ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

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 Twitterのフォロワーがね、三人も増えたの。
 嬉しかったの。


VS46 背負うもの

 神殿の中はとてつもなく広かった。元々がレーティングゲーム用に作られたものであるためそれは当然なのだろうが、それでも広さを感じずにはいられない。

 中は複雑な造りになっており、部屋を抜ければまた別の部屋に抜ける造りになっている。そういう部屋をいくつか抜けた時、気配を感じた。それも複数の人数だ。そして部屋の中にはフードをかぶった小柄な人影が十人ほどいる。

 

『いらっしゃい、リアス・グレモリーとその眷属のみんな』

 

 屋内にディオドラの声が響くが、イッセーが辺りを見渡してもその姿は見えない。

 

『いくら探してもそこに僕はいないよ、赤龍帝。僕はずっと奥の神殿で君たちを待っている――遊ぼう。中止になったレーティングゲームの代わりだ』

 

「なにする気だ!?」

 

『簡単だよ、赤龍帝。互いの駒を出し合って戦うんだ。一度使った駒は僕のところに辿り着くまで二度とつかえないのがルール。あとはご自由に。第一試合、僕は兵士(ポーン)八名と戦車(ルーク)二名を出す。言っておくけど、兵士(ポーン)八名は全員女王(クイーン)に昇格済みだよ。いきなり女王(クイーン)八人だけど別にいいよね?グレモリー眷属は強力ぞろいで有名なんだから』

 

 滅茶苦茶な話であった。敵陣どころか自陣内であるはずなのに女王に昇格している兵士を八名、さらに戦車二名も相手どらないとこの先へ進めないというのだ。ただでさえ手駒が少ないリアスにとっては不利な状況。しかし。

 

「……いいわ、あなたの戯言に付き合ってあげる。私の眷属がどれほどのものかその身をもって知るといいわ」

 

「部長、いいんですか!?」

 

 イッセーが驚くが、ダイスケは目を細めて言う。

 

「いや、ここは部長が正しい。なんせ相手はアーシアを人質にとっている。下手に動けばなにされるかわからん」

 

「そういうことよ。ではまずこちらはイッセー、小猫、ゼノヴィア、ギャスパーを出すわ」

 

 相手十人に対しこちらは四名、半数以下と数的にリアスが圧倒的不利に見える。

 

「四人とも、いいこと? 今回は制限なんてなし……つまり思いっきりやっていいわ。思いっきりね。」

 

 あえて二度言って強調した「思いっきり」という言葉に、イッセーは目を光らせる。

 

『じゃあ、はじめようか』

 

 そのディオドラの合図で眷属たちはいっせいに構える。しかし、そこから先は一方的な蹂躙であった。

 

「ギャスパー、いくぞ!」

 

 まず、イッセーがゼノヴィアにアスカロンで自分の指を切ってもらうとそこから滴る血をギャスパーに飲ます。

 

「アーシアは返してもらう!」

 

 そしてゼノヴィアは異空間からデュランダルを引き抜くと、二振りの聖剣の聖なるオーラを共鳴させる。

 

「デュランダル、アスカロン、私に友達を救う力を……くれ!」

 

 ゼノヴィアにとって、アーシアは掛替えの無い存在である。初めはアーシアを魔女と罵倒した。しかし神の死を知り、落ち込んだ自分を同じ境遇の友として受け入れてくれた。どん底から救い上げ、手を取ってくれたのだ。

 そんなアーシアを奪い、穢そうとする輩をゼノヴィアが許せるはずもない。すべての怒りとアーシアへの想いを込めて、二振りの聖剣を振り下ろす。すると、その増幅された聖なる破壊のオーラはディオドラの戦車二名を飲み込み、文字通り消滅させた。

 

「制限はないと言われたからな」

 

 もとよりデュランダルを制御しきれていなかったゼノヴィアは、制御することを止めたのだ。全く抑えられていない破壊のオーラの破壊力は絶大で、神殿の半分以上も余波で消し去っていた。その一撃は残りの兵士たちをひるませる。

 当然、その隙をイッセーたちが見逃すはずもない。 

 

「小猫ちゃん、ギャスパー、いくぞ!」

 

「はい!」

 

「にゃん!」

 

 まず、イッセーは女王に昇格する。本来であれば敵陣内でなければ昇格はできないが、すでにゲームが崩壊した今ではリアスの承諾さえあれば昇格は可能だ。

 

 『Boost!』

 

 さらに、ただでさえ向上した力を赤龍帝の籠手の力でブーストをかける。

 

 『Explosion!』

 

 そして一気に開放し、イッセーは自身の魔力を脳に集中させる。その力は、一度封印された恐るべき力であった。

 

 「煩悩解放! イメージマックス! 広がれっ、俺の快適夢空間!! さあ、その胸の内を聞かせてちょうだいな、『乳語翻訳(パイリンガル)』ッ!!」

 

 さぁ、悪魔の闘争史上最悪のセクハラショーの始まりだ。 

 

「ヘイ! 兵士のおっぱいさんたち、右から順にこれから何するつもりか教えてちょうだいな!」

 

『まず、邪魔なヴァンパイアの目を封じるの♪』

 

『三人がかりで一気にたたんじゃえ!』

 

『ヴァンパイア、倒す倒す!!』

 

