ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

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 先日艦これがこれから鯨狩りと言っていましたが、正しくは空母BBAフルボッコの間違いでした。
 今日から最終ステージをやろう……と思いましたが、あまりにも情報が少ないためしばらく援軍待ちと資源回復を兼ねて情報が出そろうまで出撃を見合わせます。


VS16 探し物をするときはそいつの視線になって探せ……って、あれこれ銀魂のパクリ?

「……出てこないな」

 

「そりゃ、簡単には出てこないだろ」

 

 ダイスケたちが『エクスカリバー破壊団』を結成してから数日。

 彼らは放課後になると神父の変装をした一団となって街中を探し回っている。ゼノヴィアたちからもらった魔の力を抑えるという神父の服で学生が自由になる放課後から深夜に至るまで探し続けているものの、手掛かりひとつ見つけられずにいるのだ。

 神父の格好をしていればフリードが襲撃してくるだろうを踏んだのだが、今のところうまくはいっていない。

 

「せめて事情知ってそうな義人にコンタクトが取れればなぁ……」

 

 だが彼がこの一件に彼が関わっている保証が無い上に電話も常に留守電になっている。それでも彼が堕天使組織の中枢に近い位置にいる人間であるならば、今回の事件に関わる何らかの情報を持っているのではないかという僅かな希望をかけて連絡をし続けているのだ。

 だがこの様子では彼の助成は望めそうもなかった。思わずイッセーとダイスケは大きくため息を吐く。

 

「まあそんな時はアレだ。思いっきり遊んで、はしゃげばいい!」

 

「そうだぞ、イッセーにダイスケ。お前ら、例のボウリングとカラオケに行く会合はいくんだろ?」

 

 話の内容は理解していないが、割り込んできたのは松田と元浜である。

 実は、ちょっと前から普段よくつるむこの四人と同じクラスの女版イッセーの桐生藍華、さらに小猫と木場を誘って半日使って遊ぶ計画を立てていた。

 アーシアと桐生はいつもの付き合いなので当然来るとしても、意外なことに小猫が乗り気だった。松田と元浜の前評判はイッセーに並んで有名なのでてっきり断るものだと思っていたイッセー並びに当の二人もはこれには本当に驚いていた。

 だが問題は木場だ。既に約束は取り付けているのだが、今の木場を取り巻く現状から見れば少し厳しいものがあるかもしれない。

 

「ああ、小猫ちゃんもちゃんと来るってさ。」

 

「うっひょおおおおおおおお! アーシアちゃんに塔城小猫ちゃん!! これだけでもテンション上がるぜ!」

 

 彼が叫ぶ様子からして相当女子との会話に飢えていたのだろう。ダイスケはいつも思うのだが、松田はエロいところを隠せば体育会系としていい運動神経を持っているわけだから、そこを活かせば好意を抱いてくれる女子はいるはずなのだ。元浜も知的眼鏡キャラとして売っていけば、そこまで悪い顔ではないというのにどうしても本性を隠せないでいる。まあ、エロと本能に忠実……もとい自分に正直と言えばいいのだろうが。

 するとそんな松田の頭を「スパン!」と聞いていて爽快になるスパンキングで叩く者がいる。メガネ女子の桐生だ。

 

「わーるかったわね、私も行くことになって」

 

 自身の刺身のツマ扱いに桐生は不機嫌そうに片眉を釣り上げていた。

 

「ふっ、所詮貴様はアーシアちゃんのオプション、いわばガンダムの二話で出番終了になったハイパーナパームだ。眼鏡キャラは元浜で間に合っている」

 

 松田の意見に同調するように元浜のメガネがキラリと光る。LEDでも入れているのだろうか。

 

「なによ、そこの変態メガネと一緒にしないでくれる? せっかくの属性が汚れちゃうわ」

 

「あ゛あ゛ン!? 俺のメガネは女子に体のステータスを正確に数値化できるすぐれモノだ! お前と一緒にすんな!!」

 

