召喚獣狂騒曲   作:ソウブ

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†六章†2

 

 

 

「それじゃあ、準備は良いな?」

 俺はメリルから託されたランタン型の魔道具を取り出す。

 皆が頷く。

「引野、レッダー、このランタンに火をつけてくれ」

「わかった。レッダー、【ファイヤーデストラクション】」

 引野がゲームのコントローラーを取り出し僅かな操作をすると、レッダーが手を(かざ)し、ランタンに火が灯った。

 

 すると、俺たちの目の前に突然門が現れた。灰色の数メートルはある城門のようなものが、厳かに鎮座している。

「これが、オールグールへの扉……!」

 俺は一度深呼吸し。

「行くぜ!!」

 皆それぞれ「おー!」だの「グルァァア」だのと声を上げて、自動的に開いた扉の先へ足を進めた。

 

 扉の先は、ドーム状の異空間だった。禍々しい深緑色に彩られた。メトロイドプライムハンターズのゴリアと戦う場所に似ている。

 

 中心には、巨大な蠢くもの。どす黒い緑の球体表面に無数の口があり、無数の触手が生えている。さらに長い触手の全面に口がある。

 

 あれが――‡【貪食生命体オールグール】‡!!!!

 

 皆が体を緊張させた。しととねちゃんはアリスと雫の手を握っている。

 

「禍々しいダークすぎるぜ!!!!!!!!」

「ラストバトルかぁ……ぼくは二戦目だけど」

「うおおおおおおおラスボス戦!!!! 燃えて来たぜえええええええええええええええええええええええェェェ!!!!!!!」

「げぼおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「うわきったねえ!!!! なぜ吐いた救世主!!!!!」

「オールグールが、流石に邪悪過ぎたぜ、吐いちまった」

「そこは吐かずに我慢しろよ!!! 今大事なラストバトルだろうが!!!!」

「うるせえ吐き気は吐いた方が楽になるんだよ!!!!!!」

 

「順調に安全に終わることを望むよ……」

「そんなことあるわけねえだろ。覚悟決めろ!」

 引野の背中をバシン! 

「君は叩くな。僕を叩いていいのはレッダーだけだ」

 

 オールグールが蠢く。

 

「行くぜツキ! 【ウルトラミラクル】!!!!!!」

「はいよー!」

 

【勝利条件:‡【貪食生命体オールグール】‡に触れろ】

 

「ここに来てシンプルな条件だね……今まで頭おかしい条件しかなかったのに」

「分かりやすくていいだろう!!!! ようはあいつに触れるだけでいい!!!! 簡単だぜ!!!!!」

「あんな口ばかりの奴にどうやって触れるの?」

「よく見ろ。口が生えて無い緑色の表面があるだろ。そこに触れればいい」

「あ、ほんとだ。それじゃあ、あそこを目指せばいいんだね(`・ω・´)」

 

「でもめっちゃ触手がうねうねしてますよ。近づけるんですか?」

「そんな時のしととねちゃんの能力だろ。自分の《サモンアビリティ》も忘れたのか?」

「なんだァ……てめぇ……? 切りますよ」

「しととねちゃん、キレた!!( ゚Д゚)」

「まだ切ってません!!」

 

「わ、我ら†煉獄ジャスティスズ†なら敵はない……!」

「雫ちゃん……震えてる……大丈夫だよ……」

 アリスが雫の手を握ってあげていた。

 

「わざわざ近づかなくても、ここから攻撃すればいいでしょ。レッダー、【ファイヤーデストラクション】!」

「燃えろおぉ!」

 

 レッダーが放った炎はオールグールが触手をひとたび振るうと消えた。触手の表面にある口に喰われたのだ。

 

「ドリルゴンを突っ込ませても喰われそうだなァ」

「ライライはとりあえず突っ込むと思ってたぜ」

「オレは脳筋じゃねえ。バトルするなら勝たねえと気持ちよくねえだろ。クチャクチャ」

「クチャクチャすんな死ね」

「あぁん!?」

 

 

「【ハッピークロニクル】!」

 

 

 しととねちゃんが決めた、とばかりに叫んだ。【ハッピークロニクル】は、発動までに溜め時間を必要とするが、『あり得ない幸運を起こしてくれる能力』だ!!!!

 

「そしてあたしは、この戦いまでにめっちゃ溜めてました! だから今、何回も使えます!!!! 大盤振る舞い!!!!!!」

 

「よし! 【ハッピークロニクル】が発動したならなんか運良く行けるだろう!!!! いくぜおい! ツキ!!!」

「合点(`・ω・´)」

 

 ツキに後ろから抱きつかれ、ツキは俺の翼と成る!!!!! オールグールへ向かい飛翔!!!!!

 ドリルゴンとシュバルツェスツインドライブも並走する!!!

