ハイスクールD×G 《シン》   作:オンタイセウ

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 今回も基本ラインは変わりませんが、大きく変更したところがございます。
 オリジナル展開で下手こいて原作キャラにヘイトを向けさせたくないですから。
 それはそれとして、最近間違いメールで知り合った女性とメル友になりました。
 詐欺だとしても楽しいからいいや。


VS04 交渉は相手の弱みを突くよりも相手の欲しいものをちらつかせるのが効果的

 【悲報】イッセーまた死にかける【祝二度目】から時間がいくらか過ぎて、今はその日の放課後。イッセーはダイスケと共に旧校舎はオカルト研究部の部室に来ていた。

 ダイスケとしては二度目なので驚くことはないが、イッセーは場の雰囲気に圧倒されてずっとそわそわしていた。

 ちなみにイッセーは今朝、起きたらリアスと裸で抱き合っていたというのでずっと鼻の下を伸ばしっぱなしであるが、さすがに今はそれもナリを潜めている。

 

「落ち着けイッセー。この部屋の雰囲気に飲まれてたら、本題についていけねぇぞ」

 

「いや、それはわかるんだけど……木場のみならず、あの姫島先輩や小猫ちゃんまでいるってどういうことだよ……」

 

 普段接点のない学園の有名人を前にしてイッセーは戸惑うしかなかった。

 

「あらあら、学園一のやんちゃ君が場の雰囲気に萎縮してはいけませんよ?」

 

 イッセーの前に茶菓子を出しながら朱乃が笑う。その蠱惑的な笑と言葉に、思わず息と唾を飲むイッセー。

 反対のチェアに座る小猫はその様子を冷たい目で見ながら羊羹をかじる。

 

「……やらしい」

 

「それがコイツの原点にして生きる意味なんだよ」

 

 フォローになっているのかいないのか。だが、あながち間違いではないので真っ向から否定できないのがイッセーの辛いところだ。

 すると、白いカーテンの向こう側からシャワーの音が聞こえてくる。部室にシャワー?と訝しむとイッセーはあることに気づいた。カーテンに映った人影である。

 

(ま、間違いない!あのボディーラインは!!)

 

「部長、お召し物です。」

 

「ありがとう、朱乃。」

 

 間違いない、シャワーをしているのは……

 

「あのカーテンの向こうでリアス先輩がシャワーをしているというのか!!!」

 

 驚きと歓喜の声を上げるイッセー。

 今朝見た彼女の裸体をフィードバックし、カーテンの向こう側の景色を妄想する。

 そして聞こえてくる布が擦れる音に思いっきり鼻の下を伸ばす。

 

「お前、スゲェな。音だけで興奮できるんだ」

 

「あたぼうよ!どんなに些細な情報だろうと、この俺の脳細胞が全力で妄想するのだ!」

 

「……酷すぎる」

 

 小猫にはもう本当に返す言葉もない。

 自分の人生を左右するかもしれない時だというのに、ここまで自分を貫き通せるところはある意味で美点だといっていい。そこへ身支度を整えたリアスが現れる。

 

「ごめんなさいね。イッセーの家に泊まったから、昨日からシャワーできてなかったのよ」

 

「いえいえ!こちらはこちらで色々と堪能させていただきました!!」

 

 普通だったら顔をしかめる等の若干引いた反応をするのが、一般的な世の女性の反応だろう。実際、小猫のイッセーを見る眼差しは宛ら養豚場の豚を見る目だ。

 だがそれとは反対に、リアスの眼差しははしゃぐ我が子を見る母親のような目だった。そのリアスが早速本題を切り出した。

 

「さて、ダイスケは改めてだけど……兵藤一誠君、宝田大助君。ようこそ、オカルト研究部へ。私たちはあなたたちを歓迎するわ」

 

 

 

 

 

 

 

「実は、このオカルト研究部は仮の姿、隠れ蓑なの。まぁ、私の趣味みたいなものね」

 

「じゃあ、本当の姿ってなんなんですか?」

 

 イッセーの疑問は正しい。仮の姿があるものには必ず本当の姿があるからだ。

 

