・ジョブ
最近師匠が益々非常識なので、基本的な知識を振り返ろうと思う。今日は、魔術師ギルドや冒険者ギルドでのジョブに関する知識についてだ。
まず、ジョブとは何なのか? 現代では自らの人生の進路の選択であると定義される。
何故ならジョブに就く事で、そのジョブに関するスキルの獲得補正を得る事が出来るからだ。料理人に成りたければ【料理】スキルが必須だから、ジョブチェンジの際【料理人】ジョブに就くのは当然だろう。
こう説明すると師匠とレギオンは首を傾げるのだが。どうやら目的の職業に就くのに必要な技能を手に入れるために、ジョブに就くというのが異世界の感覚では奇妙に感じるらしい。まあ、異世界にはジョブやスキルが存在しないそうだから、そのせいだろう。
それはともかく、生産系ジョブに就く一般人だけでは無く、戦闘系ジョブに就く冒険者もジョブ選択の重要性は人生を左右する。【見習い戦士】や【見習い魔術師】、【見習い職人】等の汎用ジョブはともかく、【パン職人】や【剣士】等の専門ジョブと成ると受けられるスキル補正やジョブ効果の範囲が狭いからだ。
つまり、潰しが利かないのである。
【パン職人】や【剣士】にジョブチェンジした後に、自分がその職に向いていない事に気がついても次のジョブチェンジまで他のジョブに就く事は出来ない。
まあ、似たような業種……【パン職人】であれば同じ料理人系の仕事になら就けるだろうし、【剣士】にしても別に槍や斧が装備できない身体になる訳でも無いから、この例の場合そこまで致命的な事にはならないだろう。
ただ戦闘系ジョブから生産系ジョブに進路を変える様な、大幅な人生設計の変更は大変だから、注意する様に。……師匠のように戦闘系ジョブに就きながら生産系スキルを幾つも獲得してレベルも上げている者は、世界的な例外なのだ。
次にジョブにおけるスキルの獲得補正とジョブ効果だが、これらはジョブチェンジしてもそのまま引き継がれる。だから同じ系統のジョブを重ねると、その分野ではスペシャリストに成る事が出来る訳だ。あまりやり過ぎると専門外の事が何もできなくなるので、ある程度幅を持たせるのが普通だがね。
そのジョブチェンジの数だが、平均的な人種の一般人が人生で死ぬまでに経験する回数は、職業とジョブにもよるが四回だと言われている。先ほどから私が例として挙げている【パン職人】なら、【見習い料理人】→【料理人】→【パン職人】→【名パン職人】と成る訳だ。
才能がある者や師匠に恵まれた者は、さらにその先の【マスターパン職人】等のジョブに就く事も可能だ。
師匠やその側近であるエレオノーラやザディリス、ヴィガロと比べると少なく感じるだろうが……レベルの上がり難い生産系ジョブで、しかも成長の壁に何度かぶつかりながらだからこんなものである。
尚、四度目のジョブチェンジを経験する頃には普通の者は四十代前後に成っている事が多いらしい。
国によっては徴兵制度で【見習い兵士】に強制的にジョブチェンジさせて訓練を積ませる事がある。この場合は平均回数が五回になるわけだ。
寿命の長いドワーフの場合はこれより更に二回程、更に長命なエルフの場合は倍程に増える。ただドワーフとエルフは一般人でも戦闘系ジョブに就く事があるので、純粋な意味での一般人では無いが。
そして以下は冒険者の場合だが、冒険者の場合は依頼の途中で死ぬ事が少なくなく、上級の者に成ると貴族に仕えたり、貴族その物に成ったりしてギルドでも詳しい情報を調べられないので、人生で何回ジョブチェンジを経験するのかの平均は出せそうにない。
なので、冒険者ギルドの等級ごとに平均値を私の知識と偏見で記しておこう。
【ゴーレム錬成士】
【ゴーレム錬成】スキルと、それを使用して得られるスキルに補正がかかるジョブ。幅広くスキル補正がかかるが、その分能力値の成長幅は少ない。
このジョブに就くには【ゴーレム錬成】スキルを1レベル以上で習得しているのが条件だが、現在ラムダではヴァンダルー以外に【ゴーレム錬成】スキルを持っている者は人間魔物問わず存在しない
【ゴーレム創成師】
