福神と死神が!   作:十握剣

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あのですね、信じられないほど放置プレイしておりました。
あのですね、生きてます。自分生きてますよ!
カメ更新とはこのこと!! 本当に申し訳ありません!

まだ読んで下さってる方はいらっしゃるのだろうか?

とにかく更新です!


Round10「蒲公英の花」

「くそっ!!! くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

「歯ぁ喰いしばれっ!!! だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

 

 違う。

 

 違 う ん だ。

 

 救いたかった。助けたかった。でもそれは叶わなかった。

 

 助けたいのに助けられない。

 助けたと思えば、勝手に滅んでいく。それも惨めに最悪に、朽ちる。

 

 

 

 助けてくれるって、言ったじゃん…………。

 優しく笑って、言ったじゃん…………。

 心を(あった)かくして、くれたじゃん…………。

 

 

 

 

(……死神さまぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「またこれかいな。あっという間やないか、決着が」

 

「なにか不満そうねん、【死神】」

 

「なんやねん。【金山神】」

 

 互いに神としての役職を再確認し合う。

 死を司り、輪廻転生の循環を管理を行う神。

 鉱山や鉄火場に司り、鍜冶を守護する神。

 

 この二柱(ふたり)だけは、静観をしていた。死神の、いや、死神・金盞花(きんせんか)を名乗る市丸ギンの用いた死神の呪術《鬼道》で隠れて見ていたのだ。

 

 その静観した結果が、第三者からの視点。

 あの『貧乏神』の紅葉が現れてから一転、桜市子と紅葉によってたんぽぽに対して攻勢にへと回ったのだ。てんやわんやの攻勢に、たんぽぽは苦戦を強いられ、結局のところ紅葉に心傷(トラウマ)を突かれ敗れたのだが、

 

(それで、あの巫山戯(ふざけ)た遊戯に興じて何かするかと思えば、本当に心傷(トラウマ)に対して策だけだった)

 

 ふざけた遊戯。

 まさに福の神からすればそれは絶対に許されざる行為を貧乏神の紅葉はおこなったのだ。

 

 勝負に勝つ為。貧乏神はまず市子とたんぽぽに同等の幸福エナジーを根こそぎ刈り取り、そして貧乏神道具(アイテム)『エナジースプリンクラー散布(さんぷ)っぷ』で不幸(・ ・)エナジーを街に撒いて散らせた。

 これにより、数分間。ランダムで万単位の人間のもとに不幸が訪れた。

 当然、桜市子は抗議していたが、貧乏神の狙いはそこだったのだ。たんぽぽも当然、不幸が舞い落ちる人間にワザワザ幸福エナジーを使わないと公言するが、それを待ってました! と言わんばかりに紅葉はその対応策を開示する。

 

 貧乏神道具(アイテム)、『オマエノモノハオレノモノスティック』という某美少女月の戦士を連想させる月や星型の杖《ステッキ》を出してきた。

 これには市丸や金山姫もツッコミを入れたくなったが、内容が『他人の幸福エナジーを勝手に使える代物』と聞けが開いた口が閉口した。

 もちろんこんな高性能な道具(アイテム)を無条件で使用出来る筈が無く、どうしても揃えておく条件も設置されていた。

 その条件とは、この道具(アイテム)は二本でワンセット、そして似た量……同量同質のエナジーを持つ者同士ではないと条件できないとなっている。

 

 これを聞けば嫌でも分かるが、この道具(アイテム)はまるで、この桜市子とたんぽぽ(ふたり)のことを前提にあったような道具(アイテム)だった。

 

 そして、紅葉が出したたんぽぽの真髄まで底突いた決着を付ける為、ある勝負を提案する。

 

 紅葉が配置した貧乏神道具(アイテム)『エナジースプリンクラー散布っぷ』によって不幸に陥った人間を救いまくる。という名の勝負だった。

 同等量のエナジー持つ市子とたんぽぽが戦い続けても決着に何ページ…………いや、…………何ヵ月経つのやらと、紅葉は天を仰ぐようにどす黒い披露のため息が吐かれた。

 市子は福の神(たんぽぽ)の幸福エナジーを。

 福の神(たんぽぽ)は市子の幸福エナジーを。

 少しでも早く相手の幸福エナジーを使い切れば自ずと決着の行方も見えてくる。

 その考えの元でのこの遊戯(しょうぶ)を持ち掛けてきた。

 その道具(アイテム)を渡されたたんぽぽは、顔が蒼白になっていくのが分かった。

 

 

 

 そして、 その勝負の決着は意外なほど、呆気なく(・ ・ ・ ・)に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 金色姫と歩いていて筈。

 たんぽぽを見た筈。

 それなのに、今は、

 

 黒崎(くろさき)一護 (いちご)はまたも市丸の鬼道により道を塞がれていた。

 鬼道の中にある捕縛や補助を主に特化した鬼道『縛道(ばくどう)』によりある空間に閉じ込められていた。

 

(あァの野郎ォォ!!)

