ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

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 昨日の夜とある作品を一気読みしまして……ねみゅいの。


VS40 シトリー戦 ROUND03

「よっこいせっと」

 

 モール中央南のエレベーターの内部から屋上駐車場階の入り口を強引にダイスケは開ける。すると、そこは水浸しだった。

 

「あーあ」

 

 入り口を閉め、ザバザバと水をかき分けたダイスケは屋上駐車場を歩く。

 

「……なにもここまでするこたぁないだろうに」

 

 これ以上濡れるのは嫌だったので、ダイスケはジャンプしてエレベーター最上の機械室の屋根の上に上った。

 

「花戒と草下を倒したのですね」

 

 西側からソーナの声が聞こえる。見れば彼女も同じく西側エレベーターの機械室の屋根の上に陣取っていた。

 

「まぁ以外と楽でした。力を加減する方が難しいくらいで」

 

「嘘はいけませんよ。そんなに時間はかかっていなかったでしょう」

 

「……それにしても寒いっすね。ゲームの空間っていつもこんなんなんですか?」

 

 空は夜のように暗く、星一つ見えない。冬の寒空と言ってもいいくらいだが、それにしても寒い。まるで極地だ。

 

「いいえ、これは今回だけです。作戦最終段階のための、ね」

 

「……最終段階?」

 

「そうです。貴方がここに来たのは大きな間違いでした」

 

 すると、駐車場を浸している水の水位が上がっていく。よく見ればフェンスは氷で覆われ、さながらここはプールだ。

 

「幸いにも水道コントロール設備は西側にありました。東側への供給をストップさせ、フェンスを姉譲りの氷結魔力術で凍らせてプールを作ったのです」

 

「……みたいですね。で、これで俺を自慢の水技で倒すって言う算段ですか? いくら何でも甘すぎません?」

 

「まさか。いくら私でもそんな手で貴方と戦おうとは思いません――いえ、戦う必要もない。これで倒すのは――リアスです」

 

 その言葉と同時に、東側のエレベーター入り口が開く。当然水は下に流れる。さらに上空を見れば巨大な氷の塊が浮遊していた。これが寒さの原因だったのだが、それが溶けてとてつもない量の水を落としている。

 そこまで確認したとき、ダイスケはソーナの恐ろしい戦略に気がついた。

 

「まさか、アンタ……!」

 

「ええ、今頃下に水が流れているでしょう。窓ガラスは割れないよう、ばれないように透明な氷を張って強化してあります。下の急襲部隊の本来の仕事はあえて東側一階にリアス達を釘付けにすること。そしていま、非常用シャッターを閉めさせて閉じ込め、一階を水攻めにしています。こちらの眷属が誰もリタイアしていないのは私の策が上手くいっている証拠です」

 

「て、テメェ……!」

 

 急いでリアス達を救出するためにダイスケは東側に向かおうとする。が、眼下の水中になにかがいるのが見える。蛇のようにうねり、ダイスケ目がけて泳ぐその生き物は水面から飛び出てダイスケの頭上をまたぐ。

 

 ブォォォォォォォォォオオオオオオ!!!

 

 それは、まさに東洋の龍。20mはあろうかという巨体が悠々とプールになった駐車場を泳いでいた。

 

「『深淵に潜む護蛇龍(アビス・マンダ)』、私の獣具。そして私は海龍、マンダの獣転人」

 

「なに!?」

 

 流石にこれはダイスケも想像していなかった。戦闘の様子から匙が獣転人であろうことはリアスの推測でわかっていた。だが、まさかソーナまでも獣転人であろうとは想像だにしていなかった。

 

「驚くことはありません。サーゼクス様は「各若手悪魔ないし眷属内に一人以上の獣転人がいる」と仰っていました。となれば、(キング)の私が獣転人でもおかしくありません……まぁ、驚きはしましたが」

 

 アザゼルがクモンガの獣転人であるように、純血悪魔にも獣転人はいるということだ。ますます今後誰が獣転人なのかわからなくなってくる。

 

