ようこそ人間讃歌の楽園へ 作:gigantus
一年生全生徒に一斉に送信されたメール。
そこには新たな特別試験の開始を告げる旨が記されていた。
「特別試験、か」
文面に目を通した綾小路が呟く。
メールには試験を執り行うことと、その内容を説明する時刻のみが書かれている。
つまり具体的な内容は現時点では明かせないということだ。
「試験内容ってなんなんだろうね? これじゃあ分からないや」
同じようにメールを確認していた櫛田が綾小路にそう言った。
その発言を聞いた綾小路は気になることがあったのか彼女に申し出る。
「ちょっとメールを見せてもらってもいいか? 気になることがある」
「え? うん、いいよ」
快く承諾した櫛田に会釈して綾小路はメールを見た。
大まかな文面は同じものだったが異なる点も存在した。
指定された場所と時間である。
綾小路が指定された部屋は204号室。
しかし櫛田が指定された部屋はそこから3部屋ほど離れたまた別の部屋だった。
そして集合時間も18時と指定された綾小路とは違い、21時と3時間も空いている。
「なんでこんな変な呼び出し方するんだろうね?」
自分の携帯と照らし合わせている綾小路の横から覗き込むような形で同じようにメールを見ていた櫛田がそう尋ねた。
「さぁ、見当もつかないな」
「もしかしたら他の皆も指定された部屋と時間はバラバラなのかもね。私と綾小路君だけとは思えないよ」
「多分な……そうだ、柚椰にも確認してみてくれないか?」
「うん、分かった」
櫛田が柚椰に確認している間、綾小路もまた他の生徒に確認を取った。
彼は連絡先を知っている数少ない知り合いである堀北にチャットを飛ばす。
すると珍しくすぐに既読がつく。
『今学校からメール届いたか?』
『届いたわ。それがどうしたの?』
『俺は18時からに指定されていたんだが、そっちは?』
『こっちは20時40分からよ。随分時間が違うのね』
「堀北は20時40分か」
自分とも、櫛田とも違う時間が指定されていた。
恐らく部屋もまた違う番号が指定されているのだろう。
やはり生徒によって指定されている条件は異なるようだ。
『時間帯が異なるのは気になるわね。開始時間が異なるのであれば、先に情報を知った生徒が有利になって不公平が生まれそうだけど』
『そこは学校も考えているんじゃないか? まぁ、今はまだなんとも言えないが』
『とりあえず時間になったら足を運ぶしかないわね』
そこで話を打ち切り、綾小路は携帯を閉じた。
「綾小路君」
ちょうど同じタイミングで連絡を終えた櫛田が話しかける。
「どうだった?」
「柚椰君は集合時間が20時40分だったよ。部屋も私とも綾小路君とも違うみたい」
「堀北と同じ時間か。となると指定された部屋も堀北と同じかもしれないな」
「むぅ……」
堀北の名前を聞いた櫛田は頬を膨らませた。
自分は違うのに堀北が柚椰と同じ時間と部屋というのが不満なのだろう。
一方、集合時間が一番早い綾小路はひとまず様子を見ようと判断した。
17時55分。指定された時刻の5分前に綾小路は目的の部屋に到着した。
2階のフロアは生徒の宿舎ではないため普段は生徒など一人も歩いていない。
しかし今は数人の生徒がウロウロしていた。
その生徒たちは近くの部屋に入っていき、また新たに生徒がフロアに現れては別の部屋に入っていく。
「他クラスの生徒か……」
部屋の前で待機しているのも居心地が悪いと感じたのか、彼は一足先に部屋に入っていようと判断し扉をノックする。
するとすぐに中から返事があった。
「入りなさい」
許可を受け一室に足を踏み入れる。
室内にはガッチリした体格のスーツに身を包んだAクラスの担任真嶋先生が椅子に腰掛けていた。
小さなテーブルの資料に目を落としている。
そして先生の前には綾小路もよく知っている二人の男子生徒が腰掛けていた。
「綾小路殿ではござらんか!」
男子生徒二人の内の一人、外村は眼鏡をかけた小太りの生徒。
歴史や機械に詳しく、所謂オタクというやつだ。
「妙なことになっているな。綾小路」
もう一人の男子は綾小路のルームメイトでもある幸村だった。
「何をしている。早く座りなさい」
真嶋先生に促され、綾小路は空いている席に座った。
だが空席はまだ一つある。
状況から見れば、試験の説明は先生1人と生徒4人で行われるようだ。
「あと一人、到着を待つ。それまで大人しく待っていなさい」
顔を上げることなく先生は彼らにそう指示する。
生徒と先生の間に会話などあるわけもなく室内に重たい沈黙が続く。
