今回からストーリーは体育館裏のホーリーに入ります。内容は前作よりも厚くなりました。グレンさん、アドバイス感謝……っ! 圧倒的感謝……っ!
その日、ダイスケは珍しく目覚ましのタイマーを切っていた。
今日はイッセー達との訓練も休みで久々に寝坊していい環境がそろっていた。実際、少し覚醒していたが、この半覚醒のなんともない心地よさがたまらなく好きで満喫するつもりだった。
が、それを何者かが妨害する。
「おはようございます、ダイスケ様。朝餉の支度が出来ております。起きてくださいませ」
リリアの声だ。もしこれがミコトだったらベッドにジャンピングボディープレスされて最悪の目覚めだったろう。
「ん……いいじゃん、夏休みなんだし」
「そうはいきません。もうすぐ二学期なんですから、生活リズムを整えないと。さぁ、起きてくださいまし」
「んぁあああああ……メニューなに?」
「先日漬けた浅漬けの白菜とキュウリ、根深汁にミコトさんのお土産の一夜干しを炙りました。それと、土鍋ご飯ですよ」
「すっげぇ豪華。わかった。冷めないうちに――ん?」
そこでようやくダイスケは違和感を感じた。なぜ、リリアがここにいるのか。というか、ここはどこだ。
側にあるパソコン類はダイスケ所有のもので間違いない。だが、部屋のレイアウトが明らかに違う。まず、ダイスケが住んでいたリアスのマンションは高級といえどここまで広くはない。今いるこの部屋はその三倍の広さがある。
さらにベッドは天蓋付きで最大のキングサイズを上回る相撲の土俵サイズ。一人で寝るにしても無駄が多すぎだろと突っ込みを入れたくなる。おまけのテレビは持っていないはずなのに超大型ワイドテレビがベッドの前に鎮座していた。
だが異常はこれだけでは無かった。慌てて階段を降りたら建物は四階建てで地下に延びる階段もある。横を見ればエレベーターがあって、急いで階段を降りた自分がバカに思えてくる。
「プハーっ! さっぱりしたぁ!! あ、おはよー、ダイスケ」
さらにエレベーターからシャワーを浴びたらしいミコトが降りてくる。家の中では思春期真っ盛りの自分がいるのだから、下着姿で闊歩するのは止めて欲しいといつも言っているのにこれだ。
「ん? シャワー? エレベーターで降りてきたよな?」
ザ・ジャパニーズスタイルで牛乳をかっくらうミコトを見てダイスケは疑問に思う。普通、風呂場と言えば一階にあるもの。なのにミコトは少なくとも二階以上のフロアから湯上がりで降りてきたのだということになる。
「ま、まさか……」
ダイスケは思わず着の身着のままでサンダルを履いて建物の外にでる。振り向くとそこには兵藤邸並みの豪邸があり、表札には「宝田」とあった。しかも各階には最低一つは風呂用の窓枠がついている窓がある。
――またか、この野郎ぉぉぉぉぉ!! 誰がお前なんかにウチのアーシアをやるかぁぁぁぁ!!!
