今回は新たなる獣転人が登場。さぁ、誰だ!
状況は最悪と言えた。テロリスト側は現在三人とも健在、美猴はタンニーンと交戦中といえども互いに負傷は無し。黒歌と義人にいたっては二人相手に優勢、それもダイスケ達は倒される寸前であった。
最も重傷を負っているのはダイスケで、両脚の肉に大きな穴が空き、胸は背中から貫かれパイクの先端が心臓付近で止まっている。
「……求めた結果ではないが、この巡り合わせには感謝しよう」
そう言って義人はパイクの先端を爆発させ、一気に引き抜く。呻くことすら許されず、ダイスケは意識を刈り取られてリリアの目の前に倒れ臥す。
「だ、だめ……ダメ……! 止まって、止まって……!」
必死に止めどなく血が流れ出るダイスケの胸をリリアは両手で押さえる。自己治癒能力によって傷そのものは塞がっていくが、ダメージそのものが消えるには至らない。明らかにダイスケは弱っていた。
明らかに肉体の再生ペースと、失血のダメージを比べればダメージの方が大きい。この後いかようにも出来ると判断した義人は踵を返してタンニーンと戦う美猴と合流しようとする。
倒れるダイスケはなんとか自分を覗くリリアの顔を見るために仰向けになる。
「だ、だめです! 無理に動いては――」
「ははっ……なんだよ。結局いつもみたく――ゴホッ――接してくれるんじゃないか」
気道に詰まった血液を吐き出すダイスケ。
「だって、だって――!」
「いいんだ……気に、するな。これくらいは、覚悟の……上だ。だって、決めたんだから……」
そう言ってダイスケは無理矢理立ち上がろうとする。慌ててリリアはそれを止めようとするが、ダイスケは止めない。
「俺は、俺の大切なものを守りたい。その中には――リリアだって含まれてるんだ」
ダイスケが立ち上がろうとしているのを感じ、義人はその歩みを止めて振り返る。
「リリアは辛い思いをしたんだろ? 怖いって思ったんだろ? そしたら、向き合えるようになれるまで別に逃げたっていいんだ。どこかに隠れていいんだ。その隠れる場所に、俺を選んでくれていいんだ。だって、俺もそれを望むんだから」
ようやく立ち上がり、ダイスケは弱々しく震えながらも構える。
「だから、これっきりなんて悲しいこと言うなよ。守らせてくれ。頼ってくれ。俺だって散々昔、君に頼ってたんだから――恩返し、させてくれ」
それは、単なる善意。何者よりも純粋な想い。そして、リリアは気付いた。
別に、頼っていいのだと。サキュバスの本能だとか、過去の出来事が招いた男性恐怖症だとか関係なく、目の前の男は自分を守ってくれようとしている。ただの善意で、だ。
そこになんの打算もない。深く考えることもない。
「……怖かった、です。あの時、身体を切り刻まれ、隅々まで見られて、何よりも私をどうこうしようって云う悪意が――さっきも同じでした。だから……」
リリアはダイスケに背中に抱きつき、懇願した。
「
「――任された!!!」
*
「イッセー先輩……」
一方でダイスケが再び立ち上がろうとする中、、小猫がイッセーに呟く。その呟きに、イッセーは苦笑しながら答える。
「ごめんな、こんな情けない奴で。歴代の赤龍帝ってさ、みんな短時間で禁手に至れたってさ……。何か月もかかってるのは俺だけだって。わかってた、わかってたんだよ。赤龍帝の力が宿っていても、俺自身がだめなんだ。だから、小猫ちゃんに役に立てない……せめて壁になれればって思ってたけど――俺は才能のないダメ悪魔なんだよ」
しかし、小猫は首を横に振る。
「……ダメじゃないです、イッセー先輩はダメじゃないです。知っていますか? 歴代の赤龍帝はみな力に溺れたって。……姉さまと一緒です、例え力があっても、優しさがなければ……必ず暴走してしまう。イッセー先輩はやさしいです。力が足りなくても、それはとても素敵なこと……きっと、歴代でも初めてのやさしい赤龍帝です」
だから、と小猫は毒に苦しみながらも笑みを作って言う。
「イッセー先輩はやさしい『
その言葉で、イッセーは何かに気付く。何かがわかったのだ。
「……部長。俺、自分に何が足りなくて禁手に至れないか、わかった気がするんです。恐らく――部長の力が必要になります」