「単刀直入に言うと、私たちは“悪魔”よ。そして昨日の黒い翼の男は“堕天使”」

 

 え、とイッセーの息が詰まる。それもそうだ。“悪魔”も“堕天使”も空想の存在。

 それをさも「当然に実在するモノ」として語るとは頭がいかれているか、所謂厨二病のどちらかだ。

 だが、もうすでにソレが現実であることをイッセーは承知していた。既に常識では説明のつかない現象をいくつも体験している身としては、自身の浅学な知識ではありのままに受け入れざるを得ないのである。

 

「はい。まだ現実味がないけど……理解できます」

 

「理解が早くて助かるわ。堕天使は神に仕える身でありながら、邪な心を抱いてしまった為に堕ちたモノたち。彼らと私たち悪魔は冥界、即ち地獄の覇権を巡って争っているの。そこに神に仕える天使達も加わって、三竦みの状態にあるわけ。あ、もちろん、日本神話等のほかの神話大系も存在するわ」

 

「で、でもいくらなんでも突拍子がないというか……。」

 

 それでも、とイッセーは食い下がる。まだ自分の心の中のどこかが、自体を受け入れられずにいるのだ。

 

「あら、あなたは昨日の男以外の堕天使にも遭ってるのよ」

 

 リアスはそう言うが、イッセーには心当たりがなかった。

 

「だ、誰にですか?」

 

「天野夕麻。忘れたわけじゃあないでしょう?デートまでしたんだから」

 

 イッセーは震える。

 天野夕麻。

 それはかつてイッセーの彼女であった“はず”の少女の名。

 数日前の帰宅時、効果橋を渡っていた時に突然告白されたのが出会いだった。最初は驚いたが、イッセーはすぐにその告白を受け入れて晴れて念願の彼女を手に入れることができた。

 しかし、その翌日に松田と元浜に彼女を紹介したはずだったのに次の日には彼らは天野夕麻のことを忘れていた。ダイスケも、である。交換したはずのアドレスも、携帯で撮った彼女の写真も跡形もなく消えていた。

 つまり、彼女のことを覚えているのはイッセーだけのはずなのである。それをなぜこれまで関係のなかったリアス・グレモリーが知っているのか。だが、その疑問の前にある思いがイッセーの口から溢れ出す。

 

「あ、あの、そのことをどこで聞いたかは知りませんけど……。確かに彼女についてはおかしな事がありましたけど、オカルト云々で話されるのは困るっていうか、正直ムカつきます……」

 

 不可解な出来事とはいえ、自分の初めての彼女についての説明がよりにもよって如何わしいオカルトで片付けられたのである。このようなことをされれば誰であれ不愉快に思うのは無理はない。

 しかし、憤るイッセーをよそにリアスはその懐から一枚の紙片を取り出す。それは写真であった。写っているのは紛れもない、天野夕麻その人だ。

 

「あ、ああ……!」

 

 あまりの衝撃にイッセーは思わず仰け反り、尻餅をついてしまう。

 そして、思い出した。自分が彼女に一度殺されているという忘却の彼方に押しやった事実を。

 

「その様子だと、彼女に一度殺されているのを忘れていたようね。ショックで記憶の隅に無意識で押しやっていたのかしら」

 

「……なんで? みんな忘れてたのに。ダイスケだって……」

 

「それは彼女が事実を隠蔽するための力を使ったからよ。今朝、私があなたのご両親にしたようにね」

 

 その言葉でイッセーは今朝起きたことを思い出す。

 今朝、イッセーはリアスと裸で抱き合って寝ていた。リアス曰く、体の傷を癒す為に魔力を送っていたとのことだったが、その時の一部始終を母親に見られた。

 思春期における決定的シーンをすっ飛ばして、ストロベリーブロンドの外人美少女と不肖の息子のベットインを目撃したイッセーの母の混乱ぶりは凄まじかった。

 そのことをリアスは「ただ添い寝をしていただけで、しかも最近の添い寝は裸で抱き合うのは当たり前」というとてつもない説明をイッセーの両親にしたのである。

 イッセーは、これで両親が納得するとは思えなかった。が、あっさりと二人は納得してしまったのだった。

 

