ようこそ人間讃歌の楽園へ   作:gigantus

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彼は歪な恋模様を知る。

 

 

 

 午後3時。作戦会議を終えた綾小路は呼び出された相手と落ち合うために船内を歩いていた。

 呼び出した相手は昨日試験のメールが来る前にも会っていた佐倉である。

 待ち合わせ場所は人の少ない船首付近と指定があった。

 

「(昨日みたいに誰かが来ないようにってことだろうな)」

 

 昨日、話している途中に櫛田が現れたことで佐倉はその場からいなくなってしまった。

 恐らくそれを受けての場所変更だろうと綾小路は察した。

 甲板に出て船首の方へ向かう。

 船は豪勢な設備に溢れているが、船首の方には景観を眺めるためのデッキがあるのみで基本的に生徒が訪れることは少ない。

 景観は旅行初日で既に十二分に堪能したからだろう。

 どうやら今も他には誰もいないようで、広いデッキをほぼ独占できる状態だった。

 そして目的の相手である佐倉だが、デッキの端の方で柱に隠れる様にして立っていた。

 大声で呼ぶのも変だと思った綾小路はゆっくり彼女に近づいていく。

 

「……だと思うんだけど……ど、どうかな?」

 

 佐倉との距離を詰めていくにつれ、ぶつぶつと喋る彼女の声が聞こえてくる。

 風に乗って声が運ばれてくるが、元の声量が小さいためか上手く聞き取れない。

 

「わ、私と、その……で、でで、デー……」

 

 誰かと話しているようにも見えたが、デッキには他に誰もいない。

 手に携帯を持っているわけでもないため、その様子は少々不気味さを感じさせた。

 

「佐倉? どうした?」

 

 声をかけていいものかと一瞬迷ったものの、綾小路は極力驚かせないように静かに声をかける。

 結果──

 

「トぅおおおおおおおおおおお!?!?」

 

 空へ羽ばたくのではないかと思わせるほどに佐倉は飛び上がった。

 奇声にも似た叫び声を上げるその様子に綾小路も驚く。

 

「い、いい、いつ、いつの間にそこにぃ!?」

 

「いつの間にも何も、今来たばっかりだ」

 

 綾小路が確認するが、やはり周囲には誰もおらず小動物のようなものもいない。

 つまり佐倉が話していた相手は幽霊か妄想の友達か、そのどちらかだろうか。

 

「聞いた!? 私の話聞いちゃった!?」

 

「飛び飛びでは。けど、何て言ってたかは流石に」

 

 そう答えると佐倉は安堵の息を漏らした。

 聞かれたら困る内容だったのか、あるいは単に恥ずかしいのか。

 真相は定かではないが、あまり深く触れない方がいいと綾小路は判断した。

 

「それで、俺を呼び出した理由は?」

 

「えぇと、その、だから……そ、そう! 今回の試験のことで悩んでて!」

 

 物凄く落ち込んだ様子で差し出された紙のリスト。

 それを受け取ると、書かれた名前に綾小路は目を通す。

 

 

 丑グループ

 A:沢田恭美 清水直樹 西春香 吉田健太

 B:小橋夢 二宮唯 渡辺紀仁

 C:時任浩也 野村雄二 矢島麻里子

 D:池寛治 佐倉愛里 須藤建 松下千秋

 

 

 丑グループに配属されたDクラスは綾小路にとっては知った顔が揃っていた。

 男子からは須藤と池。悪い奴でないことを綾小路は知っているが、佐倉にとっては同情せざるを得ないメンバーだ。

 女子も特別親しいわけでもない松下であるため、話し相手にはなりそうもない。

 この試験はどうしてもグループのメンバーだけで過ごす時間が生じる。

 傍にいれば多少なりともフォローできたものの、今回はそれも叶わない。

 指定された時間になればグループ毎に集まらなければならないため、孤立無援で戦う必要がある。

 こっそり携帯で連絡を取り合うことは出来るが、ディスカッションの場では何が命取りになるか分からない。

 現状、綾小路に佐倉の悩みをどうにかしてやれる術はなかった。

 

 