「……わかったわ! 私でよかったら力を貸すわよ! いったい何をすればいいの!?」
神が作りしシステムをも転換させるイッセーにとっての特異点。それは――
「――おっぱいを、つつかせてください」
誰もが絶句した。
「バカか!? お前はバカなのか!?」
「赤龍帝、貴様本気か? それとも死に際で気が狂ったか?」
決意を新たにかっこいいシュチュエーションでダイスケからも、そして義人からも常識を疑われるイッセーの要求。しかしリアスは――
「……わかったわ。それであなたが至れるなら」
そう言いながら、リアスは胸元をはだけさせようと脱ぎ始める。
「部長!? ひょっとして毒が頭にまで回ってる!?」
「ダイスケ様、ダメ! お嬢様のを見るのはダメ! 見るなら私のを!!」
「ちょ、リリアさん!? なに言ってん……ダメだって! 目の前に敵いるんだから俺の目を隠さないで!!」
一方、イッセーはまさかリアスが快諾してくれるとは思っていなかったので非常に焦っている。
「ほ、本当にいいんですか!? 自分で言っておいてなんですけど、つつくんですよ、部長の胸の先端を!?」
「い、いいからっ。恥ずかしいのだから早くしなさい……!」
本来毒が回って顔が真っ青になっていたリアスだが、今度は羞恥心で顔が真っ赤になっている。
「お、おい! お前たち戦いの最中に何をやっている!?」
繰り広げられるとんでもない光景に驚くのは美猴と空中戦を繰り広げていたタンニーンである。
「おっさん、ダイスケ! 俺が乳をつつく間もってくれよ!」
「はぁ!? 乳を!? 乳をつつく!? お前はこの状況で何を言って何をしようというのだ!!」
「バカ、こっちはリリアをどうこうするので手一杯だ!!」
「つつけば俺の何かが激しい反応をしてその影響で禁手になれるかもしれないんだ!」
「俺との修行は無駄なのか!? まさかお前がそこまでバカだったとは!」
無論、困惑しているのは味方だけではなく――
「ねぇ、美猴! あれは何の作戦なのかしら? あの貴族のお嬢様、自分の胸をさらけ出しているわ」
「そんなん俺っチがわかるかい! 赤龍帝の思考回路は俺ッチたち常人とは別次元にあるんだろうよ!」
敵からも異常者扱いされるイッセーだが、いざ実行しようとするととてつもない問題が自分の前に立ちふさがっていることに気付く。
「ダ、ダイスケ! おっさん! 大変だ!」
「今度はなんだ!?」
「右の乳首と左の乳首、どっちを押したらいい!?」
「「知るかぁぁぁぁぁ!!」」
互いに敵と対峙しなければならないのにバカな質問をされたので怒り心頭である。
「そんなもんどっちも同じだろうが! 俺との修行をフイにしやがって、こうなったらさっさとつついてさっさと至れぇぇぇぇぇ!!!」
「確かに男として理解は少しできるけれども! ここまで来たらどっちでもかわらねぇだろうがぁぁぁぁぁぁ!!!」
「バッカ野郎ゥ!! 俺にとっちゃ人生最初で最後のファーストブザーだぞ!! 人生かかってるんだよ! そして理解してくれてありがとうな、ダイスケ!!」
「いらんわ、そんな感謝!!」
「さぁ、ダイスケ様! 見るならこっちを!! なんなら揉んでもいいです!!!」
「リリアさん!? 胸をはだけてなにやってんの!? しまって、しまって!!」
が、一切イッセーは気にならないくらい目の前の乳に集中している。
「部長、おすすめは!?」
「もう、バカ! それなら同時につつけばいいでしょ!?」
「――その発想はなかった!!」
主の言う通り、イッセーは自分の領人差し指を主の乳首に狙いを定め、あやまたずつつき、押し込む。
本来黒歌の攻撃のせいで立つのも限界という状態だったが、この信じられない状況が信じられない活力を与えてくれる。
ずむっ
ダイスケは背中をリリアの相手をしていたので本来はこの光景が見えないし、音も聞こえないはずであるのにそんな音が聞こえるような気がした。事実、その瞬間イッセーの両人差し指はリアスの乳首を見事につついていた。
確実に、的確に、しかし優しく、慎重に指先が埋もれていく。その感触と事実に興奮し、イッセーは盛大に鼻血を吹き出す。その時、誰にも聞こえなかったが、イッセーには聞こえていていたリアスのこの声。
