ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

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 はい、トンデモ設定暴露第一回です。引かないでね?
 え、大して読者数いないから反応もねーよ? ……グスッ。


VS26 作者的に練りに練った設定なのに反応が薄かったら正直涙が出る

 時計の針が頂点を指した休日の駒王学園。普段は人っ子一人いないはずだが、今日は事情が違っていた。

 

「失礼します」

 

 ノックした後にリアスはそう言うと、会場の扉を開かれる。扉を開いたのは今日付でグレイフィアの補佐に付き添ってきたリリアだ。彼女はダイスケの姿を見て微笑むと、一同を通す。

 会場になっているのは学園の新校舎にある職員会議室。普段は生徒の進路などを話し合う場が、今後の世界の行く末を語る場となるのだ。

 だが流石に普段と同じ内装ではない。今日の為にとリアスとソーナのそれぞれの実家の力を使って特別に用意させたという豪華な調度品で部屋は埋め尽くされている。

 中央を占める大きなテーブルにはサーゼクスにセラフォルー、アザゼルにミコト、さらにアザゼルの傍らには桐生義人が黙して立っており、幾人かの見知った人物が座って静寂でありながら張りつめた空気が漂っている。

 イッセーもアーシアもあまりの緊張感にごくりと唾を呑む。そしてダイスケは、と見ると壁に掛けられた絵画を見て「これは……シャガールだねぇ」と緊張を紛らわすために適当なことを言っている。因みに後で聞くところによると、これは実際はミレーのものだった。

 

「私の妹とその眷属、そして協力者たちだ。眷属の一人は諸事情でここに来れないが、ご容赦願いたい」

 

 サーゼクスが立ち上がり、テーブルにすでについている面々に自分の妹とその仲間を紹介する。そしてサーゼクスは眷属のうち一人はここにはいないと説明したが、それはギャスパーのことだ。封印解除の許しは出たものの能力を制御できないのであれば、ということでリアス自らが部室での留守番を命じていたのだ。

 

「先日のコカビエル襲撃の際に活躍してくれたのは彼女たちだ」

 

 兄に紹介されたのち、リアスはお歴々に向けて会釈する。すると、一人の青年が立ち上がった。

 

「ええ、報告は受けています。いま、改めてお礼申し上げます」

 

 その青年の背中には金色の翼が生えており、頭上には金色の輪が浮かんでいる。彼は天使なのだろうがダイスケは今まで悪魔と堕天使にあったことはあっても純粋な天使は初めて見るので誰だかわからない。

 

「そういえばこの中には初めてお会いする方もいらっしゃいましたね。初めまして、わたくしは燭天使(セラフ)の一柱と天使の長を兼任しているミカエルと申します。以後お見知りおきを」

 

 爽やかでありながら、どこか荘厳さを湛えるその笑顔。美しくもあり、力強さを兼ね備えたその立ち姿はまさに天駆ける神の使い達の長の雰囲気が満点だった……がダイスケが抱いた印象は全く違っていた。

 

「ああ、某マンガで歌の最中最高潮に達すると世界終末を迎える合図のラッパを吹いて締めようとする人!」

 

「……最近の下界における私ってそういう扱いなのですか」

 

 若干がっくりとしたミカエルが座ると同時に、それぞれ席に座るように勧められる。

 

「それじゃあ一応全員そろったってことでいいのか、サーゼクスにミカエル?」

 

 以前姿を現した時の浴衣姿と違って堕天使の正装でいるアザゼルの問いに、やはりリアスの婚約発表の時と同じ衣装のザーゼクスが首肯する。

 

「こちら側はまだ全員というわけではないのですが、後々こちらに来る手筈にはなっています。ですからお気になさらずに……」

 

「そうか、ミカエル。じゃあ始めるとするか。とりあえずここにいる連中全員は最重要禁則事項である『神の不在』について知っているってことで始めていいんだな? じゃあ、まずコカビエルの件だが……うちのバカが迷惑かけた。すまんかったな」