 そこまで聞いたイッセーはクワっと目を開き、ギャスパーに指示を出す。

 

「あの子とあの子とあの子はギャスパーを狙っている! ギャスパー停めろ!」

 

「は、はいぃぃぃ!!」

 

 イッセーの指示のもと、ギャスパーは己の神器の力で三人を停止させる。

 

「じゃあ、君たちは何を考えているのかな?」

 

『わーお、あの子たち停められちゃった! これじゃあ私たちが猫又を狙ってるのもばれちゃう!?』

 

『うっそー、心を読まれない術式を施してきたのにぃ』

 

『これじゃ全部気付かれちゃう!』

 

 これではも何もすべて筒抜け。対策もへったくれもなかった。

 

「ギャスパー、今度はそっちの三人が小猫ちゃんを狙う! 停止だぁぁぁ!」

 

「は、はいぃぃぃぃぃっ!」

 

 ギャスパーの眼光が光り、三人は停止させられる。これで残るは兵士二人のみ。

 その前にイッセーは邪悪な笑みを浮かべて停止した六人に向かいそして――洋服崩壊。あらわにした裸体をイッセーはすぐさま脳内フォルダに保存する。その光景を見せられて恐怖するのは残りの兵士二名だ。

 心の内を読まれ、あまつさえ全裸にされることが女性にとってどれほど恐怖と屈辱か想像に難くないだろう。

 

「フハハハハ! 怖かろう……。しかも魔力コントロールできる!」

 

 しかも脳波コントロールできる、と続きそうないかにも悪役なイッセー。正直心の中ではいずれ自分は「おっぱいを支配できる」とまで考えている。

 ちなみに原作ではゼノヴィアのシーンは四ページにわたっていたが、本作ではたった七行にまとめられ、イッセー(バカ)の乳語翻訳のほうに文章を割かれている。原作じゃ単行本の表紙なのに。カラーイラストもかっこよかったのに。

 

「さあ、残りのお姉さんたちはどうしてくれちゃおうっか――ごふ!」

 

 手をわしわしとさせるイッセーの頭めがけてダイスケがその辺にあった瓦礫を投擲した。

 

「いいからさっさと殺れよ」

 

 若干の怒気が含まれたその言いっぷりにイッセーもさすがに恐れた。

 

「は、はい。」

 

「……私の出番。にゃあ……」

 

 この後、滅茶苦茶縛り上げた。

 

 

 

 

 

 

 兵士八名を縛り上げた後、イッセーたちは先を急ぐ。そうして辿り着いた次の部屋で待っていたのはディオドラの女性僧侶(ビショップ)二名であった。

 

「お待ちしておりました、リアス・グレモリー様。」

 

 そう言いながらディオドラの僧侶(ビショップ)はフードを取り払う。一人は金髪碧眼の美女、もう一人はウェーブの翠髪美女であったが、これから倒すのには変わらない。

 記録映像によれば一人は炎の魔力を操り、もう一人の僧侶(ビショップ)のサポート力はギャスパーとアーシアを超えていた。

 

「では、私が行きましょうか」

 

 そう言って朱乃が前に出る。

 

「戦力的にみれば、後の騎士(ナイト)二名と女王(クイーン)は祐斗とダイスケで十分対応可能ね。私も出るわ」

 

 さらにそこにリアスが加わる。これで学園二大お姉様がここでそろって戦うことになる。

 

「あら、私一人だけでも十分ですわ」

 

「何を言っているの。堕天使の光も混ぜた『雷光』を覚えたからって油断は禁物よ。ここは堅実に行きましょう」

 

 もともと眷属の中でも純粋な魔力でトップを誇る二名だ。ここは安心してみていられるだろう。そう思っていたイッセーの袖を小猫がちょんちょんと引っ張る。

 

「ど、どうしたの?」

 

 すると小猫はイッセーにしゃがむように促し、こそこそとあることを耳打ちする。

 

「……ほんとにいいんだね? 言っちゃうよ?」

 

 イッセーがそう念押しすると小猫はこくんと頷く。

 

「じゃあ――朱乃さーん、その人たちに完勝したら今度一緒にデートしましょう――ってホントにこれで朱乃さんがパワーアップするの?」

 

 イッセーが小猫に問う。すると、小猫は朱乃を指さす。すると、朱乃は歓喜に打ち震えていた。

 

「ふふ、うふふふふふふふふふふふふ! イッセー君とデートできる!!」

 

 迫力のある笑みを浮かべ、周囲に電撃を漏らす朱乃。よほど嬉しいらしい。正直これに一番ビビったのはイッセーである。これで本当に完勝してデートに行こうものならナニをされるかわからない……いや、いいかもと思ったのは秘密だ。

 

「酷いわ、イッセー! 私というものがありながら朱乃にだけそんなこと言って!!」

 

 悔しがるのはリアスであった。しかも涙目であるから相当だ。

 

「うふふ、リアス。これは私の愛がイッセー君に通じた証拠よ。あなたはもう諦めるしかないわね」

 

「な、何を言っているの!? たかがデートの一回くらいの権利で電撃を迸らせる卑しいあなたに何も言われたくないわ!!」

 

 なんか口論に発展した。しかも次第にたがいに体に魅力がないだの、したキスの回数で揉めたりしはじめた。その光景にディオドラの僧侶(ビショップ)二人も困惑する。

 

