ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

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 昨日はちょっとゴタゴタしていて投稿できませんでしたが、今日は投稿します。
 艦これの方はE5の潜水ゲージを攻略、今日から鯨狩りです。最終ステージのアトランタちゃんがダウナー系かわいいでおっぱい大きいから頑張って獲りに行くぞ!


VS15 人生命を賭けられるほどのダチが出来れば充分幸せ

「うまい! 日本の食事はうぅぅぅぅまぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ああ、これよ! これが懐かしの日本のファミレスの味なのよ!!」

 

 歓喜の声をあげ目の前の料理を掻っ込んでいくキリスト教本部の刺客(一応)二人。

 その様子をイッセーとダイスケたちは周囲の視線を気にしながら何とも言えない表情で見ている。

 

「……ホントにこいつらこの前の二人か?」

 

「……遠慮なしに食うなぁ、人の金で」

 

 財布から実際に金を出すのはイッセーであった。だが、二人の食いっぷりを見て財布の中が氷河期になる危険を感じたため急遽ダイスケと小猫も出費することになっている。

 イッセーが「後輩に出させるのは悪いから」拒んだものの小猫はもともとの目的のために進んで財布の紐を緩めてくれた。ダイスケに関しては説明がないものの事情を察して貸している形だ。無論、自分に黙ってイッセーが動いていたことに関しては拳骨一つは与えたが。

 現状はといえば、腹を空かせた二人をイッセーが「しょ、食事に行くんだけど君らもどう?」と慣れないナンパなセリフで誘って一発KOでファミレスに同行させることに成功し現在に至る。

 

「あー、食った食った」

 

「信仰心は薄いけどやっぱり食事は日本が一番ね~」

 

 ファミレスまでの道中に「私たちは悪魔に魂を売ったのよ……」「背に腹は変えられん……」と葬式モードだった二人と同一人物だとは到底思えない。

 

「いやぁー、やっと腹が落ち着いた。だが君たち悪魔に救われるとは。終末も近いな」

 

「今ここでお前だけ終末にしてやろうか」

 

「ちょ、ここは抑えて抑えて」

 

 額に青筋を浮かべるダイスケをイッセーは必死になだめる。喧嘩腰では交渉にならない。だが、その点を見るとダイスケ抜きでやろうとしたイッセーは正解だったかもしれない。

 

「でもイッセー君たちのおかげで助かったわ。……主よ、この心優しき悪魔たちに祝福を!」

 

「「「あだだだだだだ!!!」」」

 

 イリナが不用意に祈り、十字を切ったせいで悪魔三人が軽くダメージを受ける。

 

「ありゃ、ゴメンね。ついやっちゃった」

 

「いや、わざとだろ」

 

 先日の一件でダイスケの二人に対する印象がストップ安になっているせいでいちいち突っかかる。本当に交渉のためにはダイスケはいないほうがいいかもしれない。

 

「で、私たちに接触した理由は? まさか本当に食事を奢りに来ただけではないのだろう」

 

 腹がくちくなったところでゼノヴィアは本題を切り出してきた。

 本当に偶然出会ってここまで来てしまったので、イッセーは一瞬どもってしまった。

 

「―――っ、あんたら、奪われたエクスカリバーを奪還もしくは破壊するために来たんだよな?」

 

「ああ、先日説明したとおりだ」

 

「その上で聞いてくれ。……俺たちは、エクスカリバーの破壊に協力したい。一枚咬ませてくれ」

 

 イッセーの申し出に二人は驚く。本来であれば、「たかが下級悪魔風情が伝説の聖剣を破壊しようとは片腹痛い」と激昂されそうなものだが、幸いにも驚きこそすれど殺気を放つ気配はない。

 

「勿論これはリアス部長も知らないし秘密裏にだ。三竦みの情勢に影響を与えないように俺たちはお前たちのサポートに徹する。ただ、うちの木場にエクスカリバーの破壊をさせてやりたいだけなんだ」

 

 理由としては至極個人的なものではある。だが、それゆえ逆に所属する組織の主義方針とは一切関係ないのが救いであった。

 

「……そうだな。結果さえ残せば報告する過程はあとからどうとでも修正できるか」

 

「え、いいのか!?」

 

「ちょっと、ゼノヴィア!?」

 

 案外すんなりととんでもない提案が通って驚くイッセーとイリナ。

 

「無論、君たちの正体はバレないようにやってくれ。個人的な理由ではあるが、皆がそれを知っているわけではない。組織同士の裏の繋がりがあったなんて思われたくはないからな」