 

 といいつつも謝罪するアザゼルの顔は態度同様に全く悪びれてはいない。その不真面目ぶりにリアスは口元を引くつかせていたが、ミカエルとサーゼクスは慣れているのか全く気に留めていない。

 そしてこのアザゼルの人を煙に巻くかのような態度はまだまだ続く。自分の身内の不始末についてしれっと謝っただけで済ませたのはまだいい方だ。ミカエルとサーゼクスがお互いにぶつかりあって滅びの道を辿りたくはない、という話に至った時など、

 

「まあ、ウチはそこまでその道には拘ってないんだけどな」

 

 と言い放って三陣営の席の空気が凍りつかせたりもしていた。顔には出していないが天使長も魔王も内心「真剣な場でふざけるのも大概にしろ」と思っていることだろう、ふたりは全く目が笑っていなかった。

 だが、トップにこんな空気を作られては下の者が迷惑だ。流石のダイスケもミカエルとサーゼクスの目が笑っていない笑顔を見て、給仕係としているリリアがびびってが淹れた紅茶を零しそうになった。だが、途中途中で場の空気が凍っても会議の内容は順調に進んで行っている。

 

「さて、リアス・グレモリー。そろそろ先日の事件について話してもらおうかな」

 

「はい、ルシファー様」

 

 そしてついに自分達が関わった事件の内容についてのリアスによる報告が始まった。

 主な説明はリアスだが、その間の悪魔陣営が知り得ない情報をゼノヴィアとミコトが補足を入れていく形になっている。 

 

「――以上が私、リアス・グレモリーとその眷属が関与した事件の顛末の報告です」

 

「ご苦労、座ってくれたまえ。さて、アザゼル。この報告を受けたうえで、堕天使総督としての君の意見を聞きたい」

 

 リアスの報告を受け、サーゼクスからの問いかけを投げかけられた不敵な堕天使総督に全員の視線が集まる。

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督である俺にも黙って単独で起こしたものだ。そして奴の処理はウチの白龍皇がおこなった。その後、組織の軍法会議でコカビエルの刑は執行された。『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑だ。もう二度と出てこられねぇよ」

 

 立場ある者の会議中の発言とはとても思えないアザゼルの返答に、ミカエルは嘆息を吐きながら辟易している。

 

「説明としてはまさに見本にしてはいけない最悪の部類ですが……組織としてはどうであれ、あなた個人としては我々と事を起こすつもりはないという話は聞いています。それは真実なのですよね?」

 

「ああ、俺は戦争になんざ興味は無い。コカビエルの奴も俺のことを散々こき下ろしていたってのは悪魔側の報告にもあっただろう」

 

 それが事実であることはその場にいたリアスたちも知っている。かつての争いの決着に興味がなく、神が残した遺物――神器にしか食指が動かない男だと。

 しかし、サーゼクスはまだアザゼルのその意思が本当かどうか確信が持てない。

 

「アザゼル、ひとつ聞きたいのだが、どうして神器の所有者をかき集めている? 戦力を増強して、天界か我々に戦争をけしかけるのではないかとも予想していたのだが……」

 

「そう、いつまで経ってもあなたは戦争をしかけてはこなかった。『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』に加えて『白い龍(アルビオン)』まで傘下に入れたと聞いたときには、それはそれは強い警戒心を抱いたものです」

 

「おうおう、かつては共に神の使いとして駆けずり回ったってのに、ミカエルまで俺のことをそこまで警戒してたのかよ?」

 

「当然。あなたは“堕ちて”いるのですから、信用も地に堕ちています」

 

「なんだよ、旧魔王や先代ルシファーよかマシだと思ってたのに、俺の信用度は三大勢力中最低か?」

 

「その通りだ、アザゼル」

 

「その通りよ☆アザゼル」

 

「信頼されているとでも思ってるんですか。神が「光あれ」といった瞬間から人生をやり直しなさい、アザゼル」

 