【ゴーレム錬成士】の上位ジョブ。【ゴーレム錬成士】のジョブを経験している事や、他の生産系スキルのレベル、更に新しい素材を創り出している等の条件を満たすと選択する事が出来る。
能力値の上昇率は低いが、全ての生産系スキルに広く補正がかかる。
ジョブ効果として魔力を消費して金属等の物質を創る事が出来るが、人間の枠を超えた魔力が無ければ使いこなすのは難しいだろう。
ただこのジョブに就いた時点で、人間の枠を超えた魔力の持ち主である事が確実であるため、欠点とはいえないかもしれない。
【魂滅士】
魂を一つ以上砕いた者がジョブチェンジ可能になるジョブ。
【魂砕き】や【霊体】、【遠隔操作】や【並列思考】等のスキル獲得に補正が係り、能力値は魔力と知力が大きく成長する代わりに他の能力値の上昇率は低い。
【毒手使い】
様々な薬物の知識に精通し、自らの身でその効果を知っており、実際に作り出して使用し、また逆に解毒する事も出来、更に一定以上の能力値と【格闘術】スキルを2レベル以上で習得している者に出現するジョブ。
正確な科学知識が必須であるため、現在のラムダではヴァンダルー以外にこのジョブに就ける者は存在しない。
牙や舌、手足の爪から様々な薬物を分泌する事が出来る【毒分泌】スキルや、爪舌牙を強化する【身体強化】スキルを習得する事が出来る。また、【格闘術】等に補正がかかる、前衛寄りのジョブ。
能力値でも生命力や体力、敏捷が上昇しやすく、逆に魔力や知力の伸び幅は少ない。
【蟲使い】
蟲型の魔物を一定数テイムする事に成功した場合就く事が出来るジョブ。この際、蟲からの信頼が無ければならない。
能力値は生命力と力、体力が上昇する。【装蟲術】、【並列思考】、【遠隔操作】、【糸精製】等の通常では獲得できないスキルの補正が得られる。
獲得者の精神を徐々に元の状態から変化させる、正常な状態では耐えがたい等の影響を与えるスキルばかりであるため、結果的に【精神汚染】スキルを獲得し徐々に正気を失っていく。
最初から人とは異なる精神構造をしている場合や、正気を失っている場合は問題無い。
【樹術士】
植物に関する一定以上の知識と、数多く(百体以上)の植物型魔物をテイムする事で就く事が出来るジョブ。
能力値は生命力が上がりやすい。
また、体内に植物型魔物を装備できる【装植術】スキルを獲得できる。
ジョブの効果として体内で植物を栽培可能に成る。植物には菌やカビ、植物プランクトンも含まれる。
このジョブに就いた者は農業、製パンや一部の製菓、発酵食品の作成、林業、また海藻や水草や植物プランクトンを活かした漁業等で優秀な結果を残す事が出来るだろう。
【魔導士】
勇者の条件とされる導士系ジョブの中でも特殊なジョブ。正道でも外道でも無い道を、自ら歩む存在が就く事が出来る。
ただ導士系ジョブとしては問題がある。導士系ジョブは所有者自身の能力値を大きく成長させるが、その本質は所有者以外の存在に影響を与え、引き上げる事に在る。
しかし魔への導きを多くの者は忌避し恐れる。そのため、本来の力を発揮するのは難しい。
ヴァンダルーの場合は【死属性魅了】等のスキルで既に多くの存在を惹き付けていた事で、その障害を乗り越えている。
【冥導士】
いずれ死ぬ者、そして既に死んだ者を導く者を表すジョブ。生と死の境界線を乱し、この世にあの世を創り出さんとする者が就く事が出来る。
対象は当然霊やアンデッドであり、またそれを望む生者。ただ既に【魔導士】ジョブに就いていた事と【地球の冥神の加護】を獲得した事で本来対象外である存在にも、効果が及んでいる。
能力値の成長では生命力、力、体力の上昇率が低く、逆に魔力、知力、敏捷の順で上昇率が高い。
【創導士】
魔力、そして生命力や力、体力等が上がりやすい。
そしてジョブに就いた者の「創造」に関する事全般に補正効果がかかり、また創りだした物や技術に関する者達を導く事が出来るジョブ。
本来なら生産系勇者に相応しい、創りだした武具や衣服、装飾品を装備した者達や、料理を食べ、日用品を利用する者達。そして技術を伝授された多くの弟子達を導いたと思われる。
しかしヴァンダルーがこのジョブに就いた事で、ジョブの意味合いが大きく変化した。
