目が覚めると家が劇的ビュフォーアフターしていた。
な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……と思わずイッセーもポル○レフ状態になった。
兵藤家はイッセーの寝ている間に豪邸に変貌していた。部屋には買った覚えのない、しかも高くて手が出ない薄型ワイドテレビに最新ゲーム機全種品揃え済み。廊下の幅は三倍になり、二階建ての階数は六階地下化三階建てにクラスチェンジ。お隣の鈴木さんと田村さんの敷地を吸収合併。東京都内で買ったらウン十億という大豪邸が一晩のうちに兵藤家の家になっていたのである。
リアスとアーシア以外の同居人も増え、そして最近越してきた朱乃やゼノヴィアとも同衾する機会が出来た。
お隣の鈴木さんと田村さんは好条件の土地が手に入ったからそっちに引っ越ししたというが、どう考えてもグレモリー家の財力の賜物である。イッセーの父も母も「部長の家がやっている建築業の一環」で納得してしまっており、全く気にしていない。
イッセーとしては両親も喜んでるのでまあいいかとほぼ諦め気味である。
そんな大変貌を遂げた兵藤家改め兵藤邸でのオカ研最初の活動は夏休みの冥界旅行についての打ち合わせだ。イッセーは最初、リアスが「冥界に帰る」って言ったものだから、自分を置いて帰国するのかと思ってしまっていたが、実際は毎年恒例の里帰りである。それに今回はオカルト研究部全体の底力を上げるためのトレーニングの機会にした。
ちなみにミコトの方は日本神話関連の行事が夏にあるということでもう祀られている神社に一時帰宅だ。ちなみに帰郷の際の一言は「私がいなくなにかあっても死なないようにね!!」だった。とてつもなく縁起でもない。
「おいおい、俺が同行するってのも忘れるな」
突然のアザゼルの一言に一同が驚く中、ダイスケがそれとなく教える。
「普通に玄関から入ってきてたぞ。さっき俺、部屋に入ってきたときに会釈してたし」
「き、気が付かなかったわ」
「まだまだだな。まあ、そこんところも含めてトレーニングするわけだが、全員励むように」
実際、アザゼル先生は実力者である。長年神器の研究をしてきたのは伊達ではなく、やはり知識豊富で教え方が最高にうまい。そのおかげで眷属内の神器持ちは何か掴めそうだ。
そんなアザゼルは、懐からメモ帳を取り出してその内容を読み上げる。
「冥界でのスケジュールはっと……リアスの里帰りと現当主に眷属の紹介。あと新鋭若手悪魔たちの会合、それから修行だ。俺は主にこっちに付き合うことになる。で、その後は各々のスケジュールで動いて、その間俺はサーゼクスたちと会合か。ったく、会合、会合と面倒くさいな。」
心底めんどくさそうなアザゼル。一組織の長がこれでいいのかとも思うが、彼は本当にほかの堕天使に慕われている。ときたま名も知らない堕天使が訪ねてくることがあり、全員アザゼルの小間使い志望だ。
「秘書にしてください!」とか、「身の回りのお世話を!」とか、中には「ぜひとも身辺警護をさせてください!」と志願してくる人もいる。中には高位の堕天使もいたが、全員アザゼルの「いいから帰れ、命令だ」の一言でで返されている。
「そういえば、いつから行くことになるんですか? 長期になるって言ってたけど」
ダイスケがリアスに質問する。
「7月20日から8月20日までね。泊まるところに関しては心配しなくていいから。ちゃんと準備しておくわよ」
「わかりました。ジオティクスさんたちへのお土産用意しねぇとな……」
「ぶ、部長、俺もご挨拶用のお土産とか準備した方がいいっすか?」
「イッセーはいいわよ。私の下僕なんだから。気にしないで。アザゼルも
「ああ、頼む。実は悪魔側のルートでの冥界入りは初めてでな。楽しみだぜ」
「ルートって……あの列車ですよね?」
