ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

29 / 50
 遅れました。非常に遅れました。本当にすみません。
 言い訳させてください。
 実は次の就職先の試験を受けようと頑張ってたんですよ。ところがこのコロナ騒動で試験がおじゃんに。完璧に心折られました。
 そんなこんなで多大な精神的ダメージを負ったまま艦これのイベントがあったりで更新できませんでした。


VS28 銀の地肌に虹色の鎧を着けたスゴイヤツ

「あれは……神器の能力? いや、しかしあの数は――」

 

 アザゼルが突如現れた赤い法衣の戦闘集団に対して疑問を持った。彼らは神器らしき異能で味方に攻撃を仕掛けているが、全員がその能力を持っている。何人かの神器所有者が戦闘集団に交ざっているのならわかるが、全員が異能を用いているというのは異常だ。 

 

「彼らは我らの同胞である赤イ竹の『オーラノイド』ですよ、アザゼル。科学技術によりオーラを変換して神器能力を再現する機器をインプラントした、いわば戦闘サイボーグです」

 

「な、に!?」

 

 そのカテレアからもたらされた情報にアザゼルは驚愕する。なにせ自分のやっている研究と同じ事を一テロ集団が独自研究で実現しているいて、その技術をスピンオフした戦闘兵器まで作っているのだ。

 しかし、ある疑問がアザゼルの脳裏によぎる。

 

「……神器の人工製造は俺も研究してるが、まだ人間には負担が大きい。だがあれだけの数、安全性を考慮した運用にはどうしても見えねぇ。なにかデカいデメリットがあるな?」

 

「――まぁ、そうですね。脊髄に機器を移植しているので血液汚染が起き、実働時間は実質二時間程度らしいですよ。それ以上はリジェクションが起きて死にます」 

 

「やっぱりそうかよ。俺だって人間の生命を尊重して安全性の高い人工神器を造ろうとしてるって言うのに……いや、テロリストがそんなこと考慮しねぇか。狂信者の集団なら殉教として受け入れるだろうからな」

 

 人間性の欠片も見えないその行為に、さすがのアザゼルも怒りを隠せなかった。

 

「どいつもこいつも好き勝手……俺の神器研究の邪魔はさせねぇぞ!」

 

「好き勝手は貴方も大概でしょうが!!」

 

 そう言い合いながら、堕天使総督と旧魔王の血族の闘争は激化していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、魔術師からオーラノイドの軍勢に相手を変えたダイスケは苦戦していた。

 数が多いのも勿論問題だが、何より自分の武器との相性が最悪であった。最初は熱弾の連射で対処しようとしていたが、これが意外とオーラノイドの身に纏う法衣が熱に強く貫けない。かといって熱線で打ち抜こうにも発射と発射の意外に長いインターバルのせいで効率が良くない。

 最終的に魔術師たちも追い払った熱線剣で対処することにしたが、いかんせんりリーチが足りない上、近距離の相手にしか使えない。効率化のために一撃必殺を狙うものの、数が数だけに余計に体力が減ってしまう。

 

「だぁぁぁぁ、もう! やってられねぇ!!」

 

 倒せてはいるものの、確実に擦り減っていく体力と自制心が限界を迎えてしまう。

 

 ――ああ、もういっそのこと、こいつらを一網打尽でぶっ飛ばせたらいいのに。

 

 まさに、そう思った瞬間だった。片手剣を握っていたはずの手にそれ以上の重みがのしかかる。いつの間にか自分の右手に握られていたもの、それはまさに一振りの戦鎚(メイス)だった。

 あまりに唐突だったので理解が追い付かなかったが、ここでまた熱線剣が生まれたとの同じことが起きたのだ。そしてダイスケはこのことからあることを実感する。

 それは、自身の中のゴジラは間違いなく自分に力を貸している、ということである。理由はわからないが、先刻聞いたまさに恐怖の大魔王のような存在が自分に力を貸しているという実感が、ダイスケにとてつもない心の強さと安心感を与えてくれた。