予定時刻まで多少あるとはいえ、この沈黙から早く解放されたいと男子たちは思っていた。
やがて約束の18時を回る。
微動だにしなかった真嶋先生が一度だけ時計を見やった。と、ほぼ同時に部屋がノックされる。
先生が入るよう促すと、ゆっくりと扉が開かれた。
「失礼しまーす」
間延びした声を発して入って来たのは軽井沢だった。
この室内における唯一の女子である。
「え、なにこれ。なんで幸村君たちがいるわけ?」
戸惑ったような、不可解そうな声で発せられた言葉には綾小路たちも同感だった。
「時間厳守だと伝えておいたはずだ。早く席につきなさい」
「はーい」
綾小路ら男子たちの存在、そして真嶋先生の言葉にやや不服そうに返事をして軽井沢が最後の空席に座る。
「Dクラスの外村、幸村、綾小路、軽井沢だな。ではこれより特別試験の説明を行う」
「ちょ、ちょっと待ってよ。意味わかんないんですけど。試験の説明ってなに? だってもう試験は終わったじゃん。それに他の人たちは?」
即疑問を口にする軽井沢。
彼女の口ぶりからメールをちゃんと読んでいないことは明らかだった。
「今の段階では質問は一切受け付けない。黙って聞くように」
案の定真嶋先生は呆れたような、冷ややかな視線を送る。
何でもすぐ答えてもらえると思ったら大間違いだということだ。
「うわ出た。すぐそれなんだから」
「今回の特別試験では、1年全員を干支になぞらえた12のグループに分け、その中で試験を行う。試験の目的はシンキング能力を問うものとなっている」
軽井沢の不満の声を無視して先生は説明を開始する。
つまり今回行われる試験は考える力、考え抜く力を量るものだということだ。
20時25分。綾小路たちのグループの指定時間から約2時間後。
これから説明会を予定している生徒である堀北と平田、そして柚椰は2階フロアを訪れていた。
フロアには壁にもたれている生徒、携帯を弄りながら座り込む生徒など各々好き勝手に時間を潰していた。
「全員同じグループ……ってことじゃなさそうだね」
「どうだろうね。何とも言えないけど、何か意図があるのかもしれないな」
「それってどんな?」
意味ありげなことを言う柚椰に堀北が尋ねる。
その問いに柚椰は二人に示すようにある方向を指差した。
「あそこの生徒、今俺たちを見て携帯を操作したんだ。この時間にここに来た人間の顔ぶれを把握して誰かに教えている可能性もある」
「それって、これからの試験に関係することなのかな?」
「さぁ。今の段階では分からないね。平田はこの場にいる生徒の中で知っている人はいるかい?」
「うん。あそこにいるのはAクラスの森宮君。エレベーターの近くにいるのはCクラスの時任君だね」
平田の情報を聞きつつ、3人は目的の場所まで移動する。
そこには数人の男女が集まっており、その集団から一人の男子が出てくると3人に話しかけた。
「もし俺の勘違いでなければ、20時40分組なんじゃないか?」
声をかけて来たのはAクラスの生徒である葛城。
高校生とは思えないほどに風格のある男子だ。
「そうだよ。その感じだと葛城君もそうなのかな?」
「あぁ。よろしく頼む」
「こちらこそ。同じグループとしてよろしくね」
既に平田は同室の幸村から試験の概要を聞いていた。
そのため、同時刻にこの場所に集まった生徒が同じグループに属することになることも知っていた。
そしてそれは葛城も同様らしい。
「君たちとは一度改めて話したいと思っていたところだ」
「どういうことかしら。Dクラスの私たちに何を話すというの?」
皮肉を込めて堀北が問う。
「正直俺は今までDクラスの存在は眼中に入れていなかった。しかし前の試験の驚異的な結果を見れば、注目しないわけにはいかないだろう」
これまで注目していなかったDクラスが全クラスを差し置いて1位の結果を出した。
それは葛城も見る目を変えるに値したということだ。
「もしこれから先いつかは分からないが……DクラスからCクラスに上がってくるようであれば、Aクラスは容赦なく君たちを叩くだろう」
「おや、穏健派の君にしては随分と好戦的なことを言うじゃないか」
葛城の発言がおかしかったのかカラカラと笑いながら柚椰が話に加わる。
「君は?」
「Dクラスの黛だ。どうぞよろしく」
名前を聞いた葛城は平田から柚椰へと相手を変える。
「黛、先の発言はどういう意味だ?」
「そのままの意味だよ。君は争いを極力避けるタイプだと思っていたんだが。眼中になかったクズの集まりが一つ上に上がったところで君たちAクラスの敵ではないだろう? にも関わらず、君は随分とDクラスを警戒しているようだ。クラスの中で