 だが、桐生のメガネはその言葉を否定するかの如くキラリと光る。メガネに光るギミックを入れるのが流行っているんだろうか、と一瞬ダイスケは思ってしまったのだが。

 

「ふっ、まさかその能力が元浜だけのものだとでも?」

 

「「「!?」」」

 

 嫌な予感がしたエロトリオは本能的に両手で前を抑える。

 

「私には男の誇りを直視せずとも数値化できるのさ。そして……もう遅いわ」

 

「「「嘘だァァァァァァァ!!!!」」」

 

 男からすれば最悪の能力だ。もしすれ違いざまに一瞥されて嘲笑されようものなら……普通の神経ではとても持つまい。

 そんな空恐ろしげな能力に恐怖するイッセーの肩をポンと叩き、桐生は意味深な笑みを浮かべる。

 

「まあ、安心しなさい。アンタくらいならちょうどイイってもんよ。あんまりでかすぎるのも女からすれば苦痛だしさ。よかったわね、アーシア」

 

「?」

 

「おい! ウチのアーシアに変なこと吹き込むな!!」

 

 意味がわかっていないおかげで話を急に振られたアーシアは頭上にハテナマークを浮かべる。できることならこのまま変な知識を身につけずに純粋に育って欲しいものだ。

 

「そんでもんってダイスケも心配ないわよ。女からしたら極端に小さいとか大きいじゃないから。ちゃんと自己主張できるコだから」

 

「お前に俺の息子の何がわかるんだよ。俺のはな、生まれたての子犬のような奥ゆかしいやつなんだぞ」

 

「あんたのナニは福山○治のか」

 

 ダイスケと桐生が下ネタコントを繰り広げている。

 

「まぁいいわ。とりあえず、木場くん以外は全員来れるのね」

 

 これ以上の展開は望めないと判断した桐生は、ガラリと話題を切り替える。

 

「いや、何とかして木場も来させる。一度は来るって言ったんだし、人数は多いほうがいいもんな」

 

 そのためには早急に今関わっている事案を解決させなければならない。イッセーは皆と最高の形で遊べるようにしなければと、決意を新たにした。

 

 

 

 

 

 

「あいつらそろそろ一旦帰る時分かな……」

 

 その日の放課後、イッセーたちは部活動を終えたあといつものように街を変装して巡回していた。

 ダイスケの言うようにイッセーたちは家族や同居人、またはエクスカリバーの一件に関わっていない仲間の眷属の目を誤魔化す為に夕刻の探索後は一旦帰宅してまた深夜に探索を再開するようにしていた。ところがダイスケが合流できそうになった時間が一旦帰宅すると決めた時刻になってしまっていたのだった。

 

「マズイな。このままいったらすれ違いか……?」

 

 一度携帯を持って木場に連絡を入れようとしたその時であった。

 

―――貴様は……バルパー・ガリレイ!!

 

 いま電話をしようとしていた木場の叫び声が聞こえてきたのだ。それも叫んだ名は木場とその仲間を死に追いやった張本人のものだ。

 声の出処を探して辺りを見回しながら走るダイスケ。声が聞こえるということは間違いなく近くにいるはずである。そして突然、激しい閃光と音が響く。

 

「スタングレネード? ……こっちか!」

 

 目晦ましのための激しい閃光と騒音が、今回は目的地を捉えることに役立った。そしてその先には、疲労困憊するイッセーたちの姿があった。

 

「おい、お前ら!」

 

「ダイスケか? なんでここに」

 

「ちょっとリアスさんに捕まって学校出るのに手間取ってな……木場はどうした?」

 

 共に行動しているはずの木場の姿がどこにも見えない。先程まで声は聞こえていたのだからイッセー達の傍にいたのは間違いないはずだ。そのダイスケの疑問に匙が答える。

 

「……エクスカリバーを持ってるっていうフリードって奴とそのボスのバルパー・ガリレイに遭遇した。戦ってみたけど逃げられて……途中で合流してきた教会の二人と一緒に追っていった」