当然聞こえたシャウトは間違いなくイッセーの声だ。まさかと思って裏隣にまわると、そこにあったのは見慣れた兵藤邸の玄関先で天に向かって吠えるイッセーの姿だった。
そう、この駒王町に噂の兵藤邸にならぶ宝田邸が、家主も知らぬ間に誕生していたのだった。
*
「全くディオドラにも困ったものだわ。毎朝こんな土産を黙ってヒトの家において行くなんて……常識を疑うわよ、ホント」
「いや、俺は今グレモリー家の非常識について言ってるんですけれども。アナタ、ヒトの事言えないですからね?」
ダイスケの家が劇的変身を遂げたのは単純明快、兵藤邸と同じくグレモリー家の仕業である。
なんでもなるべく眷属や仲間を一カ所に集めたいというサーゼクスの意向からこのようになったそうだ。それにしても住む本人に一言くらい言ってくれればいいのに、と言ったらリアスに、
「あら、ミコトがいいって言ってたわよ?」
と言われ、オメーは家主じゃねーだろと突っ込みを入れたら入れたで、
「いいじゃん、もうご両親に挨拶は済ませたんだもん♪」
と嫁になったつもりでいるらしい。いかに旧世界の一つでゴジラとモスラが
「ありがとうございます、姫島様。流石、眷属一の紅茶の腕ですね」
「あらあら、ミコトさんも素晴らしいですわ。流石グレイフィア様の薫陶を受けただけの事はあります」
リリアと朱乃が朝食を終えた皆にモーニングティーを配る。リリアの方は家が広くなった事とダイスケとミコトの生活のサポートのためにヴェネラナから派遣されたとの事だった。これは素直にダイスケは嬉しかった。何せ家事手伝いが来てくれるのと、離れたようともに毎日会えるのだから。
「問題はこっちよ。前まではアーシアへのラブレターだけだったのに加速度的に贈り物が増えてるんだから」
先日現れたディオドラの事である。彼は求婚していらい、気を引くために様々な贈り物をしてきた。はじめは手紙に映画や施設のチケットとかさばらないものだったが、それが二次関数的に高級食品や家具といった、送られたら逆に迷惑というレベルにまで達していた。
もちろんイッセーはこのディオドラの求婚には反対である。アーシアの兄的存在を自負するイッセーからすればディオドラは家族を奪おうとする怨敵。しかも、アーシアが嫁に行ってしまう夢を見てほぼ毎晩うなされているのである。許せるはずもなかった。
ちなみに、贈り物のほとんどは「食えるもんなら貰うわ」と宝田家住民の胃袋に消えている。 アーシア本人はというと、自分が迷惑をかけてしまっていると思って荷物が来るたびに謝っていた。
「どうせ貴族のお坊ちゃまの求婚でしょ? 気を持たせるだけ持たせてフッちゃえば?」
祝儀袋に付いていたスルメを囓りながらミコトが言う。
「鬼畜やわー、この元皇族鬼畜やわー。確実に男はトラウマだわー」
「ふっふっふっ、これでも伊達に長生きはしていないのよ、ダイスケ。男を玩ぶなんてこの私にはチョロいチョロい――」
「二千年お手つき無しの斎王の立場でよく言うわ」
「なにぉおう!? ――流石に今のは妾もキレたぞ。よし、お前で処女散らしてやるから家に帰ったときに覚悟しろ」
「おい、ヒメ。自分で処女って認めちゃってるけどいいのか? つーかおかしいよね? それはどっちかと言えば男が女を無理矢理襲うときに使う言葉だよね?」
たしかにミコトの言葉にも一理ある。気を持たせるだけ持たせて男を振るなんて良くある話で、バブルの頃など関係も持たないのにアッシー、メッシー、貢君と女に利用されるだけされて捨てられる男なんてザラにいた。
だが、アーシアにそういうことが出来ようはずもない。
「あのヒトも真剣みたいですし……でも、どうすれば……」
逡巡するアーシアの肩を、イッセーがしっかりと掴む。そして、宣言した。
「アーシア、これはアーシアの一生に関わる話だ。アーシアが望むなら、俺は止めない。でもアーシアが嫌で、それなのにあの野郎が諦めずしつこく来たら……俺は絶対にアーシアを守るよ。それだけは忘れないでくれ」