「ともかく、貴方はここから動けない。そして、リアス達は水没する――貴方たちの負けです。ほら、アナウンスが入るみたいですよ?」

 

 屋上にあるスピーカーに電源が入る音がした。店内のスピーカーと違う製品であるため、音声が入る前に若干のノイズは入るタイプである。

 そして、無情なアナウンスが響く――

 

『ソーナ・シトリー様の女王(クイーン)一名、戦車(ルーク)一名、騎士(ナイト)一名、兵士(ポーン)一名、リタイア』

 

「なっ――」

 

 ソーナは絶句した。アナウンスされるはずの撃破(テイク)された者の所属とクラスが違うのだから。

 そして、それまでソーナの戦略に驚かされていたはずのダイスケがニヤリと笑ってこう言い放った。

 

「――かかったな」

 

 その言葉が合図であったかのように、東側のエレベーター機械室の天井が破られる。そこから現れたのは無傷の朱乃、アーシア、そして――

 

「――リアス!?」

 

 リアスは水攻めでリタイアさせられたはずだった。それがなぜか今、無傷でこの屋上にいるのかわからなかった。

 

「流石ね、ソーナ。陽動に次ぐ陽動、ブラフに隠されたまた別のブラフ。巧妙に隠された本命……戦略ならもう貴女はプロよ。脱帽だわ」

 

「では、なぜ!?」

 

「全ては偶然よ。そう、ダイスケがいなかったら完全に負けていた――」

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、この違和感。なにかが……」

 

 ダイスケがエレベーター内のはしごを登っていたとき、妙な違和感を感じていた。

 それは、音の響き(エコーロケーション)。音の響きというのは如実に物体の構造を教えてくれる。「石橋をたたいて渡る」ということわざがあるが、実際に建築物の強度や内部の状態を確かめる際にハンマーで叩いて試験することが実際にあるくらいだ。

 何よりダイスケの中のゴジラの一匹には、音の響き(エコーロケーション)を用いて遠方の他怪獣とコミニュケーションしたり敵怪獣同士の交信をモニタリングできるゴジラがいたのだ。

 その能力が、ダイスケにエレベータシャフト内の音の響きの違和感を感じさせた。くぐもった音の反響はまるで水中での音の響きを連想させたのだ。

 

「……そうか、これは!」

 

 これでダイスケはわかった。敵が、屋上に水を張っているということを、だ。

 ソーナは水を操って敵に攻撃するという情報があった。そのための有利な環境作りとも思ったがその予想はすぐに捨てた。なぜならその手を使うならただ敵が現れたときに融雪装置で水を撒けばいいだけで、なにも屋上を水に浸すことはない。

 となれば、目的は一つ。東側を封鎖しての水攻めだ。いかにモールが吹き抜け構造といえども防火シャッターはある。隙間だって氷を魔力で操れば塞ぐことが出来る。しかも記憶が正しければこのモールの水道コントロール設備は西側にある。オカルトの力とこのモールの構造を考えれば不可能な作戦ではない。

 

「やべぇ、リアスさんに伝えないと!」

 

 急いでダイスケは一階へ飛び降り、リアスに事情を話した。はじめは信じられない様子だったが、「あり得ない話ではない」と判断するに至った。

 

「でも、今屋上に待避しても待ち伏せを受ける可能性があるわ。イッセーが昇格(プロモーション)して帰ってきたときここに私がいないと混乱するはずよ」

 

 だが、そのリアスの予測は甘い物であるとアナウンスが教えた。

 

『リアス・グレモリー様の戦車(ルーク)一名、リタイア』

 

 さらに無情なアナウンスが少しの間を開けて響く。

 

『リアス・グレモリー様の騎士(ナイト)二名、リタイア』

 

「……イッセーは、やられる」

 