 

「マジかよ……って追っていった!? なんで止めなかったんだよ!」

 

 フリードが本拠地へ向かったとすれば、自ら進んで敵の巣窟に飛び込んでいったことになる。普段の木場なら決してそのような危険は犯さないだろうが、エクスカリバーに対する怨嗟がその判断を鈍らせたのだろう。

 

「悪い……けど、フリードの野郎めちゃくちゃ強くて、木場も止める暇がなかった」

 

 大きく息をついていたイッセーが答える。四対一でこの有様ということはエクスカリバーの持つ力がよほどのものだったのか、それともフリードの力量が成さしめたのか。

 いずれにしろこのまま木場達を放っておくわけにもいかない。自ら敵の本拠地に、それもゼノヴィアとイリナの二人が付いていたとしても危険であることには変わらないのだ。

 

「……最悪、部長たちに知らせなければならないかもな」

 

 もともとリアスやソーナたちには内密にという前提で木場に協力していたわけだが、事ここまで及べば彼女たちの助力を請わなければならないかもしれない。

 相手がフリードと研究者のバルパーだけならばここまでしなくともダイスケたちがすぐに木場の跡を追えばいいのだろう。だが、今回の事件の裏に聖書にも記された堕天使のコカビエルが関わっているというのは周知の事実。下手に手を出せばただでは済まないだろう。

 そうなれば、最後の手段としてリアスを通じて魔王サーゼクス・ルシファーの力も借りることを考えなければならなくなってくる。

 

「いや、でも流石に部長に知らせるのは「私に連絡するのが何がいけないのかしら、イッセー?」……はい?」

 

 声がした方向へイッセーは恐る恐る顔を向ける。そこには腕を組んで仁王立ちするリアスと呆れた顔のソーナがいた。

 

「力の流れが不規則になっているから来てみれば……」

 

「イッセー、ダイスケ。どういうことなのか説明してくれるわね?」

 

 一気に血の気が引いた。

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、まだいてぇや」

 

 ダイスケは自室で自分の頬を抑えていた。そこには張り手の跡がくっきりと残っている。

 やったのはリアス。抑えているとはいえ身体能力に優れる悪魔のビンタだ。痛いものは痛い。

 だがそれも致し方ないだろう。イッセーから全ての事情を洗いざらい吐かせたリアスは本気でダイスケの教会組二人に提示した条件のことで怒ったのだ。

 

『お願いだから、もうこんな自分を捨てるようなことはしないで!』

 

『俺の両親に申し訳が立たないから……ですか』

 

『ええ、そうよ。でもね、それ以上に私はあなたのことを弟みたいに思っているの。……家族のことを心配するのは当然でしょう』

 

 リアスの言葉に偽りが無いことは重々承知している。駒王町に来てからずっと彼女はダイスケのことを気にかけてきた。それは本心からダイスケのことを家族と同じように見ている証左だ。

 

「……心配かけさせたもんなぁ。これで済んでまだマシってもんか」

 

 事実、危険な計画を立てたイッセーはダイスケが受けた以上の威力の張り手を尻に百発受けていたのだ。勿論匙も蒼那から同様のお仕置きを受けていた。

 明日改めて謝ろうと思ったその矢先、玄関のドアが激しくノックされる。何事かとドアを開けると、そこには小猫がいた。

 

「どうした?」

 

 見れば急いでいたのか、小猫は息を切らしている。ようやく息を整えた小猫はとんでもない現在の状況を伝えた。

 

「……ダイスケ先輩、すぐに学校に集合です。コカビエルは……この町を吹き飛ばすつもりのようです」

 

 

 

 

 

 

「リアス。今、学園全体を大規模な結界で覆っています。中で戦闘をする分は外への被害は無いものと考えていいでしょう」

 