「……はい。絶対に忘れません」
「ああ……でもやっぱ嫌だ!! あのいけ好かない優男にアーシアをやるなんて死んだ方がマシだっ!! あぁっ、誰か俺に呪殺法を教えてくれ!!」
「ぶち壊しだよ、おい」
何もかもダイスケの突っ込み通りだった。
*
夏休みの終わり。
それは新たなるスタートでもあり、学生にとっては学校という名の地獄の窯が再び開いたことを示す。しかし同時に再び級友たちに会える日常が戻ってくるという意味でもある。
そしてムザムザと級友たちの身に起きた精神的かつ肉体経験値的成長も見せられる羽目になるのだ。おもに地味目だった女子が明けに突然金髪ギャル化してたり、大人し目だった男子がみょーな自信をつけたりするアレである。
「聞いてきたぞ! やっぱり隣のクラスの吉田、夏に決めてやがった!! しかも相手は三年のお姉様らしい!!」
「「クソッたれ!!」」
松田が持ってきた情報に、イッセーと元浜が毒づく。
「このクラスの大場も一年の子がお相手だったそうだ」
「何っ、大場が!?」
イッセーが振り返ると、大場がさわやかな笑顔で手を振っている。正直目の前にいたら顔面陥没するレベルでぶんなぐりたい。
イッセーたちが一年時から続けているこの行事、それは他の男子の「夏、垢抜けちゃったぜ」を調べることだ。一体誰と、いつ、どこで、どうしちゃったのかという情報はイッセーたちにとってのどから手が出るほどほしい情報である。
だって自分たちも童貞捨てたいもの。
「でもさ、今更そんな情報得たって得なんてねぇだろ。せめて夏休み中に集めて実践したらどうよ」
ダイスケの尤もらしい意見に松田は吠える。
「正直腹が立つんだよ! 夏休み中に垢抜けた連中の「ああ、こいつまだ女を知らないんだ」的な見下す視線!!」
「いや、俺はそういう連中を「ああ、こいつらは本当の命のやり取りってのを知らないんだ」的な見下す視線で見てる」
「あ、それは右に同じ」
「一体夏休みに何があったんだよお前ら……」
ダイスケとイッセーの発言に戦慄する元浜だが、彼らが知る必要はないだろう。
方や山の中をドラゴンに追い掛け回され、方や全身切り刻まれるという経験をしているのだ。そこに、女っ気は一つもない。きゃっきゃうふふな展開なんて望めようもなかった。むしろギャーギャーヘルプである。
これで松田と元浜に夏の間に先に彼女でも作られようものならイッセーは自決を考えるところだったに違いない。
「あんたら情けない面してるわねー。どうせ夏の間に何にもいいことなかったんでしょ大方」
そこへ現れたのはクラスのエロマスター女子桐生藍華だ。
「そんなにヤリたかったら、そう言う目的の女でも探せばいいじゃない。穴に入れるだけなら案外なんとかなるもんよ」
「ちがう! 俺たちはただヤルのではなく、末永くコンスタンスにヤリたいのだ!!」
「一発ヤッておしまいなんてただの素人童貞だ!! 恒常的にデキてこそだろうがよぉ!!」
「……軽いのか重いのかどっちかにしなさいよ」
松田と元浜をゴミを見るような目で見下す桐生であったが、すぐさまイッセーに向き直る。
「そういやさ、兵藤。最近アーシアが遠い目になることが多いんだけど、なんか理由知ってる?」
「え? いやぁ、流石にそれは……」
知ってはいるが、言える事情ではない。そのアーシアはやはり彼の一件が引っかかっているようで困惑している様子であった。授業中も教科書を逆さにしてしまっていたほどである。そんなアーシアの様子はイッセーにとっても心配になるほどだ。
そんなイッセーの視線を感じたのか、アーシアは笑みで返すが、やはりどこかぎこちない。そんなアーシアを見てどうしたものか、と考え込むイッセーであったが、教室にあわてた様子で入り込んできた一人の生徒によって邪魔される。
「お、おい! みんな大変だ!! 落ちついて聞いてくれ!!」
