福神と死神が!   作:十握剣

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アニメ終わってしまいましたね貧乏神が!
ちゃんとBlu-ray買いますよ自分は(´Д`)


Round6「共同戦といきましょーや」

 

「豪邸ってこんな安っちぃ感じなのかのう、設備施設会社にクレーム出しとくか?」

 

「そんな事どうでも良いんだよ坊さん・・・・一番の問題は、コイツどォする?だぜ」

 

そう言ってきたのが首に赤いスカーフを捲り、犬耳を生やした青年・犬神桃央は崩壊した石蕗邸に戻ってきた石蕗恵汰(つわぶき・けいた)に親指を突き付けながら言う。

 

「だな、説明するにしてもワシらもよく分からん」

 

「なので紅葉お姐様、ご説明お願いしまぁぁす♪♪!!」

 

黒人僧侶坊主の懋毘威(ボビー)が腕組みをしながら今回の顛末の疑問に貧乏神である紅葉に取り繕(つくろ)うとして振り返り、桃央も笑顔で紅葉に聞く。

 

「あァの死神がぁあ・・・・・本当に許せませんねぇ~!! 原作でも稀に見ない激怒っぷりですよ私ィ~!!」

 

相変わらず天(そら)ばかり睨んでいた紅葉は軽く桃央たちをスルーしていた。

桃央も『無視されちった、テヘッ♪』と気持ち悪いウィンクを恵汰に向けて放つが、桃央も自分で何でこんな野郎にウィンクしなきゃいけねぇんだよあ゛ぁ? と理解して恵汰に再度睨みをきかせるがまたも無視され、恵汰は紅葉に歩み寄った。

 

「なぁ貧保田、お前なんか知ってんじゃないのか?」

 

紅葉は天に向けて糾弾していた声を止め、恵汰に目を向けた。

 

「なぜ・・・私に聞くんです?」

 

「───いや・・・・実は前にもあったんだ。こんな奇跡的なことがよぉ」

 

そして語りだす、恵汰が前に体験した奇跡を・・・・。

 

紅葉は珍しく真面目に話を最後まで聞き、そして内容も分かりきっていることだった。それも当然である。

 

“紅葉が関わっているのだから”

 

 

「信じられねぇかもしれねぇけどよ、本当にあったんだ。奇跡が」

 

そして、と恵汰は続けた。頭の中で何かが結びつけられそうな位置までに登り詰めていたのだが、まだ靄に掛かり、結びようにも結べられない。

 

「夏休みに入る直前“たんぽぽ”っていう変な女に会った・・・・・──────ソイツが・・・信じられねぇかもだけど・・・ソイツが現れてから急に生活が変わった」

 

たんぽぽという女性が関わったことで変わっていった事は実に明白にして明快だった。

そして石蕗は経緯(いきさつ)を話していけば、貧保田のある“部分”について指摘した。

そのある“部分”はというと、頭に巻いてある『貧』についての指摘だった。

 

初めて指摘されたことにより紅葉も暫(しば)し呆けたようにしていると、今内心に渦巻くことを溜め息を吐きながら口にした。

 

「はあああぁあぁ~~~面倒臭(めんどくせ)ぇ~~~隠し通すの面倒臭(めんどくせ)ぇえ~~~~!!」

 

「え゛!! お姐様!!? あんたまさか!」

 

 

正体を曝(ばら)すのはいけないことなのだが、信じるか信じないかは聞いた側なのだから、紅葉は『宗教家扱いされるだけだし』と言って堂々と理由(ワケ)を話すことにする。

 

「今回ばかり味方は多い方がいい・・・・・」

 

「何の話だよ?」

 

石蕗が紅葉に問い出そうとすると、広い屋敷の広場に『黒い衣に纏った者』が降り立っていた。

 

「そう、今回ばかりは“味方が多い方がいい”のです」

 

紅葉は石蕗の肩に手を添えて、広場に降り立って人物にも声を掛けた。

 

「ふふふ、では王子さま方には協力してもらいましょう」

 

スタスタと淀み無く黒衣の者の近くまで来れば、紅葉は自慢顔で親指を立て、告げた。

 

「共同戦といきましょーや」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「よぅ」

 

「ん・・・・・・・・?」

 

仏女津市上空、そこには青海と広がる晴天に腰掛けるようにして悠々自適に胡座を掛(か)いていた白い着物に身に包む死神・金盞花こと市丸ギンが居た。

 

市丸は背後から声を掛けられ、不意に返事をしてみるも、|また(・・)も奇襲が無かった。

 

はぁ~、と溜め息を吐いて市丸は背後に居る人物と相対する。

 

「また、奇襲(やらか)してこないんかい・・・・・甘いを通り越して、気持ち悪いでいい加減・・・・・・・・伽籃菜(カラナ)」

 

伽籃菜と呼ばれた人物、黒衣を纏った青年の黒崎一護は睨むようにして市丸に答える。

 

「奇襲だぁ? はっ! 馬鹿言ってんじゃねえよ。市丸」

 

カチャッ、と、一護の片手に握られた黒刀『天鎖斬月』の柄尻に付けられた鎖が鳴らす。

 

「俺は別に騎士道精神乗っといて正々堂々戦いましょう、でやって来たんじゃねえ。俺は・・・・・」

 

そこで区切り、

 

「俺はな、市丸・・・」

 

構え、

 

「俺は、自分勝手に誓ったんだよ」

 

そして、告げる。

 

 

 

 

 

 

「あの蒲公英(はな)を咲かすってな!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は数分前に遡り、

 

 

 

 

一護は紅葉たちと会っていた。

死神である一護にボビーや桃央、タマたちが戦々恐々としていた中、紅葉は微笑を浮かべて一護に説明したのだ。

 

桜市子という幸福少女について、

 

石蕗兄弟妹たちに犯した罪について、

 