「――ぃやん」
聞き逃さなかった。イッセーは聞き逃さなかった。かつてアザゼルがイッセーに言っていた、「女の乳首はブザーと同じ」という言葉は真実だったのだ。この世の理の中心であったのだ。今、イッセーにとっての世界の中心は、間違いなく乳首だった。
そして、見えた。それは――宇宙の始まり――
『――至った! 本当にこれで至りやがったぞォォォ!!!』
驚愕するドライグ。そして、真実に目覚めた力は産声を上げる。
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!! 』
くすんでいた宝玉に光が戻ると、今までにない高揚感と共に信じられない規模のオーラが体内から噴き出して鎧を形成していく。
「……最っ低です。やさしいどころかやらしい赤龍帝だなんて……」
毒のせいもあるだろうが、目の前で起きた最悪の覚醒劇に、小猫は顔を青ざめて突っ込みを入れる。心の内でイッセーはごめん、と謝り、そして最後のヘルメットとマスクが装着され、完全な鎧姿となった。
「禁手、『
その瞬間、ギャグにならない衝撃波が起こる。物理エネルギーと化したイッセーのオーラがクレーターを作ったのだ。
『相棒、おめでとう。しかし酷い。そろそろ泣いていいか?』
冗談ではなく涙声のドライグである。
「ああ、ありがとうよ。そんでもってごめん! で、首尾はどうよ?」
『時間にして三十分は禁手を維持できる。鍛錬の成果だな。弱いお前の初めてにしてはなかなかのものだ』
「マックスの倍増出しでどれくらいいける?」
『マックスで放てばそのたびに五分消費すると思え。最大で五回、その他の行動を考えると六回もない。譲渡も同じだ』
「じゃあ、うまいこといけば十五分は戦えるかな」
『いや、そんなにいらん。ほれ、試しにいつものように魔力を放ってみろ』
イッセーは言う通りに腕を突き出し、黒歌に向けて精進を合わせ、魔力を放つ。すると、赤い閃光と共に今まで見たことのない力の奔流が放たれる。遥か彼方に着弾した魔力が爆ぜて、その爆風が発射地点にまで届く。
その一撃で毒霧も晴れるが、自分で起こしたことにイッセーは自分で驚きを隠せなかった。
「おお、久しいな、この赤い一撃! 兵藤一誠、はるか先にある山が一つ今ので消し飛んだ! 結界も掻き消えたぞ!」
上空にいるタンニーンが愉快そうに告げる。
『全身のオーラを集束して放つ一撃だ。見た通り倍加しなくてもこの威力をもつ。まあ、貯蔵量が少ないから連射はできないが』
その一撃を見たダイスケも圧倒されたが、同時に対抗心も湧いてくる。
「おい、義人」
「……なんだ」
「俺が特訓していた相手って希代の剣豪でな、その人の特技を教わってたんだわ」
そう言う間ダイスケはリリアをなんとか引き離し、自分の鎧の背中に生える背びれの一つを引きちぎって手の中で刀の形に変える。
その刃を左の手の中で支え、腰を落とす。鞘を使わない抜刀術の構えと言えた。
「『
ダイスケがなにかとてつもないことをする、と感じた義人は全身からミサイルを放つ。普通なら避けるところだが、ダイスケは微動だにしない。
そして左手の中で鞘走りした刃か解き放たれる。瞬間、目の前の全てが切り裂かれた。飛来するミサイルも、周囲の木々も、義人の銀色の装甲とその奥の肉体も、その背後にあった山々も全て横一文字に切り裂かれた。タンニーンが上空に、リリアは背後に、リアスと小猫はもとより伏せていてイッセーと黒歌がなにかを察知してそれぞれ避けたからこそ彼らは無事であった。
それは紛れもなくストラーダの『破壊の一断』。しかし、ダイスケはこれを1/5の確率でしか放てなかった。それをほぼ100%にするため、ダイスケはよりイメージしやすい刀で発生させようと思いついたのだ。結果は大成功、溜とタイミングが必要ながらも十全に機能した。
「フハハハハ! 共にいい塩梅に仕上がっているではないか!!」
その絶大な破壊を見て、タンニーンは戦いの最中であるのにもかかわらず大笑いをする。しかし、笑っていたのはタンニーンだけではなかった。
「アハハハハ!」
黒歌である。