「ああ、ダイスケはこの前冥界からの帰りに特別に乗っていたわね。今回から自由に乗れるようになるから」
「おい、ダイスケはどうやって冥界に行くのか知ってるのか?」
「ああ。すげぇレトロな列車だ――おい、着信きてるぞ」
見ればイッセーの携帯に元浜と松田から「夏の海ナンパどうする?」という内容のメールが来ていたのですぐに「あ、今年は部長の実家にオカ研でお邪魔することになったからパス」と送った。その二分後、返ってきたメールの内容を見たイッセーは思わず吹き出した。
「……『地獄に落ちろ』ってさ」
「落ちるっつーか、これから望んでいくんだけどな」
*
レトロな列車での旅とはイッセーも聞いていたが、まさか本当に列車で行くとは思いもしなかったようで、その専用駅へ行く過程の秘密基地テイストにイッセーはじめ新人悪魔達は舌を巻いていた。
一瞬ダイスケが「秘密の駅への入り口ってこっちじゃないんですか!?」と駅構内の柱に突入しようとしていたのは内緒だ。
列車での旅は実に順風満帆。何事もなく時空の壁に突入、グレモリー領までの鉄道の旅が始まる。
イッセーはいつものごとく眷属仲間といちゃついているが、ダイスケはアザゼルとゴジラの獣具について話し込んでいた。本当はアザゼルはひと眠りしたいところだったようだが、趣味の領分の話ということで眠気をこらえているところだ。
「で、何かわかったんですか?」
「これまでの報告と、リアスのレポートからいくつかな。まず分類としてはイッセーと同じ全身装着型、身体能力を生かした戦いに向いたタイプだ」
それはダイスケ自身も自覚があった。格闘能力なら一般的な同年代よりも上の自信はあったし、装着中の身体能力の向上も感じている。
「ただ、問題は成長の段階の踏み方だ。イッセーの場合、赤龍帝の籠手は龍の手に近い状態だったが、後に覚醒して今の形になり擬似的な禁手でスケイルメイルの形になった。だが、お前の場合はまずは籠手、次に脚甲、剣が出てきて甲冑になりそしてメイスを出した。こんなバラバラな発現をされたら俺もどう解析すればいいかわからんし禁手に至ったどうかもわからん」
そこでだ、とアザゼルは続ける。
「先にミカエルから提供された『システム』内にあった過去世界の記録を元に、ゴジラの特性を見つけ出しておいた。まずはその特性を伸ばして、よりよくゴジラの力をモノにするようにしろ。その特性の専門家も見つけて呼んである。あとはひたすら特訓だ」
「分かりました。やることやればいいんですね」
「そういうことだ。名前がなかったからな、獣具の名前も俺が最高にかっこいいのを考えてやる」
「えぇ……別に『ゴジラの獣具』でいいんじゃ」
「それじゃ物足りないだろ。なんかこう、男心くすぐるイカした名前の方が使うお前の方もテンションが上がるだろ?」
「……わかりました、好きにしてください。で、その専門家って誰なんです?」
「まぁ、リアス眷属にもちょっとした縁がある人物、といっておこう。但し他の連中には内緒にしておけ。知ってる奴は恐怖に戦くし、縁がある奴もびびっちまう」
「何者ですか……? あ、そういえば、あとどのくらいで冥界に着くんです?」
ダイスケは後ろにいる朱乃に尋ねる。いつもならリアスに尋ねるところだが、今はグレモリー家の直系の者が乗れる特別車両と眷属が乗る車両に分かれているので今この場にはいない。やはり貴族社会ということもあり、ある程度の身分の差による扱いの違いというものは存在するのだ。
「あと一時間ほどでしょうか。魔法陣でジャンプするのと違って、この正式のルートは時間がかかりますから」
そう返事した朱乃はまたイッセーとのいちゃつきに戻り、隣のアーシアと火花を散らす。そんな光景をまた始まったな、という冷静な目で見るダイスケ。