そして、福の神について、

 

 

一護は歯を思いきり軋め、同時に悲しみや苦々しい表情を浮かばせて話を聞き入っていれば、紅葉は笑みを浮かばせて言う。

 

『大丈夫ですよ、石蕗さんのご兄弟妹は無事です。ですが、その兄弟妹を救って市子(ひと)が今大ピンチなんです』

 

そこで! と紅葉はキランッと目を光らせて一護に積める。

 

『福の神“だけ”なら私の神聖で崇高な作戦と、まぁある程度使える友人たちでなんとかなれたんですが、福の神“だけ”では無いんですよ? 貴方なら分かるんじゃありませんか?』

 

随分と仲間に対する扱いが酷いことと、紅葉の言いたいことがなんとなく分かってきていた。

 

『あの白蛇の相手を貴方に頼みますよ。倒すも良し、引き留めも良し、帰らせるも尚良し。どちらにせよあの細目タラタラ自由奔放悠々野郎の足止めをお願いしたいんです』

 

『お前、いち・・・・・じゃなくて、金盞花のこと知ってんのか?』

 

『ええ知ってますけど今必要ですか? 知る必要性がありますか、えぇ? 無いですよね知る必要? とにかく内容は分かっていただけましたか? え? ん? ん?』

 

『わ、分かった! 分かったからいきなり注射器出すなよ! どっから出したその大きさで!?』

 

桜市子という少女奪還作戦はこちらでやる、と紅葉は言って、ただ端的に分かりやすく、簡単に言い渡してくれた。一護のやることを

 

 

 

“倒すも良し、引き留めも良し、帰らせるも尚良し”

 

だったらやってやると一護は【斬月】を握り締め、

 

 

 

 

 

市丸に、臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い月牙が市丸の眉を掠める。

 

(アララ? 結構本気かいな?)

 

黒い月牙が過ぎたと思えば、次には瞳孔目掛けて黒い刃先が刺突(つ)いてきた。

 

(あなっ!?)

 

市丸は微力に残る空中の霊子を蹴るようにして踏み抜けば瞬時にその場から瞬歩で消える、黒刃は空中を貫き、黒刃が淡く輝き始めた。

 

「ホンマに真剣(マジ)でやってくるんやな」

 

「避けん、じゃ、ねぇぇぇぇえええええ!!」

 

市丸が陽気に話し掛ければ一護は黒い斬撃の“波”を作り、それを浴びさせるように市丸に放つ。

 

だが市丸は常に余裕を崩さずにその黒波を見て微笑む。

 

「改造鬼道、縛道の番外・・・『断空万見(だんくうよろずみ)』」

 

人差し指を突き出して、そう告げれば一護が放った黒波は八角形状の防壁で防がれる。

だが一護は驚きの表情など一切無く、相手が防ぐことを理解した上で次手を振るう。

 

「後ろががら空きだぜ」

 

一護は天鎖斬月を肩に掛けたまま市丸に告げれば、直ぐ様黒刀を降り下げた。

市丸は鬼道に集中してるせいで身動きが取れない。それを狙った一護は良い線をいっていたと思うのだが、相手は市丸ギン。

 

本心を惑わす男が相手では、一護には合わなかった。

 

「断空万見、ただの防壁やないで少年?」

 

黒い一閃が放たれようとした瞬間に、降り下げる“途中で何かに引っ掛かった”のだ。

 

(なに!?)

 

一護は力を入れて柄を握り締め、思いっきり下げようとするが全く動かない。

 

|まるで見えない壁に引っ掛かってるように(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「断空が万(たくさん)見てはるんやでェ? ボクの背後も見てるに決まってるやろ~?」

 

市丸は微笑むようにして一護に振り向けば、一気に一護は冷や汗が滝のように流れだした。

 

「破道の三十一・・・『赤火砲』」

 

「んなっ─────ッ!!?」

 

 

バチバチっ、と一護の目の前にまるで導火線に火が着いたように、蛇腹状になったと思えば一護をブォガァアアアアア!! と真っ赤な炎が包み込んだ。

 

 

市丸は独自に編み出した改造鬼道の一つ、縛道の『断空万見』で四方八方に防壁を作り出していたのだ。大小異なるその防壁は市丸を守るように囲ってあり、その囲った内側から外側に攻撃出来るよう破道の十二番『伏火(ふしび)』で導火線を作っていたのだ。

 

拷問など炙り焼きする破道でもある呪術なのだが、どちらかと言えば今回のケースように攻撃補助用として活躍する。

 

『伏火』で作った導火線に、市丸の『赤火砲』が外側に出るように赤い炎が通った後は、赤い線が残るように市丸の周りを漂っていた。

 

その表情は本当に余裕顔であり、笑みを絶やさず、掌で日を隠すように笠にして目下、下方の確認と今の状況の二つの意味を込めて確かめれば、また口角を吊り上げる。

 

「|福の神(あっち)もおもろい事になってるなってる・・・ヒャア、なんや人数増えとるなァ」

 

ズムズム、と空中の霊子を踏み進めば、霊子の煙が舞い上がる。

 

 

白の死神は微笑を浮かべて、下にへと歩を進めた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「桜市子を取り返しに来たんわお前(め)ぇさん達(たず)だげじゃ無(ね)ぇみてぇだな」

 

「うらあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

上空で一護と市丸が抗戦したと同時に、山中で福の神たちが桜市子を神界に連れて行こうとした寸前で見つけたのだ。

市子の友人である竜胆嵐丸が、市子の友人である艶光路撫子(あでのこうじ・なでしこ)がやって来ていたのだ。

 

「なんですのあの空での戦い!?」

 

「私それよりも可愛いらしい少女が何処なのか気になりますお嬢様」

 

「忍(しのぶ)、貴方帰ったら辞表作りなさいな」

 