「あ、あなたたち! 敵を目の前にして男の取り合いなど――」

 

「「うるっさい!!」」

 

 同時に放たれる膨大な魔力と雷光。そのたった一撃で僧侶(ビショップ)二名はノックダウン、本当に完勝してしまった。

 

「大体ね、あなたのやり方は――まあいいわ、今はアーシアのことが最優先よ」

 

「それもそうね、リアス。私にとってもあの子は大切な存在だもの」

 

 一旦共に矛を収め、リアスと朱乃は倒れているディオドラ眷属を思いっきり踏んで先に進んでいく。その様子を見て、ダイスケは思わず頭を抱えた。

 

「……何でウチはこうまともに戦えないのかねぇ」

 

 恐らくすべてはイッセーがいるから、なのではなかろうか。

 

 

 

 

 

 

 次出てくるのはディオドラの女王(クイーン)騎士(ナイト)二名。騎士(ナイト)の方は記録映像では目立った活躍もなしに撃破されていたことから木場やゼノヴィアと比べても見劣りする騎士であった。

 これなら楽勝、と部屋に足を踏み入れると、そこには見覚えのある白髪の者がいた。 

 

「や、おっひさー。」

 

 白髪のはぐれエクソシスト――

 

「フリード!?」

 

 因縁のあるはぐれエクソシストが現れたのである。イッセーの記憶が正しければ、エクスカリバー事件以来である。あのときは目覚めたダイスケに一蹴され、ヴァーリに回収されていた。それがまだ生きていたのだ。

 

「まだ生きてるんだって思ったっしょイッセー君? もちもち、僕ちんしぶといからしっかりきっちり生きてござんすよ!」

 

 思考を読まれていらだつイッセーだが、何か違和感を覚える。ここにいるはずの騎士二名が見当たらないのだ。

 

「オンやぁ、騎士二名をお捜しで?」

 

 そう言いながらフリードがもごもごと口を動かすと、何かをペッと吐き出した。それは、指だった。

 

「俺様が喰ったよ」

 

 あまりに突拍子にない言葉に、イッセーの頭が回転しない。だが、小猫はあることに気付く。

 

「そのヒト……人間を辞めています」

 

 忌むかのようなその言葉を聞くと、フリードは人間とは思えないような形相で哄笑をあげた。

 

「ヒャハハハハハハハハハハ! てめぇらに滅茶苦茶にされた後ヴァーリの野郎に回収されてなぁぁぁぁぁぁぁ! 腐れアザゼルにリストラ食らっちまってよぉぉぉおおおおおおお!!!」

 

 フリードの肉体が嫌な音を立てて変貌していく。顔は三角形で触角が生え、胴体はほそ長く、しかし太くなり、脚は二本に割れて節足動物のような脚に変わる。

 

「行き場をなくした俺を拾ったのが禍の団での連中さ!奴ら、俺に力をくれるっていうから何事かと思えばよぉぉぉぉぉ! キクハハハハハハハハハハ! 原身覚醒獣転人だってよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!」

 

 両手は鎌に変貌し、背中に昆虫らしい薄く長い翅が生えている。その姿はまさに――

 

「カマキラスか……?」

 

 その変貌したフリードの姿はまさにダイスケの記憶にもある元の姿のカマキラスだカマキラスであった。

 

「そりゃもちろん合体相手は俺のソウルメイトになったカマキラスちゃんだよ! 文字通り一つになったんだよぉぉぉおぉお!!!」

 

 獣具の技術の応用の一部なのだろうか、フリードの肉体はカマキラスのものと混ざり合って人間カマキリというべき異形の姿だ。 

 

「ところで知ってたかい? ディオドラ・アスタロトの趣味を。これがまた素敵にイカレていやがって最高に胸がドキドキだぜ!!!」

 

 そこからフリードが話したディオドラの趣向の話は――最悪だった。

 ディオドラの眷属は皆実は教会の元聖女やシスター。それも熱心な信徒や教会本部にも近い者たち。彼女たちは皆ディオドラによって誘惑され、手籠めにされ、堕とされた。そんな女たちだった。

 ある日、ディオドラはあるシスターを目にする。アーシアであった。一目見て気に入り、ディオドラは自分のものにできないか思案する。そこに、ある神器に詳しい者がアーシアが悪魔も癒す神器を持っていると教えられる。そこからのシナリオはこうだ。

 まず、わざと自分は怪我をして教会の前に来る。当然心優しいアーシアは傷を癒すだろう。しかし、その正体が悪魔だとすればアーシアは悪魔を癒す魔女として教会を追い出される。

 そこを狙う。

 信じていた教会から追放され、信じていた神も信じられなくなれば自然とアーシアは自分のものになる。その苦しみも快楽のためのスパイスなのだから。最底辺まで落とし、掬い上げて、犯す。心身ともに。今までずっとそうしてきたのだ。そして、今度のターゲットはアーシア。

 そこまで聞いたイッセーは、もう自分を止められそうになかった。握りしめる拳からは血がしたたり落ちるほどだ。怒りのまま、フリードに向かおうイッセーは一歩足を動かすが、両方の肩をつかまれ、停められる。

 木場だ。

 