創造物の中に魔王の欠片製の武具や製品、分泌した毒物や薬品、【ゴーレム創成】で作られたゴーレム、そして死属性の魔力によって創られたアンデッドや他の魔物も含まれるようになったのだ。
その結果ヴァンダルーの創道は、魔道や冥道と同じ常人には決して先導できない道と化している。
【夢導士】
夢見がちな事を言って導く者……では無く、夢に出てきて導く者である事を表すジョブ。……導きは基本的に思想の筈なのだが、夢は思想と言えるのだろうか?
そう言う意味では現在確認されている導士系ジョブの中では、最も異質と言える。
能力値の成長は、力や体力、敏捷と言った肉体的な物はあまり成長しなかったようだが、その分知力と魔力の成長率が高かったようだ。
【滅導士】
滅びを望む者……破滅願望の持ち主や度の過ぎた悲観主義者、自らの消滅を望むアンデッド等を導くジョブ。そのため、必然的にこのジョブに就く者は最終的に破滅することになる。
しかし、ヴァンダルーの場合は既に複数の導士ジョブを経験しており、導きを統合しているため、「滅びを望む者を変質させ、ほかの道へ導いてしまう」ジョブと化している。
【限界突破】系など、自身に負担をかけるスキルや、【殺業回復】など他者を破滅させる事で効果を発揮するスキルのレベルアップに補正があるが、能力値の成長が一切望めない極端なジョブとなっている。
【混導士】
師匠がジョブに就いていた期間が短いので、確かな事は言えないが……混沌を導くジョブなのか、混沌が導くジョブなのか、微妙なところだ。
推測すると、混沌(師匠)が確かな名称や形を失った存在(霊)や何処に向かうか決めていない存在を、混沌へと導く導士なのかもしれない。
恐らくだが、正気でも狂気に陥っていても、このジョブには就けないだろう。師匠のように、正気であると同時に狂気でもなければ。
【神導士】
神を導く士……ではなく、神に至ろうとする者、もしくは何れ神に至る者、神から加護を受けた者を導くジョブ。そのため、既存の神に大きな影響を与えるジョブではないようだ。
もしかしたら、アルダ勢力の神々が育てているらしい英雄候補に対する切り札になるかもしれないが……あまり期待しない方がいいだろう。
このジョブに就く前から、カルロスがああなったのだから、そう劇的に変わる事はあるまい。
また、このジョブのせいで、ジェーン・ドゥのような奇怪なアンデッドがこれから増えるのかと思うと、私は胸の高鳴りを止める事が出来ない。
【大敵】
死属性魔術師が神に呪われるか複数の強大な存在や組織に敵対対象として認識され、さらにそれらを敵として認識した場合ジョブチェンジできるジョブ。
あらゆる敵に対して与えるダメージを増大させる【対敵】スキルを獲得し、能力値は生命力と力の上昇率が高く、逆に魔力や知力は上がり難い。
【ゾンビメイカー】
死体からゾンビを創るジョブ。ゾンビを含めたアンデッド(特にゾンビ)を創る際に必要な時間や魔力を大幅に削減するジョブ効果がある。
能力値の上昇率は僅かだが、大量のゾンビを創る事が可能に成る。ただヴァンダルーの場合、元々あまり時間を使わずにアンデッドを創る事が可能で、莫大な量の魔力を保有していた。
そのため、ゾンビメイカーにジョブチェンジして必要な時間と魔力が削減された結果、無意識に周囲の死体をアンデッドにしてしまう予想外の副作用が発生してしまった。
【屍鬼官】
テイムした多くのアンデッドを指揮して集団戦を行った事があり、【連携】や【指揮】スキルを所有している死属性魔術の使い手がジョブチェンジ出来るジョブ。
能力値の成長率はあまり高くないが、【装屍術】スキルを獲得し、同スキルと【連携】や【指揮】等のスキルの成長に高い補正がある。
【魔王使い】
【魔王の欠片】をその身に宿しながらも、自我を欠片に飲み込まれず、逆に欠片を飲み込み己の一部として利用する者が就く事が出来るジョブ。
【魔王侵食度】スキルを持つ欠片の所有者や、魔王の装具の所有者は就く事が出来ない。装具の所有者は封印によって欠片を武器として扱っているだけで、飲み込み己の一部としている訳では無いからだ。
【魔王】
魔王とはジョブなのだろうか?