なにせ兵藤宅に朱乃やゼノヴィアらまでもが転がり込んできてから彼女たちのイッセーに対するアプローチが日に日に強烈になっていくのだ。そんな風景を日々見せつけられては嫌でも慣れる。イラッとはするが。
だが、こういうときに「破廉恥です」とか「こんなところで発情しないでください」と言って痛烈な突込みを入れる小猫が車窓の外を見つめているだけで何の反応も示していないのだ。そもそも彼女はなぜか若干離れた席に座って他の眷属仲間と距離を取っているようにも見える。
「女というのはね、アーシアさん。愛する男性の変態的劣情を全て受け入れて初めてその人の隣に立つことができるのですよ?」
「朱乃さんのそれはアブノーマルすぎますっ! それにさっきも言ったように私もリアスお姉さまもイッセーさんとは常に合意の上です!! 何の問題もありませんっ!」
小猫の事が気になってそっちに行こうかとするダイスケだったが、さすがに女の争いをやっている横を通り抜けられるほどの勇気はなかった。怖いもの。
こういう状況を面白がりそうなアザゼルも、今はダイスケとの話も終わったので眠りこけている。というより、過去にこういうところに首を突っ込んで痛い目でも見たのだろうか。寝て知らぬ存ぜぬで危機回避ということか。
そこへ第三勢力、というより本妻がこちらの車両に入ってきた。
「よく言ったわアーシア。危うく、ダイスケ用の通関証を怒りに任せて窓の外へスパーキングするところだったわ」
「やめて、俺を巻き込むの」
痴話喧嘩が原因で「入国できません」なんてシャレにならない。
「……主から奪う、というのも燃えますわね」
そこへ火に油を注ぐかのように朱乃が挑戦的な目にリアスに言う。その視線の凄味と言ったら好意を向けられているはずのイッセーが引くほど怖い。
「あ、朱乃、貴女いい加減に―――」
「ゴホン、リアス姫、下僕との触れ合いも結構ですが、やらなければならないことを失念してはおりますまいな?」
リアスの怒りの声を遮る勇気ある第三者がひょっこりと現れる。車掌姿で白いひげをダンディに整えた初老の男性だ。
「ご、ごめんなさい……」
「ホッホッホッ。いやいや、それにしてもあの小さなリアス姫が色恋の話に熱くなられる日がこようとは。長く生きた甲斐がありましたな」
愉快いそうな老人の笑いにリアスが顔を真っ赤に染める。身内に恥がばれたパターンだ。
「自己紹介ははじめてですな、宝田大助殿。私、当列車の車掌を勤めておりますレイナルドと申します。以後、お見知りおきを」
レイナルドはダイスケに会釈をする。その丁寧な所作にダイスケも席を立って態度を改めて返答する。
「これはどうも、ご丁寧に。先日は挨拶も出来ませんで」
「いえいえ、あの時は緊急時でしたから。それでは、こちらを」
そう言ってレイナルドは高級時計でも入っていそうな黒い箱を差し出して開ける。赤い高級生地のクッションの上にはウェアラブル端末らしきものがあった。
「他の眷属の皆様はその身に宿した駒の反応を読み取ってすでに入国検査を済まされております。その代り、大助様はこちらの端末を肌身離さずお持ちくださいませ。冥界政府からのお墨付きでございますので、冥界にいらっしゃる際はこちらをお付けください。なお、これは大助様の生体情報を読み取って専用のものとなりますのでご安心を」
見た目は単なる端末だがそこはオカルト、見た目以上の機能が盛りだくさんらしい。
「っていうか、こういうの必要なの俺だけなんですね」
「アザゼルがこうしたほうがいいってね。下手に生体認証を体に刻んだらあなたの中のゴジラだどんな反応をするかわからないからって。拒絶反応で獣具が暴走、なんて洒落にならないでしょう」
過保護すぎる抗体反応とも言うべきか。リアスの話に少し背筋が凍る思いのダイスケである。付けて数秒で端末の画面に「登録完了」の文字が浮かび上がる。悪魔には独自の文字があるのだが、日本語で表示してくれるあたりありがたい。