 思いがけない太鼓判がダイスケに勇気と力を与えてくれた。そしてダイスケはその高揚感を、両手に構えた戦鎚を通して目の前に邪魔な狂信者たちにむけて解き放つ。

 ――大爆発。

 それは砲弾の着弾でもない、高性能爆薬や大量の燃料の爆発でもない。ダイスケの戦鎚がもたらした爆発である。そう、これがこの新しいダイスケの武器の特性であった。

 旧世界の記録におけるゴジラの熱線の破壊の要素は、大きく分けて二つに分類される。まずは核反応由来の超高圧超高温。ものによれば太陽表面にも匹敵するその熱エネルギーは大抵の物質を溶解させうる。

 そしてもう一つは熱線にさらされた物体の急激な反応による大爆発だ。ある資料によれば熱線を受けた際の大爆発は光速で打ち出された電子や陽子が対象物にぶつけられることによって強制的な熱核反応を起こしているという一説がとられている。これが事実であれそうでなかったであれ、旧世界の記憶を持つ者のゴジラの記憶では熱戦を受けた大概のものが大爆発を起こしている。

 つまり熱線剣はゴジラの熱戦の高温特性を、戦鎚は熱線照射時の大爆発という特性を形にした武器である、ということになるのだ。

 そんな後にダイスケも知る情報はさておいて、再び振り下ろされる一撃から発生した爆発は、熱風と爆風を孕んでオーラノイドたちに襲い掛かる。そしてその勢いのままに、走り回って次々と兵士を送り込んでいる敵戦車に向けてダイスケは戦鎚(メイス)を槍投げのように投げつける。

 すると、突き刺さったそれが大爆発を起こして巨大な車体を吹き飛ばす。一方のリリアとヒメはどうかと一瞥すると、そちらはリリアの高火力とヒメの近接援護によって相当数のオーラノイドと魔法使い達を骸へと変えていっていた。

 どうやらあの二人は大丈夫そうだ。そう判断したダイスケは、自分が担当するこのエリアの残敵を駆逐すればよいと結論づける。そのダイスケめがけ、ダイスケを高驚異と判断したオーラノイド達と戦車が殺到する。

 ダイスケがそれらに向けて戦意を高めたその時であった。ダイスケめがけ殺到していたオーラノイド達が総崩れを起こしていく。なにかにやられたらしい。

 そして、一人の人間がダイスケの目の前に着陸する。それは桐生義人であった。どうやらオーラノイド達を倒したのは義人らしい。

 

「よかった、あんたも無事だったんだな」

 

 ダイスケはそう言って義人に歩み寄る。

 

「……お前も無事そうで嬉しいよ。なにせ――」

 

 そう言って義人は手にしたランチャーをダイスケに向ける。その様子に驚くダイスケだが、それで終わりではなかった。義人の体が銀色の炎に包まれたかと思うと、その力は顕現する。

 白銀の火炎はすぐに収まり、その焼跡とも言える義人の肉体は変化していた。

 それは、ダイスケの漆黒の鎧とは対象に、メカニカルな白銀に輝く鎧。ダイスケが鎧武者に例えるならであれば、まさに対極の騎士の甲冑。

 

「お前は俺の獲物なのだからな」

 

 義人はそう言い放って手のランチャーを一斉掃射した。

 

 

 

 

 

 

 ダイスケはボロボロだった。その体にはダーツのような銀色の小型ミサイルが突き刺さっており、中には爆発するものもあって肉体の所々が裂けたり小さく抉られたところもある。

 反撃の余裕はなかった。鬱憤を晴らすかのような小型ミサイルが雨あられと迫ったせいで、まともに反撃できなかったのだ。

 その傷も獣具の回復力のお陰で自動的に癒やされているので出血死などの心配はない。それでもこの状況はまずい。この急展開を見たオーラノイドや魔法使いの集団が反撃の機会とばかりにここに殺到し始めている。

 だが、それら増援を薙ぎ払ったのは意外にもこの状況を作った義人本人である。

 

「……俺の獲物に、手を出すなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 全身から放たれるミサイルとビームの超飽和攻撃。その威力たるや絶大で、殺到した全ての敵を薙ぎ払ってしまった。

 

「な、に……考えてるんだテメェ……裏切ったかと思ったら自分の味方大量殺戮しやがって……」

 

「言っただろう。お前は俺の獲物だ。横からかっさらうのなら俺の敵になる」

 

 手のランチャーにミサイルが装填されると、義人はそれをダイスケに向けて言った。

 