 先に現場に来ていた蒼那がリアスに説明している。

 リアスからの緊急招集がかかったのち、グレモリー眷属+ダイスケは急いで学園の目と鼻の先にある公園に集結していた。そこにはオカルト研究部と生徒会のフルメンバーが集結している。ただし、そこに木場の姿はない。

 電話越しに知った今回の事件の真相。それは想像していた以上に大きく、そして切迫していたものであった。

 その時、リアスは自室で使い魔を使って木場を探し、イッセーは時間も遅いということと緊急時の時のために体力を養おうとアーシアと共に就寝しようとしていた。だが、その場に今回の事件の主犯であるコカビエルが実行犯のフリードを伴い、ボロボロになったイリナを手土産に現れたのだ。

 幸いなことにすぐにアーシアが彼女を介抱したので大事には至っていなが、その後にコカビエルが語ったエクスカリバーを奪い、この街に姿を現した本当の理由が問題だった。

 それは天界・冥界・堕天使の間で再び戦争を起こすこと。

 まずはエクスカリバーを奪って天界を引きずり出し、魔王サーゼクスの実妹が治める駒王町に現れ、実害を与えることで冥界をも巻き込む。勿論この状態を引き起こしたのは堕天使の幹部であるコカビエルであるから堕天使全体も巻き込むことになる。つまり、事の真相を知っている者が止めに入ったとしても三つの勢力が争い合う理由を消すことはできない。三大勢力による三つ巴の戦争の再来だ。

 そしてコカビエルが戦争を望む理由は唯一つ。戦争状態でないという仮初の平和という退屈な時間をつぶし、己の戦闘欲求を消化することである。

 そんな自己満足的な理由でここまでの状況を作り上げたのだ。異常でありながらも流石聖書に名が載る程の堕天使ということなのだろう。

 故にダイスケは理不尽さを感じずにはいられない。

 これから多くの人々が被りうるであろう禍はコカビエルというたった一柱の堕天使の我儘によるものである。

 これが天災ならば「仕方がない」で済むだろう。だが今回は明らかに悪意がある禍だ。こればかりは仕方がないで済む話ではないし、仕方がないで済ませてはいけないとダイスケは思う。

 

「ですがこれは被害を最小限に抑えるものでしかありません。悔しいですが、コカビエルが本気を出せば結界を素通りして学舎どころかこの地方都市そのものが消滅します。さらに私の眷属がコカビエルがその準備をしていることも確認しています。かなりの力をチャージしているようです」

 

 蒼那が更に最悪の知らせをリアスたちに告げる。その言葉に最も強く反応したのはイッセーであった。

 

「―――ふっざけんなッッッ!!!」

 

 怒りの理由はダイスケよりも至極単純にして純粋なもの。それは大切な日常を壊さんとしている者への怒り。さながら、自らの住処を踏みあらせれて怒り狂う野獣、否ドラゴンだ。彼はこの中でこれまで最も普通のヒトの生を生きていた者ゆえに平和な日常の儚さと愛しみは誰よりも深い。そのことはこの場にいる誰もが理解できた。

 そんなイッセーを横目に、蒼那は説明を続ける。

 

「それでも被害を最小限に抑えるために私と眷属たちはそれぞれ配置について、全力で結界を支え続けます。その分学園が傷つくのは耐え難いものですが……この街を守るには呑むしかないですね……」

 

 憎々しげにコカビエルがいる方向を見つめ、蒼那はつぶやく。壊れた物はまた直せばいい。だが、悪意によって傷付けられたという事実は残る。それが何よりも悔しいのだろう。だが、それも踏まえたうえでリアスは決意する。

 

「ありがとう、ソーナ。ここまでやってくれたあとは私たちが何とかするわ」

 

「なっ……本気ですか!? 相手は正真正銘のバケモノです。私たち程度で足止めになるのかすら……。今からでも遅くはないわ、あなたのお兄様に助力を請うべきです」

 

「あら、貴女だって姉君を呼ばないじゃない?」

 