少女と言っても過言ではない小さな女の子、艶光路撫子が何本もの苦無(クナイ)を投擲すれば福の神にして蚕神でもある金色姫が生糸で弾き返していた。

 

「行けっ・・・たんぽぽ!!」

 

そう金色姫が叫べば、市子を乗せたたんぽぽの愛車(愛機?)宝船型バイク『千年逢機(せんねんおうき)』が浮かび上がりエンジンに火が灯る。

 

嵐丸は金色姫の生糸の矢を躱(かわ)していき、市子に手を伸ばすが、

 

「いちっ・・・・・!!」

市子の顔には、笑顔で『バイバイ』と嵐丸に告げた。涙を溜めて、

 

「市子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

涙を溜めた少女はわざわざ助けに来てくれた大切な友達を目に残したまま、思う。

 

(これで、これで誰も傷つけられずに済むんだ。これで・・・・・・・・良かったんだ・・・)

 

そう思いながら、山から登るように離れていく宝船型バイク『千年逢機』は迷うことなく門(ゲート)目掛けて突き進む。

 

操縦しているのは黒く長い髪を揺らす福の神・たんぽぽ。

 

任務を達成するべく桜市子(エモノ)を運ぶたんぽぽの頭には、やはり萱草(かんぞう)色の髪の死神を思い出していた。

 

(死神・・・さま)

 

何なんだ! たんぽぽは頭(かぶり)を振って意識を集中させ、空中で微笑みながら傍観している白銀の死神を通り過ぎれば鳥居型の門(ゲート)に突っ込む寸前だった。

 

 

ズシャァン!!!

 

「なぬ・・・!?」

 

「・・・っ!!?」

 

鳥居型の門(ゲート)が、黒い月牙で打(ぶ)ち壊されてしまった。

 

金色姫は空中で門(ゲート)を壊されたことに驚き、たんぽぽは見覚えのある技に憂慮が過(はし)る。

 

 

門(ゲート)が無惨に斬り壊され、地面に鳥居型の門(ゲート)の破片が落ちて行く中、そこに黒い衣に纏った青年が居た。

 

 

「行かせるかよ」

 

 

頭髪は萱草(かんぞう)色、片手には漆黒に染め上げられた斬魄刀(かたな)、柄尻の黒い鎖が鳴る中、伽籃菜(カラナ)こと黒崎一護は金色姫たちと対峙した。

 

ガクッ! と肩を震わす金色姫の瞳にある一人の死神が写っていた。

 

黒刀を携えた黒崎一護。

 

 

(何でだ! 何でそっちさ付いた死神さま!!)

 

拳を震わせ、目頭を暑くさせた金色姫。作業着のような服装に身に包み、黄色い髪を短く生え揃えた頭には毛糸で出来た帽子を揺らして、一歩前に踏み出す。

 

熱くなるな、熱くなるなと頭で叫ぶは身体が従わない。

 

「何しだ・・何(な)して・・・・・・・・何(な)してそっちに居るんだ死神さまぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

「ちょ、ちょっと金色姫ん!?」

 

一護目掛けて飛び駆(か)る金色姫に金山姫が呼び止める静止さえ無視し、一護に生糸の槍の矢を放つ。

 

一護はたんぽぽの他に、金色姫のことも覚えていた為に、金色姫の叫びの一撃に反応が遅れてしまう。生糸の槍の矢は死神の正装でもある黒い着物、死覇装(しはくしょう)目掛けてめり込んだ。

 

「ぐぅ!」

 

「オイ、アンタ何してんだ!」

 

そこに嵐丸が割り込もうと乱入しようとすれば金山神の双神(そうじん)が立ち塞がり、再び激突が始まった。

 

 

 

 

上空から宝船型バイク『千年逢機』から下方で繰り広げている乱戦に、たんぽぽは“惑(まど)い”と“怒り”で顔を歪ませていた。

 

 

───何をしているんだ?

 

たんぽぽは理解出来ず、だが徐々に、そして沸々と普通だった怒りから、赦せない忿怒(ふんぬ)にへと様変わる。

 

「─に─し────だ───な─を─て─る──よ───────────なにをしているんだよ・・・・・・・・」

 

「えっ・・・?」

 

千年逢機を操縦しているたんぽぽが俯きながら呟いたことに、市子は視線を向けようとする。だが市子の背後から夥(おびただ)しく、蠢(うごめ)くように、犇(ひし)めいた『霊圧』をその身に受けた。

 

「───かっ───はッッ───」

 

まるで肺から全て酸素を抜き取られ、息が出来ないような圧迫感。市子は『霊圧』なんてものを知らない。だが神格ある神物(じんぶつ)たちから受ける圧力感に身に覚えがある為にこの圧縮する感覚が誰のものなのかすぐに検討できた。

 

この間攻めてきた貧乏神たちに居た【死神】。

 

初めて会った時から気持ち悪さと吐き気に襲われ、死体から放たれるという“死臭”が恐らくこういう匂いなんだと思わせる香りが鼻孔に入り込んでくる感覚。

 

人間が味わう『死への恐怖』がずっと纏(まと)まりつく感覚(コレ)は好き嫌い問わず無理だ。

 

市子は微かに呼吸をしながらも、苦しみ耐えて振り返ればそこに、

 

「やァ、お元気にしてた? ボクのこと紅葉嬢から伺ってないんか?」

 

白い着物を麗々しく靡かせて、

 

「ボクも意外と多忙なんやでェ? 上司(うえ)のムチャぶり我慢して業務に勤しむボクって尊敬されても可笑しくないやろ~?」

 

空井(からい)のように微笑みながら遊歩して近寄り、

 

「給料も仰山(ギョーサン)貰な、釣り合ないのう」

 

ニヤニヤと笑うその口角は何処までも上がるようで、

 