我々のジョブと言う概念に疑問を投げかけるジョブである。恐らく、【魔王の欠片】に寄生されるのではなく、己と一体化させる事に成功させた者のみが就く事が出来るジョブだと思われる。
能力値は全体的に成長幅が大きかったようだ。
【大魔王】
【魔王】スキルと【魔王の欠片】を所有し、【魔王】ジョブを経た者が就く事が出来るジョブ。
基本的には【魔王】と同じだが、全体的に【魔王】よりも生物の変異や魔物やダンジョンの創造等、魔王らしい事に補正がかかる。
【冥魔王】
おそらく、アンデッドを大量にテイムしている【魔王】ジョブ経験者が就く事ができるジョブと考えられる。ただ、我々は死属性魔術を使えない魔王という存在が思い浮かばないのだが……グドゥラニスはことさらアンデッドを好んで創造し、使役していたという記録は残っていないので、そういうものなのだろう。
【迷宮創造者】
ダンジョンを創り出す事が出来る者が就けるジョブ。
能力値はダンジョンを創り出すのに必要な魔力の上昇幅が最も高く、スキル補正は【迷宮建築】(及びその上位スキル)や【空間属性魔術】等のスキルに得る事が出来る。
他に、恐らく【建築】や【土木】、【大工】等の生産系スキルも若干の補正がかかるものと推測される。
【冥医】
医療行為全般に関するジョブ。その効果は通常の生物にも有効だが、その真価は一度死んだ事がある存在を対象にした時に発揮される。アンデッドの改造手術や緊急蘇生措置等では、余程困難な挑戦をするか第三者からの妨害があるか、最初から不可能な行為でない限りまず失敗しない。
また、対象を死に近づける行為……暗殺や拷問にも僅かながら補正がある。
本来は戦闘系ジョブよりも生産系ジョブとしての側面が強いのだが、アンデッドの創造が生産系ジョブとして分類される事を阻んだのか、一応戦闘系ジョブの端くれである。
ただ能力値の伸びは低い。
【病魔】
病を扱う事に長けたというよりも、体内で病原菌を生成し、ジョブに就いた者自身が病原菌に変化しうるものが就く事が出来るジョブ。ただし、病原菌やウィルスの存在を知らなければ就く事は出来ない。
能力値としては力が上がり難いが、生命力と知力と体力が上がりやすい。【遠隔操作】スキルのレベルが上がり易く、ジョブに就いた時点で既にレベルが高い状態だと上位スキルに覚醒する場合もある。
【魔砲士】
主に【魔王の欠片】で砲身や弾を作り、魔術や他の欠片の力で撃ち出す事に補正がかかるジョブのようだ。恐らく、火薬を動力に使った砲術を主に使う場合は、他のジョブが出現するものと思われる。【砲術士】とか、【銃士】とか。
能力値では体力や力が上がり易く、敏捷は上がり難いジョブのようだ。
このジョブからジョブチェンジする際に現れた【冥群砲士】は名称的にこのジョブの上位ジョブと思われるが……他にも混ざっていそうである。
【霊闘士】
死属性の適性を持つ者か、死んでいた経験がある者が、【霊体】スキルを持ち、一定のレベル以上の【格闘術】スキルを持っている場合就く事が出来るジョブ。
己の霊体を実体化させ、それを手足や武器のように使う事が出来るよう【実体化】スキル等も補正がかかるジョブ。一応、【格闘士】等【格闘術】スキルを主に扱うジョブと同じ系統のジョブでもある。
【付与片士】
導いた対象に自らの一部(肉体、霊体問わず)を他者に与え、変異を誘発させるジョブ。既にジョブ(職業)と呼んでいいのか不明だが、ステータス上にはジョブとして表示される以上ジョブである。
このジョブの変異は人間からヴィダの新種族への変異等、親である女神ヴィダを含めたこの世界の神々の影響を受けていない変異を指す。
