福神と死神が!   作:十握剣

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Round3「福の神と呼ぶには抵抗がある・・・・ふくよかではあるがなッ!」

『天地人』

 

決して大河ドラマや音楽ユニットやらから取った言葉では無く、人間が古来から語り継がれてきた言葉。

 

天地人の“天”とは《天界》を示す。

仏様や神様が住まう場所として聞かされてきた。

 

天地人の“地”とは《地界》を示され、黄泉の国、つまりは『あの世』の場所と聞かされ。

 

天地人の“人”とは《人界》を示され、今生きているこの世界をそう聞かされていた。

 

そして、その天界とも、神界とも呼ばれる世界のとある沢山の緑が溢れ、生命が溢れ、生吹(いぶき)が溢れる山の上に、豪勢な『宝船』が浮遊していた。

神界とは言ったもので、城一つを浮かせる船と言うより『艦』の字が合う大きさだった。

 

そして、宝船に建てられた城の脇に高々と『福』の一文字が豪奢に風に靡かれていた。

 

今その『福』一文字の宝船から人界へと繋がる鳥居のような門に突入した、一人の福の神が居た。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

橋の下で会った、学生服の死神少年・伊佐(イサ)と、何故か死神界にへと帰らない銀髪死神・市丸ギンと、この世界で正式の死神となった黒崎一護の三人の死神は、まさか橋の下で寝泊まりするとは思わなかったと一護は朝になってそう思った。

 

一緒に呑んでいた黒人坊主の僧侶の懋毘威(ぼびい)とボビーと《犬神》の桃央(ももお)、そして《招き猫》のタマは友人に誘われて焼肉を食べに行った。

 

あんなに飲んだにまだ動けるのか、一護は飲んでそのまま放置されている酒瓶を片付けていると、橋に下に近寄る影二つ。

 

「・・・・だからコンビニ弁当は高いと言ったのだ、金銭を無駄にするな」

 

「何言ってるんの? 別に大丈夫よこれくらい」

 

一護の斬魄刀にして相棒と言える【天鎖斬月】と市丸の斬魄刀である【神鎗】が具現化した姿で帰ってきた。

斬魄刀(カタナ)が寝るって可笑しい? と聞かれてたらどう答えれば良いだろうか。

一護は昨日、斬月と神鎗におもしろおかしく聞かれて、一護が考えて導きだした答えが『・・・どっちでも良いんじゃね?』と言われた時の斬月と神鎗の顔はなんとも言えない表情だった。

 

二人(ふたつ?)はコンビニで帰ってきた弁当を捨ててあった卓袱台(ちゃぶだい)の上に置いていった。

 

 

 

「・・・んぁあ~、茶と合うねコンビニ弁当。あ、お風呂どうしようか?」

 

「死神やから風呂入らんでも()ぇやろ?」

 

「あァ? どこらへんが良いんだよゴラァ?」

 

後から起きてきた市丸と、一護が起こさなかったら起きなかった伊佐が斬月と神鎗が買ってきた弁当を頬張っていた。

朝食にしては解放的過ぎる場所だったが、死神界で数年以上(事実はそうだが、時間の流れ的には数時間となる)住んでいたのでもう一護にとって場所はどうでも良かった。

 

そして各々が弁当を食べ終え、斬月が綺麗に面々の弁当を片付けて行き、卓袱台を囲むように座ると、死神少年である伊佐が口を開く。

 

「さぁてと? 僕に何か聞きたそうだね。伽籃菜(カラナ)くん」

 

にこっと笑う伊佐に一護はチラッと市丸を見れば、相変わらずの微笑み面。溜め息を吐いて一護は伊佐に訪ねる。

 

「『堕神(オチガミ)』についてだ」

 

『堕神』の名が出てくることを予想していたのか、伊佐は面白そうに微笑む。市丸と違う純粋の微笑みだ。

 

「ん~、その話は市丸から聞いたんだよね」

 

「多少はな」

 

「んじゃ、話す事ないよー」

 

「はァあ!?」

 

「じゃ、僕帰るね。何か上司(うえ)から仕事あるから戻って来いってラブコールされてるんだ~♪」

 

聞きたくもない事を言って、伊佐と呼ばれた学生服の死神少年は一旦一護たちから離れると、

 

「とぉッ!」

 

バシンッと片足を地面に叩きつけるように踏むと、弾丸のような速さで伊佐は晴天を突き破るように消えて行った。

 

 

ただただ呆然と、そしていきなり過ぎた伊佐消失に一護は放心していた。

 

 

 

 

おいおい、原作キャラ絡ませねぇでズイズイと進むたぁどういう了見だ!! ん? ん?