その男子生徒は友人から「まずは君が落ち着け」と胸にトンと当てられたミネラルウォーターを一口あおり、ゆっくりと呼吸を整えてクラス全員に聞こえるように報告した。
「このクラスに転校生が来る! それもかなりの美少女だ!! おまけに二人!!」
『……えええええええええええええ!?』
・
・
・
「えー、こんな時期にめずらしいですが、このクラスに転入生が入ってくることになりました。じゃ、入ってきて」
そう担任に促されて入ってきたのは栗毛ツインテールの相当な美少女。そしてダイスケとイッセーもよく知るプラチナブロンドの美少女であった。
銀髪の法は清楚に見えて実に男を魅惑する顔立ちとスタイル。栗毛の方は快活そうな顔つきに均整のとれたスタイルで共に男子の視線を釘づけにした。だが、イッセーとダイスケは魅了されるよりも驚いていた。それはアーシアとゼノヴィアも同様で、目が飛び出しそうになっているほどだ。ただ一人「おーい、こっちこっち!」と呑気に気を引こうとしている。
まず、栗毛の美少女がぺこりと頭を下げて自己紹介をする。
「紫藤イリナです、皆さんどうぞよろしくお願いします!」
コカビエル襲撃の折、以前来日して相当なインパクトを残した紫藤イリナその人であった。そしてもうひとり――
「リリアです。諸事情でグレモリー姓を名乗らせていただいております。浮世の生き方には慣れておりませんが、何卒よろしくお願いします」
*
「紫藤イリナさん、そしてリリア。あなたたちの転入を歓迎するわ」
放課後、オカルト研究部部室に関係者各位が揃い、イリナとリリアを迎え入れていた。
「はい、皆さん初めまして……の方もいらっしゃれば再会した方のほうが多いですね。紫藤イリナと申します! 教会――いえ、天使さまの使者としてここ、駒王学園にやって参りました!!」
「メイドの分際でおこがましいのですが、今日からお世話になりますリリアです。初めての方もそうで無い方もふつつかながら活動のサポートをさせていただきます。よろしくお願いいたします」
パチパチと部員が拍手で迎える。リリアはグレモリーのバックアップという事でわかりやすいが、イリナには事情がある。
そう、この駒王学園、和平の象徴となっているわけだが、今まで天界側は間接的な支援のみでとどまっていた。それではバランスが取れないと送られてきたのがイリナらしい。
そんな事情をよそに、当の本人は「主への感謝云々」、「ミカエル様は偉大で云々」と以前と変わらぬ様子である。が、イッセーは気になってゼノヴィアに耳打ちする。
(な、なあゼノヴィア。イリナは神の消滅を知らないんだよな?)
(うむ、少なくとも私と別れた時点では知らないはずだ)
となれば事実を知れば大惨事必至だろう。何せこの場には直にコカビエルから神の死を知ったメンツが多いのである。いつかばれるということもありうるのだ……というイッセーの不安をどこ吹く風とアザゼルが切り出す。
「おまえさん、『聖書の神の死』は知ってるんだろ?」
「ちょおおおおおお!? 先生、いきなりそれっすか!?」
あわてて突っ込みを入れるイッセーだが、アザゼルはどこ吹く風だ。
「アホ、ここに来たってことはそういうの込みで任務が下っているはずだ。ここはな、三大勢力の協力関係の中でも最も重要視されているところだ。そんなとこに来るってことは、ある程度の知識があるからこそさ。そうだろ?」
「はい、総督。イッセー君安心して。私はすでに主の消滅を認識しているわ」
「以外にタフだな。信仰心が人一倍だったイリナが何のショックも受けずにここにきているとは」
が、ややあってイリナはゼノヴィアに詰め寄り大粒の涙を流し始めた。
「ショックに決まってるじゃなぁぁぁぁい!! 心の支え! 宇宙の中心! あらゆるものの父が死んでいたのよ!? すべてを信じてきた私だったからミカエル様に真実を告げられた時、七日七晩寝込んじゃったわよ!! ぁぁぁぁぁあああああ主よ!!」