 三者三様の辛辣な言葉に、傲岸不遜で通してきたアザゼルも苦笑する。

 

「俺が『白い龍(アルビオン)』を引き込んだのは神器研究の為さ。まぁそれだけっていうわけじゃあないんだが……何なら研究成果の一部をお前らに開示したっていいんだぞ? つーか、研究してるから即戦争っていうのでもないだろう。俺はそんなもんに興味は無いし、宗教内のことも、人間界の政治にも手を出すつもりはない。俺はこれでも今の世界に満足しているんだ」

 

「ですが、怪獣を宿す『獣具(リスキー・エレメント)』を持つ者までも貴方は近くに置いている。いかに彼自身に罪は無いとはいえ、警戒はします」

 

「『彼自身に罪は無い』か。ほほぉ、天使長さまは随分と寛大になったんじゃねぇの。昔なら『獣転人(エレメント・ホルダー)』ってだけで断罪してそうなもんだぜ」

 

「……時代が変われば考えも変わります。貴方ほど変容するつもりはありませんが。」

 

「すまない、どうやらそちらだけで話が進んでいるようだが、私たちには話が見えてこないのだ。君たちはこの世界における古参の部類だから解るのだろうが、比較的新しい世代の私たちにもわかるように説明してくれないか?」

 

 サーゼクスの言うとおり、燭天使(セラフ)であるミカエルとグリゴリの総統であるアザゼルは非常に古い存在だ。しかし、サーゼクスもセラフォルーも悪魔のトップである魔王ではあるが彼らほど古い存在ではない。よって、世代の差によってどうしても知る情報の格差が出来上がってしまうのだ。

 それに気づいたミカエルとアザゼルはお互いに目配せしあう。

 

「そうだな、どうせ今日の会談でも話そうと思っていたことだ。今話してもいいよな、ミカエル」

 

「致し方ありません。話すべきですね、この世界の真実を」

 

「わかった……これから話す事は、『神の不在』とは異なり各組織のトップしか知らないという類のものじゃあない。だが俺たちの世代は誰もが口のするのを憚ってしまう、だからこれまで表沙汰にされなかったっていう話だ」

 

 それは、『神の子を見張るもの(グリゴリ)』のメンバーがまだ誰も堕天しておらず、神々と人の世界が地続きだった頃――いや、それ以前すら遙かに遡る太古という言葉すら矮小に思える刻の彼方。

 真実から話すが、この世界はすでに何度もやり直している。そして世界はやり直すたびに一つの脅威に直面していた。

 それは、『怪獣』。現実を生きる生物でありながら、現実を超越した力を持つ生命。

 怪獣達は至る所から現れた。

 遙か太古の彼方から。

 忘れ去られた神話の世界から。

 誰も見たことのない海の底から。

 人の英知と過ちの向こうから。

 遙か宇宙の彼方から。

 あらゆる世界から彼ら怪獣は現れ、そのたびに世界は滅びの危機を迎えた。だが、怪獣が現れるたびに人類はその英知によって怪獣という生きる災害を克服してきた歴史を重ねた。

 だが、そんな人類でもどうにも出来ない最悪が存在した。

 その名は『ゴジラ』。

 『呉爾羅』、『Godzilla』とも記されるそれは、人類最悪の発明、核兵器の登場によって生み出された。

 度重なる核実験で、住処と本来の姿を奪われたゴジラは人類に報復した。世界が繰り返されるたびに、である。その内ゴジラを撃退できた世界もあった。だが、現れるそのたびに人類世界は疲弊し、神は世界をやり直した。

 しかし、そのたびにゴジラは現れる。いくらやり直そうとも、それをあざ笑うかのように、人類の業を見せつけるかのようにゴジラは、怪獣は世界を蹂躙する。

 ついにあるとき、神はついに決意した。次に世界をやり直すとき、同時に怪獣達の魂を封印しよう、と。そしてそれを人間に宿せば、いずれ怪獣の魂は人間と同化して消えていくだろうと。