「けど、どーせ足しにもならん給料かもしれんねェ・・・う~ん、あ、なら名案。今ここで君を助けてあげようか?」

 

空嘘(からうそ)をまるで真言のように語るその口に、市子は恐怖と共に少しだけ怒りを覚える。

 

「カハァ、はぁはぁ・・・・・ふん、アンタそれ嘘と思わない方が可笑しいわよ、ハァハァ」

 

笑う死神、市丸ギンが微笑みを浮かばせながらも思った。

 

(上手い具合に幸福エナジーを抑えてる・・・福の神|道具(アイテム)の事は聞いては居るやけど・・・・・この娘)

 

気情(きじょう)に振る舞う桜市子に、市丸はこの虚言(うそ)に騙された死神の女性が居たのだが、どうやらその女性とは違う性質の女の子なんやな、と勝手に結論つく。

 

市丸は思い悩む福の神・たんぽぽを横目に口を挟む。

 

「たんぽぽちゃん、早(はよ)うせんと金色姫ちゃんに伽籃菜(カラナ)取られるで~」

 

笑い声で言う市丸にたんぽぽの琴線に触れた。

 

「き・・・サマぁ!!」

 

万人が見れば万人が一斉に恐れ戦(おのの)くだろう睨みを効かす。たが市丸はその睨みを可愛らしい上目遣いとでも思うかのように受け止め、再び言葉を漏らす。

 

「ホラホラ来たでェ~」

 

そう言葉を言ったと思った瞬間だった。市丸ギンが瞬歩でその場から消えたその時、

 

 

ドゴォォォオオンン!!!!

 

 

宝船型バイク『千年逢機』が“何か”が衝突して揺れた。

 

「きゃあ!!」

 

「ぐっ!?」

 

揺れる千年逢機を立て直し、たんぽぽはその衝突した物体に目を向けた。

 

(毬(まり)だとッ!?)

 

重力に従いに下に落ちていく球体にたんぽぽは昔、福の神の姉貴分でもあり先輩方でもある先達の福の神たちに聞かされた日本古代の貴族たちの遊戯を思い出していた。

 

鹿革製に出来た毬を蹴り遊ぶ野外遊戯だと聞いた“蹴鞠(けまり)”を思わせるスポーツ。

 

あれが俗に言う現代の『サッカー』というヤツか、とたんぽぽは千年逢機のハンドルをヌイグルミ越しに握り締める。

 

放たれた場所は何処だ! あとあの銀髪死神ヤロウふざけやがって! とたんぽぽは口走りながら探していると、また次の砲撃がやってきた。

 

ズォオン!!!

 

次に大破したのは千年逢機帆で、近くに座らせていた桜市子は『きゃあぁ!!』と頭を低くして身を縮ませていた。

 

「ッくォの!」

 

今の砲撃で完全に出所が分かったたんぽぽはその方角を見てみれば、そこに居たのは二人と一匹の影。

 

「・・・チッ! 邪魔してんくれるねぇアイツら!」

 

千年逢機のアクセルを全開にして突っ込もうとしたたんぽぽは上方にあった門(ゲート)に向かっていた為、急カーブの如く曲がり、砲撃主が居る場所に向かおうとしたのだが、

 

「アラアラ、ダメやない、たんぽぽちゃん」

 

微かに市丸ギンの声が背後から聞こえて、振り返るたんぽぽ。

 

すると、

 

「あ・・・」

 

「・・・あ」

 

『遠心力』

円運動をしている物体に働く中心から遠ざかろうとする力。

 

今まさに市子はその遠心力によって“空中”に身を投げ出されていた。

 

「わあああああああああ!!!」

 

「市子ぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉっっ!!!」

 

それを見ていた竜胆嵐丸が人間業とはかけ離れた疾駆で市子の元に駆け付ける。

「くっ!」

 

「待つのよん金山彦ん! 一秒でも早く駆けつけたあの人間じゃないと桜市子を助けられないん!」

 

「金山姫ん・・・・・(ここまで来てまで、人間を想うのねん、金山姫ん)」

 

嵐丸が山から超特急で下山して行った背中を見ながら金山姫、敵対している嵐丸たち一行と保護兼対象者として見ている人間味方主義の金山姫に金山彦は純粋に心配の念が浮かんだ。

 

もし、この純粋で優しい女神が人間に手酷く騙されたりしたら、きっと心に傷がつく程度で終わらないかもしれない。

 

守ろう、金山彦は掌を強く握り締めそう誓った。

 

珍しく金色姫が一人で独走している中、

 

フワァッ、と空中から降り立った者が一人。

 

「なァんや、良い感じに暴れとるやないのたんぽぽちゃん」

 

「あ、貴方は!?」

 

ニヤリと微笑み掛けてきたのは神、【死神】である市丸ギンだった。

 

「金山神のお二方は桜市子ちゃんを追いかけなはったらどうや、たんぽぽちゃんが腹いせで何かするかもしれんでェ?」

 

その微笑には一体何が張り付いているんだと思わせるような感じで言ってきた市丸に何か言おうとした金山姫だったが、そこを金山彦が静止させる。

 

「行くわよん、金山姫ん」

 

「・・・・・分かったわん」

 

「金山姫ん・・・・」

 

「断っておくけどたんぽぽの為じゃないわん・・・わたちはもうあの神(ヒト)のせいで人が傷つくのを見るのは嫌・・・だからん・・・・・・・・わたち達の力を見せつけてあの子達を追い払うのよん!!」

 

力強く言った金山姫には強い意思が宿ってあり、金山彦はもうそれ以上の言葉は掛ける意味無しと分かり、金山姫と共に意思を固めた。

 

「よ~しん!」

 

二人の意思表示に市丸も了承したと受け取り、後は金色姫ちゃんと一護やな、と振り向けば、

 

「ぐわぁー!!」

 