 敵は総掛かりか自軍の使える全ての戦力をイッセーに対して投入出来るようになったのだ。いかにイッセーが強くなったといっても多勢に無勢、さらに無駄な破壊を禁じたルールがイッセーを縛っている。希望は、無い。

 

「そんな、まさかイッセーさんを見捨てるんですか!?」

 

 アーシアが悲痛な叫びを上げる。彼女にとってイッセーは誰よりも大切な存在だ。見殺しにする、と言う選択は彼女にとって到底容認できるものではない。

 

「私、イッセーさんのところに行ってきます! 何かあったときに助けないと――」

 

「ダメだ、アーシア!!」

 

 イッセーの所へ向かおうとしたアーシアを、ダイスケがその腕をつかんで止める。

 

「離してください! イッセーさんが!!」

 

「絶対にダメだ! 優先順位を考えろ!」

 

 ダイスケの叱責で、アーシアは我に返る。そう、アーシアが最優先で治癒すべき相手はイッセーではない。主であり(キング)のリアス・グレモリーだ。

 

「確かにイッセーは絶望的な状況にある。だけど、何かあったときはここに戻ってくることになっているしアナウンスも流れていない。イッセーの所にむかう途中で敵に遭遇する可能性だってあるんだ。そんなとこに重要な回復役であるお前が行ってなにかできるか?」

 

「……いいえ、なにもできません」

 

「なら、お前は常にリアスさんのそばにいろ。向こうにいない回復役はこっちの数少ない強みだ」

 

「ですが、このままここにいてもイッセーくんと戦っている者とは別の部隊がここに来ます」

 

「……そうだけど、恐らくその部隊を潰しても逆にこちらの不利になる可能性があるわ。アナウンスで別働隊が壊滅したことを知れば、ソーナは容赦なく水攻めを実行する。味方がいないのだから、心は痛まない」

 

 リアスのいうことは正しかった。しかし、朱乃の懸念も正しい。現在リアス達が一階にいるのは水攻めの危険があるが、逆に二階や屋上に行っても待ち伏せされる可能性があるのだ。

 そしてこの別働隊は直接攻撃しなくてもいい。東側に侵入しているかもしれないという懸念だけでリアス達を一階に引き留めるプレッシャーを与えることが出来るのだ。

 どんな手に出ても封じられてしまうこの状況を作ったソーナはまさにリアス以上の戦略の鬼才。リアス達が最も不得手なテクニックタイプの極地であると言えよう。

 

 

 

 

 

 

「なら、貴女たちはどうやって!?」

 

「へっへーん」

 

 ダイスケが見た者を心底イラつかせるようなきったねぇ笑みを見せる。ダイスケがソーナをいらだたせる役割を見事にこなしたので、リアスが説明した。

 

「簡単よ。……別働隊をリタイアさせなければいいの」

 

 

 

 

 

 

 敵陣地攻撃部隊を指揮するソーナの女王(クイーン)にして副生徒会長の森羅椿姫は、己の主の手腕に感服していた。

 匙一人を防壁にして敵の侵入を防ぎ、上から水攻めの準備をし、自分達が敵の足止めをする。三段構えの隙を生じさせない戦略はまさに完璧。ただ匙一人で敵に侵入を防ぐことが出来るのかという不安はあったが、見事に彼は敵有力オフェンスの三人を撃破し、今頃はイッセーをしっかり押さえ込んでいるはずだ。

 いや、抑えきれずともラインを使って血液の抜く作戦は成功している。どう足掻いてもイッセーはリタイアだ。ダイスケという懸念はあるが、彼はまだ敵陣地に侵入できない。むしろもう自分達はすでに敵陣に侵入しており、二階にいる兵士(ポーン)の仁村留流子もすでに女王になっている頃合い。側には剣術使いの騎士(ナイト)、巡巴柄がいてくれている。ようは近づきさえしなければ抑えようはいくらでもあるのだ。

 さらにいえば自分達が全滅しても、その時はソーナが水攻めを実行するだけでいい。屋上に溜めた水の量は一見少ないが、その実は上空に大きな氷の塊を浮かせてキープしている。これを魔力で一気に溶かせばモール内を水浸しに出来る。