 そしてそれは実行され、彼ら怪獣達がどうにも出来ないタイミング――すなわち世界創世のなにもない瞬間に全てその魂は封じられた。

 だが、その結果怪獣の転生者、『獣転人(エレメント・ホルダー)』が生まれ、かれらはその魂の力を『獣具(リスキー・エレメント)』として顕現させたのである。

 そこまで説明し、アザゼルは懐かしげにこう言う。

 

「神が行った仕事が当時の理想でいうところの“完璧”じゃなかったって言うのはデカかった。だから俺は徐々に神を信じられなくなって、止めに女を抱いて堕ちちまったよ」

 

「そこまで怪獣王のせいにすると流石に冤罪というものですよ、アザゼル」

 

「まあ、それ置いていてだ。俺は三つ巴の戦争が終わった後、神器の研究の傍らゴジラをはじめとした怪獣達がどこへ行ったのか必死で探した。そしてどうやら人間界・冥界・天界関わらずを転々としている事は掴めた。だが、白龍皇や赤龍帝みたいにどこに行ったか特定できないんだ。三百年ほど姿を現さないかと思ったらひょこり出てきたりしてつかみどころがない。しかも肝心のゴジラは痕跡はわかるが、本人はどこにも見つからないときたモンだ」

 

「ということは彼は……」

 

「ああ、そうだぜサーゼクス。そこにぼけっとした顔で座っている宝田大助は、確認される中で歴史上唯一のゴジラを宿した獣具を使った獣転人(エレメント・ホルダー)だよ」

 

「……はひ?」

 

 想像の遥か斜め上の話についていけずに脳内がオーバーロードしていたダイスケが間抜けな反応をする。まさか今の話でいきなり自分に話が飛ぶとは考えていなかったのだ。

 

「おいおい、頼むぜ。お前は今回の重要議題の内の一つなんだから」

 

「いやいやいやいや、いくらなんでも話がぶっ飛びすぎだろ、この不良中年天使! ちょっと待て、どこから突っ込めばいいんだ!?」

 

 いきなり出てきた過去の世界の話。そして自分に宿っている魂が最強最悪の怪獣のものであるということ。なにより自分がそのゴジラを初めてまともに扱った人間だということ。

 それらの情報がダイスケを混乱させている。

 

「な、なあ、アザゼルさんよ。イッセーを見ていたら普通に生きていたら神器を覚醒させられない人間がいる、っていうのはわかるよ。でも、俺以外にもゴジラの、その……獣転人(エレメント・ホルダー)っていたんだろ?」

 

「ああ、いたことは事実だろうな。だが、その痕跡は残せても実際に誰も発現できていない。恐らくなにか条件があるんだろうが、そこもお前さんを実際に観察しないとわからんさ」

 

 自分以外の前例がいない、と言うことは参考資料が無いということだ。イッセーの場合は宿したドライグが導いてはくれる。だが、今のところ自分にはそのような機会は訪れていない。

 赤イ竹という脅威が自分に迫っている今、何も参考に出来ずに成長しようというのは度台無理な話だ。

 

「いずれにしろ、現代にゴジラは再び現れ、獣転人もすでに何人か確認されてそこのミコト嬢のように各神話勢力に協力している者もいる。こんな風に今の時代に出現が集中するっていうのいうのは、何か大きな時代のうねりに引き寄せられた、と考えるべきだろうか」

 

 そのサーゼクスの言葉が真実なら、それはまさにこの世界に大きな危機が迫っていることになるのだろうか。ダイスケはイッセーがドライグに問いかけるときのように己の中のゴジラに問うが、やはり何の返事も無かった。

 ただ、これが初めてというわけではない。ダイスケは自分の身に宿るものの正体を確かめる為にすでに何度かコミニュケーションを図っていたが、ようやく反応があったのはエビラを倒す為に熱線を剣の形に固めた時なのだ。

 

「その可能性も十分にあり得るな。俺も独自のルートでおかしい動きをしている奴らの存在を感知しているし……だからさ、それに対抗するためにも和平でいいだろ?」

 