「改めて自己紹介しよう。俺は桐生義人、白金の機龍王鎧(メカゴジラ・プラチナメイル)の獣転人。お前との因縁を持って生まれた男だ」

 

「因縁……? 俺にはお前に因縁つけられる覚えはないぞ」

 

 ふらふらと立ち上がりながらダイスケは反論するが、義人の兜の奥の眼光の鋭さは変わらない。むしろさらに鋭くなった。

 

「正確に言うなら、()()()()()()()()との因縁だ。思い出せないか? その魂の深奥に眠る記憶を? ――なら、思い出させる!」

 

 そう言って義人は足裏と背中のバーニアをふかし、殴りかかる姿勢でダイスケに突撃を仕掛ける。

 当然ダイスケも迫る義人の顔面を殴るために構え、駆け出した。お互いがぶつかるその瞬間、お互いの拳が放たれる。両方の拳は見事に両方の頬を撃ち抜くが、義人はこれを狙っていたのだ。

 お互いの拳がお互いの頬に触れた瞬間、ダイスケの意識はブラックアウトする。殴られた痛みによるものではない。お互いに触れた瞬間に意識が自分の中の深奥に引きずり込まれたのだ。

 実際の時間に換算すればものの二、三秒。しかし、ダイスケはその間に永い刻を見てきた。

 それは、自分(ゴジラ)を模した機械仕掛けの獣との闘争の記憶。

 はじめは闇夜の港湾で熱線に焼かれながらその正体を現した瞬間。

 次は南の島で獅子の王とともに立ち向かった記憶。その中では自分(ゴジラ)は彼の者の首をねじ切って倒した。

 次は彼の者が赤い恐龍と共に都市を襲った時。一度はそのコンビネーションで地中に埋められたものの、諸事情で形勢逆転し、最後は二匹とも倒した。

 その次は世界が変わり、同胞を連れ戻すときに彼の者は邪魔しに二度も現れた。二度目は一度自分は永久に立てなくさせられたものの、同胞の義兄弟の命によって復活でき、倒すことが出来た。

 また世界が変わり、今度は彼の者は自分の同胞の骨を利用して人間どもに造られた半機半生物の異形にさせられた。紆余曲折あったものの、ともに海の底に帰ることが出来た。

 再び世界は変わり、彼の者はこの地球を蝕む毒の鉄塊となっていた。この星を殺す敵であると判断した自分(ゴジラ)は、二万年を掛けて殲滅することに成功した。

 その自分(ゴジラ)と因縁深い彼の者の名は――

 

「メカ、ゴジラ……」

 

 殴られた衝撃で倒れたダイスケは、その名を口にした。どうやら義人はダイスケがミコトと接触したときに起きたような記憶共有(接触記憶共有というべきか)を利用したらしい。

 

「思い出したか。嬉しいよ、これでお前と何の気兼ねもなく死闘(たたか)える」

 

 ダイスケが自分のことを思い出したと言う事実に義人は喜ぶ。しかし、ダイスケにとってはそうではない。

 

「……おかしいだろ。確かに俺らの前世には因縁がある。でも、それは今の俺らには関係ないだろう!」

 

「ああ、そうだ。俺たちは前世で繋がっているという弱い繋がりしかない。だが、それでも!」

 

 義人はダイスケに向けて再びミサイルの群れを放つ。それに足して、ダイスケは逃げる選択肢しかなかった。

 

「お前にわかるか!? 幼い頃から俺は俺の奥から聞こえる「ゴジラを倒せ」と言う声に犀悩まされ続けてきた! 何かあるたびに、ずっと聞こえるんだよ!! ゴジラを倒せ、ゴジラを倒せってな!」

 

 義人はその場から動くことなく、固定砲台のようにミサイルを撃ち続ける。

 

「何より悔しいのは、本来関係のない俺までがお前と戦うことを本能で望んでいるって言うことだ! 俺の理性はアザゼル殿の望む平穏を求めているというのに! 拾ってくれた恩をこうしてテロリストに加担することで裏切らなきゃならないんだよ!」

 

「なら理性で本能を押さえつけてみろよ! ここまで出来るあんただってのに!」

 