「もし他クラスに知ってる奴でもいればと思ったが……見事なまでに誰も知り合いがいない。友達の『と』の字も感じられないな……」

 

 元々綾小路にとって、他クラスの知り合いは一之瀬と神崎くらいのため、頼めそうな人物は思い浮かばなかった。

 一之瀬は彼のグループに、神崎は堀北と柚椰のグループにいるためどうしようもない。

 須藤と池に佐倉を任せるという案もあまり現実的ではなかった。

 

「すまん……俺にちゃんとした友達がいないばかりに」

 

「あ、謝ることじゃないよっ。私の方が全然友達いないしっ!」

 

 気がつけばどちらが友達が少ないかを、どちらが下かを競う二人。

 お互いの友達がいない自慢を一通りしたところで別の話題に切り替える。

 

「ところで、俺も佐倉に少し聞きたいことがあったんだがいいか?」

 

「え、私に? なに?」

 

「最近山内に声をかけられたりしてないかと思ってな」

 

「山内君……? ううん、特にはないよ。どうかしたの?」

 

「そうか。いや、何もなければいいんだ」

 

「……? うん」

 

 無人島での試験の際、山内は佐倉を狙うと綾小路にこっそり宣言した。

 応援してほしいという頼みは結局保留のままだったが、あれから山内の方から再度頼まれたことはない。

 別に関係のないことだと言われればそれまでだが、何故か彼は気になった。

 

「(思えば、なんであの時俺は腹が立ったんだ……?)」

 

 思い返すのは、山内が佐倉を狙うと宣言したときの一幕。

 元々池と同じく櫛田が気になっていたはずの彼だったが、いつの間にか佐倉に鞍替えしていた。

 理由は単純明快で、櫛田の競争率を考えての計画変更。

 模試の結果が振るわなかったから志望校を変えるようなもの。

 第一志望に落ちたときのために滑り止めの学校も受けるようなもの。

 言ってしまえば佐倉を狙う相手などいないだろうと判断した上でのことだ。

 普段俯いていることが多い佐倉だが、その顔立ちは紛れもなく美少女だ。

 加えてスタイルも整っている。

 そこに山内は目をつけたのだろう。

 勿論、綾小路と佐倉はただのクラスメイト。恋人でもなければ特別親しい間柄でもない。

 だから山内が彼女を狙おうと、綾小路には何の関係もないしどうでもいい。

 そのはずだった。

 しかし、()()()綾小路は山内の頼みを保留にした。

 何故か山内に対して腹が立った。

 山内の動機が不純だったからだろうか。

 彼に狙われる佐倉を気の毒に思ったからだろうか。

 明確な答えは分からない。

 今の綾小路には結論を出すことは不可能だった。

 

「とりあえず、何かあったら連絡してくれ。基本的には出られるはずだから」

 

「……いいの?」

 

「あぁ。俺にしてやれることはそれくらいだからな」

 

 頼りになるのかならないのかも分からない発言に、佐倉は子供の様に目を輝かせる。

 ちょっとしたやりとりが嬉しいのかもしれない。

 

「必ず連絡するねっ!」

 

「お、おう」

 

 あまりの喜び様と勢いのある言葉に少し後ずさる綾小路。

 なんだかんだ佐倉も少しずつ積極的になってきているのかもしれない。

 少しずつ前へ、一回り成長しているのかもしれない。

 そう好意的に解釈して綾小路は彼女と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぎぎぎぎぎぎぎ……綾小路の奴ぅぅぅ!! なんで佐倉とぉぉぉぉ……!!」

 

 壁に張り付きながら山内は恨めしそうに歯ぎしりしていた。

 何を隠そうこの男、綾小路と佐倉のやりとりを見ていたのだ。

 厳密には物陰から盗み見ていたというのが正しい。

 彼はたまたま船内をブラブラと歩き回っていたところ、デッキに出ていく綾小路を見つけた。

 暇を持て余していた山内はなんとなくといった理由で後をつけた。

 するとそこで、綾小路が佐倉と何やら親しげに話しているところに出くわしたのだ。

 その光景を見るや否や山内は急いで物陰に引っ込み、様子を見張ることにした。

 彼は佐倉と親しげに話している綾小路を見て激しい嫉妬の念に駆られた。

 未だロクに会話も出来ていない自分とは違い、親しげに話す綾小路。

 佐倉も綾小路に対しては心を開いているのだろうと理解させられてしまうような光景。

 気がつけばその場から逃げる様に立ち去っていた。

 一体何故、どうして綾小路なのだろう。

 山内の頭を埋め尽くすのは疑問と嫉妬だった。

 