魔王や邪神悪神の力に近い。
そのため、このジョブに就く事が出来るのはヴァンダルーのみだろう。
【デミウルゴス】
亜神である事を示すジョブ。『ラムダ』世界には今まで、人間が生きたままの状態で神に至った存在はいない。
人間出身の神は、人間としての生を終え、死後に神に至った者達である。極少数の例外もあるが、そうした者達は邪神悪神との融合や、人間から龍や真なる巨人に変化する等、特殊な過程を経て人間以外の存在になった者達である。
師匠のように、
まあ、加護を周囲にばらまいていた時点で、既に亜神に至っていたのではないかと思うが。
付与片士と同じく、ジョブに就いた本人ではなく、本人以外の条件を満たした者達に【御使い降魔】スキルを与える事が出来る特殊なジョブ。
そして、信者から寄せられる信仰心を経験値とする事が出来る。師匠の場合は【経験値自力取得不能】の呪いがあるが、信仰心を向けられると言う受動的な方法で得る経験値は、自力の範囲に入らなかったのだろう。
【鞭舌禍】
舌を武器として扱う者が就く事が出来るジョブ。【身体伸縮(舌)】や、【身体強化:舌】、そして【格闘術】や【鞭術】に補正を得る事が出来る。
現在、この世界で舌を武器として扱う魔物は、両生類型や特殊なデーモン等複数存在するが、人間はヴァンダルーしか存在しないため、このジョブに就く事が出来るのは実質ヴァンダルー一人だけである。
舌で攻撃した相手に呪いを与える事が出来る。しかし、与えられる呪いの種類は少ない。
能力値を減少させるか、五感のどれか一つを封じるか、そして自分の行いによって他人が覚えた痛みが、自分に返ってくる【自業の呪い】である。
【自業の呪い】は、呪われた対象が直接他人を害した場合だけでは無く、間接的に与えた危害にも反応する。
【神敵】
神の敵である事を表すジョブ。それ以上でもそれ以下でも無い。幅広い戦闘系スキルと魔術系スキルに、広く薄く補正がかかる。
これだけだと過去にもこのジョブに就いた邪悪な人物が居そうだが……このジョブが敵とする存在には邪神悪神も含まれている為、魔王軍残党の邪神悪神を奉じる者にこのジョブが現れる事は無い。
【死霊魔術師】
精霊魔術師の死霊バージョン。死霊、ゴーストに魔力を渡し、魔術を行使して貰う事で、本来は呪文の詠唱の省略や、魔術の威力や精密さを向上させる事が出来る【死霊魔術】スキルに補正がかかるジョブ。
しかし、ヴァンダルーの場合は魔力の桁が規格外であるため威力の向上ではなく、自身に適性の無い属性の魔術を使うためのスキルとジョブになっている。
【弦術士】
自らが精製した糸を扱う事に長けたジョブ。裁縫や機織り、特殊な糸を使っての戦闘等、弦楽器の演奏など、様々な補正を得る事が出来る。
糸を精製する事が可能で、死属性の適性を持つ者がジョブチェンジする事が出来る。
【怨狂士】
【叫喚】スキルを獲得し、ある程度レベルを上げた者が就く事が出来るジョブ。【叫喚】スキルに補正が在り、また【歌唱】等のスキルを獲得しやすくなる。ヴァンダルーの場合は補正があっても、それでは補えない程彼には歌の才能がなかった。ただ、効果音を出すのは上手くなった。また、声に状態異常効果を乗せる事が可能になった。
声を出す力や体力が上がり易く、敏捷は上がり難い。ジョブ単体として考えると、中々微妙である。
上位ジョブに【ルドラ】が存在するが、亜神の域(人間なら上位のA級、若しくはS級冒険者以上)にならないと、就く事は出来ない。
【冥王魔術師】
死属性魔術師の上位ジョブ。能力値の成長は魔力と知力に偏っているが、魔術関係のスキルの取得と成長に大きな補正がかかる。