 

「そんな条件をつけても、イッセーくんとは言え悪魔と組むことになるのよ!? そんなの許されるわけないじゃない!!」

 

 どうやらこのゼノヴィア、信仰心の強い信徒ではあれど主義主張に対して極度の潔癖症というわけではなくある程度の清濁を併せ呑む度量はあるらしい。ダイスケが知っている人物で言えば以前アーシアの件で協力関係にあった桐生義人に近い人物なのだろう。

 だがイリナの方はそうではないらしく、どのような理由をつけてもこちらの要求を飲みそうにない。

 だからこそダイスケは己の身を犠牲にすることを決意する。

 

「なら俺を人質として同行させろ。俺自身はこいつらと違ってただの神器持ちの人間だ。グレモリー家には純粋に恩義はあるが、サタニストってわけじゃない」

 

「だ、ダイスケ!?」

 

 驚くイッセーだが、ダイスケは手でイッセーを押さえる。

 

「なに、知り合いに見られたら悪魔に魅了されていた哀れな子羊を救い出したとか適当ぶっこけ。で、いいところで木場に私怨を晴らされて、俺は途中怖くなって逃げ出したってことにすれば後処理は出来る。そしてイッセー達を信用できなくなったら、俺を斬れ。なに、抵抗はしないよ」

 

「……人質はわかるが、お前はそれでいいのか。他人、それも異生物である悪魔のために斬られてもいいと?」

 

「自分の言ってることが無茶苦茶だっていうのは理解してるよ。だが、こいつらは信用していい。断言する。お前達が俺を斬る機会は無い。だから俺も命を張れる。信用しているからな――ダチとして」

 

 ダイスケのその言葉でイッセーは思わず涙ぐんだ。

 ダイスケの事情はある程度イッセーはリアスから聞いている。まともになった自分を両親に見せ、グレモリー家に恩義を返すことが目標だと聞いたこともある。

 そのダイスケが自分達のために、それも心底信用して命を張ろうというのだ。否応にも涙が出る。では肝心のイリナはどうなのかというと――

 

「う、うぅ……」

 

 泣いていた。イッセーよりも派手に泣いていた。

 

「お、おい、イリナ?」

 

「ゼノヴィア……私、彼のこと神の教えを侮辱する史上最低最悪の異端者って思ってたけど……まさかここまでイッセー君のことを思ってくれていたなんて! イッセー君、あなた最高の友達を持ったわね!」

 

「お、おう。ありがとな」

 

「素晴らしく熱い男の友情……私こういうのに弱いのよ! マジ、ブローバック・マウンテン!」

 

「おい、次ブローバック・マウンテンっつたらぶっ殺すからな」

 

 意味は是非読者様各位で調べていただきたい。

 

「でも結局、任務遂行のために悪魔の手を借りることになるのね……」

 

「まあ、気を落とすなイリナ。考え方を変えろ。悪魔の手を借りるのではなく、兵藤一誠という赤龍帝のドラゴンと宝田大助というただの神器持ちの人間の手を借りると思えばいい。」

 

「ゼノヴィア……前から思ってたけどあなたの信仰心ってどこかずれてるわ。それにドラゴンだって立派にアンチキリストの象徴の一つじゃない……」

 

「それを言うな……」

 

 突然人一人の命を預けられた重責に気が滅入る二人。おかげで先ほど得たばかりの満腹による幸福感もどこかへ吹き飛んでいってしまった。

 そんな二人に恐る恐るイッセーは尋ねる。

 

「あの……塞ぎ込んでいるところ悪いけど、今回の俺のパートナー呼んで良い?」

 

 

 

 

 

 

「……話は理解できたよ。」

 

 イッセーによってファミレスに呼び出された木場は、呼び出した張本人の行動に半ば呆れながら嘆息し手元のコーヒーの口を付ける。

 意外なことに、エクスカリバー持ちのエクソシストに協力を願うということにはなんの文句もなく、木場はここまで来ていた。

 

「もっとも、エクスカリバーの持ち主に破壊を許可されるっていうのには納得いかないところはあるけどね。」

 

「随分な言いようだね。こちらとしては君がはぐれになってでも行動しようとしているのを知っている訳だから、今すぐこの場で切り捨ててもいいんだよ?」

 

 これから共同戦線を張るというのに睨み合う木場とゼノヴィア。

 協力していくわけだからいがみ合うなとイッセーが二人を嗜めようとするがイリナが咳き込んで空気を変えようとする。

 