「おや、山内じゃないか」

 

 ちょうど通路を通りがかった柚椰が壁に張り付いている山内に気づいて話しかけた。

 

「──ッ! な、なんだ黛か」

 

 いきなり話しかけられて肝を冷やした山内だったが、相手が柚椰だと分かるとホッと息を吐き出す。

 

「それで、どうしたんだい? 壁に張り付いてウンウン唸って……どう見ても不審者だったけど」

 

「ちょっと色々あってな……」

 

「何かあったなら話を聞くよ?」

 

 柚椰がそう言うと、濁った山内の目に僅かに光が差し込んだ。

 

「悪い、ちょっと聞いてもらってもいいか?」

 

「いいよ。じゃあ場所変えようか」

 

 通路で話すことではないのだろうと察した柚椰は山内を連れて屋上カフェに移動した。

 二人は人に聞かれないように奥のテーブル席を選び、適当に飲み物を注文する。

 ウェイターが持ってきた飲み物を一口飲んだのをきっかけに、山内はポツポツと話を始めた。

 

「実はさっき、綾小路と佐倉が話してるとこに遭遇してな」

 

「へぇ、何の話だろう」

 

「そこまでは分かんなかったけど、佐倉が楽しそうでさ……」

 

「まぁ清隆は佐倉の数少ない友達だからね。友達と話すのは誰でも楽しいものさ」

 

 山内は俯いてテーブルを見つめている。

 

「ここだけの話なんだけどさ、俺、佐倉のこと良いなって思っててよ……」

 

「おや、君は池と一緒で桔梗のことが気になっていたんじゃなかったのかい?」

 

 綾小路から事情を既に聞いているが、敢えて知らないふりを装ってそう尋ねる。

 すると山内は以前綾小路に語ったのとほぼ同じ内容を柚椰にも語り聞かせた。

 櫛田の競争率が高いこと。

 それに比べれば佐倉は目立たず、彼女を狙っている男子もいないこと。

 見た目も良く、元グラビアアイドルということでスタイルも抜群。

 彼女の魅力に他の男子が気づかない今こそ狙い目なのだと語った。

 

「つまり君は、何とかして佐倉と恋人になりたい、ということだね?」

 

「あぁ! 佐倉みたいなタイプは一回付き合えば何でもしてくれると思うんだ!」

 

「何でも」

 

「あんなことやこんなことでも、健気に応えてくれるぜきっと……胸もデケェし」

 

「まぁそれは置いておくことにして、彼女と友達にならないとどうにもならないんじゃないかな?」

 

「そこなんだよ。俺も無人島の時に話しかけたりしてたんだけどさ、なんか壁があるっつーか」

 

「元々人見知りというか、あまり人と関わるのが得意じゃない子だからね」

 

「なんで佐倉は綾小路とは普通に喋れるんだ……」

 

「なるほど……」

 

 山内が何を思い、何を感じているのかを柚椰は具に感じ取っていた。

 その感情を何と呼ぶのか、何故そのような感情が芽生えるのかを理解していた。

 詰まる所、山内は綾小路に嫉妬しているのだ。

 自分が満足に会話も出来ない相手に対して、親しげに話すことが出来る綾小路に。

 佐倉が心を開いている綾小路に。

 

「君は彼女がどうして人見知りなのか、考えてみたことはあるかい?」

 

「えっ?」

 

「だから、彼女がどうして人と接することを苦手としているのか、ということだよ」

 

「えーっと……生まれつきとか、そういう性格だからとかじゃねぇの? まぁ新しく友達作るのが緊張するってのは分からんでもないし」

 