「イッセー君、気持ちはわかる。でもその怒りをぶつけるのはあいつじゃぁない。ディオドラまでとっておくんだ」

 

 その物言いは冷静だった。それが逆にイッセーの癇に障る。

 

「お前、これで黙っていろなんて――」

 

 木場の胸ぐらをつかもうとしたが、その手が止まる。イッセーに見えた木場の瞳には、明確な怒りの炎が宿っていた。

 

「ここは僕が行く。あの汚い口は閉じなければならない」

 

 イッセーの怒りが一瞬覚めてしまうほど、木場の全身から怒りのオーラが立ち上る。そしてなにより、これまでにないほど攻撃的だった。

 

「やあやあ、てめぇらはあの時俺を好きにしてくれた騎士(ナイト)さんじゃないの! てめぇのおかげで俺は素敵にモデルチェンジしちゃいましたよ! でもよぉ、その分強くもなったんだぜぇ? ディオドラの騎士二人をぺろりと平らげてそいつらの特性も得たんすよぉぉぉぉ!!! 無敵超絶モンスターのフリード君をどうぞよろしくお願いしますぜ、色男サンぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 木場に飛びかかろうとするフリード。しかし、その姿は突然消える。

 

「なんだ!? 消えた!!」

 

 イッセーが驚くと、突然木場の周囲の地面が切り裂かれる。

 

「あひゃひゃやひゃひゃひゃ! 実はカマキラスはよ、自身を周囲の風景に溶けかませる擬態能力があるのよ! つまり透明化だぁぁぁぁぁ!! さぁ、何が起こっているかわからねぇ内に切り刻んでやるぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 音もなく木場の周囲は切り裂かれていく。このままではフリードの言うように何もできないまま切り刻まれてしまう。

 しかし、様子がおかしい。何も見えないはずなのに、木場は体をそらしたりステップで移動し、最小限の動きだけで見えない攻撃をよけているようなのだ。 

 

「なんでだ、なんで斬れねぇぇぇぇえええええええええ!?」

 

 あまりの手ごたえのなさにフリードが苛立ち、絶叫する。すると、木場が答える。

 

「君の一撃はあまりに殺気がこもりすぎている。それに、君が移動した瞬間の大気の流れや小さな音を拾えば君がどこにいて、次何をするのかなんて簡単に読めるんだよ」

 

 まるでマンガのような原理でしかし確実に攻撃をよけていくさまは、フリードを激昂させた。

 

「ちょ、調子くれてんじゃねぇえええええええええええ!!」 

 

 憤怒の表情で透明化を解き、両手の鎌で襲い掛かるフリード。しかし、木場はよけずに聖魔剣をを薙ぐ。そのたった一閃でフリードの首は胴体から切り離された。

 

「――んだよそれ、強すぎんだろ……」

 

 それぞれ、たったの一撃であった。それは素のカマキラス一匹を相手に苦戦していたころとまるで違うことを如実に示す。

 

「……ひひひ、ま、お前らじゃディオドラの裏にいる奴らも倒せないさ。何よりも神滅具所有者の、獣転人の本当の恐ろしさをまだ知らないんだ――」

 

 頭部だけで笑っていたフリードであったが、その捨て台詞はすべて言えなかった。なぜなら木場の炎熱の聖魔剣が突き刺さり、とどめを刺していたからだ。フリードの頭部は真っ二つに割かれ、そして熱で灰となった。

 

「――続きは地獄の死神にでも吼えるがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に進んだのは部屋と言うより非常に大きな室内プールだった。部屋の床全体がプールで脚の踏み場もない。どうにかして泳ぐか空を飛ばないとこの妨害を回避できそうにない。

 

「ただの妨害部屋かしら。仕方ないわね、私の滅びの魔力で水を消して――」

 

「いいえ、ここはちゃんとした試練の部屋です」

 

 そう言いながら一人、水中から浮遊してくる人物が一人。その鎧はダイスケにとっては見慣れたものである。

 

「……ミゲラさん」

 

「お久しぶりです、宝田さん」

 

 最後の駒は女王(クイーン)のミゲラ・サンタクルス。獣具『深淵獣の毒海潜行鎧(ダガーラ・ヴェノム・ダイバー)』の獣転人。ほんのわずかな時間ながら、ダイスケとも心を通わせた。

 だからダイスケにはわかる。彼女は本来ディオドラの眷属であっていい人物ではない。この蛮行に関わってはいけないのだ。

 

「リアスさん、出てないのは後は俺だけです。俺一人でやります」

 

「ダイスケ!? ダメよ、ここはみんなで連携して確実に行かないと!」

 

 リアスのいうことはもっともだ。ミゲラの実力はディオドラ眷属の中でも頭一つ飛び抜けている。記録映像を見ただけでも女王(クイーン)としては若手六人の眷属では間違いなくその頂点にいる。 

 しかもここは水場。ミゲラの最も得意とするフィールドだ。こちらの優位な点は総合火力と数の差。本来なら確実性をとって数で攻めるべきである。だが、ダイスケは首を横に振る。

 

「それだと向こうの設定したルールに反します。そうしたら野郎(ディオドラ)が「ペナルティだ」と言ってアーシアになにをするかわかりません。だから、俺一人で行きます。」

 

「……わかったわ。お願い」

 

