召喚獣狂騒曲   作:ソウブ

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†最終章†1

 

 

 

 下波に雫の両親を任せた俺たちは、【貪食】を探して街を歩いていた。

 

 また【貪食】を各個撃破するために、奴らが一体でいるところを狙うつもりだ。

 

 

 そうして、元民家が並んでいたであろう一角で【貪食】を見つけた。

 

 しかし、奴らは一塊(ひとかたまり)になって行動していた!!!!

 

 どす黒い緑色の化け物が大量に蠢いている。ひしめき合っている。

 瓦礫を踏み潰し、民家を押し潰し、我が物顔で闊歩する魑魅魍魎たち。

 その数、五。

 奴らの残りは、五体だ。

 その五体が、共に行動している。

 

 これでは各個撃破などできない。

【貪食】は各個撃破されないように一塊になっている。

 奴らも学習するのだ。

 

「一旦撤退だ!!!!!」

 

 

「というわけだ。出戻りで悪いが、力を貸してくれ」

 俺たちは下波のところへ戻り、異世界へ相手を飛ばす《サモンアビリティ》で、五体で行動している【貪食】を分散してもらおうと考えた。

 

「しゃーねーなあ。ここまで来たらやってやるが、戦いはしないからなあ?」

「わかってる」

「お母さんとお父さんを護ってもらうっていうのはどうなるの?」

 雫が心配げに訊く。

「そこの娘の両親は異空間に保護しているから問題ない。まあワシが死んだら二度と戻せないんだがな! ヒャハハ!」

「じゃあ死んじゃだめ」

「絶対に死ぬな」

「へいへい。死にそうになったら護ってくれな」

「わかってるぜ」

 

 

 俺達は下波を加えて、【貪食】が闊歩する区画へと走った。

【貪食】達が見える地点に着くと、俺はさっそく下波にゴーサインを出す。

 

「しゃあ! ブラックコイン、【ブラックボックス】発動お! ヒャハア!」

 下波が黒一色のコインにコミカルな目と口がついた召喚獣を指で弾き、その手に掴んだ瞬間。

【貪食】をひと気のない場所へそれぞれ転送する《サモンアビリティ》が発動する。

 

 これで一体一体、各個撃破できる。

 俺はそう思った。

 けれどそうはならなかった。

 

 ――なぜか、目の前で、下波が【貪食】の大口に喰われていた。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 下波は死んだ。

 ラーメンを奢ることができなくなった。

 雫の両親を戻す方法も失われた。

 くそったれ。

 

 さらに異常は続く。

 

 俺の視界に映る景色が変わった。

 

「え!!!??? なになになになに!?!?!!?!? なにが起こったの!???!!?!?!!?!?」

 ツキが混乱してキョロキョロと周囲を見回している。

 

 ここは、ひと気のない廃工場か?

 記憶が確かなら、ここは最悪の召喚者、荒谷戒と決着をつけた場所だ。

 

 俺は転移させられた?

 転移させるのは、俺達側だったはずだ。

 

 下波が裏切ったわけではないだろう。下波は【貪食】に喰われたのだから。

 

 なら。

 ならば。

 

 俺は、恐らく真実だろう推測を立てた。

 

【貪食】は、俺達が分断作戦を決行し、各個撃破してくることを想定していたのだ。

 そして、対策の魔法だか何だか、とにかく特殊な力を発動していた。

 俺達は、それぞれ一人一人が【貪食】の元へ道連れに転移させられたという推測。

 転移の発動者を瞬時に喰い殺す効果のおまけつきで。

 

 今、俺の目の前に【貪食】が一体出現したことで、その推測は十中八九的中してしまっていると、理解した。

 

【第六貪食】《カニバ》

 

 それがこの化け物の名だと、魂に理解を叩き付けられた。

 

 全員でもギリギリ勝てるかどうかの相手に、俺達はたった一組で挑まなければならなくなったってことだ。

 

「うっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? 失敗したの!?」

 ツキの叫びが、簡単に今の状況を表していた。

 

 

 

 

 

 

「一体何がどうなってるんだ!!???」

 

 ぼくの眼鏡がズレる。

 ぼくとレッダーは、なぜかビル街にいた。

 他の仲間は誰一人いない。

 

 そして目の前には、【貪食】がいる。

 

【第二貪食】《グラトニー》

 

 頭にそんな名前が浮かばさせられた。

 

 魚のような見た目をした、全身どす黒い緑色で目の鼻もなく口だけがある怪物だ。

 四メートルくらいの全長で、尾ビレも背ビレも胸ビレもある。地中を泳いでいる。

 