 

 触手が次々と襲い来る!!!!!! 無数の触手が、来る。

 

「【ファイヤーデストラクション】」

 炎が舞う。

「【ピンポイントファイナル】」

 2メートルほどの竜、ドリルゴンがドリルって突っ込む。

「【ジャイアントダークネス】」

 シュバルツェスツインドライブが漆黒のオーラを纏い、強化、凶化された。一撃無双の黒。爪を揮う。

 

 それらの攻撃が、触手の表面に無数とある口を逸れて、猫の額ほどの表皮に攻撃を当て、触手攻撃を逸らす!!!!

 

 なぜこうも確実かつ的確かつ幸運的に攻撃を逸らせているのか。 

 

【ハッピークロニクル】の力でオールグールの攻撃を逸らす確率が上がっているからだ!!!!!!!

 

「わたし前から思ってたんだけど【ハッピークロニクル】ってかなりチートだよね!!」

「ふふん。当然の有能ですよ。なにせあたしはアリスちゃんの召喚獣ですからね!」

 

 そうして、無数に蠢いて防壁と化す触手に、僅かな間隙ができた。

 ここを、ぶっ飛んでいければ――!

 

「いけェ!」

「グチョアァァ!!!!!」

「「ぎゃあっ!!??」」

 俺とツキはドリルゴンに後ろからタックルされ、ぶっ飛んだ。

 オールグールの目の前まで肉薄していく。

 

「くっそいてえから悪質に限りなく近いが良質タックルだったぜ!!!」

 

 オールグールの表皮。どす黒い緑色の場所に、届く。

 

 手を伸ばす。

 

 表皮に俺の(てのひら)が触れる。

 かに思われた。

 

 俺が触れようとした表皮に、突如口が生まれる。

 手を伸ばしていた右腕が、喰われた。

 

「ぐぎゃあああああああああああ!?!?!?!?」

「ご主人様ああああああああああああああああ!?!? 痛み止めはわたしと少し一体化して流したけどおおおおおおおおおお!?」

 

 ショック死はせずに済んだ。

 だがやべえやべえ!!! オールグールに触れれなくても条件達成できずに終わりだし、ここにあと少しでも留まれば喰われる!!!

 

「しととねちゃん! 【ハッピークロニクル】でなんか運いい感じに助けてくれ!!」

「すまみせん! 【ハッピークロニクル】大盤振る舞いし過ぎて溜めた分尽きました!!!」

「お前ええええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 他のやつじゃ触手が邪魔してここまで近づけないし、どうすればいいんだ。

 

 

【半分条件達成:腕が捕食されたとはいえ触れたと言えなくもありません】

 

「あ!? なんだ!? その言いようは!? 【ウルトラミラクル】に意思があったのか!?!?」

 

【半分のみですが起動しますか?】

 

「よくわからんがするぜ!!!!!!!」

 

【ウルトラミラクル:起動】

 

 薄い黄金のオーラが纏われた。いつもほどの濃さはない。力の(たぎ)りもいまいちだ。しかし、戦える。

 

「なんかわからんが半分発動できた!!!!!」

「大海さん自分の《サモンアビリティ》ぐらい把握しておいてくださいよ!!!!」

「うるせえ初手ぶっぱでタンク切れしたやつに言われたくねえ!!!!!!」

 

 触手が目の前まで迫っていた。

 

「ウルッ!!!!!」

 

 左拳で殴ると、腕は喰われず、弾き返すことに成功した。

 

「戦えるッ!」

 

 俺は飛翔する。ツキを背負ったまま。先までは抱えられてたが、今は俺が背負いツキがしがみつく番だ。

 

「うおおおやったったれご主人様!」

 

 触手が無数に振るわれる。

 しかし俺はその全てを左拳で殴りつける。防いだ。防げた。

 

「今度はこっちの番だぜ!!!!」

 

 オールグールまで飛翔し、肉薄し、何度も殴りつける。

「ウルウルウルウルウルウルウルウルウルウルッッッ!!!」

 薄く光る黄金の拳が喰われることなく無数の口ごとオールグールを殴っていく。

 

 されど、はたと気づく。

 

「こいつ、あまりダメージを受けていない!?」

「やっぱり半分だとダメなのかな!?><」

 

 無傷とまではいわないが、何度も殴りつけたにもかかわらず、オールグールは動きが大して鈍ることもなく健在だ。

 ツキが言うようにやはり半分発動では威力が足りないのだ。決定打に欠ける。

 

 このままではダメージレース的に俺の方が負けてしまう。

 

 俺も無傷ではないのだ。止血は痛み止めと共にツキがしてくれたが右腕が無く、体力は消耗していく一方だ。【ウルトラミラクル】も半分発動だから無敵ではない。触手の直撃を受ければ危ない。いつまでも避けて弾いてはいられないだろう。

 

 

「今こそオレの出番だろオォォ!!!!!! 【ピンポイントファイナル】」

 ドリルゴンが高速回転。尖った頭を究極ドリルと化し触手を"貫いた"。

 