このジョブに就くには当然死属性魔術を覚醒させるか、覚醒に近づくまでスキルレベルをあげなくてはならない。
【冥界神魔術師】
【死属性魔術師】、そして【冥王魔術師】の上位ジョブと思われるジョブ。上位ジョブのさらに上のジョブを出現させたこと自体は、珍しくない。たとえばヴィガロのような【斧士】、【斧剛】、【大斧剛】等だ。
しかし、ジョブだけではなくスキルを上位スキルの上位スキルまで覚醒させた場合では、大変珍しい。
【ペイルライダー】
異世界において、終末を告げる騎士の一人の名を持つジョブ。何でも死病を撒き散らす騎士だそうで、衛生的に問題があるジョブ効果の一つや二つついていそうだが、そんな事はなかったらしい。
効果として、疫病を差別的に撒く事が可能になるようで、師匠の場合は【冥界神魔術】で創りだした病や、【貪血】をある程度制御できると言う破格の効果となった。
【虚王魔術師】
【無属性魔術】を上位スキルに覚醒させたか、覚醒させる可能性が高い者が就く事ができるジョブの一つ。『ラムダ』では無属性魔術を他の属性魔術を覚える際の練習代わりや、魔術の汎用性を増すための補助として覚える者が多数を占める。そのため、今まで属性魔術を上位スキルに覚醒させた魔術師は何人も存在するが、【無属性魔術】を上位スキルに覚醒させたものはいなかった。
そのため、【既存ジョブ不能】の呪いを受けているヴァンダルーでも就く事ができた。
当然新発見のジョブだが、魔術師ギルドでは無属性魔術を極めれば【無属性魔術師】の上位ジョブが出現することは予想していた。
しかし、その予想をたしかめるために【無属性魔術】の研鑽に人生をかける者はいなかったようだ。
いくら上位スキルに覚醒しても、平均的な一流の魔術師の魔力は一万程度であり、『ラムダ』に存在する魔術媒体(いわゆる杖)の性能では、全魔力を振り絞っても【虚砲】はもちろん【虚弾】を撃つことも難しいので、人生の選択として選ばないのは正解である。
【神霊魔術師】
神の領域に至ったゴーストと協力関係を結び、魔力を提供する代わりに魔術を行使してもらう【神霊魔術】スキルを主に扱うジョブ。【精霊魔術師】の上位ジョブである【精霊王魔術師】、【高位精霊魔術師】などに相当する。
ランク13以上のゴーストと協力関係を結ぶか、支配することができる者が今まで存在しなかったため、ヴァンダルーがジョブに就く事が出来た。
当然新発見のジョブであり、冒険者ギルドや魔術師ギルドはジョブの出現条件どころか、ランク13以上のゴーストが実在する事すら確認していない。
【ダンジョンマスター】
ダンジョンを作成し、支配している者が就くことができるジョブ。当然だが、通常の『ラムダ』の人間も、ヴィダの新種族も就くことはできない。(一部のヴィダの新種族はダンジョンに集落を築いているが、それはダンジョンを利用して住んでいるだけで、支配しているわけではない)
このジョブに就けるのは、未来永劫ヴァンダルーだけだろう。グファドガーンがヂュリザーナピペ(リサーナ)のように、完全に人間(もしくはヴィダの新種族)に転生した場合は別だが。
【クリフォト】
体内に十つの世界を作る事ができる【体内世界】スキルを獲得できるジョブ。【体内世界】の広さは所有者の魔力量による。
このジョブを獲得するには、異なる世界へ複数回わたる事と、【装〇術】スキルを獲得している事等が条件に挙げられる。
【デーモンルーラー】