「私の姉は、その……。でも貴女だってサーゼクス様から愛されている。自分の力でなんとかしたいのはわかるけど「連絡なら既に済ませました」―――朱乃?」

 

 朱乃が二人の会話に割り込む。その表情はいつもの笑をたたえたものではない。

 

「ちょっと、何を勝手に―――」

 

「リアス、貴女が先日の御家騒動のことでサーゼクス様に迷惑をかけてしまった負い目があるのはわかるけど、今度は負い目だの面子だの行っている場合ではないのよ。勝手に連絡をつけたのは謝るし、望むなら罰も受けるわ。でも今は……」

 

 いつもと異なる朱乃のリアスに対する態度。それは普段他人の前で滅多に見せることのない主従を超えた“親友”としての朱乃の一面だ。それを見せるということは、本当にリアスを慮っての独断行動だったのだということが理解できる。

 それは文句を言おうとしたリアスにも分かることであったし、その真剣な眼差しで肚も据えた。

 

「……そうね。自分のことだけを考えすぎていたわ。ごめんなさい」

 

「お話を理解していただいてありがとうございます、部長。ソーナ様、サーゼクス様の援軍が到着するのははやくても一時間後だそうですわ」

 

「一時間……わかりました。その間は私たちシトリー眷属の名にかけて、この結界を支えてみせます」

 

「……お願いね。さあ、私の下僕たち。文字通り命をかけていくわよ……と言いたいけれどダイスケ、あなたは残ってくれてもいいわ。あなたは私の下僕ではないのだから。まあ、正直なところひとりでも仲間がいると心強いのだけれど」

 

 リアスの言葉を聞いて、ダイスケはそのボサボサの頭を書いて答えた。

 

「何を今更。そのつもりならとっくに帰ってますよ。……でも、ここで帰ったらこの街が無くなる。俺の大事なものは、ここにあるんで」

 

「……愚問だったわね。みんな、今回は今までと違う本物の死戦よ! それでも私はあなたたちが死ぬことは許さない。生きて私たちの大切な場所を取り戻して、みんなで笑って学園に通うわよ!!」

 

『はい!』

 

「ウッシャァ!!!」

 

 初めて体験する本物の戦場に足を踏み入れるリアスたち。気合を入れているもののどこかしらイッセーはまだ不安げなところがあった。それを察してドライグが語りかける。

 

『なに、初めて戦った頃よりはお前は強くなってる。どうしてもダメだって時にはお前を全身ドラゴンにして変えてでも勝たせてやる』

 

「ははっ、そりゃ心強い。さすが神様と魔王相手に逆ギレしただけあって頼もしいや。匙、そっちは頼むぞ」

 

「おう、会長の愛を尻で受けてたんだ。その分、会長の期待も背負ってみせるさ!」

 

 同じ目標を持つ同志が拳を合わせ、互いの健闘を祈る。そしてそのまま、彼らはコカビエルが待つ学園へ突入する―――

 

 

 

 

 

 

正門から堂々と突入したイッセーたちは、異様な光景を目撃していた。

 校庭の真ん中に奇怪で巨大な魔法円が出来上がっており、中央にはバイパーが陣取って四口のエクスカリバーが宙に浮いていた。

 

「気になるかね? 四本のエクスカリバーを一つにするのだよ」

 

 イッセーたちの気配に気付いたバルパーが愉快そうに言う。そこに上空から声が聞こえてきた。

 

「あとどれくらい掛かるかな?」

 

『―――ッ!?』

 

 声のする空中を見てグレモリー眷属たちは驚く。そこには月光を浴び、学舎の時計台に腰掛けるコカビエルの姿があった。リアス達の姿を見ても、余裕の表情を一つも崩さない。強者の余裕が見て取れた。

 

「ああ、もう五分もかからんよ」

 

「そうか。なら、そっちは頼むぞ」

 

 バルパーからリアスへとコカビエルは視線を移す。

 

「さて、お前たちの後にはサーゼクスが来るのか? それともセラフォルーかな?」

 