 

(会長、これが貴女の夢への一歩です)

 

 ソーナの眷属達はみなソーナを信頼し、敬愛している。匙という別の感情を向けている眷属もいるが、それはそれで主を大切に思っている証拠であり、またソーナはその想いに答えてくれる。

 純血悪魔の貴族に珍しく、ソーナは己の眷属を大切にしていた。リアスの情愛とは違う、もう一つの信頼関係が彼女たちにはあった。

 その主の夢が、嗤われたのだ。到底許せることではない。だからこそ、この戦いで自分達の力量を見せつけ、自力で夢をつかまなければならない。

 それもどうせなら二番ではなく、一番を目指す。そうするしか悪魔の世界では夢を叶えることは出来ないのだから。そのためには、リアス達には悪いが負けて貰うしかない。グレモリー眷属がかつてライザー相手に惜敗し、それ以来勝利というものを目指してきたのは知っている。

 だが、だからといって勝ちを譲る訳にはいかない。全力で相手し、勝つ。それしか道はないのだ。そう考えてると、前方で物音が聞こえた。同行する戦車(ルーク)の由良翼紗に停止するように指示した。

 

「迎撃が出たのでしょうか」

 

「かもしれない。だけど、私たちがやることは一つよ」

 

 敵を押さえ込むにのには自信があった。まず、椿姫の武器は薙刀だがその真の得物は神器、追憶の鏡(ミラー・アリス)。これは鏡が受けた攻撃の威力を割れたときにそのまま返すというカウンター技の神器だ。

 もう一つが堕天使の新技術『反転(リバース)』。これは聖を魔に、炎熱を凍気に、回復を破壊に――つまりそのものの特性を逆転させる技術だ。物理攻撃はどうにも出来ないが、相手が主に使うのは魔力攻撃であまり心配はいらないはずだ。

 

(さぁ、来るなら来なさい!)

 

 鏡を前面に押し立てる椿姫。由良も反転(リバース)の準備をし、ゆっくりと前に出る。その瞬間、なにかが空を切ってこちらに飛来してきた。それを確認する間もなく、それは由良の肩に当たった。

 

「うぐっ!」

 

「由良!?」

 

 倒れかける由良の脚に、またなにかが飛来して直撃する。鈍い音がしたため、これで脚が折れたことがわかった。

 

「ぁ、ああ!!」

 

 由良が転倒し、行動不能になる。しかし、本格的にノックアウトさせられたわけではないため、幸いリタイアにはなっていない。

 

「しっかりしなさい!」

 

 思わず椿姫は由良に駆け寄ろうとする。そのわずかな隙に、襲撃者が姿を現す。

 

(た、宝田大助!?)

 

 最も警戒すべき相手が目の前に現れ、椿姫の判断が一瞬鈍る。それをダイスケは見逃さなかった。

 手にしたのはパラコード。だが、そのひもの中央になにかものを受ける部分がある。そしてそこには鉄球が仕込まれていた。

 

「と、投石器!?」

 

 そう、由良を行動不能にしたのはダイスケのこの古典的な投石器だ。投石器は弓よりも安く、それでいて訓練はほぼ無しで使える安価で優秀な射撃武器だ。何せ人間は動物の中で最も物を投げるのが上手い。他の手を持つゴリラやチンパンジーは握力こそ人間以上だが物を投げるのは不得手だ。

 その原始的な武器をダイスケはスポーツ用品店の商品で作り上げてしまった。しかもそれは実践的で、事実由良は行動不能になった。

 恐らく不要な破壊を避けるために作ったのだろうが、リタイアさせるほどの威力が無いのは幸いだった。このまま追憶の鏡(ミラー・アリス)の能力を見せて牽制すればいい、そう椿姫は思っていたが現実は非情だった。

 

「イッチバーン!!」

 

 なぜか往年のプロレスラー、ハルク・ホ○ガン氏のマネをしながら投擲するダイスケ。○ーガンと砲丸(ホウガン)投げと掛けたのだろうが意味はない。なぜなら軌道上には追憶の鏡(ミラー・アリス)がある。その力を知ればいやでも行動不能になるはずだ。

 放たれた鉄球は見事に鏡を直撃、その衝撃が走ってくるダイスケを襲う。

 

(やった!)