 リアスの要請を受け、ダイスケは水中に飛び込む。深さは10m以上、普通なら恐怖を感じるが、ダイスケにはまだ深さが足りないくらいだ。そのダイスケにミゲラが接近する。

 

「まさか一人でやる気だとは。記録映像で私の実力は見ているはずですが? それにワタシにはまだ隠している力があります。それでも一人で戦う気ですか」

 

野郎(ディオドラ)に揚げ足とらせるようなきっかけをやりたくないんでね。友達を危険な目に逢わせられませんよ」

 

 水中を伝わる獣転人のみが理解できる特殊な音響定位。言葉よりも想いを伝えるのでほぼこれは本心のぶつけ合いと言える。

 

「それよりもミゲラさんはそれで良いんですか? ゲスのいいなりのままで、人一人の人生ぶち壊す手伝いをして、アンタそれで良いのか? えぇ、元聖女サマ!」

 

「……戻れませんよ。一度落ちれば、この世の中はもう這い上げれないようになっているんです。一度堕ちればひたすら奈落に深淵(そこ)に堕ちていく。それにワタシはもう救われる資格は無い。あんな大罪を犯したワタシにはッ!」

 

 ミゲラがマスクのクラッシャーから紫色のビームを放つ。その紫光の弾幕をダイスケは避ける。そして一旦水上に出てリアス達に警告する。

 

「みんな! 一旦通路の奥に退いてくれ! これだと水中から狙い撃たれる!」

 

「わかったわ! みんな、一旦通路の奥へ!!」

 

 リアス達が通路の奥に退いていくのを確認し、ダイスケは再び深く潜行する。

 

「直線攻撃だけじゃないんですよ!!」

 

 ミゲラの背中の突起が光り、VLSのように光のミサイルが発射された。その軌道は弧を描き、ダイスケを自動追尾する。

 

「……追ってくるか」

 

 ダイスケは高速で水中を進みながら後ろに振り向いて熱弾を連射する。 当然狙いは正確、水中を自分目がけて突き進む光弾の魚雷を撃ち落としていく。

 だが、迎撃された光弾の爆発の後ろから二発、迎撃の弾幕をすり抜けてくる。ここで下手に撃ち落とすよりも、装甲で受けていなす方がマシではないかとダイスケ判断し、その二発を受ける。

 すると、その爆炎が水中に溶けた。溶けた爆発の成分がダイスケの鎧にある鰓を通ってダイスケの体内に入り、異常を起こす。

 

「……!?」

 

 全身が痺れ、酷い倦怠感がダイスケを襲う。さらに呼吸器系から徐々に全身へと酷い痛みが広がっていって苦しみが伝播する。

 

「なんだ……これ……!?」

 

「見事に浴びましたね。それを受けて即死しないとは流石としか言いようがありません」

 

 間違いない、これは毒だ。それも常人はおろか下手な下級の悪魔などは即死するレベルの超猛毒だ。

 

「貴方にはワタシの過去を話していましたね。私が故郷の村を全滅させたときに無意識にはなったのがこの毒、「ベーレム毒」です。普通なら皮膚に浴びれば焼け爛れ、酷い痛みに襲われます。最高威力なら触れただけで生きたまま溶け、地獄の苦しみ受けることになる代物です。そして、これは最大威力の一歩手前」

 

 だとしたらリアス達を通路の奥へ退避させるように促して正解だったという事だ。下手に援護させていればみんなこの毒を受けていてもおかしくない。

 

「でも、これで終わりではありません。これが最もべーレム毒を効率よく使う方法……!!」

 

 ミゲラが己の前に両手を突き出す。するとそこに小さな渦が生まれ、徐々に大きくなる。渦には紫電が走り、ただの渦巻きではない事が見て取れた。よく見れば渦の中に小さな星形のなにかがいるのが見える。

 

「喰らいなさい、轟渦赤猛毒弾!!!」

 

 幅2メートルほどの渦が、意思を持ってダイスケに襲いかかる。渦に飲み込まれたダイスケは毒の効果がエネルギー化した紫電に撃たれ、更なる毒ダメージを受ける。

 だが、ダメージはこれにとどまらない。渦の中にいた星形のモノ――毒々しい色と形状の海星型生物がダイスケに張り付いた。

 

「最高出力!! べーレムよ、毒を撃ち込めぇぇえぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 ダイスケに纏わり付いた海星型生物――べーレムが、その海星と全く同じ生物構造の中心にある口吻部から超高圧のべーレム毒液を装甲の奥の肉体に撃ち込んでいく。

 鰓気管からの吸入よりも高濃度の、そして高威力のべーレム毒がダイスケに大ダメージを与える。その様子を見るミゲラは、胸の内を開く。

 

「……この毒が、この私の能力が村の人々を生きたまま溶かして皆殺しにしたんです。今でも村の跡地は現地政府が謎のバイオハザード被災地として隔離しています。それほどの事を、私はしでかしたんです」

 

 それはこのベーレム毒の威力を語る言葉出ると同時に、ミゲラの過去の罪の告白であった。

 

「あんな業、私一人にはとても背負いきれるものじゃないんです。その業から、罪から! 逃げるにはあのゲスに抱かれるしかなかった!! 倒錯と偏愛がくれる快楽で誤魔化すしか、良心の呵責から逃げる術はなかった!! もうあの男の側しか、私の居場所はないんです!! だから……私の居場所を奪わないで!! 救いなんていらない、許しもいらない! もう、なにも感じたくないの!!!」