「安心しなさい、お兄様の代わりに私が―――」

 

 風切り音のあとに響く爆発。それは、コカビエルが放った光の槍によるものであった。

 大きさは以前見たレイナーレ等が用いていたものと変わりはない。だが、その威力は段違いであった。狙われた体育館が1000ポンド爆弾でピンポイント爆撃されたように消し飛んでいる。何が恐ろしいかといえば、それがまるで宙を飛ぶ目障りなハエを叩き落とすような感覚で行われたことだ。

 

「まあいい。暇つぶしにはなるか。さぁて、余興にまず地獄から連れてきたゲストと遊んでもらおうか」

 

 コカビエルが指を鳴らすと、闇夜の奥から地を揺らしながらなにか巨大な何かが近づいてくる。

 それはまさに想像の産物にして空想の中の生物。高さにして約10m、漆黒のその巨体は巨木を思わせる四肢で支えられ、そこから生える鋭い爪は単なる武器というより巨大な工作機械ではないかと思える破壊力を秘めているように見える。

 闇夜の中に爛々と赫く輝く双眸に野生の残忍さが形となったような牙。それはまさに凶悪な猛犬であった。だが、巨体以上に不自然さを感じさせるのはその猛々しい頭が三つもあるということである。

 

「ケルベロスだ。二頭いるからしっかり相手をしてやってくれ。可愛いが躾が行き届いていないのが玉に瑕なのだがな」

 

 ケルベロス。

 ギリシャ神話における怪物の王テューポーンと数多の怪物の母エキドナの間に生まれた怪物のうちの一匹。ハーデスが支配する現世と冥府の境界を見張っており、そこから逃げようとする亡者を容赦なく捉え貪り喰うとされる文字通りの《地獄の番犬》だ。

 それが二体もリアスたちを囲んでいるのである。

 

「まずいわ、一旦散って!!」

 

「はい! アーシア、掴まれ!」

 

「は、はい!!」

 

 リアスの指示でその眷属たちは一斉に散らばる。人間よりも強く発達した脚力がそれをなさしめ、他のメンバーよりも若干体力が劣るアーシアはイッセー抱きかかえられる形でその場を離れた。

 悪魔である彼らはケルベロスの標的からは外れた。一応人間であるダイスケを除いて。

 

ガルルルゥルルルゥルルルゥ!!!!

バゥ!! バゥ!!

 

「んごぉ!? こっちに来たァァァァ!!!!」

 

 反応がやや遅れたダイスケはケルベロス達の興味を引いてしまい、二頭の地獄の番犬を引き連れて校庭を我武者羅に走り抜ける。

 

「いけない! 朱乃、手伝って!!」

 

「ええ!」

 

 すぐさま朱乃が雷を一頭のケルベロスに向けて放つ。その足元の地面は吹き飛ばされ、前脚を思わず引っ込めて立ち止まらせることに成功した。

 

「喰らいなさい!」

 

 その隙に自身の得手である“滅び”の魔力をチャージしたリアスは漆黒の魔力の塊を放つ。

 

ババゥ! ババゥ! ババゥ!!!

 

 ケルベロスはリアスからの攻撃の対抗策としてそれぞれの頭から火球を放つ。一撃目を受けたとき、リアスの魔力とケルベロスの火球は拮抗したが、二発三発と立て続けに押し切ろうとして来た。

 

「隙あり」

 

 そこへ摺り抜けるように現れた小猫が痛烈な一撃をケルベロスの前脚の脛に与える。

 

ギャイン!!

 

 もんどりうって倒れたケルベロスは一転、二転と転がっていく。だがその先には―――

 

ギャウン!!

