ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

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 ゴ、ゴ、ゴジラの大暴走♪
 イッセー暴れりゃダイスケも♪
 ビビってちょうだい、今日もまた♪
 覇龍(ジャガーノート・ドライブ)と一緒に暴れるぞ♪
 ゴジラがとうとうあ・ば・れ・る・ぞ~♪


VS47 ゴジラ対ガバラ~そして現れる二つの災厄~

「相手と力量差も測れない雑魚が!! 消し炭にしてあげるよ!!」

 

 開幕と同時にディオドラの獣具から大規模な放電が発生し、まさに光の速さでダイスケに迫る。だが、自分がいるところに攻撃が来るとわかってさえいればただ避けるだけでいい。その未来予測によってダイスケは横にステップしながら回避し、接近していく。

 

「動物的勘という奴か! 獣人間にはお似合いだよ!!」

 

 ディオドラはそう毒づきながらも再び電撃を放つ。それをダイスケは軌道を完全に勘で予測し、しっかりと距離を取り、あるいはギリギリで避けていく。

 するといらついているディオドラは己の掌に一つずつ《蛇》で威力を底上げした魔力弾を生み出す。大きさは砲丸程度だが、一般的な同じ規模の魔力弾と比較すると十倍にしても足りないほどの差がある。

 その魔力の塊にガバラの電撃が纏わり付く。

 

「これはいわば魔力と電撃の合成爆弾だ。しかも!!」

 

 ディオドラが魔力弾を一つずつダイスケ目がけて投げつける。その軌道は不規則で、蛇のようにのたうった軌道である。

 

「僕の思うままに動くんだよ!!」

 

 その言葉は事実だった。ダイスケが避けようにもその避けた先に先読みする形で魔力弾が回り込んで炸裂した。

 

「――!?」

 

 《蛇》でパワーアップしたというのは事実のようだ。明らかに見た目以上の威力が炸裂し、同時に雷がダイスケの身体を打つ。

 炸裂した魔力と電撃によってダイスケは転倒し、地面に転がる。

 

「ははっ! ビンゴだ!!」

 

 ダイスケに直撃を与えたことに、醜く表情を歪めて歓喜するディオドラ。先程からコケにされている訳だからその高揚感たるやひとしおだろう。

 直撃されたダイスケはというと、一つも動かない。それをディオドラは一撃で死んだかと判断したが、ダイスケはすぐさま立ち上がる。

 

「……へぇ、以外と頑丈なんだ。なら、もっと威力を上げて良いかな」

 

 ディオドラの嗜虐心に火がついたのか、ガバラ由来の電撃を《蛇》でさらに威力の底上げをする。当然そのまま放つのは芸がない。元七十二柱アスタロトの血がなせる大規模魔力に乗せてパワーを乗数的に上げる。

 それに対するダイスケは、鰭斬刀を抜いて迎撃の構えを取る。

 

「教会の暴力装置直伝の技というヤツか。でも、それで僕にかなうと思っているのか!? たかが人の為せる技で!!」

 

 ディオドラが魔力と電撃の合成弾を放った。今度は両手分の二発だけではない。自分の周囲に発生させていた高出力魔力弾にも電撃を纏わせて放っているのだ。

 

「何発だって生み出せる! さぁ、捌ききれるかぁ!?」

 

 ダイスケの周囲に合成弾が滞空し、獲物を狙う蛇のように待ち構える。すると、ディオドラのフィンガースナップを合図に、一斉且つ順番をランダムにしてダイスケに魔力弾が襲いかかる。

 ダイスケはそれぞれの合成弾を脅威ごとに瞬時にランク付けし、避けるものは避け、避けきれないものは鰭斬刀で斬り伏せていく。が、しかし。

 

「コントロールできるって言ったろ、馬鹿が!!」

 

 避けられた合成弾が、あるいは切断された合成弾がディオドラの飲むタイミングで爆ぜ、放電する。この合成弾は避けられるもので破壊できるものでもなかったのだ。ただ放たれればその威力を喰らうしかない、必中の技。

 爆ぜる魔力に、放たれる雷以上の放電。その威力ダイスケは得物である鰭斬刀を取り落とし、倒れる時間さえ与えられずに翻弄されていく。

 

「はははははは!! 僕に刃向かった罰だ! 僕に勝てる奴なんていやしない。あのサイラオーグもそうさ!! いや、いつかはこの力でサーゼクスや兄も越えて僕は最強の悪魔になる!! 怪獣の王ですら僕にひれ伏すんだからな!! あはははは!! ――は?」