「じゃあ、あの時俺の両親が納得したのって、その力を使って……。そして夕麻ちゃんも同じように」

 

「あと、これは言っておいた方がいいわね。ダイスケはね、彼女から貴方を守るために一度交戦しているわ。偶然の遭遇だったけれども」

 

「は!? え!? で、でも、ダイスケは夕麻ちゃんのこと忘れてて……嘘だったのか!?」

 

「すまん、混乱させてはいけないってリアスさんに言われててな。元浜と松田のこともあるし、お前を余計に混乱させたくなかった」

 

「あっ、そうか……そういうことか。確かにお前だけ知ってるって言っても、あいつらの記憶が消えてたんじゃ、覚えてるって言えないもんな……」

 

 少しづつ冷静さを取り戻したイッセーは納得した。だが、一つわからないことがある。

 

「でも、なんで夕麻ちゃんは俺を? 殺されるような恨みを買った覚えなんて……」

 

「彼女の目的はイッセーの中に睡るモノ。それがどういうものなのかを調査するためよ。そして調査の結果、危険と判断されイッセーは……殺された」

 

――死んでくれない?

 

 死の寸前、彼女が自分に向けてはなった一言がイッセーの中でリフレインする。

 

「……じゃあなんで俺、今ここにこうして生きているんです?」

 

「それはこれ、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』のお陰よ」

 

戦車(ルーク)、ですか」

 

 ダイスケの言うとおり、リアスの手には赤いチェスの駒が握られている。

 

「ええ。この駒はね、悪魔が眷属にしたい相手に使うモノなの。そして眷属になった物は悪魔として生まれ変わり……つまり“転生悪魔”となる。そしてそれは死んでしまったものも同様。ここにいる私以外のオカルト研究部のメンバーも皆、転生悪魔よ。」

 

 この部屋にいるほぼ全員が人間でないと言われたら普通は誰も法螺だと思うだろう。だが、ここまでオカルトの世界に脚を踏み込んでしまえばもう疑問を持つ余地はなく、イッセーはそれをあっさりと信じた。

 

「でも俺、いつの間に眷属になんて……。ってうか、リアス先輩ってあの場にいたんですか?」

 

「いいえ、あの場にはいなかったわ。でも、あなたはこの紙を持っていたでしょう?」

 

 そう言って、リアスは机上に山積みにされた一枚の紙を見せる。その紙には魔法陣が描かれていた。

 

「あ、それは駅前で綺麗なお姉さんが配っていた……。」

 

「それは私の使い魔よ。そしてこの紙は、悪魔に願いごとを叶えてもらうための召喚用の魔法陣。で、死の間際にあなたは私を呼び出し、私はあなたを下僕にしたってわけ。忘れているかもしれないけれど、貴方の了解は取ってるからね?」

 

「……イッセーは偶然に偶然が重なって助かったってことですか。いや、運いいなお前」

 

「いや、ダイスケよ。殺されてる時点で運は良くないだろ……」

 

 なんとも奇跡的な巡り合わせ。不運であろうとなかろうと、友人の巡り合わせの良さにはダイスケも感心せずにはいられなかった。

 

「でもイッセーに特別な力がなければ、こんなにややこしい事態に巻き込まれることはなかったのか……」

 

「そうなんだよな。でもその特別な力がなかったらリアス先輩ともお近づきになれなかった訳だから……これでイーブンなのか?」

 

「それでイーブンでいいのか? ……あ、そうだ。なんかあの堕天使の女、俺とイッセーが同じモノを有しているみたいなこと言ってたけど……イッセーにもあるんですか、これ」

 

 そう言いながら、ダイスケは右腕に昨日と同じ黒いガントレットを出現させた。

 疑問を投げかけるダイスケだったが、知識が無く目の前の現象に驚くイッセーに朱乃とリアスが教える。

 

「それは『神器(セイグリット・ギア)』と呼ばれるものです。人間にしか発現しない特別な力で、歴史上に名を残した偉人の多くがこれを宿していたと言われていますわ」

 

「そしてその中には、神をも滅ぼしうる力を有するモノもあるの。堕天使たちもそれを恐れていた、というわけね。ちなみに祐斗も神器の保有者よ」

 