「え、そんなあっさり……?」

 

 そのイッセーの小さな呟きは、おそらく各組織のトップの下についているこの場にいる者すべての心の代弁だ。

 イッセーの隣のリアスも、さらにその隣のソーナも相当驚いている。なにせ油断のできない上に何をたくらんでいるかわからない人物と思っていたアザゼルが、あっさりとこれまで敵対してきた相手と手を組もうとしているのだから。

 

「私も元々悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。このままこれ以上敵対関係を続けていても、害にしかならない。天使の長である私が言うのは本来憚られるべきことなのでしょうが……戦争の大本である神と魔王は消滅したのですからね」

 

「ハッ! 堅物で有名なミカエルさまが言うようになったね。あれほど神、神、神の神至上主義だったのにな」

 

「……失ったものは大きい。ですが、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。迷える子羊であるか弱き人間たちを導くのが我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくことこそ最優先だ、と私たちセラフのメンバーの意見も一致しています」

 

「おいおい、今の発言は()()()ぜ? ……と思ったが、『システム』はおまえが受け継いだんだったな。いい世界になったもんだ。俺らが()()()頃とはまるで違う」

 

 天使と堕天使の長の意見は同じであった。そして注目を一身に集める魔王が表明する。

 

「我ら悪魔も同じだ。魔王なくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない。そう、次の戦争が起きれば悪魔は必ず滅ぶ」

 

 各代表の意志はこれで明言され、確定された。

 そのあとは話がとんとん拍子に進んでいく。まるで最初からこうなる予定であったかのように。だが、結局のところどこも疲れていたのだ。

 一度始めた争いはどこかで決着を付けなければならないが、先に自分が辞めようとしたら相手はそこに付け込んでくる。だから第一次世界大戦も第二次世界大戦もは泥沼化し、総力戦になった。

 現代においてはそうなることはもうないといわれているが、結局のところ一度始まった争いのほとんどは完全な収束に至っていないのだ。

 その点、この三大勢力の争いに関しては運が良かった。何せ各勢力のトップが共にリベラルだった。そうである事が至上という訳ではないが、落とし処が解っている者達だったからよかったのだ。

 すでに今後の各陣営の対応だの、勢力図の変化ついてのこと等を粗方話し終え、

 

「――と、こんなところだろうか」

 

 というサーゼクスの一言で一気に場の空気の緊張が緩む。一通りの話は終えたらしい。

 そして今日より前にすでに位置でミカエルに会っていたというイッセーが、一度会ったときに取り付けた約束をミカエルが実行する形でミカエルに問い質す。

 

「なんでアーシアを追放したんですか?」

 

 他の者からしたらなぜいまさらその話を?と思っただろうが、これはずっとイッセーの中で納得できずにいたことだった。だからあえて、そして二度と来ないであろう機会である今訊いたのだ。

 彼女の人となりは非常によくできていて、誰よりも優しく敬虔な信徒だった。しかし、神にかまともに運用できなかったこの世界を支える『システム』は、燭天使四柱が扱うには荷が重かった。だからこそ、木場の『双覇の聖魔剣《ソード・オブ・ビトレイヤー》』のように混ざるはずの無い聖と魔が融合した神器が生まれたり、神が生み出したシステムであるのに『聖女の微笑み《トワイライト・ヒーリング》』が悪魔や堕天使を分け隔てなく癒したりしてしまう。

 それが明るみになればただでさえ不安定な『システム』で成り立つこの世界は崩壊する。だから、多を生かすために小であるアーシアを切り捨てざるを得なかった。ほんの少しでも綻びを見せれば、必ず誰かがバルパーのように神の死という結論にたどりつき、世界人口の半分を占める聖書の神を信じる者たちの世界は崩壊し、人間社会は滅びるだろう。

