絶望を味わいたいのか? と言わすように。

 

 だが相手の二人は怯まない。怯む筈が無い。

 ふん! と鼻で鳴らすと、市子と紅葉の元に武器を大事に預かっていた使い魔やら招き猫が飛んでくる。

 二人に投げ掛けるはたんぽぽに対し反抗の意思をぶつける物。

 

 飛来してきた木刀『蘇民将来』を力強く掴み握った桜市子。

 同じくして貧乏神道具(アイテム)である注射器を、左手に巻かれた包帯に装着させた紅葉。

 

「だからって、次も同じ様にいくとは限らないわよ?」

 

 破かれた制服を“戦いやすい”ように邪魔なものは捨て、髪などは胸元に結んであったリボンで纏め、明確な意思を表す。

 

 

 

「あの時は少し油断しただけよっ!」

 

「あの時は二日目だっただけよ!」

 

 

 

───本番はこれからだ。

 

 

「一丁派手に?」

 

「いきますか・・・ふあ~」




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