「ゴホォっ!?」

 

普段と市丸ならば避けれたであろうその衝撃に、市丸は思いっきり顔面にぶつかった。その衝撃でぶつかった物と一緒に仏女津市の市街地へと飛翔していった。

 

「死神さまぁぁぁぁあああああああ!!!」

 

投げ飛ばしたのはどうやら金色姫らしく、投げ飛ばされたのは一護らしいその飛翔した軌跡を追う蚕神。

 

投げ飛ばされた一護はと言うと、

 

「くそ邪魔だよ! 市丸!!」

 

「・・・君やっぱりおもろいわ、一護くん。顔面を思っきし強打されたボクが悪いなんて、君ィ最高に上々やでぇ」

 

何やら二人で争い始めていたが、見事に仏女津市の市内に到着していた。

 

 

 

 

そんな死神たちが繰り広げている小さな争いを他所に、肝心な桜市子は嵐丸にキャッチされていたがたんぽぽに空中で見事に邪魔され、また市子は空中に取り残されていた。

 

だが、流石は神の一人だと言わざる得ない常人離れした脚力でたんぽぽに仕掛けた神一人。

 

「いつまでも自分の思い通りにいくとおおおおおっ!!」

 

『犬神』桃央だった。

小型犬のチワワ姿でたんぽぽに襲い掛かるも、

 

「ふん!」

 

「素敵パンチ!!」

 

軽い感じで殴り飛ばされた桃央は驚喜に満ちたりた顔であった。

 

「文字通りの『負け犬』が・・・お前なんてはじめからアウトオブ眼中なんだよ!」

 

相変わらず口を動かず腹話術で話すたんぽぽに不気味に思えた桃央だったが、同時に予想通りに事が運んだ。

 

「お前こそ見下してばかりいないでもっと周りを見ろよ」

 

殴り飛ばされた快感で、見事犬化から人間に変身していた桃央は空中で市子をキャッチする。

 

「飛ばしてくれてありがとよ! おかげで変身も出来たぜ」

 

そのまま仏女津市の高層ビル屋上に降り立とうとした桃央だったが、たんぽぽがソレを許す筈が無い。

 

「来てるぞ犬っ!!!」

 

「────ッ!!────」

 

嵐丸に告がれた言葉にすぐに理解した桃央、たんぽぽが桃央に千年逢機で見事空中で轢(ひ)き当てるという未来でしか出来ないような衝突攻撃に、市子を庇うようにして体勢を整える。

 

ゴォォツッ! と犬神だけあり、骨が折れるような音がしなかったが、思いきりあり得ない方向で衝突された桃央は『がふっ!』と息が一気に吐き出された。このままではまた市子が拐われると思った桃央は、市子を掴んだ腕の膂力(りょりょく)をフル活動させ、

 

「市子お姐様・・・・ご無礼をっ!!」

 

仏女津市の大道路を疾走している桜市子の同級生でもあり、たんぽぽの被害者でもある石蕗恵汰(つわぶき・けいた)目掛けて放り投げた。

 

たんぽぽは人間業であんな走れる筈が無いと思っていると、太陽の光で反射した何かに気付き、石蕗の足首に目線を運べば、何やら数珠玉のような仏具を填(は)めているのに気付いた。

 

「今行く!」

 

さながら本当の王子のように囚われの姫君の助け出す場面に、皆が心を輝かせながら見入ってしまった。

 

 

 

 

金色姫は死神同士で小競り合いをしている連中を見て多少熱くなっていた頭を冷やし、今一番の重要性に気づく。

 

(オイラとしだ事(ごと)がっ!)

 

山中にはもう誰も居なくなっており、市街地に場所を移している市子奪還チームを追い駆ける。

 

山中から仏女津市の入口付近まで疾駆していた艶光路撫子(あでのこうじ・なでしこ)が忍者と引けを取らない駿足で駆けていれば、背後から影二つ、

 

「撫子様っ危ない!!!」

 

「忍!!?」

 

撫子目掛けて放たれたのは一鎚の攻撃、金山神が扱う金鎚(カナヅチ)と火バサミが襲い掛かってきたのだが、艶光路家の執事にして、撫子直轄の執事・大門忍(だいもん・しのぶ)が撫子を庇うように負ぶうようにして避けていく。

 

 

そして流麗な動作で撫子を降ろせば、すぐに襲い掛かってきた金山神の二人と対峙する。

 

「幼女(彼女)たちの相手は私が(ハート)」

 

「頼みますわよ変態執事!!」

 

至極真面目な表情で物凄い足止め宣言をした忍だが生憎とこの執事は変態ロリコンであるが為に、主に変態呼ばわれされている。

 

だがそんな撫子の言葉にまで忠を尽くす忍は目の前の敵、金山神たちを観察する。

 

(・・・?・・・この人間、わたち達を細かく観察し、分析した後に戦おうとしてるのん?)

 

巨女から幼女に変身している金山彦が身の丈以上もの金鎚を持ちながら忍を見定めていると、同じく幼女姿に変身している長髪を靡かせた可愛らしい金山姫が火バサミを両手で持ちながら忍に問う。

 

「わたちと戦(や)り合うと言うのん?」

 

その返答に忍は、まるで言ってる意味が分からないと言うようにして、

 

「・・・争う?・・・そんなまさか────」

 

その一瞬(ひとまたたき)の隙に、忍が言葉を吐いた息継ぎをした刹那の如く、

 

「──こんな玉のような肌を傷つけるなんて、私にはとてもとても・・・・」

 

「は・・・・はやい!!」

 

金山姫の顎をクイッと上げるように優しく片手で上げ、見下ろすようにして忍は愛しさと優しさに満ち溢れた眼差しで金山姫を見る。

その場面にはまるで赤い薔薇が咲き乱れるようにしたピンク色の雰囲気(オーラ)が漂っていた。

 