「さて、これで皆様全員の入国手続きも済みました。到着までごゆるりとなさいませ。仮眠をとれる寝台車やいつでもお食事可能な食堂車もございます。到着までの鉄道の旅をお楽しみくださいませ」
レイナルドが一礼し、先頭の車両へ戻っていく。そうなれば後は自由時間。男子は男子で集まったかと思えば、新人眷属どうしでトランプをしたり、専用車両にいなければならないリアスが寂しくなて残り、再び朱乃と火花を散らしたり思い思いに次元の壁を突破するまでの時間を過ごす。
『間もなく、次元の壁を突破します』
ふと、レイナルドのアナウンスが車内に響く。すると間もなく、暗いトンネルを抜けたように一気に車窓の外の風景が変わった。
「おわ、すっげぇ!!」
イッセーが子供のようにはしゃぐ。目に飛び込んでくるのは人間界と変わらぬ野や木々といった光景だが、空の色が暗い紫色なのだ。それだけで一気に異なる世界に足を踏み込んだという実感がわいてくる。
他にも変わった形の家々があり、異世界の光景のアクセントとなっている。
本当なイッセーもダイスケも一度は訪れているのだが、リアス奪還という目的に目が行っていたせいでほかのことに全く注意がいかなかった。だから余計に、この冥界の光景は新鮮に感じられた。
「さぁ、もう窓を開けても大丈夫よ」
トンネルを通過している間はずっと閉められていた窓が開け放たれ、冥界の空気が流れ込む。その空気は人間界の元母違い、どこかぬるま湯のように肌に絡みつく独特の感触があった。
列車の後方を見れば、ブラックホールを思わせる黒い穴があり、そこから車体が次々とにけ出している。この穴が時空の特異点の穴なのだろう。
「……壊れてんのかな、これの地図機能。どこ見ても見ても「グレモリー領」って書いてあるだけなんですけど」
「さっきからずっとグレモリー家の領地よ。そういう路線になるように作ってあるから。でも、最終到着地点の駅まではまだね。この領土は日本の本州ほどあるから」
さらっととてつもないことを言うリアス。そんな大きさの領地をもつ貴族なんて聞いたことがない。
「冥界の表面積は地球と一緒だけど、海が無いんだ。その分各貴族が持つ領地や堕天使が持つ土地は広大なんだけど、ほとんどの地面は遊んでいるんだ。手つかずの自然も多いよ」
木場の説明で合点がいったダイスケとイッセーである。
「そうだわ、イッセーたち新人に与える領土の分配をしないと。余っていた土地があったからそのあたりを切り分けましょう」
「いや、部長。ケーキ切るんじゃないんだから」
悪魔の不動産管理は大丈夫なのか、と心配になるダイスケ。人間界のようにタケノコやマツタケの財産権みたいなものは特にリアスは気にしないらしい。
「ダイスケには土地はあげられないけど……ああ、首都にある私の持っているオフィスビルをあげましょう。確かそれなりにいい賃貸料が入るところだから資産価値については安心よ」
「……遠慮しておきます。土地転がすほど不動産運用の知識が無いんで」
*
『間もなくグレモリー本邸前、間もなくグレモリー本邸前。皆様、長らくのご乗車誠にありがとうございました』
レイナルドのアナウンスと同時に、徐々に列車のスピードが落ちる。窓を閉め、降車の準備をする面々。だが、アザゼルだけは降りる様子を見せない。
「俺のことは気にするな。このまま魔王連中のところにお呼ばれされているんだ。トップ同士の訪問の御挨拶さ。それが終わったらグレモリー本邸に向かうから先に行っててくれ」
「先生……意外とトップらしいことしてるんですね」
「じゃあ、お兄様によろしくね、アザゼル」
「わかったぜ、リアス。そしてイッセー、この後のお前のトレーニングのメニューは地獄クラスにしてやろう」
車内でアザゼルと別れ、一行は停車した列車からホームに降り立つ。すると―――
パンパンパパンッ!!