「口で言うのは容易いさ。だが実際のやろうとすると、それは呼吸せずに生きようとするくらい難しいんだ。――だからこうするしかないんだよ!!」

 

 義人の黄金に輝く双眸から虹色のスペース・ビームが放たれ、ダイスケに直撃した。立ち上がる爆炎に濛々とした煙。そこから炎をかき分けるように漆黒の鎧が姿を現す。

 

「……そうか。じゃああんたは俺の敵だ。なら――お望み通り叩き潰す」

 

 

 

 

 

 

 かつて魔王を名乗っていた血族の女悪魔、カテレア・レヴィアタンは焦燥する。

 なぜ、正統なる魔王である自分がここまで追い詰められねばならないのか、と。

 手駒は十分すぎるほど揃えていた。二天龍の片割れであり、旧ルシファーと人間のハーフとして生まれ、白龍皇の力を得た奇跡の子であるヴァーリを引き込んで育ての親であるアザゼルを裏切らせ、平穏な世を疎む血の気の多い魔術師たちを従え、星の海を越えてきた者たちの協力を取り付け、かの怪獣王と同格という獣転人さえも手に入れた。

 だが、白龍皇は赤龍帝と戯れるかのごとく因縁の紅白対決を楽しみ、兵隊である魔術師たちは総崩れになる始末。獣転人は獣転人でゴジラの獣転人にしか目が行っていない。

 こうなれば頼りになるのは赤い竹のオーラノイド。数も減らされてはいるが、兵隊はまだまだストックがある。

 しかし、当の自分は窮地に立たされていた。

 いずれ新世界の神として祭り上げる無限の龍、オーフィスから無限の力の断片である《蛇》を戴きカテレアは自らの力を格段にアップさせていた。元とはいえ魔王の一角を担った女悪魔にそのような力を与えられればまさに鬼に金棒、堕天使の総督アザゼルといえども手におえる相手ではない……はずだったのだ。

 だが、現実ではカテレアはアザゼルによって袈裟懸けに切られ、地面に倒れ伏している。しかも何合も切り結んだ結果ではなくたったの一撃で、だ。

 

(人工の神器……それも『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファーブニルを封印したものでおまけに禁手化しただと!?)

 

 アザゼルが自他共に認める神器ギークであることは周知の事実であり、堕天使勢力が最も神器研究であることを知っていたしそこから情報も盗みもした。

 だが、まさかかつて五大龍王と称された名のあるドラゴンを利用したほぼ完璧な人工神器を有し、あまつさえそれを使用してくるとは夢にも思わなかったのだ。

 

「お前らの側に下った俺の元部下たちがいろいろと持って行ってくれたみたいだが……その中には残念ながらこの『墮天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)』、さらにその疑似禁手状態の『|墮天龍の鎧《ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》』程のレベルの情報は無いぜ。ここまで深いレベルを把握してるのは俺とシェムハザぐらいなもんさ」

 

 掴まされた情報は自分が思った以下の価値のもの、しかも最強の龍神の力の片鱗を得たはずの自分が趣味で作ったような代物を纏った趣味に生きる男に地面に倒れ伏せさせられたことを思うと悔しさにカテレアは唇を噛む。

 

「悔しいか? だが俺はそれ以上にむかっ腹が立ってるぜ。自分の研究を横取りされて、しかもウチの悪ガキはテロリストの道に堕とされるなんて最悪の気分だ。そういう俺の大事なモンの中に土足で入り込んでくる奴は……とっととくたばりやがれ」

 

 そう言いながらアザゼルは神器の槍を持つ反対の手に堕天使が持つ悪魔に対する絶対必殺の武器―――光の槍を構える。

 だが、地に倒れ伏していたカテレアは残ったすべて力を込め、黒い触手のようなものをアザゼルに向けて放つ。そしてそれはアザゼルの光の槍を構える右手に絡みついた。触手を切りつけて切り離そうとするアザゼルだったが、行くと槍の穂先で斬りつけても傷一つつかない。

 

「それは私の生命を込めて作った代物。断ち斬ることはかないませんよ」

 

 勝利を確信したカテレアの皮膚に呪術的な文様が現れる。

 

「自爆術式……地獄の底まで俺とランデブーしたいってか?」

 

「勿論、ただでは死にません!」

 