 

 それが時間式罠(タイムトラップ)だと気付いた時には遅かった。既に一護はあの市丸(おとこ)の掌の上。

 

(ぜってぇ赦さねぇ!!)

 

 一護はその空間。空中に作られた透明な角水晶のようは結界に閉じ込められていた。あの護廷十三番隊十番隊の隊長を務める日番谷冬獅郎が『神童』と呼ばれるまでは、市丸が『神童』と呼ばれていた。

 僅か幼いながら、すぐに護廷隊に入隊が決まり、死神育成の為の学院。『真央霊術院』を颯爽に卒業した市丸の鬼道は、並大抵では振り払う事も、解くことも安易では無い。

 ()してや『鬼道』にまったく精通していない一護にとって魔法や妖術に見えるだろう。

 だが、一護は死神の戦闘術の端的用語である『斬拳走鬼(ざんけんそうき)』の中で『斬』の斬術。『拳』の白打。『走』の歩法ではまず、護廷十三隊の隊長クラス。

 いや、最早隊長クラスも越え、かなりの実力を付けている。

 

 それでも、この市丸ギンの鬼道から逃れるには、中々に骨が折れる。

 

 軽く見ても、多重の縛道が折り重なって一護を縛っている。まず対象となるモノを覆い、視認できないようにする縛道の二十六《曲光(きょっこう)》で隠し、更に本来逆四角錐の中に対象を入れ隠す縛道の七十三《倒山晶》の複重(ふくじゅう)。肝心の中では市丸の厄介な『改造鬼道』縛道の番外《百杖光牢(ひゃくじょうこうろう)》の幾重(いくえ)光縛(こうばく)

 これには一護も(ほど)けないと感じたのだが、これが意外にも修行の成果か。巧妙に力の加減を調整し、光の牢の微々たる内部構造に元となる霊子を少しずつ亀裂を発生させて、砕いていった。

 だが、その間だけでも外の眺めだけを見ているこの歯痒さに、何度も何度も、奥歯を軋ませたか覚えていない。

 

(たん、ぽぽ…………)

 

 苦しんでいる?

 迷っている?

 

 たんぽぽは彷徨(さまよ)っているのだ。あの『答』に辿り着けないもどかしさに苦しさに、最大に苦悩している。

 人間の欲に絶望し、何万回と見てきたその真実(こたえ)に、苦悩する。

 

(違う……)

 

 一護はその縛られた空間の中でも、ただ市丸たちと同じ静観なんて出来る筈が無かった。

 

(違うッ!!)

 

 一護は、分身にして最大の相棒、卍解状態の黒刀『天鎖斬月』を一刀の元に振るった。鬼道を含む全ての物が揺らぐ。空気に伝わっていくかのように振動して、破壊した。

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「ガ、ホォ!!」

 

『大丈夫か、一護!? くっ、市丸めっ! 鬼道に霊圧を誘爆させる破道を仕掛けておったな!』

 

 市丸の縛道から力業だけで脱した一護だったが、それさえ見越していたのか、市丸は(あらかじ)め縛道に仕掛けてあった破道で、一護の内なる霊力に流れるよう内部破裂したのだった。見た目の損傷ではまるで裂かれたように血が流れ、だがそれは見た目以上に内部(なかみ)の方がひどかった。死神の体となった一護だったが、この攻撃方は最大限に死神に与える衝撃は凄まじく、市丸の容赦無さを絶大に感じさせた。

 これも狙いの一つだったとすれば、どこまで一護はあの男の掌で転がされているのかと思うと、斬月は歯軋りが止まることはなかった。

 その内部による霊力破裂には、一護も意識が容赦なく刈り取られるように目眩を襲われ、焦点も合わず足下に収束させる霊子も作ること叶わず、座標が空に変わっていて、天高くある空中から街にへと、重力に従って落ちてきた。