 だからミカエルは異端としてアーシアと神の死を知ったゼノヴィアを切り捨て、そして今ここで彼女たちに頭を下げた。彼女たちも彼女たちですでにこの件に関して追放されたからこそ今があると言って決着をつけていた。

 だが、たとえここでこの件が落とし処を見つけたとはいっても看過できないことがある。

 

「俺のところの部下がそこの娘を騙して殺そうとしたらしいな。その報告も受けている」

 

 レイナーレの事だ。

 あの一件はダイスケがしっちゃかめっちゃかにしたのが功を奏してアーシアの命が絶たれるという展開は回避できた。

 

「そう、アーシアは堕天使に殺されかけた! 俺は実際に殺されたし、ダイスケまでもだ。それにゼノヴィアについてもコカビエルが暴走したのが原因みたいなものだろ!」

 

 同じ悪魔であるリアスで考えれば、もともと彼女は堕天使に対していい印象は抱いていなかった。それは彼らが敵だと教わってきたからだ。だが、イッセーは違う。堕天使からの害悪を実際に受け、その結果親しいものは命を奪われかけた上に自分の生命も一度立たれた。あまつさえ、自分の初恋を自身の手で終わらせ、初恋の相手を殺す結果になった。

 故に、イッセーの堕天使に対する悪感情は生粋の悪魔であるリアス以上になった。だが、アザゼルは決して謝らない。

 

「堕天使が将来害になるかもしれない神器所有者を殺すのは組織としては当然だ。俺も黙認している。神器ってのは感情や想い一つでとんでもない悪影響を世界に及ぼすかもしれないからな」

 

「でもおかげで俺は悪魔だ」

 

「悪魔になったことが不満か? 意図せずとはいえお前が選んだ選択は正しかったように見えるが?」

 

「それは……」

 

 結果論だ、と言いたくてもイッセーには言い出せなかった。

 主として巡り合ったリアスは、ライザーという例を考えれば最高の主人だ。仲間にも恵まれていると思う。悪魔にならなければこんな出会いは絶対になかった。

 それはアーシアやゼノヴィアと同じ。それでも納得できないのは彼女たちと違ってそれまで普通の人間だったからなのだろうか、やはりイッセーには納得できなかった。

 

「俺からすれば世界の安定の為にやったことだ。詫びの言葉は絶対に言わない。まあ、今更言ったとしても嫌味にしか聞こえないだろうからな。まあ何だ、その代りと言っちゃなんだが別の形で穴埋めはさせて貰う」

 

「……別の形?」

 

 アザゼルが意図するところが見えないが、イッセーが理解するより先に話が進んでいく。

 

「さて、そろそろ俺たち以外の世界に影響及ぼしそうな奴らへ意見を聞こうか。まずはヴァーリ、おまえは世界をどうしたい?」

 

「俺は強い奴と戦えればいいさ」

 

 即答だった。

 出会ってまだ数回だが、もう彼がバトルジャンキーだという印象は覆らないだろう。ただ、ダイスケには不安があった。「強い奴と戦えればいい」というのは聞いた時にはそれで満足でそれ以上何も望まないのだという印象を与える。だがそれ以外に興味がなく、世の中がどうなろうが知ったことではないというようにも解釈できるのではないかと思うのだ。

 

「相変わらずだな、お前は……。お前はどうだ、義人?」

 

「俺にはただ、拾って貰った貴方への恩義があるだけです」

 

 義人の回答にアザゼルは肩をすくめる。

 

「じゃあ、赤龍帝、おまえはどうだ?」

 

 アザゼルは次にイッセーに問いかける。するとイッセーは頬をかきながら答えた。

 

「……正直よくわからないんです。なんか、小難しいことばかりで頭が混乱してます。ただでさえ今は後輩悪魔の面倒を見るのに必死なのに、世界がどうこう言われてもなんというか……実感がわきません」

 

「だが、おまえは世界を動かすだけの力を秘めた者の一人だ。選択を決めないと俺を含め、各勢力の上に立っている奴らが動きづらくなるんだよ」

 