 もはやカテレアの顔には狂気しかない。だが、かつて魔王であったという自負の過去の栄光が己の身を滅ぼしてでもの勝利を欲する。

 しかし、それとは対照的にアザゼルは冷静に、そして正確にふつうはだれも選択しないであろう現状の解決策を実行する。フリーになっていた左手の槍の穂先で、自分の右腕を切り落としたのだ。

 

「―――なっ!?」

 

「悪いな。俺もいろいろやりたいことや、やらなきゃならないがあってね。あの世へのお供はその右腕だけで勘弁してくれ」

 

 切り離された反動で後ろに倒れこむカテレア。

 しかし彼女はあきらめずにもう一つ別の触手を伸ばして再びアザゼルを捉えようとする―――が、その触手は別の何かに巻き取られる。

 

「これは……!?」

 

 それは、糸であった。

 しかもそれはアザゼルの左腕から放たれたものである。

 

「わからねぇか? 獣具、『大蜘蛛の縛錠糸(クモンガ・ウェッブ・シューター)』だよ」

 

「ばっ――」

 

 カテレアは驚愕する。なぜなら自分の知る限り獣具とは神器のようなもの。つまり、人間か人間の血を引くものにしか手にできぬ代物だ。

 それがなぜアザゼルが持っているのか。

 

「冥土の土産にいいこと教えてやる。獣転人っていうのは人間には限らねぇ。人間だろうが悪魔だろうが天使だろうが、()()姿()()()()()()()()なら誰だってその可能性があるのさ。お陰で探索も一苦労だ。ゴジラ一つに絞っても、そりゃなかなか見つからんさ」

 

 ならばなぜ自分はその巡り合わせにいなかったのか。なぜこうも力を持っていて欲しくないものに限って力を持つのか。その理不尽さに、カレテアは絶望した。

 

「何で自分が獣具を――って、顔だな。そりゃあれだ。この世を作って死んだ神を恨め」

 

 次々とアザゼルの左腕のガジェットから放たれる糸によってカテレアは絡め捕られていき、元がなんなのかわからないほどに雁字搦めにされていく。

 

「―――!!!」

 

 アザゼルへの呪詛を叫ぶカテレアだが、それは絡み付いた糸によって阻まれる。そして自由落下によって着地した先で自爆術式は発動してしまう。

 旧魔王の栄光を求めた女悪魔の断末魔だけでなく、最後のあがきすら叶わぬまま、カテレアは落下地点にいた多くの魔法使い達を巻き込んで、この世から完全に消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 自分に向けて飛来するミサイルの群れを、ダイスケはメイスの起こす爆炎で薙ぎ払う。ミサイルは確かに脅威だが、横合いから別の力を加えれば簡単にその軌道を変えることが出来る。WW2のV1ロケットを迎撃した連合国戦闘機パイロット達の戦術がいい例だ。

 ビームに関してはもう片方の手に持った熱線剣で弾いている。同じエネルギーの武器であるなら盾で物理的に弾くより自身の消費が少ないと考えたからだ。

 しかし、いかにエネルギーマネイジメントをしていると言ってもこのままでは無駄に時間を浪費していることにはかわらない。そこで、義人は揺さぶりを掛ける。

 

「上手く近づけば()れると思っているんだろうが、あの時のように首をもぎ取ろうとしても俺はしっかり警戒しているぞ!」

 

「――ちッ」

 

 ダイスケの記憶の中の一つに、ゴジラがメカゴジラを体内に溜めた磁力で吸着させて首をもぐ、というのがあった。しかし、その記憶は義人も持っているため当然ダイスケの接近を警戒してアウトレンジからの攻撃に徹している。

 さらに言えば記憶の中はゴジラは落雷を自ら浴びて肉体を磁化させていたが、今のダイスケにそんな準備をする暇も余裕も無い。そんな手詰まりになったところに思わぬ救援がやってくる。

 

「「ダイスケ(様)ッ!!」」

 

 一番近くにいた味方であるリリアとヒメだ。二人はそれぞれ魔力砲とビームを放って義人を狙う。内一発が義人に直撃するものの、それは義人の怒りを爆発させる結果となる。

 

「邪魔を……するなぁぁぁぁぁ!!」

 