「んん! そこはまぁ置いといて……貴方、やっぱり『聖剣計画』のことで私たちを恨んでいるのね? エクスカリバーと―――教会の存在に」

 

 そのイリナの問いに、木場は目を細め「当然だよ」と冷たい声音で肯定する。

 

「でもね、あの計画があったおかげで聖剣の扱いに関する研究は飛躍的に進歩したわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣に呼応できる使い手が数を増やすことができたのよ」

 

「確かに悪魔にもあくどいのはいるし、その存在に震える人々を守る防人が増えることはいいことだろうさ。だけど、計画失敗とみなされた被験者のほぼ全てが実験動物のように始末されるのは許されるのか?」

 

 木場のその憎悪の眼差しに、イリナはついに押し黙ってしまう。

 人の良心がある者ならば人をモルモット扱い、それも不要と判断すれば家畜のような殺処分を行う事など許せるはずもない。それはイリナにも理解できることではあったのだ。そこへゼノヴィアは言う。

 

「確かにあの一件は我々の間でも忌む者は多い。被験者の処分を決定した当時の責任者は信仰以前に人間性に問題ありとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側に拾われているよ」

 

「……その者の名は?」

 

 自分と同胞の死を決定させた者の名に興味を惹かれた木場はゼノヴィアに尋ねる。

 

「奴の名はバルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

 己の仇敵の名を知った木場の瞳に、明確に復讐の炎が灯るのが見える。

 

「そこまで教えてもらったら僕からも情報提供をしたほうがいいね」

 

 木場のその言葉に興味を惹かれたのはゼノヴィアである。

 

「ほう、聞かせてもらおう」

 

「君たちが駒王学園に来た日、僕はあのあとエクスカリバーを持った者に襲撃された。ちょうどそちら側の神父らしき人物を殺害した後だった」

 

「なんですって!?」

 

「どんな奴だった!?」

 

「相手は白髪のボクらと同年代ぐらい。フリード・セルゼンという、僕らが以前にも戦ったことがある者だ」

 

 フリード・セルゼン。

 アーシアとレイナーレの一件でイッセー達が戦ったことがあるはぐれ神父である。ダイスケ自身はレイナーレのアジトで顔を見かけた程度の面識であったが、そのエキセントリックというより頭のネジが百本ほど剪断破壊されたような言動は覚えがあった。

 襲撃者の名を聞いたイリナとゼノヴィアは心当たりがあるらしく目を細めた。

 

「なるほど。奴なら納得だ」

 

「その男は元ヴァチカン法王庁直属のエクソシストよ。若干十三歳で任命された天才だったわ。その類まれな才能で悪魔や魔獣を次々と滅していった功績は大きなものだったのよ」

 

「だが奴はやりすぎた。邪魔だと判断した味方すら手にかけたのだからね。奴に信仰心などはじめからなかったのさ。あるのは人ならざるものへの嫌悪と殺意、そして異常なまでの戦闘への執着。異端審問を受けて当然の男だったよ」

 

 忌々しげに語るイリナとゼノヴィア。どうやら元味方からも異常者扱いをされていたらしい。

 

「そういった奴が身に余る力を獲れば凶行に走るのは至極当然か……まあいい。とりあえず、私たちでエクスカリバー破壊の共同戦線といこう」

 

 そう言ったゼノヴィアは懐からペンとメモ用紙を取り出し、連絡先を書いてイッセーに手渡した。

 

「何かあればここに連絡をくれ」

 

「おう、じゃあ俺のアドレスを……」

 

「ああ、イッセーくんのアドレスならおばさまから頂いているから安心して」

 

 イリナが微笑みながらイッセーに告げる。

 

「んな!? 母さんめ、勝手なことを!!」

 

 恐らく息子の幼馴染だからと軽い気持ちで教えたのだろう。こういうところから個人情報が漏れたりするから気をつけなければならないというのに。まあ、その心配が無い相手だったからいいのだが。

 

「では、私たちはこれで失礼する。食事の礼はいつかさせてもらうよ、赤龍帝。それから宝田大助、信用させて貰うぞ」

 

「奢ってくれてありがとうね、イッセーくんと悪魔のみんな! あと宝田大助くん、ナイスブローバック!」

 

「よーし、よほど死にたいらしいな。ちょっと表に出ろ」

 