散々ぶちまけた後、テーブルに突っ伏し大号泣するイリナ。よほどショックだったのだろう、いまだに引きずっているのだ。そんなイリナが哀れに思ったのか早速リリアがハーブティーを煎れて持ってくる。
「さ、これでも飲んでください。気分が落ち着きますよ」
「ありがとう……あ、おいしい」
そんなイリナに、アーシアとゼノヴィアが語りかける。
「でも、私もわかります。その気持ち」
「やけくそで悪魔に転生した私が言うのもなんだが、よく心が壊れなかったものだ。それだけでも良しとしようじゃないか」
「あぁぁぁぁぁぁアーシアさん!! この前は魔女だなんて私ひどいこと言ったわ! 何も知らないバカは私だったのに――本当にごめんなさい!」
アーシアにイリナが、謝罪を込めて頭を下げる。
「ゼノヴィアにも謝らないといけないわ。別れ際にもう決別だみたいなこと一方的にまくし立てて……ごめんなさい!」
ゼノヴィアにも詫びを入れるイリナ。しかし、その姿に、アーシアもゼノヴィアも微笑んでいた。
「イリナさん、私は気になんてしていませんよ。これからは同じ主を失いながらも敬愛する同志ってことでいいじゃないですか」
「私もそうさ。あれは破れかぶれで悪魔に転生した私も悪かった。いきなりだったものな。だが、こうして再会できたのはうれしいよ」
「うぅぅぅぅ、二人ともありがとう……! でも宝田大助だけは絶対にするさないし心を開くつもりもないから!」
そうして三人はがしっと抱き合い、『ああ、主よ!』と祈り始めた。新派閥「教会三人娘」の誕生である……内二名が悪魔だが。
「じゃあ、お前さんはミカエルからの使者ってことでいいんだな?」
アザゼルの念押しの確認にイリナはうなずく。
「はい、ミカエル様はここに天使側のスタッフがいないことを懸念されておりました。三大勢力の和平のシンボル的場に天使側から誰も来ていないというのは深刻だ、と」
「今いる人員でも十分なんだがな。もともとお人よしを超えたレベルでもバックアップはしてるだろうに。で、お前さんはどの程度の権限を持つんだ?」
「それに関しては――直接見ていただいたほうがいいですね」
そういってイリナは立ち上がり、祈りのポーズをする。すると、その背中からまばゆい光とともに一対の白い翼が生えてきたのだ。
「こいつはまさか、転生天使の技術を完成させたか」
「はい、
「なるほどねぇ。おそらく人工神器の技術も応用で入ってるんだろ。さっそく面白いもん開発しやがる。悪魔がチェスで天使がトランプとはな。まあもともとトランプは切り札って意味もある。神が死んで純粋な天使は二度と増えなくなったからな。そういう意味じゃ戦力拡充の切り札ってわけだ。だがその分だとジョーカーもやっぱりいるんだろうな。十二って数字もってのも十二使徒をもとにしてるんだろう。全く楽しませてくれるぜ天使長様もよ。で、イリナ、お前さんのスートはなんだ?」
尋ねられたイリナは胸を張って答える。その手の甲にはAの文字が輝いていた。
「もちろん、ミカエル様の
「ま、自分を見失うよかいいさ」
さっきまでの落胆なぞ遠くに投げたイリナを見て、ゼノヴィアが言う。さらにイリナはまくしたてるように言う。
「さらにミカエル様は
その壮大なミカエルの計画に驚く一同をよそに、アザゼルは感心していた。
「長年いがみ合ってた関係だ。急に和平っつっても不満に感じる者もいるだろう。そういう手合いの鬱憤をぶつける場としちゃぁ最適かもな。冥界でもダイスケをモデルケースに異種族も参加できるように間口を広げようとしてるんだからいい傾向だぜ。いずれは裏の世界のオリンピックみたいになるだろうな。」
「じゃあもう近いうちにそうなるってことですか?」
ダイスケの問いに、アザゼルはいやいや、と首を振る。
「『システム』の調整なんかもあるだろうからな。早くて二十年後だろう。そのころには新人悪魔たちもいい仕上がりになってるだろうからな」