 全方位に放たれるミサイルとビーム。ビームはヒメが放つ鱗粉によって拡散させられるものの、ミサイルは防げない。そこでリリアが魔力で防御壁を作ってヒメを庇う。

 このままでは二人が危険だ。しかし、これは同時にチャンスである。濃密だったミサイルとビームの嵐が広範囲に放たれていることで、ダイスケに集中していた攻撃の濃度が薄まったのだ。

 この攻撃密度なら鎧の防御をあてにして突撃しても致命傷にはならない。二人も見ていれば攻撃を上手く躱し、そして防御している。これならばダイスケが突撃しても大丈夫だ。

 意を決したダイスケは、熱線剣を捨ててメイスを腰だめに突撃の構えを取る。そして、足裏から熱線のジェットを吹かして一気に義人に迫った。

 

「もらったぁぁぁぁぁ!」

 

 怒りにまかせる義人が、迫るダイスケに気付く。しかし、もうすでにダイスケは必殺の間合いに入った。あとはこのメイスの先端を突き立てて爆発させるだけだ。

 だが、義人はマスクの奥で口角を吊り上げる。

 

「このタイミングで来ると思っていたさ!」

 

 すると、義人の銀色の鎧の首にあるリング状の部分が高速回転を始める。それから二秒もたたないうちに義人の全身は光の筒と呼べるものに包まれる。それはバリヤーである。

 これはダイスケの記憶の中にもあったが、チャンスをつかんだことで失念してしまっていたのだ。メイスの先端はバリヤーに飲まれ、引き戻せなくなってしまっている。ここは手放すしかない。

 そうダイスケが判断した瞬間、義人はバリヤー越しからミサイルを一斉射した。なんと相手の攻撃を弾きながら、バリヤーの向こうから自分は攻撃できる仕様だったのだ。

 鋭い先端のミサイルがダイスケの鎧を貫通し、その肉体に突き刺さる。しかも、痛みを感じるよりも早く第二陣が放たれた。そして、突き刺さったミサイルが全て動じに爆発した。

 

「――ッ!」 

 

 全身が文字通り抉られる痛みに、ダイスケは一瞬気を失った。こんな痛みは人生で初だ。それも常人ならショック死するほどの痛みである。気を失うのも当然であった。 

 

「ダイスケ!」

 

「――ダイスケ様ッ!」

 

 決定的瞬間を目にしたヒメとリリアがダイスケを助けに走ろうとするが、周囲に落ちていたミサイルが大爆発を起こして行く手を遮る爆炎の壁と化す。

 ダイスケは決定的ダメージを受け、援護も来られない。その絶好のチャンスを、義人が見逃すはずがない。

 

「――勝った」

 

 そう感慨深そうに義人は呟く。メイスにかかったダイスケの手も剥がれる寸前。これが剥がれれば本格的にバリヤーを切って全身の武器をたたき込むことが出来る。

 一本、二本と指が持ち手から剥がれていくのを見届ける義人。

 

 ――あと一本

 

 義人が本格的にとどめを刺そうとしたその時。

 

「――!!」

 

 虚ろだったダイスケの眼光がより強いものとなって宿り、指が離れかけていたメイスを握る手に力が再び宿る。そしてメイスを全身の力を込めてバリヤーの向こうに押し込み始めたのだ。

 

「なんだと!?」

 

 引いてだめなら押してみろ。まさかそれを実行するとは思ってもみなかった義人は驚愕した。しかし、感慨に浸る余裕はない。もしもこれ以上押し込まれたらバリヤー内で大爆発が起きてしまう。

 そうなれば密閉空間で大爆発が起きることになる。もしそうなったら反射する衝撃は閉じ込められ、何度も何度も義人は肉体を衝撃波でズタズタにされた上、逃げ場のない獄炎に蒸し焼きにされることになる。

 こうなればバリヤーを切るほかない。バリヤーを切ってメイスの直撃を受けた方がマシだからだ。しかし、高エネルギーがバリヤーに着弾する。リリアとヒメの援護砲撃だ。ダイスケが何をしようとしているか察して義人にバリヤーを切らせないようにしているのだ。

 バリヤーを切れば準魔王級と神クラスの砲撃にさらされ、バリヤーを張ったままならバリヤー内で爆殺される。どちらを選んでも大ダメージは避けられない。そこで義人はこの状況を切り抜ける唯一の策に出た。