 

 その時、ディオドラは見た。ダイスケの両足がしっかりと地面についている。先程まで力なく爆発と放電に晒されて浮き足立っていたのに、今は微動だにしていない。自分の意思がハッキリとしていて、攻撃に耐えていないと出来ない事だ。

 

「……借り物の《蛇》で底上げしておいてよく言うぜ。それで強い気でいるんだからさ」

 

「やせ我慢は良くないぞ、苦しいなら苦しいと、痛いなら痛いとハッキリ言えよ。力の差をしっかり自覚した態度の方がまだ優しく――」

 

 その時、ディオドラは見た。ダイスケが自分の周囲を舞う合成弾の一つを掴み、なにをどうやったかわからないが手の平の中で消し去ってしまったのだ。

 よく見ればダイスケを攻撃する合成弾の色が徐々に抜けていっており、透明になりつつある。こんな風にコントロールした覚えはディオドラにはなかった。

 

「わからねぇか? いや、わかる訳ないよなぁ。まさか自分の自慢の力……攻撃するつもりで喰われているんだから」

 

「な、に……!?」

 

 確かにダイスケは攻撃をダメージとして食らっていた。それは間違いない。だが確かに今は自分の攻撃がダイスケに喰われている。なぜ、一体どうやって? 自分で答えが出さずにいると、ダイスケが答えを提示する。

 

「今、電撃を喰らって思い出した。俺の中のゴジラは電撃が苦手だったんだよ。だけど、自分にとって最強の敵(メカゴジラ)が現れたときにそうも言ってられなくなった。……弱点(電撃)を自分の武器に変える事にしたんだ、ゴジラは」

 

「は、え?」

 

 ディオドラが呆然となるのも無理はない。それは悪魔で言えば、己を消滅させる《光》を自ら吸収して自分の武器にしたというのと同じだ。生物学上の特徴もへったくれもない、自然の秩序に反する暴挙だ。

 

「でも、その暴挙が出来るのがゴジラだ。ルールも束縛も弱点も、みんな纏めて破壊する。それが怪獣王。それが破壊の化身だ!!」

 

 ついにダイスケの周囲にあった全ての合成弾が喰い尽くされる。それを見て、ディオドラは地面にへたり込んだ。仕方がない、自分の最大の攻撃が全く通用しないのだから。

 それを見たダイスケはしっかりと一歩ずつ、そして見せつけるように近づいていく。その威圧感たるや、内に秘める怒りも相まって壮絶の一言。小心者なら一目で気を失うだろう。その点ディオドラは高すぎるプライドで気絶も許されず、ただ恐怖するしかない。

 

「く、来るな! 来るなぁ!!」

 

 もはや統率もへったくれもない乱雑な電撃と魔力弾砲撃。避ける事すら煩わしいとダイスケに思わせる雑な攻撃だった。

 その頑強さにディオドラの抵抗の意思も潰え、ついに命乞いをはじめる。

 

「た、頼む、待ってくれ。ちょっと思い上がっただけじゃないか。アーシアの事だって趣味の話さ。君だってスタイルが良いのが好みとか年上好きとかあるだろう? 好みの女をものにするなら誰だって……そうだ! 僕のコレクションから好きな女をあげるよ! ミゲラなんてどうだい? アレはなかなか具合が良い。処理に使うにはうってつけだ。知らない仲じゃないみたいだからきっとアレも喜んで――」

 

「――黙れ、生ゴミ」

 

 ダイスケはディオドラの胸ぐらを掴んで言い放つ。

 

「その趣味でどれだけのヒトを不幸にした? どれだけ死なせた? それも貴族の当然の権利とお前は言うのか?」

 

 もはや首を縦にも横にも振る余裕はない。ただ震えてダイスケの言葉を聞くしかなかった。

 

「お前のせいでアーシアも、ミゲラさんも人生を狂わされた。アーシアはまだいい出会いがあったからよかったが、ミゲラさんも他のお前の眷属も、みんな苦しみ続けたんだ……! その報い、払わなければこの手で消してやる……!」

 

「な、なにを――」

 

 ダイスケはディオドラの胸ぐらを掴んだまま片手で持ち上げる。そして、空いた手の装甲を解除し、素の掌を見せた。

 

「さっきゴジラの過去を見たとき、ついでにお前のガバラの事も見たぜ。どういう風だったか、しっかりと見せてやる――」

 