「二十年後かぁ。そのころには俺はいい大人だな」
「いや、それはわかんねぇぞ。案外獣具の影響で悪魔みたいにそんな年を取らないってこともありうる」
「え、マジっすか? じゃあ俺渋いオッサンになれないじゃん。」
「気にするのそこ……?」
イッセーは変なところが気になっているダイスケを怪訝に思うと同時に、将来について少し夢想する。いずれ自分の眷属を伴って天使や堕天使のチームとゲームで戦う。正直まだそこまで実感できる実力が伴っていないため早々に想像はあきらめた。
「異種混合戦とは楽しめそうね。悪魔相手だけじゃない、多彩な戦略を考えるいい機会でもあるわ」
グレモリー眷属とのレーティングゲームで惜敗したもののその実力を発揮したソーナは乗り気である。それに対し、
「きょ、教会を相手にするのはさすがに怖いですぅ……」
ギャスパーは心底怖がっている。何教会は悪魔堕天使との協定は結んだものの、ヴァンパイアに関してはその気配は一切なくヴァンパイアハントも未だ継続中とのことである。一度ヴァンパイアハンターに殺された身でるため尚更だろう。
「まあ、このあたりの話はこれでおしまいにして、今日は二人の歓迎会をしましょう」
ソーナが笑顔で話題を切り上げる。イリナとリリアのほうも皆を見渡して言う。
「悪魔の皆さん、私は今まで悪魔を敵視し続けてきたし、斬りもしました。けれど、ミカエル様が「これからは仲良くですよ」と仰っていらっしゃったので私もそうしたいと思います。これからはここで教会代表として頑張っていきたいです!よろしくお願いします!」
「私は基本的に戦いに赴けませんが、皆様のバックアップならお任せください。グレモリーのメイドとして、必ずお役に立って見せます!」
*
リリアとイリナが転入してきてから数日が立ち、クラス内の雰囲気も落ち着いてきたところで二学期最初のイベント体育祭の準備と練習がはじまっていた。
イッセーたちのクラスも今日は全員で出場種目の練習中である。そんな中やはり目立つのは転生天使であるイリナの身体能力だ。かけっこをしている相手のゼノヴィアとタメを張るほどの脚力を見せている。
もちろん男子が見るのはその無邪気に動く均整のとれたスタイルの二人の肉体の競演であり、イッセーたち三馬鹿トリオも注視している。
「しかし、高速で動かれるとおっぱいの動きが把握できないな」
「だな」
「やはり適度な速度が一番揺れを確認できる」
「……その前にスポブラぐらいはしてるだろうからそんなに揺れないんじゃね?」
「なんで男性って……」
最後に冷静な突っ込みを入れるのはもちろんだダイスケだ。そしてその側には男子からの視線を避けるようにダイスケの影に隠れるリリアがいた。何せこのリリア、元がサキュバスなので自然と男子の視線を集め、おまけに関係を迫る男子も続出した。それを予見したダイスケはリリアに常に自分の側にいるように言いつけ、寄ってくる羽虫を撃退しているのが日常だ。
「お、兵藤に宝田じゃん。それにリリアさんも」
そんなイッセーたちの元に匙が現れる。その手にはメジャーだのなんだのと計測器具がある。
「おう、匙か」
そんな匙の元にイッセー、ダイスケ、リリアの三人は尻についた砂を払い、歩いていく。
「お前らさっきまで何やっていたんだ?」
「揺れるおっぱいの観察」
「揺れるおっぱいを観察するイッセーの観察」
「ダイスケ様シェルターに隠れています」
「あ、相変わらずだなお前らは」
「そういや匙、お前のその腕の包帯はアレか? ゲームの怪我が治ってないのか?」
「いや、そうじゃないんだよ。ちょっと見てくれ」
そう言って匙は右腕の包帯の一部を捲る。そこには刺青のような妙な文様が浮かんでいた。まるで黒い蛇がのたうっているようである。
「なにこれ、呪いの文様?」