 迫るダイスケに向けてバリヤー越しにミサイルを放ったのである。こうすればダイスケは倒れてメイスを手放し、バリヤーで砲撃を防護できる。

 突き刺さるいくつものミサイルが、再生中のダイスケの肉体に突き刺さって爆発する。これでダイスケは倒れる、そう義人は信じて疑わなかった。

 だが、ダイスケは止まらない。むしろメイスを持つ手の力は増し、さらにメイスの先端は義人に迫ってきた。

 

「馬鹿な!?」

 

 目の前で起きたことに驚きつつも、義人はさらにミサイルを放つ。しかし、それでもダイスケは止まらない。

 

「なぜだ、なぜ止まらない!?」

 

「……止まらないのに決まってるだろ」

 

 装甲越しに血を流しながら、ダイスケは言う。

 

「ここで止まったら、俺は何にも守れない。ここで諦めたら、全部取りこぼす。お前程度どうこう出来なきゃあ――」

 

 徐々に迫っていたメイスの先端が最後の一押しで突き刺さった。

 

「俺が俺じゃなくなるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 大爆発。

 その獄炎はダイスケをも吹き飛ばす。それを見たヒメとリリアは、砲撃の手を止めてダイスケが落下するであろう地点に急いで駆ける。

 なんとかダイスケをキャッチした二人であるが、ダイスケの獣具は解除され、そのボロボロの肉体が露わになっている。

 

「ダイスケ様、しっかり!」

 

「意識をしっかり持て! すぐに鱗粉を塗る!」

 

 治療のために懐に手を入れるヒメだが、ダイスケはその手を止める。

 

「アイツは……?」

 

 ダイスケは先程の爆発が気になっていた。義人は本来、二人の砲撃にさらされてそれを防御するためにバリヤーを張っていた。つまり、爆発はバリー内で起きてそれほどの爆炎は上がらないはずなのだ。

 それなのに大爆発が起きた。それが意味するのは――

 

「――ガハッ……まさか、ここまでやるとはな」

 

 炎の中、ボロボロの銀の鎧を身につけた義人が立っていた。義人はバリヤを切ってあえて攻撃にさらされることで「最悪のダメージ」を避けて「現状での最小のダメージ」を選んだのである。

 

「貴方――!」

 

 リリアが砲撃を放とうとするが、力が抜けてしまう。どうやらガス欠のようだ。ヒメの方もダイスケから離れる訳にはいかないので追撃が出来ない。

 

「……安心しろ。お前達に邪魔された以上、理想の決闘になはならない。仕切り直させて貰う」

 

 そう言うと義人は背中のバーニアを吹かせてホバリングする。その義人に、ダイスケは尋ねた。

 

「――またやる気か」

 

「当然。次は他人に助けられる必要がないくらい強くなれ。でなければお前と戦う意義がない」

 

 そう言うと、義人はバーニアを吹かせて飛び去っていった。その姿が消えたことを確認すると、リリアとヒメは急いで校舎の影へダイスケを引っ張る。

 

「はは、何度も助けて貰って悪いね」

 

「冗談言う場合じゃありませんよ、ダイスケ様」

 

「この娘の言うとおりじゃ。黙って治療されい」

 

 そう言うとリリアがダイスケの服を脱がし、ヒメが鱗粉を傷口に塗っていく。そんな中、ダイスケは思う。

 今回、もしもこの二人の助けがなかったら本当に危なかった。そして、次の機会が助けを得られる状況とは限らない。もしも一対一で今と同じ強さなら確実に自分は殺される。

 そうならないためにも強くならなければ。ダイスケはそう心に誓った。




 はい、というわけでVS28でした。
 敵のオーラノイドはオリジナルの雑魚敵です。神器能力の再現は出来ますが、能力は圧倒に敵にアザゼルの人工神器以下ですが、量産が効きます。勿論その分デメリットも……。
 アザゼルを見ての通り、これで完全に誰が獣転人かわからなくなりましたよ。敵味方種族関係なく強化ですので一部の戦いは結果が見え、また一部は地獄と化します。
 義人はね……やっぱりメカゴジラである以上敵対させないと動かせないんですわ。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。