 二人はその場を後にする。残された者たちはたまらずに大きく息をついた。

 下手をしたら天界と冥界の争いの火種を作りかねない大きな賭けだったのだ。それを強引な手段を用いたとは言え成功させたのだからなおさらだ。

 

「……イッセーくん、なんでこんなことを?」

 

 静かに木場が尋ねる。

 本来であれば個人的な怨恨による復讐を出会ってほんの一、二ヶ月の無関係であるはずの者が助成しようというのだからその疑問は当然だろう。

 

「まぁ、同じグレモリー眷属だし、何回も助けられてるしな。今回は俺が助けようかなってさ」

 

「僕が下手に動けば、部長に迷惑がかかるから……っていうのもあるんだよね」

 

「当然。お前が『はぐれ』にでもなったら部長が悲しむ。まあ、俺のやったことも独断専行だから迷惑かけてるんだけどさ」

 

 にかっ、と笑うイッセーだが、それでも木場はまだ承服しかねるといった表情だ。そこへ小猫が口を開く。

 

「……祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは……寂しいです」

 

 まるですがるような表情の小猫。その寂しげな顔は、普段無表情である分インパクトが強く、この変化はこの場にいる男子全員、特にダイスケに衝撃を与えていた。

 

「そ、そんなッ! 普段仏頂面で身内が死んでも眉一つ動かさなさそうな鉄面皮女がこんな表情を!?」

 

 そのダイスケのデリカシーの無い上、場の空気を読まない発言に小猫は表情を変えずにその脛を蹴り上げることで答えた。

 

「ぁうっぐッ!?」

 

「……お手伝いします。だから……いなくならないで」

 

 テーブルの下で行われた残虐行為はさておいて、小猫のこの言葉に木場は困惑しながらも苦笑いする。

 

「……まいったね。そんな風に言われたらもう僕も無茶はできないよ。わかった。今回はみんなの好意に甘えさせてもらうよ。おかげで本当の敵も見えた。そして、やるからには絶対にエクスカリバーを打倒するよ」

 

 とうとう木場の閉じられていた心が開けた瞬間であった。それを理解したのか、小猫も安堵の表情を浮かべる。

 

「よし! 兎にも角にも、俺たちでエクスカリバー破壊団結成だ!! 何が何でも奪われたエクスカリバーとフリードの野郎をぶっ飛ばそうぜ!」

 

 気合の入ったイッセーと同じく木場も、小猫も、ダイスケも心の準備は出来た。だが、一人だけどうしても乗り切れない人物が一人いた。

 

「あの、俺だけ完全に蚊帳の外なんだけど……なんで木場とエクスカリバーに関係があるの?」

 

 匙である。彼だけはグレモリー眷属ではないために木場の事情を知らないのである。

 

「……そうだね。匙くんのためにも、部長からの又聞きで知ったイッセーくんとダイスケくんにも僕から直接話すよ」

 

 そして木場は自身の過去について語りだした。

 かつてカトリック教会が秘密裏に実行した『聖剣計画』。聖剣に呼応できるものを人工的に輩出するための実験がとある施設で日々繰り返されていた。

 集められた被験者は皆、剣の才に恵まれた者と神器を有した年端もいかぬ少年少女たち。将来の夢があり、彼らそれぞれの未来もあった。神に愛されていると信じてもいた。

 だが、そんな彼らに与えられたのはモルモットとしての日々のみ。人として扱われず、失敗作の烙印を押され、人としての生を無視される。それでも、自分たちは聖剣に選ばれる存在に成りうると信じていた。信仰と共に励まし合うために唄った聖歌を心の支えにして過酷な実験を受け続け、堪えてきたのだ。

 その結果が、『被験者全員の殺処分』だった。

 

「……みんな死んだ。失敗作として物のように処分されていった……。信じていたものに裏切られ、誰も救ってはくれなかった。『聖剣に適応できる者はできなかった』、ただこれだけの理由で僕らはガス室に送られた。彼らは「アーメン」と唱えながら僕らに毒ガスを浴びせた。血反吐と涙を流しながら、冷たいタイルの上でもがき苦しみながら、それでも僕らは神に救いを求めた。でも……救いはなかった」

 

 その後、なんとか逃げおおせた木場の肉体も充分すぎるほどガスに肉体を蝕まれていた。そこへ偶然、イタリアを視察に来ていたリアスに息を引き取る寸前で救われたのだった。

 そこまで語った時点で、どこからかすすり泣く声が聞こえてくる。

 

「ぅううう……」

 