 そう言ってダイスケはディオドラの額を鷲掴みにした。その瞬間、旧世界に生きた魂同志の記憶共有、『接触間記憶共有』がおきた。ミコトと出会ったときや、新堂と触れあった時と同じ現象だ。

 流れ込んできたガバラの記憶、それはゲスで情けないいじめっ子としての記憶だった。怪獣達が住む怪獣島でゴジラに勝てないからとその同族にして子供のミニラをいじめ回していた。ディオドラですら情けないと思うその生き方は、振り返れば自分と同じだ。

 自分の自己満足のためにシスターを騙し、玩んできた。だが、玩んでいた者に予想外の反撃(この場合は想定していなかったミゲラの言動)で大痛手を負い、そして、触れるべきではない相手(ゴジラ)に罰を与えられる。

 

「ま、まさか――」

 

「見たな? なら覚悟は良いよな?」

 

「ま、待ってくれ! 痛いのは、痛いのはいやだ! あんなのを喰らったらどうにかなってしまう! 頼む、止めて――」

 

「ああ、そうだ。お前さっき、「スタイルが良いのが好みとか年上好きとかあるだろう」って言ったよな? ――俺な、お前の事をアザゼル先生に相談したせいで……年上の女がトラウマになったんだよ、クソが!!!!」

 

 豪快に背負われ、放り投げられるディオドラの身体。それは背負い投げというより「背負い放り投げ」といえる技だった。

 宙を舞うディオドラは空を飛ぶ暇さえ与えられずに神殿の壁に激突した。壁は崩れ去り、天井の一部が崩壊する。その瓦礫でディオドラ強かに身体と頭を打ち付けたが、幸か不幸か獣転人としてのタフネスのお陰で大いに鼻血を流しても死ぬことはなかったようだ。

 ディオドラを放り投げ、興奮の息で肩を揺らすダイスケに、イッセーは恐る恐る尋ねる。

 

「だ、ダイスケ。お前アザゼル先生になにされたの?」

 

「……訊くな。思い出すだけで恐ろしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディオドラが強かに痛めつけられたのを見て、イッセーの溜飲はいくらか下がった。だが、やらなければならない事がある。イッセーは瓦礫の仲からディオドラを引っ張り出すと頬を叩いて気付けさせ、胸ぐらをつかみ言い放つ。

 

「俺んちのアーシアを泣かせるんじゃね……! そして二度と俺たちの前に姿を見せるな! そのときは本当の本気でお前を消す!」

 

 歯をガチガチと鳴らし、ディオドラは恐怖する。しかし、それで納得できない者がいた。ゼノヴィアだ。彼女はアスカロンをディオドラの首に突きつける。

 

「止めは刺さないのか? こいつはまたアーシアに近づくかもしれない。今この場で首をはねたほうが今後のための得策ではないのか」

 

 その言葉の裏にあるのは彼女の本気だ。もとよりエクソシストであるため悪魔を斬ることには慣れている。そして、イッセーかリアスの承諾さえあればいつでも斬るだろう。

 だが、イッセーは首を横に振った。

 

「いや、こいつの処罰は魔王様たちに預けよう。これでも一応現魔王の血筋だ。勝手に殺したらきっと部長やサーゼクス様、それにジオティクスさまにも迷惑がかかるかもしれない。ここのところでお終いにしておこう」

 

「そうね……イッセーの言うとおりだわ。ゼノヴィア、こんな奴の血で聖剣を汚す必要はないわよ」 

 

 イッセーとリアスの意見を聞き、ゼノヴィアはもったいなさそうに剣を引く。

 

「……イッセーと部長が言うならそうしよう。――だが」

 

「ああ」

 

 イッセーとゼノヴィアはアイコンタクトし、ともにそれぞれ剣と拳をディオドラの眼前で止め、怒気を込めて言い放った。

 

「「二度とアーシアに近づくなっ!!」」

 

 その二人の怒気に当てられ、ディオドラは恐怖で瞳を濡らして何度も頷いた。ディオドラはそこで放置され、一同はアーシアの元へ駆け寄る。

 

「イッセーさん!」

 

「もう大丈夫だぞ、アーシア。約束したからな、必ず守るって」

 

 そう言ってイッセーはアーシアの頭を撫でてやる。それで安堵したのか、うれし泣きで涙を流した。

 

「さてと、こいつをぶっ壊すか」

 

 ダイスケがそう言ってアーシアの手枷を握りつぶそうとする。しかし――

 