 

と言わんばかり急に場面は変わり、仏女津市(ぶつめつし)の夜の街中。

仕事帰りに一杯飲もうか、と言わんばかりに居酒屋に駆け込むサラリーマンを代表とする功労者たちが歩き交わす夜の街中。

 

光輝く飲み屋の看板やカラオケの看板、有名な料理店やチェーン店。そんな多店舗が並ぶ仏女津市の夜には人も賑わいながら歩く中。

 

何やらコスプレと言っても過言では無い格好をした女性が、両手にヌイグルミをはめて腹話術を披露しながら歩いて行た。

 

「ひゃ~まるで人がゴミのようだ~、人“混み”だけに~」

 

誰が聞いたか分からん駄洒落(ダシャレ)を)腹話術で話すコスプレのような格好、緑のトンガリ帽子の先が可愛く曲がり、だが男を誘わせる艶かしい豊満な胸と臍(ヘソ)周辺だけを見せている腹部に穴を開けた服装を着ている女性は、地面に付くか付かないか程に黒く長い綺麗な髪に黒縁眼鏡をから覗く瞳孔には何故か感情が読み取れない程に淀んでいた。

 

「ハイ!! というワケでね、やってきました人間界っ!! さっきまで朝だったのにいきなりの夜です! ミッドナイトです!」

 

「何故か場面(シーン)が変わりましたがね、ハイ! 気にせずいきましょー! というか前来た頃よりは活気があるように見えますねぇ~!」

 

「前来た時は辺り一面焼け野原でしたなぁ」

 

見事な腹話術を巧みに扱い、一人会話をするその女性は恥ずかしがる事もなく堂々と夜の街中を遊歩する。

辺りの人たちも珍しいものを見るようにその女性を眺めていた。

 

そしてその腹話術を話ながら歩いている女性の後ろには作業服を着込み、長いマフラーのようなものを首に巻いた女性が先頭に立つようにしながら後ろから付いてくる二人と共に数歩距離を離して付いていた。

 

 

「はぁ・・・憂鬱だわん・・・・」

 

そう言い出したのはポテトチップスをポリポリと食べながら歩いていた巨大な少女・・・ではなく巨女(きょじょ)だった。

 

「どうしてあたち達があんな危険人物の見張りをしなきゃいけないのよ~ん?」

 

「お黙り金山彦(かなやまひこ)ん! 何かあった時アイツを止めるのがわたち達の仕事なんだからんっ!」

 

短髪に切り揃えた方の巨女が文句を垂れていると、隣に居た長髪の方の巨女が金山彦(かなやまひこ)と呼ばれた巨女を注意する。

だが先頭に歩いていた作業服の女性が赤いマフラーで口を隠しながら喋る。

 

「止める・・・? あまりいい気になるでねいぞお()(だづ)!」

 

そして作業服の女性は前方を腹話しながら遊歩する女性を見ながら、

 

「福の神っちゃ言われとる奴は異例異質の異常人物だ。奴が本気で暴れたらおいら(だづ)が束になったって敵うもんか。おいら達に出来るのは万が一のことが起きたとき、少しでも早く神界(お上)に報告することぐれぇだ」

 

巨女の二人はポテトチップスを食べるのを止めてしまう程に今話された内容が大きかった。

二人は冷や汗を垂らしながらも作業服の女性の話に耳を傾ける。

 

「まあ奴もお上に逆らっちゃ生きていけねぇことくらい承知だ・・・・・が、とにかく・・・任務が完了すっまでアイツの機嫌損ねるような真似だけはするでねぃぞ!」

 

釘を打たれた二人は承知するよう無言で肯定の意を表す。すると遊歩していた魔女のようなコスプレをした女性に何やら彼女を連れた男性が話し掛けてきたが、軽くあしらって行こうとした腹話術の女性だったが、馬鹿にされ強引に止めるよう服を掴み掛かった。

 

作業服の女性は溜め息を吐いて人間の愚かしさに軽く嘆いた。

 

「勘弁してけろ、人間って何でこんな馬鹿ばっかりなんだあ?」

 

 

 

そう告げた瞬間だった。

 

 

 

ゴギッ!! と体が吹っ飛ばされる程の勢いのあるパンチを男性の連れである女性に繰り出した。

さっきまで悠々と腹話術で一人会話していた女性がまるでスイッチを入れたかのように急に凶暴化し、男性の彼女の顔面を容赦無くぶん殴ったのだ。

 

「えっ・・・キョ・・・キョウコ?」

 