「面白いじゃないの! それなら、妖術仙術ミックスの一発をお見舞いしてあげようかしら!」
黒歌の両手に、それぞれ違う波動を持つ力が放出されてないまぜになる。その異なる力の融合体がイッセーめがけて放たれた。しかし、その一撃はイッセーを正確にとらえるも傷一つつけることも叶わなかった。
「――こんなもんか?」
事実、受けた本人としては全くダメージを受けていないのだ。脅威と言われた妖術と仙術を同時に受けて無傷であったのだから余裕の一言も出てくる。
「……調子に乗らないでよ!!」
黒歌は表情を一変させて驚くも、先ほどと同じ波動の攻撃を放とうとする。しかし、それに小さな影が割り込む。小猫だ。
「……私だって、守られてばかりじゃいられない!」
「出来の悪い妹がよく言ってくれるわ!!」
己の妹が射線上にいるにもかかわらず、黒歌は妖術と仙術の合成波を放った。イッセーは慌てて小猫の無謀を止めようとするが、小猫は普段見せない笑顔をイッセーに向けてから正面に向き直った。
「……今、
直撃する合成波。放った黒歌もイッセーもリアスも小猫の命はないものと思った。しかし、合成波はこの子の右目に吸収され、そのまま黒歌に向けて左目から放たれた。
「――嘘!?」
目の前で起きたことに驚愕しながら、黒歌の身体は反射的に回避行動をとる。黒歌のいた場所はクレータとなり、まともに当たればどうなっていたか如実に示していた。
妹は何をしたのか、と今一度黒歌は小猫を見ると、彼女の姿が変わっていた。中世貴族の仮面パーティーで使うような目の部分だけを覆う
その意匠はまるで獅子――いや、沖縄の守り神のシーサーのようであった。
「この子が教えてくれました。これは『
キングシーサー。それはダイスケの魂の記憶にも刻まれていた沖縄に生息する守護の怪獣。一度はメカゴジラと戦うために共闘し、二度目は向こうが敵に操られていたので戦った記憶があった。
その特殊能力とはプリズム構造の眼球による「敵光波攻撃の反射」である。これはノータイム、またはタイムラグを設けての自由なタイミングによる敵攻撃の反射だ。しかも先の様子からして光波攻撃以外にも魔力、光力、魔・仙・妖術問わず反射可能のようだ。
「……姉さまの得意技も、これで無力化です。獣具に目覚めたお陰で毒霧への耐性もつきました。……姉さんはチェック、です」
「――くっ」
苦し紛れに匕首を投げつけるが、それはイッセーが片手で弾いた。そして一気に距離を詰めたイッセーは黒歌の顔面に向けて一撃を放つ。しかし、わざと顔前でイッセーは拳を止めた。
「俺のかわいい後輩、泣かせるんじゃねぇよ……ッ!」
「――ッ」
「次に小猫ちゃんを狙った時、俺はこの拳を止めることはない。あんたが女だろうが、小猫ちゃんの姉さんだろうが関係ない。あんたはもう、俺の敵だッ!」
イッセーが拳を収めると、黒歌はすぐさま後方へ飛び退き、距離をとった。
「……クソガキがッ!」
毒づいてみせる黒歌であったが、その瞳には怯えの色があった。禁手に至っているという事実と、フルスケイルメイルが放つ威圧感がそうさせているのだ。
しかし、それを見て誰もが威圧されるというわけではない。美猴が哄笑をあげる。
「ヒャハハハハ! こいつはいいや、ドラゴンの親玉が二匹! おまけに怪獣も! これを楽しまなきゃウソってもんだぜぃ!!」
如意棒を回し、美猴はますます戦闘継続の意思を見せる。だが、先ほどのイッセーの一撃で毒霧が晴れ、その御陰でリアスと小猫の調子も戻ってきている。このまま上手く持てば、六対二に持ち込めるうえに、結界も消えたので悪魔の増援も来るだろう。
そんな希望が見えた時、突如空間に裂け目が生まれる。その裂け目から、一人の眼鏡をかけた美青年が現れた。手には直剣を持っており、腰にはもう一振りの剣が携えられている。その両方の剣から、聖なるオーラが放たれていた。
「そこまでです、美猴、黒歌。他の悪魔たちが感づきましたよ」
美猴と黒歌に親しげに話す様子から、青年が彼らの仲間、つまり禍の団のメンバーであることがわかる。その青年の姿を確認した美猴は空中から降りてくる。
「あれ、おまえはヴァーリと一緒じゃなかったのかぃ?」
「あなたたちが遅いから様子を見に来たんですよ。そしたらこの状況だ。まったく、何をしているのやら」