「あれ……びくともしねぇぞ」

 

 ダイスケが本気で焦る。

 

「ウソだろ、ちょっと俺の力で『Boost!』――おい、まさか」

 

「よし、一緒に枷を引っ張るぞ!」

 

「わかった、「せーの!!」――おい、冗談だろ!?」

 

 イッセーとダイスケの二人掛りでも枷が外れない。それを見た木場が聖魔剣で切り付けるが――

 

「だめだ、刃が立たない!」

 

「……無駄だよ。それは滅びの力でも破壊することはできない」

 

 その時、ディオドラが言葉少なげに、力なくそう呟いた。

 

「その装置は機能の関係で使い捨てだが、逆に一度使わないと停止できないようになっている――アーシアの能力が発動しない限り停止しない」

 

「どういうことだ!?」

 

 イッセーがディオドラの胸ぐらをつかむ。すると、ディオドラは感情もなく淡々と答えた。

 

「その装置は神滅具(ロンギヌス)、『絶霧(ディメンション・ロスト)』所有者が作り出した固有結界。このフィールドを強固に包む結界もそう。絶霧(ディメンション・ロスト)は結界系の神器の最強。その霧の中に入ったすべてを封じることも、異次元に送ることも可能。それが禁手(バランス・ブレイカー)に至った時、所有者の望む結界装置を霧の中から創り出す能力に変化した。『霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)』、作り出した結界は一度望む形で発動しない限り止められない」

 

 それを訊いた木場はディオドラを問いただす。

 

「発動の条件と結界の能力、それと効果範囲は? 言え!」

 

「……じょ、条件は僕かほかの関係者の合図、もしくは僕が倒されたら。能力は――枷につないだもの、この場合はアーシアの能力を増幅させて反転(リバース)させる」

 

「おい、反転ってたしかシトリーが――!」

 

 実際に見たことはなかったが、後にアザゼルから説明を受けてダイスケも知っていた。 

 反転(リバース)、それはシトリー眷属がグレモリーとの一戦で見せた「発動された能力を逆の特性に変える」技術。例えば聖剣の聖のオーラは魔のオーラに変換され、悪魔にとって有害な『光』は無害な闇に変換される。

 この場合はアーシアの絶大な悪魔や堕天使すらも癒す聖女の微笑み(トワイライト・ヒーリング)の力。これを反転させれば――

 

「そして効果範囲は……このフィールド全体と観覧席。発動後はプログラムによって赤イ竹から提供された『烈一号型核弾頭』一発を起爆させる。ハワイのマウイ島くらいなら地図から消すほどの威力だ。マハーバーラタの『インドラの火』クラスの威力には、主神クラスだって無傷とはいかないからね」

 

 アーシアの癒しの力は冥界でのトレーニングの際に強化された。それがさらに装置によって増幅された上に反転されれば一体どれだけの被害を及ぼすか想像に難くなかった。

 底へさらに赤イ竹の『烈一号型核弾頭』。ディオドラの話が本当ならとんでもない威力だ。

 

「……各勢力のトップたちが根こそぎやられるかもしれない」

 

 その可能性に発言した木場のみならず全員の表情が青ざめる。

 

「おい、ドライグ! なんとかならないのか!? お前だって神滅具だろ!」

 

『いや、絶霧は赤龍帝の籠手よりも高ランクの神滅具だ。しかも相手が禁手に至っているのなら突破は無謀に等しい。覚えておいてくれ、俺よりも強力な神滅具も存在するのだ』

 

「……くそ、どうにもならないのかよ!?」

 

 胸倉をつかんでいたディオドラを放り投げると、イッセーは悔しげに床を叩く。

 

「諦めるな! 必ずなんか方法はあるはずだ!」

 

 そう言ってダイスケは枷を何度も鰭斬刀で切り付ける。何とか傷はつけてるものの、この様子ではいつまでかかるか分かったものではない。

 その様子を見たアーシアはイッセーに懇願する。

 

「イッセーさん、いっそ私ごと――」

 

「なにバカなこと言ってんだ! 次そんなこと言ったら怒るからなっ! アーシアでも怒るぞ!」

 

「で、でも、このままでは先生もミカエル様も……そんなことになるくらいなら私は――」

 

「それでもダメだ! 俺は、俺は二度とアーシアに悲しい思いをさせないって決めたんだ! 絶対に守ってみせる! だから、一緒に帰ろう! 父さんと母さんが運動会で頑張るアーシアを撮るんだって張り切ってんだからさ!!」

 

 涙ながらにイッセーはアーシアを説得するも、静かに装置は起動を始める。そんな中、イッセーの脳裏にあることがよぎる。

 この装置はアーシアを磔にしたものだ。枷によってアーシアの体は密着している。ならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?