忍(コイツ)の常人外れた脚力速度に怯んでしまうも、忍の強引そうで何処か優しく見てくれる眼差しに思わず金山姫は頬を紅潮して、ウットリとしてしまっていた。

それを横で見ていた金山彦は焦りながら金山姫の腰にまで手を伸ばしている幼女紳士(ロリコン)に武器通りに文字通りに鉄槌を下す。

 

「汚い手で金山姫に触るなん!!───ってちょっとん!? あなたもボ~ッとならないでん!!」

 

金山姫は名残惜しそうに掌を握り締めながら口を覆い、幼女の攻撃さえ愛おしそうに受けながら流星一閃に空に飛んでいった。

 

死んでもおかしくない鉄槌を喰らった執事・忍は空中で『ふふふ、まったく、お転婆な方だ・・・』と鼻血を流血する程度の軽傷で呟いていれば、桜市子を空中で救出しようとジャンプして飛んでいた石蕗の横を通り過ぎた。

 

「失礼!!」

 

「おわっ!?」

 

流石の忍でも空中では何も出来ないが故に、詫びを一つ告げて石蕗の横を飛翔していき、体勢を崩してしまった石蕗は飛翔していった執事に苦言を漏らす、だが漏らす為に背後に顔を向けていて正面には何も見ていない状態になり、

 

「危ねえな執事っ!!」

 

「わーーーっ石蕗っ!! 前見て前っ!!!!」

 

「・・・・あ?」

 

落ちてくる市子が必死に叫びながら知らせる中、石蕗が正面を向き、待っていたのは──────────────────、

 

 

 

 

 

 

我が家の執事が愛する石蕗様の邪魔をしたことに同じく苦言を漏らし、前を見ていなかった撫子。

 

「忍!? 何をやってますの!? って、え?」

 

ビルとビルとの間を飛び駆ける撫子が次に着地する場所には見事に嵐丸が立っており、このままいけばぶつかってしまう。

 

「きゃーーーっどいてどいてどいて!!」

 

「撫子?」

 

 

 

 

それは奇跡的に同時に起こった出来事。

 

石蕗は振り替えれば市子の豊満な胸に顔がダイブし、その弾力ある豊満な胸にバネの如く「ばい~ん!」と効果音が聞こえてしまうかのように石蕗を弾き、道路にドゴォォォオオンン!!! と危うく一つになってしまいそうな程の落下をした石蕗。

 

そして撫子に呼ばれ、つい振り返ってしまった嵐丸は無抵抗にどうしようも無く手をYの字のように広げた撫子は、その胸で嵐丸に衝突する。

こちらは「ばい~ん!」等という効果音では無く直(ちょく)で「ゴッ!」と身体の体重をぶつけられた嵐丸は『んごっ!!?』と白眼になりながらグゥオンッ! と首が駆動限界スレスレまで曲がりながら吹き飛ばされる。

 

「いたたたたたた・・・・・」

 

「お前なあ~」

 

重傷という訳では無く、嵐丸は揺すぶりられた脳内を落ち着かせて、他の心配事を撫子に告げた。

 

「───つうかお前の胸って全然弾力無ぇな」

 

俺でももうちょっと、と嵐丸は撫子の胸をポンっ、と触り『あ・・・ぁ、ぁあ・・・・うん』とかなり微妙な顔で明日の方向に視線を向けた。

 

撫子は一瞬にして嵐丸から距離を取り、

 

「び・・・っ!!! 貧保田(びんぼだ)よりはマシですわ!!!」

 

何処からともなく貧乏神の紅葉が『あ゛ぁ!!?』と怒り剥き出しで言ってきそうな発言をしている撫子と嵐丸に、黒い影が覆った瞬間だった。

 

ズガァ!!!! と。

 

あらゆる物理的攻撃を纏め上げたかような“鉄槌”が嵐丸を襲った。

 

「乳くり合ってる場合ん!?」

 

ガシャガシャ!! と砕かれたビルの屋上に立っているのは剛力の如し力で巨大な金鎚(カナヅチ)を片手で持っている金山神の金山彦が白煙の中で構えていた。

撫子と別れて避けていた嵐丸は向かいのビルに飛び越えながら様子を窺っていると、ガシッ! と巨大な玩具のような鋏に挟まれた。

 

「しまった・・・・・!」

 

「非道(ひど)い人達ねん・・・」

 

その玩具のような鋏を持っていたのは長髪の美幼女・金山姫だった。ビルの屋上から嵐丸を捕まえたのだ。

可愛らしい姿なのに難なく人間を挟み持ち上げているのが容姿だけに不気味である。

 

金山姫は淡々と口を開く。

 

「あなた達が後ろ髪引くような真似をしたせいで桜市子(あのこ)の覚悟が鈍っちゃったじゃないのん・・・・」

 

金山姫は落とさぬように、玩具のような巨大鋏で嵐丸を確りと固定していれば、また思ったことを口にした。

 

「これじゃあの娘が何のために自分を犠牲にしたのかわかんないわん、友達なら彼女の思いを汲・・・・・」

 

「友達を見捨てるのが覚悟なもんかよ! そんなのぁただの諦めって言うんだよ!!!」

 

金山姫は彼女の、いや、人間の言葉に耳を傾ける。それがこの少女だけの意見だったとしても、確かにそこには意思がある言葉だから。

 

「俺は市子の友達だっ!! 市子が楽しい時は一緒に笑うんだ!! 市子が辛い時は一緒に悩むんだ!!! てめぇの物差しだけで喋ってんじゃねえええええええええええっっ!!!!」

 

極端に無表情になろうとしていた金山姫は僅かに唇を噛む。

今目の前で喋っているこの少女の言意に、金山姫は意思が揺らぎはじめたのだ。

だがそこに、

 

 