 

 ダイスケを追っていたもう一頭のケルベロスがいた。衝突事故を起こした二頭はお互いにお前が悪いと言わんばかりに喧嘩をし始めた。それも足元にいたダイスケを巻き込んで。

 

「待てェェェェ!!! お前ら今は仲良くしろォォォォ!!! 仲良く一緒にお母さんに抱かれてお昼寝したあの頃を思い出せェェェ!! ねんねんころりおころりよ、ケル坊よいこだねんねしなァァァァァ!!!!」

 

 お前がこいつらの何を知っているんだとイッセーが突っ込みかけたまさにその時、二頭のケルベロスに異変が起きた。喧嘩をしながらどこかしら顔がうつらうつらとしているのである。

 

「ケル坊のおもりはどこへいった、あの山こえて里へ行ったァァァ!!!」

 

グルルルルルル……

 

 気のせいではない。ダイスケの叫びのような聴くに耐えない子守歌で本当にケルベロスたちがその場で横になって寝息を立て始めたのだ。

 

「里に土産に何もろた、でんでん太鼓に笙の笛ぇ……」

 

 歌いながらもダイスケは思い出した。ギリシャ神話に竪琴の名手オルペウスが死んだ恋人エウリュディケーを追って冥界まで行く話があるが、オルペウスがケルベロスを突破するために得意の竪琴の奏でる音楽で眠らせるという逸話があるのだ。さらに近年ヒットしたあの某魔法学園ファンタジーでは賢者の石を守る関門の一つにケルベロスが配されていたのだが、賢者の石を狙う悪人が魔法によって自動で奏でられるハープの音色で眠らせてこれを突破している。

 まさかここまでうまくいくとは思いもつかず、それでも慎重に軽く啄いて反応を見るが完全にケルベロスは寝ていた。

 

「……あれ、これいけるんじゃね?」

 

 ここでダイスケの中の外道が鎌首を擡げる。どうせならこの眠っている隙をついて寝首を掻けばいいのではないか?と。

 リアスたちはというと、ダイスケがやろうとしていることを察して良心が咎めるのか「やめて、やめて!」と無言のメッセージを見ぶり手振りで伝えようとしている。だが、寝ているケルベロスが起きることを恐れた故にそのメッセージは全く届かなかった。

 

「……ちょっと失礼しますよっと」

 

 言いながらダイスケは一頭の真ん中の頭の口に手をつっこみ、そのまま体内に向けて熱線を発射した。

 口の中で撃った為にそれが銃のサイレンサーのような働きをし、それほど大きな音を起こさずに済んでいる。そして放たれた熱線は先程の肉を鈍く切り裂く音を立ててケルベロスの体内を破壊。起こすことなくその命を容易く刈り取った。

 

「はい、またまたちょっと4・2・0(し・つ・れい)~っと」

 

 息絶えたのを確認するとダイスケはもう一頭の方に向かう。そしてそのまま先ほどと同じように生々しく熱線がケルベロスの体内を破壊するくぐもった音が聞こえる。それはまるで体内に侵入し、変形しながらその運動エネルギーと弾性エネルギーで人体を破壊する弾丸のよう。高温高圧のエネルギーが気管と食道を通って肺や胃を蹂躙。衝撃は骨を伝わって全身の筋肉をゆらした上に胸骨と肋骨のほぼすべてが破壊される。折れた胸骨は心臓を食い破り、体内に大量の血液が決壊し熱線によって空洞になった部分に流れ込む。さらにそこに引き裂かれ、衝撃で調理される前の肉のように柔らかくなった肉とペースト状になった臓物も綯交ぜになる。

 さながらケルベロスの皮でケーシングされたブラッドソーセージである。それがあっと言う間に二つも完成したのだった。

 まさに残虐非道。これが冥界に名立たる地獄の番犬が相手だから壮絶な戦い(?)にみえるであって、常識的に考えたらお付き合いを丁寧にご遠慮申し上げられるところである。

 

「あ、あなた……いくら相手が敵で魔物だかって言っても他にやりようが……」

 

「Sを自認する私でもこれはちょっと……」

 

「……しばらくブラッドソーセージを見られません」

 