悪魔の支配者、その創造すら支配する存在である事を表すジョブ。このジョブに就くと、デーモン系の魔物を使い魔と同じ感覚で創造する事ができる。ただし、自分より強いデーモンは創造できず、多くの場合は自分よりも数段以上弱い(最大でも、一対一で戦っても、油断しなければ確実に倒せる程度)で、また強いデーモンを創る程魔力を多く消費する。ヴァンダルーもその例外ではない。
なお、ヴァンダルーが油断しなければ確実に勝てる程度のデーモンとは、並みのA級冒険者が死力を尽くして戦って何とか勝てる程度である。
ちなみに、この「油断しなければ確実に倒せる程度」とは、逃亡や、隠れ潜んでやり過ごそうとする等、デーモンが戦闘を回避しようとした場合の事も含まれる。
【整霊師】
対象の霊体を整える(変形させる)ジョブ。自身の霊体で対象の霊体の形を変え、対象自身が操作できるようにすることができる。
無機物でできた義肢に霊体を宿して自身の一部のように操れるようになり、霊体のまま肉体から出して第三の腕や足のように使う事ができるようになる可能性が高い。
ヴァンダルー以外がこのジョブに就く事は難しいが、ヴァンダルーから上記の治療を受けた者が霊体の操作技術をさらに高め、他者に施術ができるようになればこのジョブを獲得する事ができるかもしれない。
【魔杖創造者】
魔杖、つまり変身装具を作り出す職人を表すジョブ。
【匠:変身装具】
変身装具を制作する技術が、匠の域にまで至っている事を現すジョブ。人の形から大きく逸脱した対象……例えば体長約百メートルの真なる巨人用変身装具も作る事ができる。
【魂格闘士】
実体化させた魂を体に纏い戦う【格闘術】の使い手を表すジョブ。そのため、現時点でヴァンダルー以外がこのジョブに就く事は不可能である。……そもそも、肉体に宿り霊体に包まれている魂をむき出しにして戦う意味が、普通はない。どんなに性能が良くても、自分の脳や心臓を纏って戦う者はいない。
【ヴァンダルー】
ヴァンダルーである事を表すジョブ。当然、ヴァンダルーらしいスキルの取得と成長に補正がかかり、魔力がもっとも伸びる。
ジョブ取得の前提条件は、死属性魔術の使い手である事は確実だが他の条件は不明である。ヴァンダルーは、おそらくヴァンダルーそのものである事からジョブに就く事が出来たと思われる。
なお、『ラムダ』世界には【ベルウッド】や【ファーマウン】、【ナインロード】等のジョブは出現していない。当人達が生きている間にジョブにならず、そのまま誰もジョブを発見できていないらしい。
【真魔王】
真なる魔王である事を表すジョブ。このジョブにヴァンダルーが就いたため、『ラムダ世界』における魔王はヴァンダルーであり、それ以外の者は魔王となりえない事になる。
他の者が【真魔王】になるには、ヴァンダルーの同意を得て継承するか、ヴァンダルーを倒すしかないだろう。
【万魔殿】
体内に軍勢を収納する事ができるジョブか、自身の肉体から戦力として使える分身や僕を創り出す事ができるようになるジョブと思われる。
どちらも師匠以外が就くのは難しいジョブである。【クリフォト】に就く前にこのジョブに就いていたらどうなっていたのか、若干の興味がある。
【斧豪】
【斧士】のレベルを100まで上げ、斧術のレベルが6以上であった場合にのみジョブチェンジ可能なジョブ。
斧を装備している時能力値が上昇する【斧装備時能力値強化】等に代表される、斧に特化したスキルを習得する事が出来る。
このジョブに就いている者は、斧術において一流以上の使い手であると言う証明書を持っているに等しく、その気に成れば貴族のお抱えや、斧術師範代、流派を開き斧術道場を開く事が可能。
冒険者なら大抵は既にB級に達している事が多い。
【隷属戦士】