 

 椿姫は心の中で勝利を確信した。だが、その予想に反してダイスケは止まらない。間違いなく衝撃は直撃している。なのに、なぜ――

 

(そうだった……彼は獣転人……)

 

 獣転人のタフネスは匙で知っていたはずだった。彼はシトリー眷属内でダントツのタフネスを身につけている。同じく獣転人のソーナも匙に一歩劣りながら高いタフネスを身につけた。

 相手は自分達と違う。自分達には重傷でも、獣転人にその攻撃通じるという訳ではない。ましてダイスケは最強の怪獣、ゴジラの獣転人だ。常識など通じるはずもなかった。

 新たな鏡を展開するのも忘れ、椿姫は呆然としていた。その間にダイスケは椿姫に肉薄して技を放った。

 

「イッチバーン!!」

 

 ダイスケは椿姫に向かって走っていき、自らの片腕を直角に曲げて、その内側部分を椿姫の喉元めがけてぶつけた。まさにハル○・ホーガンの伝説的必殺技『アックス・ボンバー』だ。

 

「なぜにハルク――ガハァ!?」

 

 ささやかな疑問すら許されず、椿姫は床に叩き付けられる。それを見たダイスケは加工していないパラコードを取り出して椿姫の両手足を縛る。

 

「な、なにを――フグゥ!?」

 

「あーい、ちょっと黙っててー」

 

 ご丁寧に猿轡までして椿姫を黙らせる。動けない由良は手近にあった商品陳列棚の金属支柱を分解し、脚に添え木して拘束した。

 

「うし、終了。連れてくか」

 

 そうやって二人はダイスケに引きずられ、リアスの待つ本陣に連れて行かれる。そこには同じく囚われの身となった仁村と巡がいた。

 

「リアスさん、攻撃隊はこれで全員ですね。イッセーと戦っている匙以外は見当たらなかったんで、会長の側にいるはずです。姫島先輩、お願いします」

 

「はいはーい」

 

 そうにこやかに返した朱乃は、二人の背中に魔方陣を描いた紙ナプキンを差し込む。この魔方陣の術式は犯罪者捕縛に用いられる大規模魔力封印術式である。

 

「念話くらいなら出来ますから、安心してくださいな」

 

 そしてアーシアが患部に聖女の微笑み(トワイライト・ヒーリング)で癒やしを与える。

 

「本格的な治療はこちらの都合で出来なくて……本当にごめんなさい!」

 

 敵に謝るアーシアを見て、この娘だけは本当にいい娘なのだと理解した。

 

「アーシア、よくやったわ。……悪いけど貴女たちはすぐにリタイアさせることは出来ないの。――苦しいと思うけど、ごめんなさい。じゃあダイスケ、私たちはエレベーターの機械室で待ってるわ。イッセーのこと、助けられたらよろしくね」

 

「了解です。じゃ、おたくらはずいぶんと苦しい思いすると思うけど……まぁ、そこはお互い様で」

 

 そう言い残すとリアスとひたすら謝るアーシア、そして朱乃はエレベーター内のはしごで上に登っていき、ダイスケは西側に進撃していく。

 

(あ、貴女たち、いったいなにが!?)

 

 東側には念話妨害術が施されていないので、猿轡したままでも念話できた。

 

(そ、それがリタイアさせられることなくここまで連れてこられて――)

 

(酷いんですよ! 投石器でバンバン鉄球当ててきて、死なないようにいたぶったんですよ、あの男!!)