「喰われない!?!?」

「ご主人様が消耗させたから攻撃通ってるんだよ! やったね!!>ワ<」

 

「これもう後はぶっぱでいいでしょ!!!! ゲームならコンボ完全に決まった状態だよ!!」

 眼鏡をクイッと上げて引野も攻勢に参加する。レッダーの炎が触手を炭化させた。

 

「わ、我もかっこいいとこ魅せる!!!」

 雫が怯えながらも戦う意思を示し、シュバルツェスツインドライブをけしかける。

 

「……しととねちゃんも……あと一回だけでもいいから頑張って……」

「わかりましたアリスちゃん。あと一回【ハッピークロニクル】発動してみせます!」

 

 

「今こそ仲間の力を合わせる刻!!!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおお」

「ああああああああああああああ」

「……んんんんんんんん」

「やってやりますよおおおおおおお」

「いっけええええええええええ」

 ギャギャギャギャギャ。

 ボボボオオオオオオオオオオオオオオ。

 ドガンドガン。

 キラリン。

「ウルウルウルウルウルウル」

 

 

 全員の攻撃が命中していく。オールグールはボロボロだ。触手も、無数の口も、どす黒い緑色の表皮も崩れていく。 

 

「これで最後だァ!!!」

 

 俺は左拳を引き絞り、打ち放つ!!!

 

「ウルァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 最後の一撃が決まる。そして――

 

 

 爆発。

 

 オールグールが爆発。

 

 光。

 

 視界が光に包まれた。

 

「やったか?」

 

 やってなかった。

 

 特撮のように敵を倒した時の爆発かと思ったが、違った。

 

 なぜならその光から、大量のどす黒い緑色をした生物が溢れ出て来たからだ。

 

 何体もの、オールグールに似た巨大生物が生まれ出でた。

 

 大口大喰らいの化け物共が視界を埋め尽くす。ラスボス戦会場を埋め尽くす。

 

「なんだ、これ………………」

 誰もが絶句していた。

 

 

 ――――――――――――――――――――。

 

 

 ――――オールグールは、次善策に出たのだ。

 

 元々、オールグールが††Summoned Beast Battle Royal††を開始した理由は、召喚者同士を殺し合わせ、それによって発生するエネルギーを収集しつつ、最後に生き残った高純度なエネルギーを持つ召喚者と召喚獣を喰らうことが目的だった。蟲毒で熟成した最高級の食事をすることが最大目標だったのだ。

 されどその目的は大海代悟らに阻まれた。だから次善策に出た。

 次善策は、今まで収集したエネルギーを全て使用し、【貪食】の怪物を生み出して自らの脅威と成り果てた召喚者達を葬ること。

 このまますべてを喰らい尽くす方向にシフトしたのである。

 

 

 

 ――俺は力の限り叫んだ。

 

「撤退撤退撤退いいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

 今の状況状態コンディションで、この化け物共には確実に勝てないと本能で悟ったからだ。

 

 魔道具ランタンを取り出す。

「引野頼むぅ!!」

「レッダー!」

 ランタンに火が灯され、門が現れる。俺たちは命からがら門に飛び込んでいった。

 

「閉めろぉ!!!」

「閉める―!!!」

 ツキと一緒に急いで門を閉め、ランタンの火を消した。

 門が消える。

 

 オールグールが生み出した化け物共は、これで追ってこれないはずだ。

 

 ――空間に(ひび)が入った。

 

 罅割れた空間が盛大に破砕され、先の化け物共が雪崩出て来た。

 

「うおおおおおおおあああああああ!!!???」

 

 俺たちが扉を開くまでもなく、奴らにとってはこちらの世界にやって来ることなど造作ないことだったのだ。

 

 大急ぎで逃走。俺たちは走る。街を走る。大通りを走る。後ろから化け物共が追ってくる。

 

 ただ追ってくるだけではない。周囲にいる一般人を喰い殺しながら突き進んでくる。

 

「ラストバトルって言ったの誰ですか!!!!????」

「ぼくラストバトルって聞いたからなんとか戦ったのにいいいいいいいいいい! もう戦いたくない!!!!!」

「オレはまだバトルが出来ていいけどなあああアアアアアアアアアアアア」

 

「マスター頑張れ!!!!!!!!!! バシン!!!!!」

「いや今叩くのは転びそうになるからやめて!?!?!?!?」

 

「ふえええええええええええええええええええええ」

「雫ちゃん……泣かないで……一緒だから……」

「あたしが雫ちゃんもアリスちゃんも護りますからあああああああああああああ!!!」

 

「ねえわたしたち今まで割とドタバタやって来たけど今回シャレにならなくない!?!?」

 

 沢山の人たちが死んでいる。現在進行形で死者が増えていく。

 

「くそっくそっくそっ!!!!!」

 

 俺たちは、敗走を余儀なくされたのだった……。

 

 

 

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