「そうかもしれないね。でも井の頭とか王も、今でこそ桔梗と仲が良い二人も入学当初はあまり周囲に馴染めていなかったよね。あの二人と佐倉との間に何か違いがあると思う?」

 

「佐倉の方が可愛い」

 

 間髪を容れずに答える山内に柚椰は苦笑いを浮かべる。

 

「そういうのではなく、内面の違いだよ。彼女にも桔梗は何度か話しかけたりしているわけだろう? もし井の頭たちと同じようなタイプだったなら、今頃桔梗のグループにいたはずだ」

 

 そう言われると山内は思い当たるところがあるのか考え込む素振りを見せる。

 

「そういや確かに……軽井沢ならまだしも、櫛田ちゃんにも心開いてねぇよな佐倉って」

 

「女子相手でさえそんな状態なんだ。男子の友達なんて皆無に等しい。俺も話しかければ普通に会話をしてくれるくらいにはなったけど、彼女が自主的に話しかける相手は清隆くらいだろうね」

 

「マジで、なんで綾小路? 理由が分かんねぇんだけど……地味だから?」

 

「まぁ馬が合うというのは確かにあるかもしれないね。でも、人と関わることを避けていた佐倉がどうして彼には心を開いたのか。そこには明確な理由があるんじゃないかな」

 

「明確な理由?」

 

「佐倉が元グラビアアイドルだということは勿論知っているね?」

 

「そりゃまぁ」

 

「グラビアアイドルというのは、俺たち一般人にとってはどんな存在かな? あぁ、これは一般的な男子からのイメージと、男女問わず世間からみたイメージで分けて考えてみてほしい」

 

 山内は暫し考えた後、その質問に答えを出す。

 

「男から見たらそりゃぁ、アレだろ。憧れっつーか、アイドル? 巨乳だし可愛いし、雑誌に載ってたらついつい見ちまうよな。世間から見たら……芸能人?」

 

「正解だ。一般人にしてみれば、雑誌やテレビに出てる人間というのは特別な存在なんだ。だからそういう存在が同じ学校にいたら、同じクラスにいたら、どうにかお近づきになりたいと思ってしまうものさ。芸能人と友達というのは、それだけで自慢できるステータスになるだろう?」

 

「まぁ確かにそうかも……って、それが一体何の関係があるんだ?」

 

「つまり、自分と仲良くしたいからではなく、芸能人だから仲良くしたいという人が大勢やってくるということなんだ。雑誌の1ページに載った一枚の写真を見て、可愛いから、スタイルがいいからお近づきになりたい。昔有名人だったから仲良くなりたい。そんな理由で人が次々やってきたら本人は何を思うだろう? 自分という人間の中身を知らない、知りもしない人なんて突き放すんじゃないかな? そして気がつけば人と関わる事を、人と接する事を避けるようになってしまう」

 

「佐倉がそうだって言うのか……?」

 

「勿論これは俺の勝手な想像さ。でも、そう考えると辻褄が合ってこないかい? ましてや彼女が雫として活動していたのは中学の頃、周りにいるのは中学生。思春期に成り立ての男子が彼女に対してどんな感情を向けるのかは想像に難くない。異性に対する不信感。周囲に対する不信感。所謂トラウマを持ってしまってもおかしくはないんだ」

 

 これは一から十まで全て柚椰の想像でしかない。

 しかし本当の事情を知らない山内にとってそれは尤もらしく、現実味のある話だった。

 佐倉のことをよく知らない、内面に触れていない彼にとって柚椰の言葉は真綿のように吸収されていく。

 

「じゃあ、綾小路とは喋れるってことは……」

 

「清隆が信用するに値する人間だと彼女が判断した、ということだろうね。ほら、清隆って人畜無害そうだろう? なにかきっかけがあって、彼なら安心できると思ったんじゃないかな。だから君が佐倉と仲良くなりたいのなら、まず自分が誠実だということを彼女に分かってもらうことから始めるべきなんじゃないかな」  

 

「ってもよ……今現在マトモに会話も出来ない状態だぜ? そんな状態で分かってもらうったってなぁ……」

 

「会話がダメなら行動で示すのはどうだろう?」

 