「こいつと戦えっていうのか!? ぼくたちだけで!?」

「一緒に頑張るぞマスター! やらなきゃやられる!!!!!」

「ちくしょう生き残るためにはやるしかないのか!!!!!」

 眼鏡の位置を直して、少ない気を奮い立たせた。

 

《グラトニー》が、こちらへ頭を向ける。コンクリートの地面を泳いで、向かって来る。

 

「いくよ、レッダー」

「おう!」

 ぼくは身構え、懐から取り出したコントローラーを握り締め、【ファイヤーデストラクション】を発動しようとした。

 

 ――――《グラトニー》の口が、ビルよりも高くなった。

 

「「は?」」

 

 出鼻をくじかれたなんてものじゃない。意味がわからない。

 

 突然、《グラトニー》の口が、頭が、ビルよりも高い巨大さへと変貌を遂げたんだ。

 何百メートルもの巨大。スカイツリーを越えるか超えないかの異常な莫大質量増量。

 

 目の前でビルが喰らわれていく。

 ビルを喰らいながら、ぼくたちを喰らおうと泳いでくる。

 

「ぼくになんつーやつと戦わせてんだよお!!!!!! 一番やばいやつじゃないの!!??!?!?」

「くるぞマスター!」

 

 巨大すぎる口が、むしろ巨大な漆黒の穴が迫る。ブラックホールに、吸い込まれるように。

 

 こんなの全力で走っても回避に間に合わない。

 

 なら、どうする。急いで考える。レッダーと走りながら考える。加速する思考。いっぱいいっぱいになりながら、それでも日常に戻りたいから、答えを出す。

 多分この手しかない。

 

「レッダー! 【ファイヤーデストラクション】だ!」

「【ファイヤーデストラクション】!!」

 

 だがいつものようにただ炎を出しただけでは、対処できない。あのアホみたいにデカい化け物を焼き尽くせるわけもない。

 

 ぼくはコントローラーのボタンを連打する。

 そうすることで、出した炎を圧縮させていく。

【ファイヤーデストラクション】の能力は、炎を発現させ、ぼくの手に持つコントローラーで操作すること。

 つまり、こういうこともできる。

 連打する度に炎がどんどん圧縮されていく。

「ぼくの連打は高橋名人の上をゆく!!!!!!!」

 

 そうして限界まで圧縮させた炎を、LR同時押しで爆発させた。

「うおおおおおおおおおおお!?」

 爆風で、吹っ飛ぶ。何百メートルか吹っ飛ぶ。ダメージは受けるが、死ぬよりはましだ。爆風も操作し、着地地点に気流を発生させ、死なないようにクッションにする。

 なんとか、ぼくとレッダーは《グラトニー》の捕食範囲外へ逃れた。着地もままならず、ぼくたちは硬い地面に転がる。

 

 後ろですべてが喰われていく。呑み込まれていく。車が、コンクリートの地面が、ビルが、呑み込まれて消えていく。

 

「ああふざけてる!!!!!! どうやって倒せってんだよ!!!!!!!!」

「勝つしかないんだ! それが今生き残る唯一の道! 腹を括れレマスター! 勝つことだけ考えろ!」

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

《グラトニー》が元の大きさに戻った。

「あの大きさを常時維持できるわけではないってことかな」

 それなら、まだ戦える。絶望してる場合じゃない。希望を掴み取るんだ。

 

 だけど、またいつ巨大化するかわからない。近づいたタイミングで巨大化されたらジエンドになる。

 迂闊に近づけないのは変わらない。

 巨大化が解けたばかりの今なら、近づいてもいいような気もするけど、それが罠の可能性もある。もしそうだったらぼくたちは死ぬ。

「どうすればいいんだ……」

 

「とりあえず遠距離攻撃してみようぜマスター」

「確かに今はその手しかないか」

 

【ファイヤーデストラクション】を発動し、コントローラーを操作して《グラトニー》へ炎を差し向ける。

《グラトニー》は地面を泳ぎ逃げる。

 

「焼かれろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 追尾するが、上手く焼けない。炎が、あいつが泳ぐ速さに追いついていない。

 

《グラトニー》は逃げながら、こちらへ近づいてきた。

 

 やばい。このまままた巨大化されたら、今度こそ避けられるかわからない。今の時点でさっきよりも近い距離だから、避けられない可能性は高い。

 

 あと、もう一つ。

 

「あいつ、地中を泳ぐってことは、潜ることもできるんじゃ……地中に潜られでもしたら、攻撃のしようがなくて詰みなんじゃないかなあ……?」

「なんとかするぞマスター!」

「無理難題!!!!!!!!!!!」

 

 

 

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