「だったら一緒に死になさいん!!」

 

 

ガグァン!!! と嵐丸に重い衝撃に襲われた。

 

「ぐわああああああああ!!」

 

何十階もある高層ビルから落下していく嵐丸に金山姫は少し爛(ただ)れる思いが漂う中、攻撃した姉妹に顔を向ける。

 

「金山姫ん! あまり人間と話しちゃ駄目よん!」

 

綺麗な金色の短髪を揺らし、金山彦は金山姫の肩に手を添えながら心配そうに伺う。

 

「・・・えぇ、ええ! 分かってるわよん」

 

ぎゅっ! と金鋏を強く握り締めた金山姫は力強く金山彦をを見て、頷いた。

金山彦はそんな金山姫を見て安堵の息を吐いて落とした怪力女の安否を確かめる。

 

落とした張本人が安全か否かを確かめるなんて、滑稽ねん、と金山彦がビルの下を見れば、そこには石蕗と言った男が嵐丸を助けたのか、無事のままで居た。

 

「チッ! 死なないよう手加減したのが仇になったわん! まったく!」

 

いくら敵対する人間とは言え【福の神】の神格に入る金山神。聖域や神聖な場所が“山”と称されることが日本古来から伝わっていたから僧侶や坊主、お寺や寺院といった神を拝める場所は大抵は『山』に建てられた。神名の“金山”も鉱山からきているのだ、つまりは神聖、つまりは聖域の金山彦。

 

神を崇めた人を、神と讃えた人々を蔑ろにしてしまえばその神はすぐに『悪神』となる。

 

今回のケースは相手側は『神』が相手してるなんて微塵にも思っていないが故の反抗だろう。だからその無知には大罪を犯したと言っても、それは赤子に文字を書けと言う程に無茶な話だったかもしれない。

 

「だからと言ってすぐ『殺す』なんて物騒な事は出来ないのが福の神なのよね~ん。昔ならいざ知らずねん」

 

何かを喋りあっていた嵐丸と石蕗は何やら次の手に移ろうとしていた。

 

「ふふん!」

 

そう言って金山彦はビルの屋上で巨大な金鎚を構え、下からも何やら石蕗に抱え投げられ、物凄い速さで迫ってきた番長服装の女子(おなご)に余裕の笑みで迎え撃つ覚悟。

 

「そんな無知で馬鹿な抵抗がどれだけ無駄かをっ! 返り討ちで思い知らせてあげるわん!」

 

カッ!! と高層ビルを躊躇無く飛び降りた金山彦は下方から迫る嵐丸に鉄槌を下す。

 

そんな迎撃体勢抜群の金山彦に嵐丸は拳を強く握り締め、空中を飛翔する。

 

「お前がなあっ!!!」

 

そこで既に金鎚を降り下ろしていた金山彦の目に嵐丸の手首には数珠が填(は)められていた。

 

(あの数珠は・・・・まさか!?)

 

「嵐丸インパクト!!!」

 

気付いた瞬間には反応が遅れ、防御の体勢になってしまった金山彦。嵐丸は膂力を上げ、突き上げるよう衝(つ)く。

 

ドュグシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!

 

「ぐ・・・ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!」

 

「金山彦ぉおおおおおおおおおおおおお!!」

 

金山彦を殴り飛ばした嵐丸はすぐに衝撃抵抗で向きを変えすぐに金山姫と対峙する。

 

「余所見してんじゃねえええええっ!!」

 

「────っ!!(夕日を背に!?)」

 

茜色の閃光が金山姫の視界を殺す。微かに見える影だけで僅かに位置を把握し金鋏で構える金山姫だったが、

 

「もう一丁っ!! オラァッ!!」

 

ガギィグワァン!!!! と金鋏の柄が伸びた部分で器用に受け止めた金山姫は鍛冶職人の微妙なセンスで調節するように巨大な金鋏を横に移動させようとずらしていこうとすると、ふと嵐丸の手首に目が止まる。

 

(・・・!・・・・・・数珠を・・・つけていない!?)

 

どこに!? と嵐丸の肢体に目を配らせると、金鋏を両手で掴み、両足を空に上げているのに気付いた。そこで嵐丸はしっかりと掴み、言う。

 

「動くなよ」

 

見え見えの次手に金山姫は僅かに眉間に皺を寄せた。

 

「甘く見過ぎよん、人間ん」

 

その声は焦りに染まっておらず、落ち着きのある視線で嵐丸を捉える。思わず嵐丸はその落ち着き様に悪寒を感じるが、追撃を遅らせない。

 

「食らってから言えやぁあああああああああああ!!!」

 

嵐丸の猛蹴(もうしゅう)に金山姫は大切そうに扱っていた己の金鋏を“離した”のだ。

 

「何ぃ!?」

 

グゥオンッ!! と見事に空ぶる嵐丸に、何処からか出したのか分からない『金具』を片手に嵐丸に迫った。

 

「食らうのはアナタよォん!!」

 

金山姫が片手に持っていたのは小さな釘などを打つ為に使用する金鎚の形容だった。それをスコォッ!! と小気味良い音が嵐丸の耳から脳内に届くけば、ガツンっ!! と嵐丸に衝撃が奔(はし)った。

 

「アナタは落ちるわん・・・・・」

 

「は・・・なぁ・・・?」

 

冷静な眼差しで見られた嵐丸は言葉の意味を分からないで居ると、ズムゥン!!! と視線がずれる。

 

(違(ちげ)ぇ!? 俺が落ちてる!?)