 

 どうやら同じ目に遭わされたらしい。だが、なぜこのようにリタイアさせずに拘束しているのだろうか。たしかにパラコードの緊縛は強力で悪魔の力でも引きちぎれそうにない。

 

『ソーナ・シトリー様の兵士(ポーン)、一名リタイア』

 

 答えが出る前に聞こえたアナウンスに、彼女たちはショックを受ける。

 

(そんな、元ちゃん!?)

 

(多分、やったのは兵藤……)

 

 恐らく、匙は一歩届かなかったのだ。だが、匙が己の仕事を投げ出すはずがない。きっと目的を達成しているはず。そう願っていると、別のアナウンスが聞こえてきた。

 

『リアス・グレモリー様の兵士(ポーン)、一名リタイア』

 

 心の中で四人はガッツポーズを取る。匙は仕事を完遂した。それも格上の赤龍帝相手にだ。後で彼を存分に褒めよう。自分達はこんな結末だったが、彼はよくやった。負けたとしても――まぁ勝つが、彼は自分達シトリー眷属の誇りだ。

 そう心の中で匙の功績をたたえていたが、間もなく悲劇が訪れる。ガラガラガラと自分達がいるエリアの防火シャッターが閉められているのだ。

 

((((え゛))))

 

 そして見える赤い灯。それは反対側でダイスケがシャッターの隙間という隙間を熱線剣で溶接している証である。

 

((((え゛))))

 

 ややあって二つのアナウンスが聞こえてきた。

 

『ソーナ・シトリー様の僧侶(ビショップ)、一名リタイア』

 

『ソーナ・シトリー様の僧侶(ビショップ)、一名リタイア』

 

 つまり、花戒と草下がリタイアさせられたのだ。やったのは間違いなくダイスケだろう。

 

(……あの、副生徒会長)

 

(……なに?)

 

(確か手順ではシャッターを下ろした後に水攻めでしたよね)

 

(……ええ)

 

(シャッター閉められましたよね)

 

(……ええ)

 

(私たちリタイアしていないから会長、作戦成功だと思って水攻めの準備してるんじゃないですか?)

 

(……)

 

 椿姫の額に尋常じゃない滝のような汗が流れる。

 これまでのリアス達の行動が、これら状況証拠によって一つの結論を導く。それは――自分達が欺瞞の出汁にされた上、水攻めをされるという未来。

 リアスたちは水が浸かない安全なエレベーターの機械室に隠れ、ダイスケはソーナのいる屋上に上がるはず。つまり、自分達が水攻めされるのだ。

 

(((――ヤバくないですか!?)))

 

(……!!!)

 

 ソーナに連絡を取ろうにも、西側はジャミングされていて念話は通じない。援軍だって自分達は屋上にいるソーナを除いて人員は無し。

 そう、完全にお手上げ状態だ。

 

(ど、どうします?)

 

 仁村が椿姫に尋ねる。その答えは、あまりに現実離れしていた。

 

(あーあ、どうせなら木場くんに斬られたかったなー)

 

(((……)))

 

 聞こえてくる濁流の音。運命は、決した。

 

((((許さんぞ、宝田大助ェェェェェェェェェ!!!!!!))))

 

 ダイスケの名誉のために言っておくが、この作戦の立案と構成要素の四割はリアスが担当していることを伝えよう。




 はい、というわけでVS40でした。
 実はソーナも獣転人でした。堕天使にもいるように悪魔にもいるのです。さぁ、これで予想の絞り込みはほぼ不可能だぜ、イッヒッヒッヒッヒ!! でもこれまで重要人物がなってたから逆にすぐにばれるようになっちゃったかも。ぴえん。
 ダイスケが一見残虐ファイトをしているように見えますが、これはあくまでも死者が出ないレーティング・ゲームであることが前提でやってます。流石に実践でここまでのあくどいことはしませんしほとんどリアスの作戦です。ダイスケ担当の六割はほとんど欺瞞工作の実行です。それでも大分エグいけど。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!
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