「やめろよ、宝田。ヴリトラってあんまりいい伝説残してないんだから。アザゼル先生に聞いたら前のゲームでイッセーの血を吸ったのとラインで赤龍帝の神器とつないだことが原因でこうなったらしい。まぁ、悪影響ってわけじゃないらしいけど」
「なんかの力を
「いやいいよ、兵藤。特に不都合してないし、気持ちだけ受け取っておくわ。ところでお前ら、何の競技に出るんだ?」
最初に答えたのはダイスケだ。
「綱引きと棒倒しと騎馬戦。クラス全員に腕相撲で勝っちゃってさ。「お前はパワー系に全部出ろ!」って頼まれちゃって。あ、ミコトも女子の綱引きに出るから生徒会の女子に警告しろって言っとけ。あいつ結構力あるぞ」
「獣具使いって悪魔並みに身体能力向上するんだろ。警戒するように言っとくわ。で、リリアさんは?」
「女子リレーと女子綱引きです。これでも体力には自信が……あ! 今、やらしい意味の体力だと思いましたね!? これだからダイスケ様以外の男は!!」
「思ってねぇよ、この男性恐怖症のくせに脳内ピンク!! ……兵藤は?」
「アーシアと一緒に二人三脚。仲良くゴールするから見ててくれ」
「ケッ! うらやましい奴め! 俺はパン食い競争だちきしょうめ」
そんな羨ましがる匙のもとに、二人のメガネ女子がやってくる。ソーナと副会長の真羅だ。
「何をしているのです、匙。これからテントの設営箇所のチェックをするのですから早く来なさい」
「我が生徒会はただでさえ男手が少ないのですからちゃんと働いてくださいな」
「は、はい、会長! 副会長! じゃあ行くわ」
そう言って慌てて匙は二人の元へ向かう。
「――そういやあいつ、会長とのできちゃった結婚目指してるんだっけ。あの様子じゃ尻に敷かれるな」
「言えてる」
そんな感想を言い合っていると、不意にドライグが口を開く。
『これは……ヴリトラの魂の気配が濃くなったのか』
その言葉にイッセーは怪訝そうな表情になる。
『何、気にするな。どうやら俺との直の接触が奴に影響を与えているようだ。たとえ幾重にも魂を分断されようとも何かの切っ掛けがあれば別ということらしい』
「そいつはなにか、近いうちにヴリトラが復活するってことか?」
『流石にその気配はないさ、ダイスケ。何せあの匙というのが宿しているのはあくまでヴリトラの魂の一部なのだからな。しかし、ファーブニルとヴリトラが近くにいて、タンニーンとも出会った。どうやらイッセーは龍王に縁があるらしい』
「あのー、宿主ほったらかしで話進めないでもらえません?」
「『無理』」
「お前らほんとに息ぴったりだな!? もういい、アーシアと二人三脚の練習してくる」
『おい、もうちょっとダイスケのそばにいろ。なかなか話が分かるやつだからもう少し話したい』
「うるせぇ!」
そういってずかずかとイッセーはアーシアの元へ歩いていく
「……さーて、俺も騎馬戦の打ち合わせ行ってくるかね」
騒々しかった夏休みが過ぎ、まだ残暑が残る九月。少しは平和に暮らせるかと思うダイスケであった。
しかし、そんな希望もどうやら簡単に打ち砕かれるようで。その日の放課後、イッセーはダイスケたちと共に部室に顔を出す。しかし、先に来ていたほかのメンバーは渋い顔をしている。
「何かあったんですか?」
イッセーが訊くとリアスが答える。
「例の若手悪魔同士の交流戦、次の相手が決まったの。……よりにもよってディオドラ・アスタロトよ」
どう考えても波乱しかなさそうな展開にダイスケは思わず「あーあ」と呟いてしまった。
はい、というわけでVS43でした。
宝田邸が兵藤邸より一回り小さいのは、兵藤邸がグレモリー眷属も住まう事を想定しているからです。両親も一緒にいますしね。
リリアは学園では完全にダイスケにくっついています。最大の懸念は松田と元浜でしたが、ダイスケの友人という事でまだ他の男子よりは信頼している状態です。
なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!