 

 そのミゲラの心情の吐露がエスカレートするにつれて、ダイスケを蝕む毒の威力は上がる。べーレム毒は周囲の有害物質を吸収し、合成して生み出される。だが、それと同時に獣転人の心的ストレスもその濃度に関わる。当然、今のベーレム毒はこれまでミゲラが放出したもの以上の威力になっている。

 大量のベーレムにとりつかれたダイスケは身動き一つしていない。どう考えても助かる道はなかった。

 

「私のいられる場所を奪うなら、私はいくらでも殺す! 貴方のように!! 何人だって……貴方の仲間だって……!」

 

「……それで、アーシアまで巻き込むのか?」

 

「まさか、そんな……!」

 

 まさかダイスケにまだ受け答えするだけの体力があるとは思いもしなかった。なので毒を撃ち込む威力を上げるが、ダイスケの言葉は止まらない。

 

「あの子はな、本当に良い子だよ。イッセーが悪魔だってわかっても友達だって言えちゃうんだ。多分ディオドラに真実を告げられもショックは受けても許しちゃうんじゃないか? それくらい優しいんだ。相手が誰でも傷を治してやろうとしちまう。そんな奴を……自分と同じ所に落とそうってか? ――巫山戯るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 全身を覆うベーレム達の隙間から青白い光が漏れる。その閃光は爆発的エネルギーを伴って大爆発を起こした。それはダイスケの熱線と同じエネルギー。だが、放出方法が違った。

 通常は体内で高めた膨大な熱エネルギーを口腔に繋がる体内気管を通して開いた顎から放つというのが通常の熱線だ。だが、今回は高めた熱エネルギーを気管から放出させずに体内でワザと暴発させるという捨て身の技だ。

 ズタズタになった体内はG細胞の回復力に頼るという、他の誰にも真似できない滅茶苦茶なこの技の名を『体内放射』という。まさに起死回生の捨て身技、この状況こそが使い時と言える。その威力は全身には張り付くべーレムを消し飛ばし、猛毒技の渦をかき消してしまった。

 毒に侵された肉体のダメージも、強制的に発動させるG細胞の回復力で無理矢理治してしまった。

 

「……背負いきれない罪なんてあるかよ。自分のやった事は自分で背負うしかないじゃないか。自分のやる事はやれる事以上の結果なんて起こさないんだ。なら、直視するしかないじゃないか」

 

 そのダイスケの言葉を遮るようにミゲラはビームを放つ。だが、傷つけられれば自然と傷つけられる前より強固になるゴジラの防御に弾かれてしまった。

 

「でも、そこから目を背けたら犯した以上の罪になる。償いすらしないなら、自分の罪は犯した以上の罪に成長しちまうんだ。アンタ、もう自分に救いはないって言ったな。深淵に堕ちたら二度と這い上がれないとも……ちがうよ。アンタ自分から救いから逃げてるだけだ。アンタが真面目で、本当はディオドラなんかの手下になるような外道じゃないんだ。だから救いなんてなくて良いなんて思っちまうんだ」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 冷静さを失い、もはやその回復力に追いつかない毒性のべーレム毒をダイスケに撃ち続ける。当然効果はなく、ダイスケの言葉が止まる事はない。

 

「罪を犯したら誰も助けてくれないなんてことはない。誰も自分から手を差し出さないなら、助けてくれる手を伸ばしてくれるように頼めよ。罪は償えば許されるものなんだから。その努力を否定する奴なんて、余程の冷笑家くらいなもんさ。本当は真面目で、正しい事を間違っている事を見分けられて、困った奴に……俺なんかにも手を差しのばせられる優しいアンタは……幸せになっても良いはずだ」

 

「救われても……いい? 私、が?」

 

 ダイスケの言葉に、ミゲラの攻撃の手が止まる。そのわずかな一瞬で、ダイスケはミゲラの目の前に迫った。

 

「アンタには、まだその余地があると思うぜ? 俺みたいな半端者の言う事だけどさ。アンタみたいないい女は……幸せを掴んでいいはずだ。なんなら袖こすり合うも多生の縁、少しは力にならせてくれ。アンタのお陰で、俺の心配事の一つが解決したんだがら」

 

 差し出されるダイスケの手。自然とミゲラのマスクの奥の瞳に涙がこぼれる。それはいつもディオドラに抱かれた後に隠れて流していた後悔や自己嫌悪の涙ではない。もっと優しい理由の涙だった。

 

「いいん、ですか? 私が……許されても? 救われても? 本当に?」

 

 黙ってダイスケは頷く。その仕草に、ミゲラは心に引っかかっていた大きな重りが外れたような気がした。

 いいのかもしれない。この手を取っても良いかもしれない。そうすれば、きっと――そう信じ、ミゲラは静かにダイスケが差し出した手を取った。

 

「それで良い。アンタほどの女、あのディオドラには勿体ない。もっといい男が見つかるさ――でもな」

 

 心の中でミゲラは「え゛」と呟く。なぜならダイスケの拳が腰まで引かれ、いつでも最大威力の拳撃を放てるようになっていたからだ。反射的に逃げようとしたが、掴んだ手が離さない。

 

「アーシアの誘拐に携わった分はしっかり受けてもらうぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

(え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!?)