ため息をつく青年。その姿に殺気は感じられなかったが、何かを察知したタンニーンが叫ぶ。
「全員、そいつに近づくな! 手にしてる得物が厄介だぞ!」
その刀身を一目見たタンニーンは、焦りの色を隠せない。
「あれは聖王剣コールブランド、またの名をカリバーン。エクスカリバーやデュランダルを差し置いて地上最強の聖剣と称されるコールブランドがまさか白龍皇のもとに下るとはな……」
コールブランド。エクスカリバーと同一のものともされる、アーサー王伝説に登場し、ペンドラゴンの血統の者でないと扱えないという聖剣中の聖剣。それが剣のみならず使い手までもがテロリストになったという事実に、タンニーンは苦笑せざるを得なかった。
「しかしもう一振りはなんだ? 見たところ相当な名剣と見たが」
タンニーンの疑問に、青年はその件の剣に手をのせて言った。
「こっちは最近発見されたものですよ。そう、これこそが行方不明になっていた七本中最強のエクスカリバー、『
最強の聖剣に続き、最後にして最強のエクスカリバーまでもがこの青年の手中にあるという事実に、タンニーンのみならずイッセーたちも驚きを隠せなかった。
「あら、そんなに話して平気なの?」
黒歌の問いに、青年は頷く。
「いいんです。私自身、そちらの聖剣使いと聖魔剣の使い手に大変興味がありましてね。赤龍帝殿、あなたからご友人のお二人によろしくと伝えていただけませんか? 私の名はアーサー・ペンドラゴン。いずれ一剣士として相まみえたい、と。……義人、貴方も早くしなさい。その程度の負傷は何でもないでしょう」
「……そうだな」
いつの間にか復活していた義人も合流したのを確認すると、アーサーはコールブランドで裂け目をさらに切りつける。すると直径4mほどの空間の裂け目が広がっていった。
「さて、逃げますか」
そう言うと、三人は空間の裂け目に身をひそめる。が、それを見逃すダイスケではない。
「無傷で行かせるかよ!」
そう言って掌から熱線を放つ。が、着弾する瞬間にアーサーは支配の聖剣を振い、熱線をかき消した。
「『
アーサーはそれだけ言うと、空間の裂け目は消えた。
すべては、終わったのである。その後、押っ取り刀で駆け付けた悪魔たちに保護され、魔王主催のパーティーは結果的に禍の団の襲撃によって中止となった。
*
「失態ですね」
魔王領にある会議室で、堕天使副総督であるシェムハザは開口一番にこう言った。隣にいるアザゼルは心中でほどほどにしてほしいと願いながら茶を飲んでいる。
シャムハザが失態としたのは冥界指名手配中のSS級はぐれ悪魔がパーティーに個人的理由でちょっかいをかけていた件についてだが、まさか誰もこのような事態を想像だにしていなかっただろう。結果的に事態は最小限に収まったが、催しの場の隙を突かれた、という点は悪魔の警戒体制の是非を問うものだ。
だが、危機管理に関しては堕天使側にも問題があった。何せ総督本人がカジノに夢中で事態に気付けなかったなど他の堕天使幹部やセラフがいるこの場で口が裂けても言えない。
「相手は禍の団独立特殊部隊『ヴァーリチーム』の美猴と黒歌に獣転人桐生義人、さらに聖王剣コールブランド使いも関与。一人一人が強力な力を有するチームの内の三名も現れるとは。大体、悪魔の危機管理能力には――」
またか、とアザゼルは顔を手で覆う。何せこのシェムハザ、一度小言が始まると長いのだ。
確かに危機管理に関しては今後の課題となるだろう。だが、大局的に見れば死傷者はゼロ、毒を受けたリアスも小猫も無事でおまけに赤龍帝のイッセーは禁手に至れ、しかも小猫は獣転人に覚醒した。全体を見れば大きな収穫となったのは確かで、そのあたりは全員承知している。
遠くの席では魔力で体を小さくしたタンニーンが上役たちともうすぐ開かれるリアスとソーナの一戦を予想していた。
「俺はリアス嬢を応援させてもらう。何せ俺が直々に鍛えこんだ赤龍帝がいるのでな。あいつは面白いぞ。何せ戦いの最中に乳をつつくんだ」
「アザゼルがもたらした知識はレーティング・ゲームに革命を起こしそうだよ。下手をすれば半年以内に上位陣のランキングに変動が起こるかもしれない」