 

「……ドライグ、お前を信じるぞ」

 

『何をするつもりだ、相棒?』

 

「そんでもってアーシア、先に誤っておく」

 

「え?」

 

 そしてイッセーは心の中でアーシアに謝った。

 

――ゴメンね!

 

「高まれ、俺の性欲! 俺の煩悩! ――洋服崩壊(ドレスブレイク)禁手(バランス・ブレイカー)ブーストバージョン!!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

 そして響くパキン、という枷が割れる音とビリィッと言う布が裂ける音。装置が破壊されると同時にアーシアの服も粉みじんになって吹き飛んだのだ。

 

「きゃ!」

 

 かわいらしく悲鳴を上げ、前を隠すアーシア。その姿を見て鼻血を流すイッセー。さっきまでの約束云々言ってたお前はどこに行った。

 

「あらあら大変」

 

 朱乃がすぐに魔力で新しいシスター服を生成して着せてやる。もちろんアーシアの尊厳のためダイスケを木場は目を隠している。

 

「それにしてもよくあの技で装置も破壊できると思ったわね」

 

 リアスが呆れながらもイッセーに言う。

 

「いえ、アーシアの衣服に密着してたから衣服の一部としてみなせないかなーって思っただけだったんで。多分、いつものじゃ無理でした。神器でブーストしたからできたんだと思います。それでグレーゾーンなあたりを無理やり突破したかな、って感じです」

 

「それでこの結果を出したんだから大したものよ。――お疲れ様」 

 

 そう言い手リアスはイッセーの頭を鎧越しに撫でた。

 

「イッセーさん!」

 

「アーシア!」

 

 すべてが終わったことを実感したアーシアがイッセーに抱き着く。

 

「ゴメンな。辛いこと、聞いてしまったんだろう?」

 

 ディオドラが話してしまったことについて謝ると、アーシアは首を横に振り、笑顔で言った。

 

「平気です。あのときはショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」

 

 その言葉に、イッセーは涙を流した。そして、より一層アーシアを守ろうという誓いを強くする。 

 今度はゼノヴィアがアーシア抱きついた。

 

「アーシア! 良かった! 私はおまえがいなくなってしまったら……」

 

「どこにも行きません。イッセーさんとゼノヴィアさんが私のことを守ってくれますから」

 

「うん! 私はおまえを守る! 絶対だ!」

 

 親友同士抱き合う二人。

 

「部長さん、ありがとうございました。私のために……」

 

 今度はリアスがアーシアを抱き、やさしげな笑顔で言う。

 

「アーシア。そろそろ私のことを家で部長と呼ぶのは止めてもいいのよ? 私を姉と思ってくれていいのだから」

 

「――はい! リアスお姉さま!」

 

 何はともあれ、これで一件落着である。 

 が、突如光の柱がアーシアを包む。その光が消えた跡には――

 

「アーシア?」

 

 ――アーシアの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

「神滅具で創りしもの、神滅具によって散る、か。霧使いめ、手を抜いたな。計画の再構築が必要だ」

 

 いつの間にか、知らない男が宙に浮いていた。どこまでも冷たい、氷のような目をした男だった。

 

「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。先ほどの偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの《蛇》を使い、計画を敵に予見させた。貴公はあまりに愚行が過ぎる」

 

 アザゼルが言っていた今回の事件の首謀者の名前の一つであった。その男に、ディオドラは縋るように懇願する。

 

「シャルバ、助けておくれ! 君と一緒なら、怪獣王を殺せる! 旧魔王と現魔王が力を合わせれば――」

 

 しかし、シャルバの手から放射された赤い筋がディオドラを貫く。ディオドラは床に突っ伏して目を見開き、そのまま呼吸を止めて倒れ臥した。

 

「哀れな。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、結局モノにもできずじまい。それではたかが知れているというもの」

 

 天使か堕天使の能力に近しいものだろうか、しかし、その誰もが光には見覚えがあった。アーシアを消した光と同質のものだ。

 そのことに気付いた者たちは怒りにわなわなと体を打ち震わす。

 

「さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼすため」

 

「グラシャラボラス、アスタロト、そして私たちグレモリーを殺すというのね」

 