 

 全くもって綺麗に締まらない。残念オブ残念男、宝田大助。だが、ダイスケという男はこういう男だ。故にクラスの女子からは恋愛対象には見られない。

 放たれた拳撃はミゲラの腹部にクリーンヒット。手の拘束も払い、そのカラダは水上に飛んで壁に激突しめり込んだ。意識はしっかり失われ、抵抗の意思すら見せる余裕はなかった。

 ダイスケは入ってきた側と反対にある通路に上がり、周囲を確認する。

 

「やっぱこの奥だな。みんな! 飛んでこっちまで来てくれ! 水の中は毒があるから絶対に水には触れるなよ!!」

 

 この注意により、一同は無事に最後の関門を突破したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーたちが辿り着いたのは神殿の最深部、そのドアを蹴破って中に入ると、そこには異様な装置があった。壁に埋め込まれたそれは巨大な円形で、あちこちに宝玉が仕込まれ、怪しげの文様と文字が刻みこんである。

 どうやらこの装置そのものが何らかの術式の魔方陣であるようだ。そしてその装置の中央には――

 

「アーシアァァァァアアアア!」

 

 その装置の中央にアーシアは磔にされていた。見ただけだが、外傷を受けたらしき様子はない。

 

「やっと来たね、赤龍帝」

 

 装置の陰からディオドラが姿を現す。その相変わらずの微笑みを見てますます怒りを燃やすのはイッセーだ。

 

「……イッセー、さん?」

 

 イッセーに来たことに気付き、うつむいていたアーシアが顔を上げる。その目元は赤く腫れ上がっていた。

 そのアーシアの痛々しい姿を見て、イッセーはすべてを悟った。

 

「……おまえ、アーシアに話したな」

 

「ああ、すべてね。ああ、君たちにも見せたかったなぁ、彼女が最高の表情になった瞬間を。すべて僕の掌の上だったことを知ったアーシアの顔は本当に最高だった。記録映像にも残したよ。見るかい?本当に素敵だったよ。教会の女が堕ちる瞬間は何度見てもたまらない」

 

 すすり泣きが聞こえる。アーシアだ。

 

「でもまだ足りない。まだ君たちという希望がある。そこの汚れた赤龍帝、君がアーシアを救ってしまったせいで僕の計画は台無しだ。あの堕天使、レイナーレが一度アーシアを殺した後に僕が登場してレイナーレを殺し、駒を与える算段だったんだ。君が乱入してもレイナーレに殺されると思っていたのに赤龍帝だというじゃないか。おかげで計画はだいぶ遅れたけど、やっとこれでアーシアを楽しめるよ」

 

「黙れ」

 

 その声は、発したイッセー本人でも驚くほど低い声であった。

 なんとなくだが、いけ好かないとは思っていた。ライザーと同じようなにおいを感じていたからだ。だが、違う。いけ好かないどころか小悪党も生ぬるい――外道。いや、鬼畜だ。

 もう怒りを制御しようと思えない。それどころかディオドラはさらに続ける。

 

「アーシアはまだ処女だよね? 僕は処女から調教するのが好きだからお古は嫌だな。あ、でも君から寝取るのもまたいいかもそれない。君の名前を叫ぶアーシアを無理やり抱くのも――「ちょっといいかな」――ん?」

 

 怒りに震えるイッセーを抑えて前に出てきたのはダイスケであった。

 

「お前さ、この後やる事やれて逃げ切れたとしてどうする気よ」

 

「そりゃ当然どこかに逃れるよ。資産はみんな人間界の裏の銀行に流した。当面、とは言っても二百年ほど……今より質素な生活じゃないと食いつなげないけどそれくらいは持つ。心配事なんてなにもない」

 

 その言葉を聞いたダイスケは、しばし俯いたと思うと突然大声で笑いはじめた。その光景に怒り心頭だったイッセーもその異常な笑い方を見て冷静になったほどだ。

 

「くっくっくっくっく……こりゃお笑いだ。お前、自分の金が無事に流せたなんて思ってんの!? 誰の目にもつかずに!? マジで馬鹿だ、コイツ!! あっはっはっはっは!!! お前、今回の一件はアザゼル先生達がすでに尻尾掴んであえてこの状況に持っていったんだぞ。何事もなく自分の思うとおりに全部事が運んだなんて思ってるんだ!? コイツはお笑いだ!!」

 

「ちょ、ちょっと待って、ダイスケ。貴方、私たちと一緒でなにも知らずにここまで来たんじゃないの!? まさかアザゼル達がやってた事を知っていた!?」

 

「……すいません、リアスさん。俺、このゲームの前からこのゲス野郎が怪しいって思ってアザゼル先生に調べて貰うように頼んでたんですよ。元からコイツ、他所のとこのお家騒動に関わっているんじゃないかって冥界政府から内偵を受けてたんですけど、俺の不審をアザゼル先生に相談してさらに疑惑が深まったんです。おい、このシスター萌のヤリチンゲスゴキブリ。お前流石に八月の時点でミゲラさんが自分の来歴を俺に語っていたなんて知らなかったな? そこが最大の綻びだよ」

 