「行動で?」

 

「うん、例えば彼女が困っているときにさりげなく助けてあげるとかね。あとはプレゼントを贈ってみるのはどうだろう?」

 

「なるほどな……プレゼントか……アリかも」

 

 顎に手を当て、山内は考え込む。

 何かプレゼントをして、それをきっかけに関わりを作るという作戦も有効だろうと思い始める。

 

「佐倉が喜びそうな物ってなんだ? 俺の手持ちのポイントで買えるかな……」

 

「俺もよく分からないけど、やっぱり彼女の趣味の物とかの方がいいかもしれないね。写真が趣味だからカメラや、それ関係のアクセサリーとかかな」

 

「あーいいかも……カメラって値段どんぐらいだ? やっぱ高ぇかな?」

 

「ピンキリだと思うよ? 画質に拘るなら、それこそ20万くらいは普通にするだろうね」

 

「やっぱそうだよなぁ……俺ポイント全然貯めてねぇからなぁー」

 

「あ、でも今回の試験でポイントが貰えれば買えるんじゃないかな? 上手くいけば最低でも50万は貰えるわけだからね」

 

「──! 確かに。つまり俺が優待者を当てれば……」

 

「50万ポイントが手に入る上に、クラスポイントも貰える。彼女にプレゼントも出来て、クラスの皆からも尊敬されるかもしれないね。君は一躍ヒーローだ」

 

 柚椰のその言葉を聞き、山内の目が爛々と輝き出した。

 今回の試験へのモチベーションがみるみるうちに上がってきているのだろう。

 

「結果を出せば周りの君を見る目も変わるだろう。勿論、佐倉も君を少しは認めてくれるんじゃないかな? 君が本気を見せて、熱意をぶつければ自ずと結果は付いてくると思うよ」

 

「俺の本気……」

 

 山内の目に光が宿り、熱意の炎が灯る。

 そんな彼の気持ちをさらに刺激するように、柚椰は駄目押す。

 

「これは俺の中学のときの友達の話なんだけどね。彼もクラスの女の子のことが好きだったんだ。それである日の放課後、教室に呼び出して勇気を出して告白したんだ」

 

「どうだったんだ?」

 

「結果は惨敗。『友達としか見れないから』と言われてしまったらしいんだ。それから少しして、彼はあることを知ってしまった。なんとその女の子は、彼の親友のことが好きだったんだ」

 

「マジか……それキッツ……」

 

 柚椰が語るその男子に対して、山内は感情移入しているのか辛そうな表情を浮かべる。

 

「最初は親友が相手だったってこともあってか、自分の恋心に折り合いをつけて彼女を応援しようと思ったらしい。でも、彼はどうしても諦めきれなかった。それほどまでに彼女のことが好きだったんだろうね。それから彼は、なんとか女の子に振り向いてもらえるように努力した」

 

「それで、どうなったんだ?」

 

「彼はその子に意識してもらえるようにアプローチをしたり、自分を磨き続けた。そして意を決してもう一回告白した。自分がどれだけ好いているか、どれだけ本気なのかを真剣に伝えた。結果、彼は見事彼女を()()()()()んだ」

 

「スゲェなそいつ……」

 

「だから、君が佐倉と親しくなりたいのなら、どれだけ真剣かということを分かってもらうことが何より大事だね。この試験はそのための第一歩だと思えばいい」

 

 その言葉で山内は奮い立った。

 

「よし、俺やるぜ……! 俺は佐倉を手に入れてみせる!!」

 

「うん、頑張って。陰ながら応援しているよ」

 

「おうサンキュ! つか綾小路じゃなくて最初から黛に相談すれば良かったわ」

 

 そう言うと彼は上機嫌でカフェから出ていった。

 今回の試験で、彼がどのような結果を出すのかはまだ誰にも分からない。

 

 

 

 

「ふふっ、これはこれで面白くなりそうだ」

 

 カフェの一角で一人、笑みを浮かべる男が何を考えているのかも、まだ誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがきです。
黛君の友達の話ですが、
『二人は付き合った』とか『二人は両思いになった』とは言っていないんですよね。
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