 それを、一護を守るように斬月は人型に具象化し、片手に一護の腹を押さえて掴まえ、もう片方には『自身』でもある黒刀『天鎖斬月』をビルなどに斬りつけて、周りを傷つけながらも落下の衝撃を徐々に殺していき、道路に見事降り立った。

 

 幸いとして見ていた人間も居らず、斬月は一護の様子を窺うと、先ほどは打って変わって、しっかりと目が開いており、そのギラつく瞳に斬月は溜め息を吐けずに居られなかった。

 

(こやつは、死んでも治らんのだろうよ。阿呆が)

 

 若い状態のままである斬月は、その整った顔の口角をつり上げて笑う。笑ってしまう。

 たとえ異世界だろうと、この男は変わらないことに、外面では溜め息を吐くも、内心では大笑いだった。

 

 

 

 

 少し歩き、一護の怪我が霊力による内部破裂でかなりの霊力(チカラ)が磨耗して残りも僅か、それでもこの男は止まることを知らなかった。

 あそこ(・ ・ ・)で泣いてる女の子を放っておくことは、絶対出来なかった。

 たとえ、自身の命に危機が及んでいるとしても、それは出来ない。黒崎一護には到底出来ないのだ。

 

(……たん、……ぽぽ……)

 

 一護は無意識に斬月に呟いた。

 

───あとは任せてくれ

 

 これには斬月も満身創痍である半身にして主である一護が、ヨロヨロに歩く様を心配しながらも、無言で一護の願いを聞く。

 具象化を解き、元の黒刀に戻り、一護は悪いと思いながらも刀を引き摺りながら、足にすべての意識を集中させて、歩く。

 時間が掛かるかもしれない、手遅れになるかもしれない。だが、それでも歩みは止められない。

 

(……今度、は……護……る……)

 

 ヨロヨロと歩きながらも、上空から見た方向を思いだし、たんぽぽや桜市子たちが戦っていた場所にへと向かう。

 黒衣がボロボロになり、所々が剥き出た上半身の肌から赤黒い血が流れる。こんな姿見られたら大騒ぎものだ。

 

(あ~~でも……これ、倒れるな……)

 

 だが見栄張って斬月を元に戻してしまったことを後悔してきた一護は、目がボヤけてきた。

 

(待てよコラ、………オレは、たんぽぽに……会い……に……行くんだぞ)

 

 こんな所で倒れる訳にはいかない!

 その意志をしっかりと保ちながら、歩いていれば、

 

「なっ……死神、さま」

 

(……あ?……)

 

 以外と近くで声がした。

 声がした方向に顔を向ければ、そこにはボヤけながらも誰なのか分かった。

 先ほどまで一緒だった、女の子。

 綺麗な金髪で、よく河川敷であやとりをしていた蚕の神、東北地方にて信仰されている神々の一柱(ひとり)。小さかった女の子が、変わらずマフラーをしてこちらを見ていた。

 

金色姫(ヒメ)……か?」

 

 一護は金色姫の呼び名が長いということで、まだ幼かった金色姫に聞いて、ヒメという短い略称をしたことを今になって思い出していた。だが、それがなんだか嬉しそうに笑っていた金色姫の記憶があった。

 

「死神、さま……なんで、そんなボロボロに……あんべぇわりーのが?」

 

「は……はは、相変わらずの、訛りだな……ハハ……」

 

 怒っていたハズなのに、金色姫はボロボロになった一護に駆け寄り、肩を貸した。

 

「いい、のかよ」

 

「もうかまぁねぇ……そんな状態じゃぁごせやげるごともねぇ。いいがら早う肩貸してくんちぇ」

 

 訛りが凄いが、意味は分かる。一護は正直ありがたい申し出をお願いすることにした。

 だが、びっくりしたことに何故か最初会った時よりかなり布地が少くなく、肩まで出た半袖半ズボンに一護は思わず目を逸らすが、金色姫も後から気付いて赤面していた。

 その後は無言のままだった。

 どうして金色姫たち、福の神の妨害をしたのか。

 どうして今更戻ってきたのか。

 きっと聞きたいことがあるはずなのに、金色姫は黙って一護を運ぶ。

 きっとこの姿を、一護が血だらけになった姿を見て分かったのだろう。

 たんぽぽを見捨ててはいなかったことに。

 たんぽぽを助けに行くために負った傷だということに。

 気付いたのだろう。

 

「あ……」

 

 そして、

 

 たんぽぽが居た。





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