「……」
図星だったのか葛城は黙り込む。
その反応が面白いのか柚椰は一層笑みを深める。
「君の気持ちは分かるとも。無人島試験で結果を出して少しでもクラスでの権力を強めたかったのにあの結果ではね……聞けば結果発表の時に随分と責められていたらしいじゃないか。リーダーというのは不憫だと思うよ。いつもは好き勝手に崇め奉っておきながら、負けたらその責任を全て押し付けられてしまうのだから」
「……君には関係のないことだ」
「今回の試験は是非とも頑張ってほしい。君にとっては汚名返上、一発逆転、名誉挽回の一大チャンスに他ならないんだ」
柚椰は葛城の肩をポンと叩いてエールを送る。
しかしそれは誰がどう見ても挑発以外の何物でもなかった。
現に葛城は口に出さないまでも顔を顰めている。
「君たちこそあまり調子に乗らない方がいい。クラスが入れ替わるようなことがあれば、CクラスやBクラスも君たちを警戒するだろうからな」
「ご忠告ありがとう。心に留めておくよ。ただ、ここから先卒業までずっと今の位置関係が続くと思っているのなら、それは少し楽観的と言わざるを得ないね」
「黛の言う通りだな。俺たちBクラスも隙あらばAクラスに上がるつもりだ。いつまでも居座れるとは思って欲しくないな」
二人の会話に入って来たのはBクラスの神崎だった。
どうやら彼も同じグループらしい。
「やぁ、神崎君も同じグループってことかな?」
現れた神崎に平田が問いを投げる。
「そのようだな。よろしく頼む」
「うん、よろしくね」
「クク、随分と雑魚が群れてるじゃねぇか。俺も交ぜろよ」
また一人、新たにこの場に現れたのはCクラスの龍園。
彼は同じクラスであろう生徒を3人引き連れて現れた。
「……龍園か」
彼を視界に入れた葛城は柚椰の時より一層険しい雰囲気を纏った
神崎もまた表情を引き締めて龍園を見やる。
「お前もこの時間に召集されたのか?」
「残念なことに、お前らと同じ時間のようだな」
龍園は葛城の問いに答えるも、その目線は柚椰に向けられていた。
「よぉ黛、どうやら同じグループらしいな」
「そうみたいだね。よろしく頼むよ」
「ハッ、テメェとよろしくするのは死んでも御免だな」
言葉こそ乱暴だが、龍園の表情はこれからの試験を想像してか楽しそうだった。
相手にされていないと察した葛城は顔を顰める。
「この組は学力の高い生徒が集められていると思っていたが、お前とそのクラスメイトを見る限りそうではないかもしれないな」
葛城のその言葉を龍園は鼻で笑う。
「学力だぁ? くっだらねぇな。そんなもんに何の価値がある」
「それこそ残念な発言だ。学業の出来不出来は将来を左右する最も大切な要素だ。日本が学歴社会であることを知らないのか?」
ふざける龍園に対して葛城が正論をぶつける。
たがそんなものを龍園が受け入れるわけもなく、呆れ返っていた。
取り巻きも龍園に合わせるように似たような反応を示す。
「俺はお前の非道さを許すつもりはない」
「あ? 非道さ? おいおい何のことだよ。具体的に教えてくれねぇかぁ?」
「……まぁいい。今回同じグループになったとしたら、ゆっくり話す時間もあるだろう」
その言葉に龍園はクツクツと笑った。
「そうかそうか、テメェは何も知らねぇんだな。まぁそうだろうな。ボケーっとしてぬるま湯に浸かってた結果、あんな無様を晒したんだ。テメェのことだ、自分たちがなんでボロカスにやられたか分かってねぇんだろ?」
「……何の話だ」
片眉を上げ不可解そうな表情をする葛城に対して龍園は何も語らない。
しかし一瞬だけ目線を柚椰に向けると再び人を食ったような笑みを浮かべる。
「いずれ分かるだろうさ。さて、そろそろ時間だな」
時間を確認すると、取り巻きを引き連れて龍園は指定された部屋に入っていってしまった。
彼が去ったことで、葛城もまた同じクラスの生徒と共に別の部屋に入っていく。それは神崎たちBクラスも同じだ。
「僕たちも部屋に入ろうか」
「そうだね」
「えぇ」
平田たちもまた、当てがわれた部屋に入った。
「これから特別試験の説明を行う。こちらから質問の有無を尋ねたとき以外は黙って聞くように。尚、質問の内容によっては答えられないこともあるのでそのつもりでいろ」
平田たちDクラスのメンバーに試験の説明をするのは茶柱先生のようだ。
「お前たちのことだ。既に説明を行ったグループの生徒から情報を得ているとは思う。だが、形だけでもちゃんと聞く姿勢は取るように。いいな?」
既に情報が共有されていることは予想済みなのか、そう前置きして先生は説明を行った。