 リアスの紹介により、木場が歩み出る。

 

「僕の神器は『魔剣創造(ソード・バース)』。あらゆる属性の魔剣を生み出すことができるんだ。まあ、オリジナルには及ばないんだけどね」

 

 そう言って手にひと振りの剣を生み出す。なるほど、確かに魔剣というだけあって禍々しいオーラを纏っている。

 

「なるほど、相手の特性と弱点に合わせた攻撃ができるってことか。RPGに木場みたいなキャラがいたら便利なんだけどな」

 

「それじゃあゲームバランスが狂っちゃうんじゃあないかな。まあ、宝田君の言うとおり、戦う時には便利な能力ではあるよ」

 

 そう言って、手にした剣を木場は消した。出現も消滅させるのも自由らしい。

 

「……で、俺のは何なんです?」

 

 ダイスケは詳しいであろうリアスに問う。

 

「そうね、形状からすると『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』かしら。比較的ありふれた神器で、ドラゴンを封印したもの。能力は『使い手の力を一定時間の間倍加させる』よ」

 

「でも部長、龍の手(トゥワイス・クリティカル)に黒い個体、それも円形の盾を生み出す能力なんてありましたっけ?」

 

「朱乃の言う通りなのよねぇ……。冥界の研究機関に問い合わせても、堕天使側ほど研究が進んでいないから解らないかもしれないわね」

 

「あの、こいつはそんなにイレギュラーなんですか?」

 

 どうも釈然としないリアス達にダイスケは問う。

 

「ええ、普通の神器はそれぞれ一つに一つの能力なの。能力が複数あるのは『神滅具(ロンギヌス)』とって極々稀少で13種しか存在しない上に、それぞれがどういうものなのかも分かっているわ」

 

「なのに宝田君の神器は形状こそ龍の手ではあるものの、神滅具でないのに『使い手を発現以前からパワーアップさせる』と『盾を生成する』という二種類の能力を備えているのです。私たちは神器のプロフェッショナルではありませんから、調べようもありませんわ」

 

「色が黒いっていうのも判らない理由の一つなんだ。確認されている龍の手(トゥワイス・クリティカル)は殆どが赤、青、緑等のドラゴンらしい色合いで、黒い龍っていうのは大体が邪龍だからね。それに相応した神器になるはずなんだよ」

 

「……要するに正体不明」

 

 リアス、朱乃、木場、小猫の言葉でダイスケは不安になる。あの奇妙な冒険漫画の能力者たちですら自分の能力を把握しきれているのに、自分のは一体なんなんだろう。

 この身に火の粉が降りかかる状況が起こるかもしれないのに、このザマで自分は生き残ることができるのだろうか?

 

「まあまあ、気を落とすなよダイスケ。そのうちわかるさ。まあ俺は堕天使に直接命を狙われたくらいだから、強力な神器を持っているのは確実なんだけどな。だっはっはっはっは!!」

 

 不安に落ちる悪友を傍目に余裕綽々のイッセー。あからさまに自信満々な上に状況証拠まで揃っているからなんとも腹立たしい。

 

「それじゃあ、イッセーの神器も見せてもらいましょうか」

 

「はい、リアス先輩! 出でよ、神器ァァァァァ!!」

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 出てこない。

 

「……あり?」

 

「イッセー、自分の中で一番強いと思うものを想像しなさい。そうすれば出てくるはずよ」

 

「はい、リアス先輩! ならばもう一度……出でよ、神器ァァァァァ!!」

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 やっぱり出てこない。

 

「プッ、ダッサ」

 

 散々自信満々で神器を出そうとしていた先ほどのイッセーを思い出してせせら笑うのはダイスケだ。

 

「お、俺だってなぁ!! なんとか集中して出そうとしたよ! でも、机に座ったリアス先輩の太ももに意識が行ってダメだったんだよ! あんな素晴らしい太もも見せられて集中できるかってんだ!!」

 

「まあまあ、イッセー。神器の発現は人それぞれよ。悪魔の一生は長いの。気長にやりましょう?」

 

「うぅ……リアスせんぱぁい……」

 