「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私たち真の血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのが耐えられないのだよ」

 

 そしてシャルバは嘆息して呟く。

 

「今回の作戦は失敗に終わった。まさか神滅具のなかでも中堅の赤龍帝の籠手が上位の絶霧に打ち勝つとはな。こればかりは想定外としかいえない。まあ、今回の件はいい勉強になった。クルゼレイがサーゼクスに挑んで死んだがこれも問題ない。私がいさえすればヴァーリが働かなくとも我々は十分に動ける。真のベルゼブブは偉大なのだから。さて、去り際のついでだ。サーゼクスの妹よ、死んでいただく」

 

「現魔王に直接決闘を申し込まずにその血縁から断とうだなんて何たる卑劣!」

 

「それでいい、まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味はないからな」

 

「――外道っ! 何よりもアーシアを殺した罪! 絶対に許さないッ!」

 

 リアスはついに激昂し、深紅のオーラを全身から波止場知らせる。朱乃も怒りに顔をゆがめ、両手に雷光を纏う。

 

「こういうクソは――この場で何としても消さねぇと……!」

 

 ダイスケもその怒りで力が増したのか、装甲の隙間から青白く淡い光が漏れている。

 

「流石に数が多いな。だが手はある。いい加減い起きろ、ディオドラ。――いや、ガバラよ」

 

 すると、死んだと思われたディオドラが突然操り人形が立つように起き上がる。そして獣のようなうなりをあげ、徐々にその肉体が変化していく。

 

うぅぅぅぅぅぅぅぅ……ブォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオ!!!!

 

 ディオドラの肉体はもはや元の形を保っていない。大きさは10mほど、皮膚は両生類と同じ質感で頭頂に三本の角を持つ直立歩行の怪物となった。

 その姿はまさに、ダイスケの中のゴジラの記憶にあるガバラの姿そのもの。

 

「シャルバ・ベルゼブブ! お前、一体何をしたぁ! アレはガバラの原身だぞ!!」

 

「ほう、さすがは獣転人。記憶があるか。なら教えてやろう。私が先程ディオドラに打ち込んだのは我が血液を元にした神器ドーピングアイテムのプロトタイプだ。魔王の血を神が造りしものに与えることでお急激な反応を起こす。どうやら獣具の場合はその肉体が元の姿に戻るらしい」

 

「なんてことを……!」

 

 巨大なガバラが腕を一振りするたびに神殿が破壊される。まともに食らえばただでは済まないだろう。さらにガバラは両手から放電して瓦礫すら粉砕している。明らかにディオドラであったときよりも脅威だ。

 

「アーシア? アーシア?」

 

 しかし、ただ一人イッセーは虚ろな目で消滅したアーシアを呼んでいた。

 

「アーシア? どこに行ったんだよ? ほら、帰るぞ? 家に帰るんだ。父さんも母さんも待ってる。そんなふうに隠れていたら、帰れるものも帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ」

 

 あたりを探すように、ふらふらとイッセは周囲をうろつく。

 

「アーシア、帰ろう。もう、誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって、俺がぶん殴るさ!ほら、帰ろう。アーシア、体育祭で一緒に二人三脚するんだから……」

 

 もう、誰もまともに直視できなかった。その光景を見て、一番繊細と言っていいギャスパーと小猫が嗚咽を漏らす。

 朱乃も怒りに顔をゆがませながらも、その頬につう、と涙が走る。放っておけなくなったリアスはイッセーをひしと抱きしめた。

 

「部長、アーシアがいないんです。やっと救いだしたのに。アーシアだけでも、神殿の地下に逃がさなきゃ。でも、アーシアがいないと……。……と、父さんと母さんがアーシアを娘だって。アーシアも俺の父さんと母さんを本当の親のようにって……。俺の、俺たちの大切な家族なんですよ……」

 

「……斬るっ! 斬り殺してやるッ! こいつだけは絶対に許せないッ!!」

 

 叫びながらゼノヴィアがシャルバに斬りかかる。

 

「無駄だ」

 

 しかし、シャルバはアスカロンとデュランダルの一撃を障壁で難なく弾き、ゼノヴィアの腹部に魔力の塊を打ち込む。その威力で地に落ち、めり込むゼノヴィア。二振りの聖剣も手から離れ、地面に突き刺さる。

 

「……アーシアを返せ。――私の、友達なんだ……! ……誰よりも優しい、優しい友達なんだ! どうして……、どうして……!」

 