 匙である。木場の想像以上の壮絶な過去を聞いて鼻水まで垂らして号泣していたのである。

 

「ほれ」

 

 見かねたダイスケが備え付けの紙ナプキンを数枚まとめて手渡すと、大きな音を立てて鼻をかむ。そんな匙は木場の手をとって言う。

 

「グズッ―――木場、俺は今までお前のことをいけ好かないキザ野郎だと勘違いしていた。だが! お前の気持ち全てが理解できるわけじゃないが、お前の戦う理由と気持ちは理解できた!! こうなったら俺も本気でお前の手助けをさせてくれ! そのためなら会長のシゴキもあえて受ける覚悟だ! やってやろうぜ、打倒エクスカリバー!!!」

 

 これまで最も無関係でやる気がなかった匙が、今やイッセー以上の情熱をもって木場の手伝いをやる気になったようだ。

 

「そうだ、木場が辛い過去をわざわざ喋ってくれたんだ。俺の事も聞いてくれ!!」

 

「いや、そんなんいいから」

 

 ダイスケの呟きも無視して匙はここが店内だということも忘れて大声で語りだす。

 

「実はな、俺の目標は……ソーナ会長と出来ちゃった結婚をすることだ!!!!」

 

 どうでもいいことだった。はたからすれば「ああ、どうぞご自由に。無理だろうけど。」という話だがイッセーは違った。その瞳から先ほどの匙に負けないほどの涙を流したのである。

 

「いや、今の話に泣く要素あったか?」

 

「あるに決まってるだろ、ダイスケェ!! 匙は上級悪魔、それもご主人様を相手にできちゃった婚を狙ってるんだ!! そうだ、匙は俺の……同士だったんだ!!」

 

「な、なに!? それじゃあお前は……?」

 

「ああ、俺も目標がある。それは……部長のおっぱいをこの手で触れ、そして吸うことだ!!」

 

「……できるのか? 本当にそんなことができるのか!?」

 

「できるさ!! 現に俺はこの前のライザーの一件のあと、部長からファーストキスを貰ったんだ!!」

 

「な、なにぃぃぃぃぃいいいいいい!!!???」

 

 もはや五月蝿すぎて小猫が認識阻害の結界を張っている。そうでもしないと確実に店員から追い出され、しまいには入店お断りのブラックリストに載りそうなほどなのである。

 

「やろうぜ、匙! 俺たちは今は半端者の兵士(ポーン)だが―――」

 

「二人なら一人前! 兵藤!」

 

「匙!」

 

「「やろう! 目指せ、サクセスストーリー!!」」

 

「いや、木場のためじゃねえのかよ」

 

 かくして、下僕悪魔四人+一名で構成された『エクスカリバー破壊団』は結成されたのである。

 

 

 

 

 

 

「えっぐ、ひっぐ……」

 

 イッセー達が『エクスカリバー破壊団』を結成したのと丁度同じ時刻、駒王町の商店街で一人の女性がべそを掻きながらとぼとぼと歩いていた。

 

「年上だからってかっこつけて「わたしは一人で探してみる」なんて言うんじゃなかったぁ……」

 

 何か捜し物をしているらしい彼女は、月並みな言葉だがそんじょそこらのモデルが裸足で逃げ出すほどの美女であった。

 すらりと伸びた背は180cmを超えて、スタイルは抜群。短く切りそろえられた茶色の髪がミステリアスさを醸し出しているが、緩いその表情が全てをぶち壊している。

 

「おかしいよぉ、この街……何で日本なのに悪魔さんの気がこんなに強いの? そのくせ日本の神様や妖怪さんの気もちゃんとするし、わけわかんないことになってるよぉ」

 

「おかあさん、なにあれ?」

 

「こらっ、見ちゃいけません!」

 

 彼女を指さす子供が、親に引っ張られて距離をとらされる。傍から見たらずいぶんと変な人だ。

 誰もが彼女を遠巻きにして「春の陽気に当てられたか?」とか「梅の毒にでも当たっちゃったかな……」と呟いている。

 

「いいや、今日はもうホテルに帰ろう……。ご飯食べて元気出してからまた探そう……」

 

 そう言いながら彼女は、くるりと向きを変えてその場から立ち去っていった。

 だが、不思議なことに誰もが見た。彼女から金色の粒子がふわりと舞ったのを。




 はい、というわけでVS15でした。
 やっと今回からちょい出しで出せた新キャラ。どんな反応が来るかドキドキもんだ……。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!! 

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