「今回の試験は一年生を干支になぞらえた12のグループに分け、その中で試験を行う。このグループは1つのクラスで構成されるのではなく、各クラスから3人ないしは4人ほど集めて作られる」
そう言って先生は3人にハガキサイズの紙を配った。
「今配ったのはこのグループのメンバーリストだ。お前たちのグループは『辰』。この紙は退室時に回収するので、必要であれば今覚えておけ」
3人は渡された紙に目を落とした。
Aクラス;葛城康平 西川亮子 的場信二 矢野小春
Bクラス:安藤紗代 神崎隆二 津辺仁美
Cクラス:小田拓海 鈴木英俊 園田正志 龍園翔
Dクラス:平田洋介 堀北鈴音 黛柚椰
錚々たる顔ぶれが揃っていた。
各クラスのリーダー格がいるこのグループはこの試験においても重要な役割を持っているのかもしれない。
「今回の試験では、大前提としてAクラスからDクラスまでの関係性を一度無視しろ。そうすることが試験をクリアするための鍵になるからな」
先生の意味ありげな言葉に3人は注目した。
「今から君たちはDクラスとしてではなく、辰グループとして行動することになる。そして試験の合否はグループ毎に設定されている」
そう言って先生は新たに3枚の紙を取り出した。
紙はくしゃくしゃになっており、管理が雑なのではないかと疑ってしまうほどだ。
「この試験の結果は4通りしか存在しない。例外は存在せず、必ず4つのどれかの結果になるように作られている。分かりやすく理解してもらうためにそこに結果を記してある。この紙に関しても退出時に回収するのでこの場で確認しておくように」
書かれてある基本ルールは以下の通りだった。
『夏季グループ別特別試験説明』
本試験では各グループに割り当てられた『優待者』を基点とした課題となる。
定められた方法で学校に回答することで、4つのうち1つを必ず得ることになる。
・試験開始当日午前8時に一斉メールを送る。『優待者』に選ばれた者には同時にその事実を伝える。
・試験の日程は明日から4日後の午後9時まで(1日の完全自由日を挟む)。
・1日に2度、グループだけで所定の時間と部屋に集まり1時間の話し合いを行うこと。
・話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねるものとする。
・試験の解答は試験終了後、午後9時30分から午後10時までの間のみ優待者が誰であったかの答えを受け付ける。尚、解答は1人1回までとする。
・解答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。
・『優待者』にはメールにて答えを送る権利はない。
・自身が配属された干支グループ以外への解答は全て無効とする。
・試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。
以上が基本的なルールとして書かれていた。
そして、ここからが先生の言う4つの定められた『結果』というものだ。
・結果1:グループ内で優待者及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員にプライベートポイントを支給する。ポイントの内訳は優待者に100万ポイント、優待者以外の者に50万ポイントである。
・結果2:優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合、優待者には50万プライベートポイントを支給する。
「この試験の肝は言わずもがな『優待者』の存在だ。グループには必ず1人優待者が存在する。その優待者が誰かを見極めることが試験の行く末を左右する。例えば、平田が優待者だとしよう。この場合、解答は『平田洋介』となる。後はこれをグループ全員で共有すればいい。試験終了後の解答時間の間に全員が平田の名前をメールで打ち込めばそれで結果1が確定する。平田には100万ppt、堀北や黛を含めた他のメンバーは50万pptを手に入れる」
「随分と大きな額ですね……」
与えられるポイントの額の多さに平田は驚いていた。
「それだけこの試験が一筋縄じゃいかないってことよ。そうですよね?」
堀北の質問に答えるように茶柱先生は説明を続ける。
「結果2についてだが、これは優待者がその情報を明かさなかった場合。あるいは嘘の情報を広めるなどして最後まで正体を隠した場合に起こる。文面にある通り、この場合は優待者のみがポイントを得ることができる。尤も、半額の50万pptだがな」