古めかしいライフル銃から発せられる空砲にダイスケは一瞬身構える。殺気を感じないので敵襲ではないとわかるが、分かっていても何事かと思ってしまう。
見れば一列に並んだ儀仗兵が空に向けて空砲を放っている。それだけではない。大勢のメイドや執事が並び、空には絵物語の中でしか見たことがないドラゴンライダーのような騎士が空を舞う姿もある。
『おかえりなさいませっ、リアスお嬢様!!』
一糸乱れぬ号令。慣れているリアスや木場たちはいいが、新人眷属やダイスケからしたら心臓に悪すぎる。ギャスパーに至っては「ひ、ひと、いっぱいぃぃぃ……」と恐慌状態になってイッセーの陰に隠れている始末だ。
さらに花火が上がり、音楽隊が盛大なファンファーレを鳴らす。
「出迎えありがとう。ただいま」
慣れたリアスが笑顔で答えると、一同は一糸乱れぬタイミングで頭を下げる。ただただ新人眷属たちとダイスケは圧巻されるまま。そこへ見覚えのある銀髪メイド、グレイフィアが一歩前に出てきた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。道中御無事で何よりでございました。さあ皆様、こちらの馬車へ」
グレイフィアに誘導され、一同は馬車に乗る。
その馬車も豪華絢爛、引く馬すらとてつもない巨躯を誇り、人間界の馬とは明らかに違う力強さがある。荷物はいつの間にやらメイドたちによって貨物馬車に移され、その行き届いたサービスの良さががわかる。
「私の馬車に下僕たちも乗せるわ。イッセーやアーシアたちが不安そうだから。グレイフィアもこっちにお願い」
「かしこまりました。では、ダイスケ様もこちらへ?」
「……じゃあ、そっちで」
一番前の馬車にイッセーとリアス、アーシアに朱乃とゼノヴィアとダイスケが乗り込み、最後にグレイフィアが乗り込む。その次の馬車には残りのメンバーが乗る。
全員が乗り込むと、馬車は蹄鉄の音を立てて進んでいく。そうこうしているうちに馬車は巨大な門を潜り抜ける。その先に見える巨城こそグレモリー家の本邸なのだろう。そこへ至る道もまさに一級品。
邸内の木々はきれいに剪定され、隅々まで手入れが行き届いている庭には花々が咲き誇る。さらに飼っているであろう美しい小鳥たちがさえずり、見事な造形の噴水からは高く水が吹き上がる。
間違いなくここは人間界のどの豪華絢爛といわれる宮殿も霞んでしまうほどの豪華さと煌びやかさがある。そこに自分がいることにダイスケは信じられなかった。
やがて城の大きな正面玄関の前で馬車止まり、一同が降車する。すると、玄関に至る道にはレッドカーペットが敷かれその両脇を大勢の執事とメイドが列をなしているという、漫画でしか見ないような光景があった。そしてとてつもなく大きい玄関の扉が「ギギギ」と軋む音を立てて解き放たれる。
「……リアスさん、これって天国の門じゃないですよね?」
「大丈夫、ここは正真正銘地獄だから」
「では皆様、お進みください」
グレイフィアの誘導の下、一同はレッドカーペットの上を進む。すると、小さな影が扉の向こうからリアスめがけて駆け寄ってくる。
「リアスお姉さま!」
紅髪のかわいらしい少年が、リアスに抱き着く。リアスも抵抗することなくその子を受け入れる。
「お帰りなさい、リアスお姉さま!」
「ただいま、ミリキャス。大きくなったわね」
愛おしそうにミリキャスというらしい少年を抱くリアスに、イッセーが訪ねる。
「部長、その子は……?」
「紹介するわ。この子はミリキャス・グレモリー。お兄様、つまりサーゼクス・ルシファー様の長男。つまりは私の甥っ子ね。さ、中に入りましょう」