 頭から血を流しながらも、ゼノヴィアはそれでも聖剣を手にしようと地面を這いずる。

 

「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン。全く持ってグレモリーの姫君は趣味が悪い。おい、そこの赤い汚物。あの娘は次元のかなたに消えた。すでに次元の狭間の無に当てられてその身も消滅しておろうて――お前にもわかりやすく言ってやると死んだ、ということだ」

 

 その時、うつろなイッセーの視線がシャルバを捉える。そしてそのままじっと見つめる。その姿はどう見ても異様だった。

 

『リアス・グレモリー、全員を連れていますぐこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去したほうがいい』

 

 突然、ドライグが声を出した。

 その言葉の意味を理解するよりも先に、崩れ落ちていたイッセーが立ち上がる。

 

『そこの悪魔よ。シャルバといったか?』

 

 リアスすらも振り払い、イッセーはシャルバに向かって歩き続ける。その足取りはさながら生き返った死人のようであった。

 

『おまえは――』

 

 嫌悪感を覚えるほど無機質で無味無臭なドライグの声がイッセーの口からこぼれる。

 

『――選択を間違えた』

 

 その刹那、神殿そのものが大きく揺れるほどの莫大な赤いオーラがイッセーからあふれ出てくる。その赤はいつもの鮮やかな赤ではなく、まるで血のような赤。

 誰もが、それを肌で感じてそれを理解する。

 

――これは、危険だ。

 

 そしてイッセーの口から呪詛のごとき呪文が発せられる。しかし、その声はイッセーのものだけではない。老若男女、あらゆる人物の替えが入り混じった不気味なものだった。

 

『我、目覚めるは――』

 

〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉

 

『覇の理を神より奪いし二天龍なり――』

 

〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉

 

『無限を嗤い、夢幻を憂う――』

 

〈世界が求めるのは――〉〈世界が否定するのは――〉

 

『我、赤き龍の覇王と成りて――』

 

〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉

 

 

《何度でもおまえたちは滅びを選択するのだなっ!》

 

 

 イッセーの鎧が変質していく――それはまるで生物、もっと言えば小型の赤いドラゴン。

 そして全身に配された宝玉から多くの人々の絶叫に近い叫びが発せられる。

 

「「「「「「――汝を紅蓮の煉獄に沈めよう――」」」」」」

 

『Juggernaut Drive!!!!!!!!!!!!』

 

 赤いオーラが迸ったことによってイッセーの周囲がはじけ飛ぶ。何もかもがオーラに触れただけで。破壊されていく。

 

「ぐぎゅああああああああああああああああああああああああっ! ア゛ーシア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ!」

 

 獣にも似た叫びを残し、ドラゴンの姿は一瞬で掻き消える。その次の瞬間、すでにドラゴンはシャルバに組み付き、その肩に食らいついていた。

 

「ぬぅぅぅうううう!!」

 

 速度をつかさどる騎士の木場でも捉えきれなかったほどのスピードである。見れば兜のクラッシャーが文字通りの咢に変貌しており、ぶちぶちという音を立てて肩の肉を噛み千切っている。

 

「おのれっ!」

 

 シャルバは右手をかざして光を放とうとするが、その腕はすくさまドラゴンの宝玉から生えてきた龍の腕とそれから生えた刃で右手ごと切断される。

 

「ぬおっ!」

 

 シャルバの苦悶の声とともに、鮮血が辺りに散らされる。

 

「げぎゅごかゅぁ、ぎゅぎゃぎゃぁっ、ぐヴぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 各部に配された宝玉からいくつもドラゴンの手足や刃が生え、その姿も、発する声もすでに元のイッセーを思わせるものはない。もはや単なる怪物である。

 

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!!」

 

 シャルバは残った左腕をかざすと特大の光を放つ。しかし、今度はドラゴンの翼が白く発光する。シャルバの光が届くと思われた瞬間――

 

『DividDividDividDividDividDividDividDividDividDivid!!』

 

 音声が鳴ると同時に徐々に光の波動が半分づつになっていく。これは紛れもなく白龍王の力だ。

 

「これは……ヴァーリの! おのれ、どこまでもお前は私の前に立ちふさがるのかヴァーリィィィィィ!!!」

 

 かつてはまともに使えもしなかった力をこうもたやすく使いこなすそのスペックと異常性にリアスたちはただおののくしかない。

 

「このぉお……ガバラっそいつを抑えろ!!」

 