「いずれにしても、今までの試験の中では最も大きなボーナスですね。優待者の見極めは重要なポイントになりそうだ」
優待者の重要性を知った柚椰はどこか楽しそうに笑っている。
しかし紙を見ていた平田があることに気づく。
「先生、残り2つの結果はどんなものなんですか?」
「それについては今から説明する。全員裏面を見ろ」
そう促され、3人は紙を捲って裏面を見た。
そこに書かれていた残りの2つはこうだ。
以下の2つの結果に関してのみ、試験中24時間いつでも解答を受け付けるものとする。
また試験終了後30分以内であれば同じく受け付けるが、どちらの時間帯でも間違えばペナルティが発生する。
・結果3:優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合。
答えた生徒の所属するクラスはクラスポイントを50ポイント得ると同時に、正解者にプライベートポイントを50万ポイント支給する。
また、優待者を見抜かれたクラスにはマイナス50クラスポイントのペナルティが課せられる。
及びこの時点でグループの試験は終了となる。尚、優待者と同じクラスメイトが正解した場合、解答を無効とし試験は続行となる。
・結果4:優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合。
答えを間違えた生徒が所属するクラスはマイナス50クラスポイントのペナルティが課せられる。
またその場合、優待者は50万プライベートポイント得ると同時に、優待者の所属するクラスはクラスポイントを50ポイント得る。
答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。
尚、優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、解答を無効とし試験は続行となる。
「なるほどね」
結果4つ全てを知った柚椰はこの試験の全貌を理解した。
その証拠に彼は面白そうに笑みを浮かべている。
「ここまでで何か質問があれば答えよう。何かあるか?」
「では質問があります」
茶柱先生が質問の有無を尋ねると柚椰が手を挙げた。
「言ってみろ」
「4つの結果によって発生するプライベートポイントとクラスポイントの増減が反映されるのは
「ほう……」
「「……?」」
柚椰の質問に対して茶柱先生は感心したように微笑む。
平田と堀北は質問の意図が分からなかったのか首を傾げている。
「それについてはこのあと説明しよう」
どうやらこのあとの説明事項に含まれている質問だったためか先生は説明を再開した。
「今回学校側は匿名性についても考慮している。試験終了時には各グループの結果とクラス単位でのポイント増減のみ発表する。優待者が誰だったか、解答者が誰だったかについては公表しない。そして先ほど黛がした質問についてだが、クラスポイントは結果発表後に反映される。プライベートポイントについても基本的には同じだ。だが結果3と4についてのみ、結果確定直後に学校から受け取り方法についてのメールを送ることになっている。受け取り方法だが、一括で受け取るか分割で受け取るかなど生徒が要望すれば好きにすることができる。仮IDを発行してそこにポイントを振り込むなんてことも可能だ。つまり本人さえ黙っていれば、試験後に発覚する恐れはない。もちろん隠す必要がなければ堂々と受け取っても構わん」
「なるほど」
満足する答えが得られたからか柚椰はニヤリと笑みを浮かべている。
「ここまでで理解したと思うが、3つ目と4つ目の結果は他の2つとは異なるものだ。グループ内でよく話し合い、どの結果を選ぶかよく考えて決めろ。以上で試験の説明は終了だ」
先生の説明を大まかに要約するとこうなる。
この試験は全てのクラスが互いに話し合い、考え合う試験である。
試験期間3日のうちにグループの中にいる優待者をいつ、どのタイミングで見極めるか。
そして4つの結果の中からどの結果を選ぶかを決める。
優待者は正体を明かすのか隠すのかの選択を迫られ、それ以外の者は優待者の存在を共有するのかしないのかの選択を迫られる。
そしてグループ内で優待者を抱えているクラスはいかにして優待者を守るのかも考えなければならない。
言わずもがな、結果3が確定してしまえばクラスポイントが減らされてしまうからだ。