なるほど、と合点がいったイッセーとダイスケ。ちなみにダイスケはこのグレモリー本城に来たことはないので初対面である。
玄関ホールはそれこそ中で運動会ができるのではないかという広さ。前方には転がり落ちたら確実に死ぬほどの大きさの階段が陣取り、これまた落ちてきたら二・三人は確実に押しつぶされてされて死ぬ程の大きさのシャンデリアがぶら下がっている。
「グレイフィア、お父様とお母様に帰国のあいさつをしなければならないのだけれども」
「旦那様は現在外出中です。眷属の皆様との顔合わせは夕餉の席で行いたいと仰っていました。奥様は――」
「あら、リアス。帰ってきたのね。」
その時、二階のほうから声が聞こえてきた。そこにいたのは長い亜麻色の髪をした、リアスによく似た美女。
似ていないのは若干きつめの目つきと、リアス以上に豊満なバストのみ。その陽子から察するにリアスの姉だろうか。優雅に階段を下りてくるその姿に、イッセーは一瞬で心を奪われた。
そしてリアスはその美女の姿を確認するなりこう言った。
「はい、ただいま帰りましたわ、お母様。」
「お、お、お、お、お母様ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?」
イッセーが同時に驚く。まさに信じられないといった顔だ。
「いや、ちょ、どう見たって部長とそんなに年が変わらない美少女ですよ!?」
まだショックが小さいイッセーにはまだ驚きの声を上げる
「あら、美少女だなんて。うれしいことを言ってくれるわね。はじめまして、私はリアスの母ヴェネラナ・グレモリーですわ。これからよろしく。ダイスケさんはお久しぶりですわね」
「お久しぶりです、ヴェネラナさん。あ、これはつまらないモノですが」
そう言ってダイスケは手にしていた手持っていた大きめの紙袋をヴェネラナに手渡す。
「あら、京都の千枚漬けに奈良漬けなんて。主人も私もこういう物が好きなのよく覚えていてくれたわね。もしかしてわざわざ近畿に?」
「いえ、電車ですぐ行ける東京の町中にアンテナショップがあるので」
「どちらにせよわざわざ買いに行ってくれたのね。ありがとう」
「いえ、両親がお世話になっているんです。これくらい当然ですよ」
「それでも嬉しいわ。――誰か、誰かいない?」
ヴェネラナの呼びかけに、「はい、ただいま」というダイスケもイッセーも聞いたことのある声が応える。
「奥様、いかがななさ――って、ダイスケ様!」
その声の主はリリアであった。急いで階段を降り、ダイスケの元に馳せ参じる。
「駒王会談以来ですね! お元気でしたか?」
「ああ、そっちも元気そうだ」
「はい! ……あ、いけないいけない。奥様、ご用でしょうか」
「ええ、このダイスケさんのお土産のお漬物、パックから出して器に入れてちょうだい。明日の朝食に主人と食べたいから――滞在日程は長いわ。彼とお話しする時間ならいくらでも作ってあげるから」
「は、はい、ありがとうございます! では、失礼いたします!」
ヴェネラナから紙袋を預かると、リリアは嬉しそうに奥へと引っ込んでいく。ダイスケの方はというと、ヴェネラナの先程の言葉が小さな声、しかも悪魔の言語だったのでリリアがなぜ嬉しそうにしているかわからなかった。
はい、というわけでVS30でした。
このヘルキャット編ではリリアの秘密と今編初登場の獣転人にクロースアップしていきますよ。
さらに、原作キャラのアイツとアイツとアイツが実は……ということになっちゃうのでお楽しみに。
なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!