自分から仕掛けた男からして、この緑色の魔女のような格好をしている女性が行なっている意味が理解出来ていなかった。

 

そして一発だけで終わる訳が無かったのか、追撃するように黒縁眼鏡の女性は男性の彼女の足に目掛けて思いきり飛び、前体重を乗せて“踏み付けた”のだ。

 

ボギィ!! と聞きなれない、聞きなれることのない人間の骨が折れる音に周囲に居た人たちが声を漏らす。だがそんな声を掻き消すように折られた本人の悲鳴が夜の街中を包み込んだ。

 

こんな凶暴な行動する人(神)物なんて初めて出会ったのか、どう対応すれば良いのか分からないといった感じにただ見ていた。

 

だが足の骨を折っても尚、黒縁眼鏡のした女性は容赦無く彼女を殴り続けた。

 

「お前どっかおかしいぞ!!?」

 

男性も自分の彼女を守るべく黒縁眼鏡のした女性に殴り止めようとするが、ギランッ!! と一睨みしただけで男性は腰を抜かし、鼻から鼻水を流して身体を震わす。

『え・・・? あれ・・・・』と自分でも理解出来ない恐怖で男性は動けなくなった。

 

そしてそれは同じ神様である巨女たちも狼狽えていた。

 

「何やってんですアイツ? 相手が違うでしょん!?」

 

「これが奴のやり方だよ。アイツは獲物の周辺から狩ってく癖があっからな」

 

巨女の質問に答えるのはまたしても作業服の女性だったが、その女性も黒縁眼鏡を掛けた女性の暴挙を痛々しく見る。

 

「標的が大切にしてるモノを嫐(なぶり)り痛ぶり傷つけて、無力感と孤独感を与えて少しずつ追い込んでいく・・・これだから奴の見張りは嫌なんだあ」

 

「と・・・とめなくていいのん!!?」

 

「端から見りゃ人間同士の喧嘩だあ。その内奴も気も済む────!」

 

ボキッガキッ! と殴り続けている黒縁眼鏡の女性の間に、一人の黒人坊主の僧侶が間に入った。

 

「少々やり過ぎだの」

 

周囲の人たちは『おおーッ!』と歓声を浴びながら黒人坊主の僧侶ボビーに視線が注目される中、作業服の女性は何故か冷静に、観衆の中にいる『人物』に目が奪われたのだ。

 

ボビーが今正に〝見せ場〟というのに今は集中していたのは観衆の中に唯一『オレンジ色の髪をした男』に作業服の女性は思考を停止させられていたが、その男が消えてしまった。

 

「あっ・・・」

 

思わず声を出してしまった作業服の女性だったが、ボビーが黒縁眼鏡の女性の胸に飛び込んだ時だった。

すぐに意識を集中させ、伝える事を伝える。

 

 

 

「おい、そいつ・・・・・桜市子(ターゲット)の仲間だぞ」

 

 

 

そう告げた瞬間だった。

 

「ほえ?」

 

目を点にして、男の願望を堪能していたボビー。

男の希望と願望と欲望と切望と熱望が詰め仕込まれた豊かな夢を確りと掴んでいたボビーだったが。

 

 

 

ボキリッ!

 

 

 

ボビーの両手があり得ない方向に向かって垂れ下がっていた。

 

「お・・・およ・・・?」

 

自分にされた事を理解した時には、

 

 

ズガァァァァァン!!! とコンクリートで出来た道路に頭部を打ち付けるように叩き潰されていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

橋の下から市丸と共に仏女津市を探索していた一護と斬月は意外な事に忘れていたことを思い出した。

 

「一護よ、藪蘭(ヤブラン)はどうした」

 

「あ・・・・」

 

斬月に言われるまで絶対に思い出さなかったであろう、ライオン型人形の使い魔・藪蘭。元居た世界でコンと瓜二つに似ていた人形だ。

 

確か無惨に神鎗の刀で胴体を貫かれた筈なのを一護は微かに覚えていたのだが、

 

「まぁ・・・・良いだろ」

 

「お前がそれで良いのなら構わん」

 

言い放った一護の背に目を向けると、何やら忙しなくなっているように見える。

 

斬月は一護の前方に目を向けると、

 

(一護め・・・・・見失ったな)

 

市丸たちの姿が無く、今一護たちは夜の仏女津市の街中で取り残されてしまった。

だがやっと市丸は死神界にやら帰ったかもしれないので、一護は二度目の外で寝ることを避けるべく宿探しに勤しもうとした瞬間だった。

 

「きゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

どこから悲痛の叫び声が聞こえてきたのだ。

 

 

 