 優しい主の言葉に思わず涙ぐむイッセー。心底この人の眷属になってよかったと思う。

 

「それじゃあイッセー。あなたには早速悪魔としての仕事があるわ」

 

「はい! なんでしょうか!!」

 

「これを各家庭に配ってきて欲しいの。今時、わざわざ魔法陣を描いて悪魔を召喚しようって人は少ないから」

 

 リアスは机上に山積みにされた例の魔法陣が描かれた紙の山を指さす。

 

「悪魔っていうのは、人間に召還されて依頼をこなし、その対価をもらうことで力をつけるの。あなたは今下僕、下級悪魔だけど、力をつけていけば私と同じ上級悪魔になって眷属を持つこともできるわ」

 

「眷属……ってのはアレですか、今の俺みたいな下僕を作れるってことですか?」

 

「ええ」

 

「下僕ってのはアレですよね、俺のいいなりに出来るってことですよね?」

 

「もちろんよ」

 

「じゃあ、可愛い女の子ばかりの眷属にして、エッチな命令をさせることも……?」

 

「あなたの下僕ならいいんじゃあないかしら」

 

「なん……だと……?」

 

 始まった。いつものエロ兵藤モードが。ときどきダイスケは思う。こいつのエネルギー源は三大栄養素ではなくエロなのではいかと。

 思えば、イッセーが駒王学園への進学を決めたのだって、彼女を作ってエロい事したいというのが動機だった。多分今も、「上級悪魔になれば可愛い女の子だけの眷属を作ってハーレムを作りたい!」思っているのだろう。

 偏差値的に無理と言われていた駒王学園の入試も、彼女がほしいという煩悩によって突破したのだ。この兵藤一誠なら、どのような困難が待っているとしても、上級悪魔を目指すのだろう。ハーレムの為に。

 

「部長! 俺、やります! いつか上級悪魔になって、眷属でハーレム作ります!! でもまずはチラシ配りという第一歩から――イッセー、行きまーす!!」

 

 机上にあったすべての紙束をもって、イッセーは部屋を出ていった。「がんばってねー。」というリアスの言葉を背中に受けて。

 

「しっかし、部長も人を働かせるのがうまいですね。流石は悪魔ってところですか」

 

「まぁ、眷属のやる気を引き出すのも主の仕事だから。でも、ついでと言ってはアレだけれども貴方にも頼みがあるの」

 

「……なんです?」

 

 嫌な予感がして冷や汗を垂らしながらリアスから後ずさるダイスケ。

 

「逃げないで。簡単よ、イッセーの護衛をして欲しいの」

 

「護衛、ですか?」

 

「ええ、どうもあの子、トラブルを引き寄せる体質みたいね。ぶらついている堕天使に転生したての悪魔が遭遇するなんて滅多にないもの。そんなあの子が心配だから、守ってあげて欲しいの」

 

「リアスさんのところの眷属がカバーしてやるって事出来ないんですか」

 

「残念だけど、他の子も予約がいっぱいでね。その分欲望を持つ人間がいて大助かりなんだけど、こっちもそんなに首が回らないの。だからお願い」

 

「えー……」

 

 確かにイッセーのことは心配だ。だが、ダイスケにもプライベートの時間というものがある。

 そんなダイスケの心中を見抜いてか、リアスは取引を持ちかける。

 

「……貴方、前に沖縄に行ってGT釣りたいって言ってたわよね? 何だったらその願い、かなえてあげてもいいけれど?」

 

「!?」

 

 何を隠そう、いくつかあるダイスケの趣味の一つが釣りだ。時間さえ見つけては地元の漁港や河口に行って釣りをしている。

 そしてGTとは。ジャイアントトレバリー、すなわち和名ロウニンアジのこと。海洋ルアーフィッシングとしては多くの釣り人がいつか釣ってみたいと思う魚ランキングで常に上位にいるスーパーサイズルアーターゲットだ。

 アジという名が付きながら、その大きさは1mに達するものもある。さらにその引きは、専用の頑強なタックルで無いと容易に破壊するほどの威力を持ち、生息域も南洋のみなので釣りに行くにも金がかかる、道具をそろえるのにも金がかかるという高嶺の花なのだ。

 