「イッセーさん、なにがあったんですか? 目を隠されちゃったらわかりません」

 

「アーシアちゃん見ちゃダメ!! 一生後悔するから!」

 

 楽に倒すことができて感謝するどころか非難轟々。気持ちはわからなくはないが。

 

「ケルベロスを見かけたから急いできたが……」

 

「出番がなかった以上に嫌なもの見ちゃったよ……」

 

 いつの間にか援護に来てくれたゼノヴィアと仲間のピンチに駆けつけた木場は所在無さげに立ち尽くしてダイスケに言いようのない視線を向ける。

 仲間のピンチを救ったというのにこの扱い。自分でもちょっとやりすぎたかなと思うところはあれどもそれよりも怒りの方が優ってしまった。

 

「……だったらお前らなんで歌わなかったんだよ!! つーか、こういうのの相手はお前らの方が専売特許だろ! 相手の弱点を突くぐらいやれや! っていうかこれぐらい知っとけ!」

 

「「「「「いや、限度ってものがあるでしょ!?」」」」」

 

「イッセーさん、なにがあったんですか? 何が酷かったんですか?」

 

「アーシアは知らなくていいから」

 

 ケルベロスという巨大な障害を切り抜けた先にあった次の障害はまさかの身内。その扱いにさすがのダイスケも少し涙目になっていた。

 

「ククク……人の子にしてはいいじゃぁないか。思い切りもいい。なかなか俺好みの性格だ」

 

 まさかの助け舟がコカビエルである。敵ではあるがちょっとだけ嬉しかったのは内緒だ。

 

「まさか今の「ちょっと嬉しい」とか思ってるんじゃないでしょうね」

 

「お、思ってねぇっしゅ!!」

 

 リアスの指摘が図星であった為に盛大に咬むダイスケ。その様子を見たコカビエルは愉快そうに笑う。

 

「ハハハ! ならもっと喜ばせってやってもいい。バルパー、首尾はどうだ?」

 

「ああ、完成だ」

 

 バルパーの言葉にコカビエルは拍手を送る。すると、校庭の真ん中に配された四口のエクスカリバーが激しく発光し始めた。

 

「さぁて、最も有名な聖剣エクスカリバー。その力の片鱗を見させてもらおうか」

 

 

 

 

 

 

「あー、全く! この街の混在した空気は好きになれん! もう少しハッキリせぬか!」

 

 同時刻の駒王町の歓楽街。一人の美女がタピオカジュース片手に不機嫌そうに歩いている。

 

「大体、ミコトが安請け合いするからこうなる。あ、なに? ……ふん、他所の神話体系に気を遣う主が悪いわ。悪いが主にはこの飲料は飲ませんぞ。迷惑料じゃ」

 

 女性はかなりの高身長。スタイルは抜群でモデルかと見まごうほど。ショートに切りそろえた雪のような()()がミステリアスさを醸し出している。

 ただ、携帯で会話しているわけでもないのに一人で延々と喋っている。傍から見れば痛い独り言だ。

 

「なんだあれ……」

 

「あれだけは声はかけないでおこう。地雷だ、あれは……」

 

 周囲からしたら彼女は一見すれば「春の陽気に頭をやられちゃったヒト」だろう。ナンパ目的で街に出ている男達も避けている。

 そんな周囲の反応も気にせず、タピオカジュースを飲み干す。そして目の前にあったコンビニのゴミ箱に向けてシュート、見事一発で入れる。

 おぉ、と言う歓声に応えるように美女は自慢げに手を振るが、突如として何かに気づく。

 

「――ん? 聖霊剣に似た雰囲気が……。なるほどの、探し物はあそこと言う訳か。ならば少し急ぐとするか」

 

 美女が向かっていった先、それは駒王学園がある方向であった。




 はい、というわけでVS16でした。
 さぁ、最後に出てきた新キャラですが……あれ、と思われた方いらっしゃいます? ――大正解です。何が大正解かはまだ言いませんが。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!! 
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