「お前たちは明日から午後1時、午後8時に指示された部屋へ向かえ。当日は部屋の前にそれぞれグループ名の書かれたプレートがかけられている。初顔合わせの際には室内で必ず自己紹介を行うように。室内に入ってから試験時間内の退室は基本的に認められていない。そのためトイレ等は事前に済ませておくように。万が一我慢できなかったり、体調不良の場合はすぐに担任に連絡して申し出るようにしろ」
そこまで聞き終えると平田が挙手をした。
「先生、ルールには1時間の話し合いをするようにと書かれています。つまり自己紹介が終わっても1時間が経過するまでは室内にいなければならないということですか?」
「その通りだ。1時間が経過した段階で船内アナウンスでその旨を通達する。アナウンスが流れた後ならば室内に残ろうが退出して船内で好きに過ごそうが構わん」
「分かりました」
「それからグループ内の優待者は学校側が公平性を期し、厳正に調整している。優待者に選ばれた、もしくは選ばれなかったに関係なく変更は一切受け付けない。また、学校から送られてくるメールのコピーや削除、転送、改変などの行為は禁止だ。発覚次第ペナルティを課す場合もあるから注意しておけ」
つまりメールを弄って悪用することは認められていないということだ。
裏を返せば学校からのメールは真実を証明する確たる証拠になるということだ。
これは使い方によっては大きな武器になる。
その後先生から退室を命じられ、3人は部屋を後にした。
試験内容の説明が終わり解散した後、柚椰は屋上デッキを訪れていた。
時刻は21時過ぎ。デッキには数人程度の生徒がいた。
柚椰はデッキの端まで歩いていくとちょうどそのタイミングで携帯が鳴った。
確認するとどうやら電話のようで、画面には着信番号が表示されている。
その番号を見て笑みを浮かべると、彼は画面をタップして携帯を耳へと当てた。
「やぁ。かけてくると思っていたよ」
『その様子だと用件もお分かりのようですね』
「あぁ。君が俺に何の用でかけてきたのかは予想できているよ」
『ならば話は早いですね。周囲に誰かいますか?』
「いいや。時間も時間だからか人は少ない。デッキの端にいるから周りに人もいないから安心していいよ」
『そうですか。では、本題に入らせていただきます』
そこで一拍置くと電話の相手、坂柳有栖は言葉を続けた。
『黛君、仕事の依頼です』
「あぁ構わないよ。それで、内容は?」
『大まかな内容は無人島での試験と同様です。Aクラスを敗北へ導くこと。しかし今回は
その言葉を聞いた柚椰はおかしそうに笑った。
「ふふっ、単独最下位ときたか。今回の試験内容は聞いているかな?」
『えぇ。先ほど真澄さんから聞きました』
「ならこの試験の本質も、大きな鍵となる要素が何なのかも分かっているね?」
『勿論。その上で私は黛君にAクラスを負かしてほしいのです』
既に坂柳はこれから行われる試験の本質に気づいているらしい。
その上で先の要求をしてきたのだから、やはり彼女は怖い女だと柚椰は微笑む。
「分かった。君が女王になるための大詰め勝負だ。協力しよう」
『ありがとうございます。成功報酬は100万ppt。結果次第では前回同様ボーナスも付けさせていただきます」
「随分大きく出たね。前回の成功報酬の二倍じゃないか」
『それほど今回の試験は複雑だからですよ。それはお分かりですよね?』
「勿論。方法は前回と同じように俺に任せるという方針でいいのかな?」
『えぇ。しかし今回は少々
「条件?」
尋ねる柚椰に対して坂柳は優雅な笑い声を漏らす。
『ふふっ。綾小路君が動き出したとあって、私も少し遊んでみたくなったのですよ。黛君の実力がどれほどなのか。そして綾小路君がどう足掻くのか興味があります』
つまり坂柳は動き出した獅子に触発されたのだ。
そのため直接手を下せない今の状況でも早く戦いたくて焦ったくなったのだろう。
そんな彼女を微笑ましく思いながらも柚椰は茶化すように笑った。
「怖いことを言うね。彼を直接叩き潰す機会なんてこれからいくらでもあるだろうに。わざわざ俺のような小心者を使う必要があるのかい?」
『おかしなことをおっしゃいますね。貴方は紛れもない
「まさか。俺は君と正面切ってやり合うつもりはないよ。俺は君が必要とあれば手を貸すし、綾小路を助けろと言うのなら吝かでもない。だから君は俺のことなんて気にしないで彼だけを見ていればいいよ」
『ご冗談を。貴方のような風来坊を装った人ほど牙を剥けば
「まぁいいさ。それで、条件というのはなんだい?」
そう尋ねる柚椰に坂柳は条件の内容を語った。
『
1年生各クラス現在のクラスポイント
Aクラス:1160ポイント
Bクラス:1030ポイント
Cクラス: 680ポイント
Dクラス: 442ポイント