斬月が声を掛ける前に一護はすぐに黒い死覇装を靡かせて駆けていた。

悲鳴を聞いて颯爽に向かう一護の後ろ姿に、フッと微笑みを零(こぼ)して斬月は一護の後を追った。

 

 

 

 

 

 

悲鳴の元となった場所にきてみれば、そこには無抵抗にしている女性に向かって暴力を揺るぎなく振るっている黒縁眼鏡の女性が観衆の中で容赦無く振り(かざ)していた。

 

「あのや・・・・ろう?・・・・」

 

すぐに仲裁に入ろうとした瞬間だった。

一護はあの黒縁眼鏡の女性を一目見た瞬間に何故か雷撃が走ったように鮮明な記憶が甦った。

 

 

ある“女の子”を思い出したのだ。

 

 

暴力を振るいながら揺らすあの黒くて綺麗な長い髪を一護は知っていた。

 

人をゴミのように見るあの女性の瞳を一護は知っていた。

 

斬月が追いついた時に、一護はただ呆然として、いや、放心したように殴っている女性をただ見ていた。

 

(ウ・・・ソだろ・・・・?)

 

理解出来なかった。

 

理解したくなかった。

 

 

一護は認めたくないように、歯を食い縛るようにあの暴力を振るう女性に向けて、声にならないような掠れた声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ウソだろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“たんぽぽ”」

 

 

 

 

 

一度咲いた蒲公英(たんぽぽ)の花は、

 

見事に枯れ果てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

放心状態の一護に、何故こんなにも衝撃あったのか分からない斬月はすぐに声を掛けようとしたが、横から乱入してきた手に一護は無理矢理引っ張られていった。

 

(今のは・・・・!)

 

斬月は動じる事無く、引っ張られて行った一護の後を追った。

 

引っ張られて連れて行かれた一護は路地裏に来てやっと意識を取り戻した。

 

「た、たんぽぽッ!!」

 

一護はその名を叫ぶと同時にまたさっき居た場所に戻ろうとしたが、

 

「縛道の六十一・・・・『六杖光牢』」

 

市丸の左手の人差し指から六本の霊力から成る光の柱状のものを一護目掛けて放たれた。攻撃性が無いが身動きを封じる鬼道の一つだ。

 

「市丸ッ! お前教えなかったな!?」

 

この言葉の意味は斬月もすぐに分かった。

 

 

(恐らくは“たんぽぽ”という名は先ほど暴力を振るっていた者の名前で、一護はそのたんぽぽという者と顔見知り、か・・・・だが)

 

斬月も市丸の意図が分かったのか、苦い顔になる。

市丸も小さな微笑みを浮かばし、珍しく真顔の顔に近かった。

だが一護はたんぽぽの事を隠していた市丸に対して怒りしか出て来なかった。

 

市丸は知っていた。

たんぽぽが一護と会っていない間にどれだけの人間の愚かしさや醜さ、絶望を見てきたか。

そしてある日を境に“優しいたんぽぽ”が居なくなった事も一護は今日まで知らなかった。

 

「・・・ここで一旦頭冷やしィ」

 

市丸は一護を縛道《六杖光牢》で縛ったまま神鎗と一緒に現場に向かった。

 

そして斬月は叫ぶ一護の側でただ佇(たたず)んでいた。

 

 

 

 

現場に戻れば、さっきまで騒いでいた場所にボビーと犬神桃央が倒れていた。

 

「心配は・・・」

 

「してないけど見に行くかい?」

 

市丸の言葉を続けるように言った神鎗に市丸は微笑みながらボビーたちに近寄った。

 

白くて長い着物を着た青年が怪我人に近寄った事で観衆から注目されまくっていたが、神鎗の美麗な顔立ちにまた一層集まってきたが、市丸は構わずボビー達を見下ろせば、幸せそうな顔になって倒れていた。

 

市丸はしゃがみ、ボビーに聞いた。

 

「どやった?」

 

「ふっ・・・・・・・・・・ふくよかであったッ!」

 

鼻血を出して気絶した変態黒人坊主を見ながら市丸は膝に肘を乗せ、手を頬に添えて唸った。

 

 

「どないしよう・・・・・・・・・・」

 

 

 

唸る声であったが、市丸はただただ妖しい微笑みを浮かばせて、舌先を舐め回す白蛇のように獲物を探す準備に取りかかろうとしていた。




ついにたんぽぽ登場!!
はやく一護とイチャイチャさせたいです!

感想など待っています!
気軽に本当に気軽に書いていって下さい

書いてる身はやっぱり感想書かれると嬉しいこの上ないです!
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