 

確かに空中に居たが落ちる速度にしては早かった。人間がこんなにも重力に弱いとは、と嵐丸らしくない考えに陥ってしまった。

 

落ちていく中、金山姫に目を向けると、もうそこには居なかった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

姉妹であり、同じ金山神である金山彦の安否を確かめてから、長い金髪を揺らし、小さな体躯を駆けらせてビルとビルを飛ぶ。

 

そしてとある空中に目を捉える。

 

「厭(いや)らしいわねん、“死神”さん」

 

そう言って金山姫は小さな可愛らしい装飾に作られた小鎚をある点を打つように潰すように振るう。

するとパリンッ! と硝子(ガラス)でも割るような音が広がればそこには、

 

「あらら、バレたん?」

 

「あらら、バレたん? じゃないわん!」

 

小さな幼女姿の金山姫は睨むようにその死神。

 

 

白い着物に白い髪、そしてその表情には薄い微笑が張り付いて、その死神・金盞花の市丸ギンが金山姫を見る。

 

(前の感覚ほど、気味悪くない?)

 

恐らく市丸が抑えて(何を?)話しているからか、と金山姫が自己解決すると市丸が話し掛けてくる。

 

「金山神サマは霊術などを打ち砕く霊具もしくは神具も持ってたりしはりますの? よく砕けたわァ~」

 

「・・・ふん、特別なのは合ってるわん。この『金具』がね」

 

そう言って片手の小鎚を見せる。すると鎚の打ち付け面に何か突起物のような部分があった。

 

「『銘切鎚(メイキリツチ)』。日本の鍛冶師が場数踏みに踏んでから扱う金具よん。打つ刻印は銘(なまえ)となり、意味を成(も)って打ち刻まれるん!」

 

そして金山姫はヒュンッ! と市丸にその銘切鎚を投げられ、難なくそれを綺麗に掴んだ市丸は異様な違和感を覚えた。

 

「本来なら銘切鎚と銘切鏨(メイキリタガネ)の二つで一つの鋼鉄製の手工具なのだけどねん、砌(みぎり)のように思いきり打ち付け弾く様は日本鍛冶師を連想させる打音よん」

 

「まぁ~良い打ちつけ音だったわ」

 

「別にこの手工具が神格並の宝具だからとか、特別製な工具じゃないのよん? “金山神が持った工具または金具”が特別になるのよん」

 

金山姫は背丈まで伸びた綺麗な金髪を指で梳(けず)る。自分の神格としての威名を轟かせる。だが市丸は空中を遊歩して金山姫に『銘切鎚』を渡す。

 

「なにやら番長娘を倒したみたいやね。まだ他にもチョロチョロと移動してるみたいやけど~?」

 

「そうねーん、アンタがそこで隠れて傍観してなければ、あっという間よん」

 

「ところで番長娘ちゃんを落とした理由はどないなワケで?」

 

「話聞いてるのん!?」

 

そしてちゃっかり金山姫と嵐丸の戦いも見ていたらしい市丸に金山姫は忌々しげに舌打ちをするが、どうせこの死神はその反応すら嬉々として喜ぶだろうから尚忌々しい。それくらいこの死神の性格を少しずつ繙(ひもと)いてく金山姫。

 

金山姫は手渡された『銘切鎚』の打撃部分の面を市丸に見せれば、そこに漢字で【落】と彫られてあった。

 

「ん~まさか読んでの字の如くとか、そないな感じじゃ・・・・・」

 

「・・・ふん、そのままの意味よん。だから言ったでしょん? “打つ刻印は銘(なまえ)となり、意味を成(も)って打ち刻まれるん”って」

 

金山姫はクルクルと『銘切鎚』を回して見せ、やはり何処からどう見ても金属製の金鎚にしか見えなかった。

 

「鎚には歴史があるわん、他の工具も同様、道具全てに歴史がある。この『銘切鎚』も長い歴史に刻まれた鎚の一つ。木製のハンマーを【槌】、金属製のハンマーを【鎚】と分けるくらいとても長い歴史」

 

金山姫は市丸の前だと言うのに、口が滑る。

 

「木槌(きづち)、『日本書記』にもかつて武器として使われていたことを示唆する記述があってねん、実際に使われてたわん。武器として・・・・・」

 

金山神として見てきたような遠い眼差しで金山姫は少し暗い表情となっている。

 

第一二代目天皇の景行天皇(けいこうてんのう)。

 

あの有名な野火攻めに遇った時、剣で草を薙ぎ払って難を逃れたことにより『草薙剣(クサナギノツルギ)』と呼ばれるようになった剣の持ち主・“日本武尊(やまとたけるのみこと)”の父である景行天皇。

 

この景行天皇は巨大石窟に立て込もって天皇に従わない近隣の豪族「土蜘蛛」一党を皆殺しにした話がある。

この際に天皇軍兵士たちが武器にしたのが付近にあった海石榴(つばき)の木で作った“槌”だったという。

「槌の元となった原型はボウリングのピンのような形だったのよん。瓢箪(ひょうたん)みたいにねん」

 

金山姫はそう言って悲しみのある表情を浮かばせていたがそれは数分だけであった。少し間が経てばすぐに金山姫は市丸に視線を向けた。

 

「アナタも参加しているなら参戦してん、加わらないのなら『参加』とは言わないのだからん」

 

そう言って未だ桜市子を奪還しようと戦って居るであろう現場に向かった金山姫。

 

幼児体型がやはりビルとビルを挟んで飛び込む姿はやはり少し悪寒が走るが、市丸はそんなの微塵も思わないだろう。

 

だが、少なくともこの死神(おとこ)はもう傍観することはもう無いだろう。

 

わざわざ金山神が防戦中に市丸ギンを呼びに来ていたのだ。それほどにあの“福の神”に働いて“もらいたくない”のだろう。

 

(これは、おもろいことになってきたなァ)

 

細い目から見えたのは真紅の眼差し、その眼の先にあるのは一体、なんなのか・・・。

 

 

ただ言えることがあるとすれば、

 

 

 

この市丸ギンという死神が飄々として、悠々として行動するしか想像できないということだった。




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