別名剣闘士。所有者やオーナー等言い方は様々だが、奴隷的身分にある状態のまま接近戦スキルを所有し、主人からの許可がある場合にジョブチェンジが可能。奴隷的身分にあるかどうかは社会制度や当人の精神状態では無く、隷属の首輪や、刺青や焼印等隷属の証しになる物を装着、若しくは身体に刻まれている場合で判断される。
スキル補正は基本的には戦士と同様だが、【限界突破】や【頑健】、【筋力強化】、他に他者に対して隷属している状況下にある時能力値が上昇する【自己強化:隷属】のスキルの獲得に補正がかかる。
ただし戦士と違い、【鎧術】スキルに補正がかからないなど、盾職には向かないジョブである。
【暗闘士】
【暗殺者】ジョブ経験者が就く事が出来るジョブ。【暗殺術】や【格闘術】や【短剣術】、【限界突破】、斥候職に必要なスキル全般に補正を得る事が出来る。
【操肉士】
自身の身体を構成する肉を操作する事が出来るジョブ。【形状変化】や【サイズ変更】、更に自身の肉を千切って投げた後も操作する【遠隔操作】スキルの習熟にも補正を得る事が出来る。また【料理】スキル、特に肉料理を作る際に補正を得る事が出来る。
更にレギオンの場合は、イシスの手術、ワルキューレの指揮、イザナミの力である肉片のヨモツシコメ、ヨモツイクサ化、ベルセルクの寄生等にも補正がかかる。
ジョブに就く条件は、肉体の九割九分以上が肉である事。【遠隔操作】スキルを身につけている事。
【魔塊士】
恐らく魔術師系のジョブだと思われるが……名称を見る限り、肉塊のような肉体を持つ人間しか就く事が出来ないジョブだと思われる。
生命力や力、体力が上がり難い傾向に魔術師系ジョブはあるが、魔塊士はその例外の様で生命力や体力も上がりやすいようだ。
【神人形】
神の人形である事を表すジョブ。御使い降臨系のスキルに補正がかかる。……基本的に、邪神や悪神に魂を売り渡し、肉体を捧げ寄り代になった人間の狂信者が就くジョブであり、真っ当な神を信仰する、通常の信者なら就く事は無いジョブである。
【魔装剣士】【魔装拳士】
どちらも変身装具を使用する事が、前提となっているジョブ。サイモンとナターニャは魔術を用いず、変身装具を日常生活から戦闘まで活用しているため、出現したジョブだと考えられる。
狙ってこのジョブを出現させる場合、二十四時間三百六十五日変身装具を使わなければならないと思われる。
【芸導士】
恐らく、芸術、若しくは芸能によって……特にカナコ君の場合は、音楽やダンスによって及ぼす影響によって他者を導くジョブであると思われる。
歌いながら呪文を詠唱する【歌詠唱】というスキルを独自に獲得しているが、これはジョブによるものというより、彼女の高い歌唱能力と魔術の技量が合わさったものだろう。
元々いた世界では役者志望だったヒルウィロウに近い導きかもしれないが……残っている記録によると、かの勇者は異世界の芸や文化について書き残していても、直接芸で人を導いてはいないらしい。やはり、魔王軍との激しい戦いの際中に、本格的な芸能活動を行う事は出来なかったのだろう。
もしくは、ヒルウィロウが役者の卵でしかなかった事に対して、異世界でアイドルとして本格的な活動を行い、【ヴィーナス】という、他者の記憶をコピーする事が出来る能力によって、芸能関係の知識を多く吸収していたカナコ君は、この世界に異世界の芸能を持ちこむ事が可能だった。それが影響していたのかもしれない。
まあ、師匠と違ってカナコ君は既存のジョブに就けない訳ではないし、この世界にも過去に同じ【芸導士】が出現していた可能性はあるが。ただ単に、忘れ去られているだけで。