 と言われても、イッセーは困っていた。そこで、アザゼルは告げる。

 

「では恐ろしいほどに噛み砕いて説明してやろう。俺らが戦争をおっはじめたらお前も悪魔の重要戦力として表舞台に立つ必要が出てくる。そうなれば愛しのリアス・グレモリーを抱く暇なんかなくなるぞ」

 

「――ッ!?」

 

「和平を結べば戦争する必要もなくなる。そうしたら重要になってくるは種の存続と繁栄、つまりセ○クスだだ。――それこそ毎日リアス・グレモリーとセック○しまくって子作りに励むことができるかもしれない。どうだ、わかりやすいだろう?さあ、○ックスなしの戦争とセッ○ス大歓迎の和平、どっちを選ぶ?」

 

 と言われて、イッセーは即座に叫んだ。

 

「ぜひ、和平でひとつお願いします! ええ、平和いいですよね! 平和が一番、最高です! 部長とエッチしたいです、しまくりたいです!」

 

 隣のリアスが顔を真っ赤にさせているのにも気づかずにイッセーは力説する。その兄のサーゼクスがいるのもお構いなしだ。もっともサーゼクス本人は若干苦笑するのみで全く怒っていない。つまり兄公認という事か。

 

「……イッセーくん、サーゼクス様がいらっしゃるのを忘れていないかい?」

 

 木場がやれやれといった様子で小さく忠告してくると、ようやくイッセーは自分が何を言っているのか気が付いた。必死になってどう弁明しようか焦っているせいか、サーゼクスが怒るどころか愉快そうにしていることも見えていない。

 

「若いっていいねェ、己の欲望に素直でいいじゃねぇか。そういうのが一番信頼できるってモンだ。……さてと、怪獣王。先の話を聞いた上でお前さんはどうしたい?」

 

「……俺の神器、じゃなくて獣具が目覚めたのはレイナーレがイッセーを殺そうとしていたからだ。アーシアを助けようって思ったのだってイッセーが大切に想っている娘だったからだ。だから……」

 

 関わってからほんの数か月しか経っていない世界のこと。それをあんな形とはいえはっきりと和平がいいという意思を表すことができたイッセーはすごいとダイスケは思う。自分はこの力で何を成すのか、今まで身にかかる火の粉を払うことしか考えずに力を行使してきたダイスケには考え辛いことだろう。

 だが、話しながら心の中を整理していくことでようやく一筋の光明が見えてきた。

 

「まず、俺は和平そのものには賛成です。そうすれば、俺の大切な人たちが酷い目に遭うっていうこともないだろうから。でも、それを乱す奴がいるっていうんなら……いや、そういう奴らは実際にいる。おれは、そんな奴らをどんな奴だろうが叩き潰します。俺の大切なものを壊そうとした奴には死んでも死にきれないくらいの後悔をしてもらう。どこまでやれるのか、どこまでやらなきゃいけないのかはわからない。けど……そのためなら俺は、獣になる。もう力を抑えようとは思わない」

 

 それが考えに考え抜いたダイスケの「やりたいこと」だった。我ながらよくも頭の悪い答えだと思う。ただ、これは間違いなくダイスケの本心だった。

 

「そこまではっきり言えるんなら上等上等。さて、聞きたいことは聞けたし、次はサーゼクスの方から出ていた議題でいいか?」

 

「それで頼む。先日のコカビエル襲撃の際に協力してくれたこちらのミコト嬢に関してだが―――」

 

 だがサーゼクスの話の途中、彼らはある感覚に囚われる。その感覚の影響を受けた一人であるイッセーはなんなのかすぐにわかった。

 それはもう感じることに慣れてしまった、ギャスパーが時間を止めた時の感覚だった。




 はい、というわけでVS26でした。
 仕事中にも一生懸命考えてた設定、「そりゃねーよ」とか「は? それで練りに練ってるの?」みたいな反応がきたら多分半年は更新できないな……。それでも感想は待ってます。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!
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