「それはいい。ここ十数年はトップ十名に変化がなかったものですから。これからはさらに面白いゲームが見られそうだ」
そんな話をしているとき、一人の隻眼の老人が室内に入ってくる。
「ふん、若造どもは老人ひとりの出迎えもできんのか」
その蓄えた白いひげは床に届きそうなほど長く、頭には古ぼけた帽子をかぶっている。杖をついてはいるが、その腰は真っ直ぐだ。アザゼルはその姿を認めると悪態をついた。
「おーおー、久しぶりじゃねぇあか、北の田舎のくそじじいことオーディンさんよ」
北欧神話の主神、オーディン。戦争と死の神でもあり詩文の神でもある。魔術に長け、知識に対し非常に貪欲な神であり、自らの目や命を代償に差し出すほど。その主神が二人の鎧姿の
「久しいの、悪ガキ堕天使。長いこと敵対していた相手と仲良くやっておるようじゃが……また小賢しいことでも企んでおるのか?」
「ハッ、しきたりやら何やらで雁字搦めの古臭い田舎の神様とは違って俺たち若人は至高が柔軟でね。わずらわしい敵対関係よりも己の切磋琢磨発展向上を選んだのさ」
「それはまた弱者らしい負け犬の精神じゃて。所詮は親たる神と魔王を失った小童どもの集まりよ」
「……子供の独り立ち、とは考えられないのかねぇ。頭の固いくそじじいには無理な話か?」
「すまんが悪ガキどものお遊戯会にしか見えんでな。乾いた笑いしか出ぬわ」
罵詈雑言の応酬に嫌気がさしたアザゼルに代わり、サーゼクスが前に出る。
「お久しゅうございます、オーディン殿」
「サーゼクスか。ゲーム観戦の招待、来てやったぞい。しかしおぬしも難儀よな、本来のルシファーの血筋が今やテロリストとは。悪魔の未来は前途多難じゃの」
オーディンは皮肉を言うがサーゼクスは「まったくです」と苦笑した。
「時にセラフォルー、その恰好はなんじゃいな?」
「あら、オーディン様はご存じでない? これは魔法少女の格好ですよ!」
相手が相手であるにもかかわらず、相変わらずのセラフォルーはオーディンの目の前でポーズをとる。
「ほう、最近の魔術界隈はこういうのが流行っているのかの。しかし、これは中々……ふむふむ、ほうほう」
セラフォルーを嘗め回すのその視線はイッセーに負けず劣らずのスケベ心全開だ。そこへ遮るように銀髪のヴァルキリーが割って入り、金髪のヴァルキリーがあろうことかオーディンの首筋に剣を添える。
「オーディン様、卑猥なことはいけません! アスガルドの名が泣きます!」
「我が主神よ、その不埒な目を止めねばその首斬り落とすぞ。主神の命とアスガルドの面目なら私は迷わずアスガルドの面目を選ぶ」
「まったく、お前らは固いのう。そんなんだから
その一言に銀髪のヴァルキリーは泣きだし、金髪のヴァルキリーは憤慨した。
「ど、どうせ彼氏いない歴=年齢のヴァルキリーですよ、私は!! 私だって彼氏欲しいのにぃぃぃ! うぇぇぇぇぇぇん!!」
「私は作れないじゃなくて作らないのだ! 私に勝てるほどの
その二人の様子に流石のオーディンも嘆息を漏らす。
「おいおい、なんなんだよ、このヴァルキリーたちは」
「見苦しいものを見せたの、アザゼル。なにせこやつら方や器量はいいが堅い、方や高望みで男が寄ってこんでの。そのおかげでわしのお付きじゃ」
「それでいいのかよ、ヴァルハラの人選……」
「それはそうとして、今回のゲームではあの怪獣王を宿した者も出るそうではないか。イグドラシルにも彼の者の記録があるが、あのバケモノ、人の子に御せるのかの?」
「ご安心ください。私の妹の報告が確かなら――彼は上手くやれますよ」
はい、というわけでVS37でした。
リリアはリアスほどの巨乳という訳ではありませんが、サキュバスなのでスタイルはいいです。やっぱりそういうのが本職な訳ですから。
そして新たなる獣転人はロリ猫娘の塔城小猫でした。宿す魂は琉球の守護神怪獣「キングシーサー」、獣具は『
なお、まだまだ原作キャラの獣転人は出てきますよぉ。なんと次回も出てきます。それも複数!! 誰がどの怪獣か考察してみてください。
なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!