「勿論タックルもそろえてあげるし、船もチャーターしてあげる。ホテル代や交通費も出してあげるわ」

 

「なん……だと……」

 

「あ、そういえば静岡のバ○ダイの工場見学に行ってみたいとも言っていたわね。……私のコネなら行けるわよ」

 

「嘘……だろ……」

 

「まぁ、行きたくないって言うんだったら? 私が眷属達だけで楽しめばいいだけだし?」

 

「……わかりました。わかりましたよ。イッセーの護衛をすればいいんでしょ? 何かあったら首根っこ引っ張ってでも逃げてきますから」

 

「よろしくねー」

 

 大きくため息をついて頭を掻いた後、ダイスケは一人イッセーの後を追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長!!チラシ配り、完了しました!!」

 

「……なんでこんな夜中に町内全部の家にチラシ配りしなきゃならないんだ。学生アルバイトの新聞配達じゃあないんだぞ……。」

 

 片や達成感を込め、片や愚痴と恨み節を込めて帰還報告をする。

 

「お帰りなさい二人とも。案外早かったのね。」

 

「はい!ダイスケも手伝ってくれたんで、かなり助かりました!」

 

 道すがら事情を聞いていたイッセーは、最初の内は自分ごとでダイスケが手伝うことを悪い気がしていた。だが、実際に配ってみるとなると案外大変だったので今はリアスの手回しとダイスケの助力に感謝している。

 リアスは本題を切り出した。

 

「実はねイッセー、ちょっと困ったことが起きたのよ。」

 

「なんですか?俺にできることなら、お手伝いしますけど。」

 

 イッセーの申し出に、リアスは少しの間考えてその案件について頼むことにした。

 

「じゃあ、お願いしようかしら。実は小猫に依頼が来てたんだけど、ダブルブッキングしてしまったのよ。悪いけれど、ダイスケを補佐につけるからもう片方の方にいってもらえない?」

 

「わかりました!行ってきます!!」

 

 敬礼で答えるイッセー。

 それではと朱乃がイッセーとダイスケを依頼者の下へ送る準備を始めたとき、小猫が二人のもとへ歩み寄る。

 

「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。」

 

「ああ。任せてくれよ、小猫ちゃん。」

 

「へぇ、そういう常識的なこともできるんだ。」

 

 小猫はすかさずダイスケの腿を蹴る。

 痛みにダイスケがのたうちまわる間に、朱乃の準備は完了した。

 

「それでは二人共、この魔法陣の真ん中で立ってください。」

 

 これは目的の場所へ瞬時に移動できる移動用の転移魔法陣である。

 本来ならばリアスの眷属以外は使用できない設定のものではあるが、一応の契約関係にあるということでダイスケも使用できるようになっている。

 そんな詳しい事情を知らないふたりは、生まれて初めてのテレポーテーションに期待して胸を膨らませている。

 

「それじゃあ、頼むわよ。」

 

「はい、部長!!」

 

「へーい……。」

 

 朱乃が陣に魔力を送りこむ。陣を形作る文様からは赤い魔力の光が溢れて二人を包み込んでいく。光の強さは思わず目を瞑ってしまうほどに強くなっていった。

 その光が一定のボルテージを迎えたあと、フッと光は収まった。さあ、一体どこへ出たのか……と目を開けるとそこは―――

 

「「あり?」」

 

 元の部室のままだった。

 

「……どういうことなの?」

 

「恐らく、ダイスケ君の方は問題ありませんが、イッセー君の魔力量が極端に低いのでしょう。これでは主と一緒でなければ移動できませんわね。」

 

 つまり、ダイスケは良くてもイッセーはこの魔法陣は使用できないということになる。ではどうやって二人一緒に依頼者の下へ行くか。

 もはや方法は一つである。

 

「悪いけど……自力で行ってもらえる?」

 




 はい、というわけでVS04でした。
 やっぱりオリジナル展開で原作キャラにヘイトを向けさせる行為は良くないですよね。そんな風に今回は気を遣っているのに「読者層が似ている作品」でヘイト作品が表示されます。それもあらすじからして捏造型ヘイト作品が。
 ……なんでや!!!
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!

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