「まさか、ミゲラが!? 馬鹿な、あんな過去自ら話すなんて――」

 

 ディオドラの表情から余裕が消えた。逆にダイスケの方に余裕が出てきた。

 

「ホントにみんな偶然だよ。でもお陰で俺はアーシアの過去とミゲラさんの過去が異常に似ている事に気付いた。俺はそれをアザゼル先生に相談し、神の子を見張る者(グリゴリ)も天界も冥界政府も動いてくれた。お前の兄のアジュカ様もだ! どうやら前からお前が怪しいって思ってたらしいぜ」

 

「そんな、兄上が!? なぜ身内を!?」

 

「残念だが、あのひとはそんなに身内は大事じゃないらしいぜ。友人のサーゼクス様の足を引っ張りそうな、自分の友情を邪魔しそうな奴は実の兄弟でも見捨てるってさ。それで俺は大きな犠牲を払ったが、お陰で予定よりも早くお前の内偵が済んで資産は裏で差し押さえ、金は天界への謝罪も込めて恵まれない子達のための養護施設の運営に生かされるってよ。良かったな、大好きなシスターさん達の役に立てたぜ? 尼さん萌え冥利に尽きるってか?」

 

 再び腹を抱えて大笑いするダイスケ。その様子を見て、ディオドラは憎悪と怒りの炎を燃やす。

 

「よくも……よくも僕の自由を……これから禍の団の元で好き勝手に出来ると思っていたのに!?」

 

 その言葉にダイスケは笑いを止めて冷徹な目で答える。

 

「自由っていうのはな、好き勝手とは違うんだよ。他人を侵害せず、社会上の義務を果たしてこそ許されるのが自由だ。他人の苦労も苦しみも知らない、他人を傷つけても平気で思いやりも持たない、そんなお前みたいなボンボンが口にして良い単語じゃねぇんだ」

 

「違うね。僕には好きに生きて良い生まれながらの権利がある。僕が望むなら、誰を足蹴にしても誰を食い物にしても、誰を捌け口にしたっていいんだ! なぜなら僕は……選ばれた者なのだから!!」

 

 そう言うディオドラの周囲に紫電が走る。魔力がもたらす変換現象ではない、純粋な電撃。するとディオドラの両腕に変化が生じる。徐々に鱗のような小さな装甲板がくっついていき、一組のガントレットが形成されていく。

 その質感はまるで蝦蟇。でこぼことした醜悪な表面のガントレットから似合わない電撃があふれ出る。

 

「僕はオーフィスの《蛇》をもらった。お陰でシーグヴァイラも圧倒できた。でも、本当は《蛇》無しでも僕は充分すぎる力がある!! そうさ、僕は怪獣ガバラの獣転人!! 獣具、『悪徳獣の放電腕甲(ガバラ・ディスチャージハンド)』を持つ者だ!!!」

 

 ディオドラの両手から放たれる電撃が神殿の天井や壁を打ち破る。本来なら雷でなければ岩などを破壊する事は出来ないが、この放電は自然界の雷以上の威力があるという事が見て取れた。

 恐らく元の力がオーフィスの《蛇》でさらに強化されているようだ。そして、デイオドラはこの力をずっと隠してきていたのだ。冥界政府の目もくらまし、全ては好き勝手の自分の世界を作るために。その事がイッセーに再び怒りを抱かせる。一刻も早くこんな奴のすぐ側からアーシアを解放させなければならない。そう思って一歩踏み出たが、ダイスケに手で制される。

 

「おい、なにすんだ! こんな奴から早くしてアーシアを――ダイスケ?」

 

 見れば、ダイスケの瞳はイッセー以上の怒りの炎を宿していた。そして、漆黒の鎧を纏う。

 アーシアは確かに今危ない目に逢っている。だが、それ以上にもうミゲラはこの目の前のゲスのせいで自分で再び立ち上がれないところまで堕とされたのだ。

 その事を考えれば、ごく自然の事であった。

 

「悪い、イッセー。出番奪うようで悪いが、俺の奴への怒りはお前以上なんだ。それに奴は獣転人、これは俺の……ゴジラとしての俺の領分なんだ。……後でアーシアと一緒になにか奢る。好きなだけ食っていい。だから……頼むよ」

 

 そのダイスケの目は、イッセーにとって初めて見る懇願が宿る瞳だった。思い返せばダイスケが自分に頼み事を言うなど出会って以来初めての出来事だ。

 

「……駅前のお好み焼き屋、「ふらわ~」の特大ミックス玉トッピング全乗せで手を打ってやる。アーシアだけじゃなく、アザゼル先生も含めたここにいる全員分だ。それと……絶対勝て」

  

 その言葉を聞いたダイスケは、兜の奥でふっと笑ってディオドラを睨んだ。

 

「――当たり前だ」




 はい、というわけでVS46でした。
 イッセーゴメン出番取って。でも今回は明らかにダイスケの方が怒ってるし、同じ獣転人だから。近いうちに、オリジナルキャラじゃないけど獣転人にした原作キャラとサシで戦わせるから。
 ダイスケの主張に思うところがある方もいらっしゃるでしょうが、これがダイスケの答えという事で勘弁してやってください。
 そして次回、衝撃設定の一部が明らかになります。全員、第1種戦闘態勢!
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!
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