 ガバラの太い腕が赤いドラゴンを抑えようと伸びる。だが、その腕はダイスケの跳び蹴りで弾かれた。

 

「ちっ、かまわん! それ(ダイスケ)を動けなくしておけ、ガバラ!!」

 

 シャルバの指示に、ガバラはターゲットをダイスケに変更する。振り下ろされる巨大な拳はこれまで相対してきた拳のどれよりも強力だった。そのたった一撃でダイスケは地面にめり込まれ、意識が刈り取られる。そしてまるで先程の報復といわんばかりにガバラは電撃を纏った拳で何度も何度もダイスケを殴り続ける。

 その隙を見計らって、シャルバは残る足で転移用魔方陣を描き逃走しようとするが、その動きは途中で止められる。

 

「と、停めたのか、私の足を!?」

 

 見れば鎧の瞳が赤く光っている。ギャスパーの能力までも使ったのだ。

 

「馬鹿な、一体どこまでのスペックだというのだ!? これではデータ以上ではないか!! ありえん、たかが神器にこの真なるベルゼブブが敗北することなど――」

 

 突如ドラゴンの胸の装甲が開く。そして、呪詛のようにドラゴンは己の力をどこまでも高めていく。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

『Longinus Smasher!!!!!』

 

 放たれる真っ赤な閃光。その威力は以前の比ではなく、あっという間にシャルバを包む閃光となる。

 

「バ、バカな……ッ! 真なる魔王の血筋である私が! ヴァーリに一泡も噴かせていないのだぞ!? ベルゼブブはルシファーよりも偉大なのだ! おのれ! 赤い龍め! 白い龍めぇぇぇぇ!!!」

 

 赤い光の中に、シャルバは消えた。ならば次のターゲットは決まっている。今もしつこくダイスケを殴り続けているガバラだ。

 ガバラの方も自分を狙う力ある存在に気付いたのか、殴る手を止めて興味を赤いドラゴンに移していつでも襲いかかる準備をする。

 

「だ、ダイスケ君!」

 

「ダイスケ、しっかり!」 

 

 倒れ臥して動かないダイスケを回収するために木場とリアスが駆けつけようとする。なにせ今最大の脅威同士がお互いに注意しあっている今しか救出のチャンスはない。

 しかし、2人は動けなかった。赤いドラゴンも、ガバラもなにかを感じて凍り付く。

 それは、どこからともなく感じる冷たい感覚。先程聞こえてきた赤いドラゴンの中の呪詛以上に暗く冷たい恨みの感情。そして、言い知れぬ恐怖がこの場にいる全員に伝播した。

 その中心は、ダイスケである。いや、ここにいるのは本当にダイスケなのか? あまりにも濃い邪気が、それを放つ者がダイスケであってダイスケでない事を教えている。そして、どこまでも暗く深い深淵から聞こえる声が聞こえてきた。

 

――ついに来た

 

――この好機、決して逃すものか

 

――我が恨み晴らせねば、口惜しゅうて口惜しゅうて堪らぬわ……

 

 その深淵の呪詛と共に、ダイスケが立ち上がる。

 

――たとえ世界が変わろうとも

 

――たとえ違う歴史を歩もうとも

 

――我が恨みは晴らされるときまで決して消えん

 

――よくも忘れたな

 

――よくも我()を忘れたな

 

――亡国のために戦った我らを

 

――ただ故郷を愛していた我らを

 

――記憶の彼方に消し去って享楽を享受してきたな

 

――礎になった我らの死を

 

――よくも馬鹿にしてくれたな!!!!!!!!!!

 

 それは、たった一人の声。なのに先程のイッセーの中から響いた怨嗟とは比較にならない悍ましさと無念を感じる。

 そして、閉じていたダイスケの鎧の瞳が開かれる。それは、どこまでも深い白の瞳だった。

 

「……世界を越えて積もり積もった我が情念……恨み晴らさで於くべきかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 その王の姿は、まさに怨念の化身であった。

 




 はい、というわけでVS47でした。
 ダイスケとイッセーのタッグではなくゴジラ対ガバラにした理由は一重にディオドラの戦い方が原因です。遠距離から持続するダメージを延々と浴びせられて平気なのは余程の耐久と自己治癒能力がないと相手できないと踏みました。イッセーには耐久はありますが、自己治癒はないので厳しいのです。
 そして現れたのは……みんな、シンが来ると思った? 残念、白目でした!! どっちにしろ危険というか、恨み持ってる分こっちの方が危険ですけど。 
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!
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