召喚獣狂騒曲   作:ソウブ

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†最終章†4

 

 

 

「待て、まだだ」

「?」

 

 オールグールの死体は消えず、集まり、人の形を(かたど)っていく。

 

 そうして、俺の目の前に、黒髪ツインテールの少女、妹の夕奈(ゆな)がいた。

 

「……オールグールは、夕奈だったんだな」

「どんな超展開?!?!?!?!?!」

 

 夕奈の声がたまに聞こえることがあったのは、オールグールが語り掛けてきていたからだったのだ。

 

「そうだよ。わたしが交通事故で死んじゃったときに生まれた、歪んだ破滅の生命体。死の間際に、邪神に死にたくないって願いを拾われちゃったんだ。そして、食と破滅の邪神と一つになった。結果、オールグールが誕生した」

「そうか。じゃあ死ね」

「お兄ちゃんは、わたしを殺せるの?」

「お前は夕奈じゃない。夕奈は、死んだんだ」

「わたしは夕奈だよ。わたしとお兄ちゃんしか知らないことも知ってる」

「言ってみろ」

「お兄ちゃんは小学三年生で精通した」

「ほう」

「特撮ウルテァーメントガが好きで、何週も視聴していた」

「ほほう」

「わたしの髪をウルテァーメントガのソフビに巻き付けたことがある」

「よし、夕奈の記憶があることは認めよう」

「いやいやいやご主人様なにしてんの???」

「なら、妹のわたしを殺せないよね?」

「それは違う。お前は記憶があるだけだろ。夕奈だったら人殺しなんてしない。こんな脅しもしない」

「それはお兄ちゃんがわたしに幻想を持ってるだけだよ」

 

「いいや、お前は夕奈じゃない。何を言われようと、この確信は変わらねえよ」

 

 なぜなら、夕奈の最大の願い。俺がヒーローで在ることを、こいつは否定しているからだ。

 俺はこいつの言葉を思い出す。

 

 †――ううん、本当にこれで勝ったと言えるの?――†

 †――流石にこの敵は、荒谷戒は、邪悪過ぎない……?――†

 †――ねえ、お兄ちゃん。荒谷戒は、殺しておかなければならない邪悪な存在なんじゃないのかな?――†

 †――殺すべきだよ。お兄ちゃん。勝たないと。††Summoned Beast Battle Royal††では敵を殺して、勝たないと――†

 

 あのとき、荒谷を最初に倒した時、こいつは俺に夕奈のふりをして人殺しを命じた。その時点で、この化け物は夕奈じゃねえ。

 

「それに、今わかった。さっき覚醒した理由が」

 光の球が俺の中に入った時の情報理解の広がりが、今浸透しきった。

 オールグールの中に存在していた本当の夕奈の残滓が、力を隠れて溜め込んで、俺に託してくれたのだ。

 夕奈がオールグールになってしまったのは本当だとしても、今目の前にいるオールグールではなく、さっき俺を助けてくれた夕奈が本物だ。

 

 夕奈の死に際に生まれてしまった、夕奈の記憶を持っただけの、オールグールだ。

 

「お兄ちゃんは今までわたしのために戦ってきたんでしょ? わたしが死んだら全部意味ないよね?」

「確かに俺は夕奈のために戦ってきた。だが、夕奈はもういない。お前はオールグールだ」

 

 黄金に光り輝く拳を構える。

 

「俺は、夕奈の願いを叶える。お前を倒す」

 

「それでもわたしが夕奈だということは変わらないよ。どういう形だとしても、夕奈という存在であることに変わりはない。記憶も容姿も、同じ。お兄ちゃんは妹を殺して終わらせようとしている」

「そうかもな。でも俺は夕奈の願いを優先する」

「この妹殺し」

「ああ、そうだ」

 

 拳を夕奈の胸に叩き込んだ。

 夕奈は、消えていく。

 

「お兄ちゃん…………」

 

 夕奈は、微笑んでいた。

 

「夕奈……」

 

 夕奈は消えた。

 

 ‡【貪食生命体オールグール】‡は、完全に消滅したのだ。

 

 

「ご主人様……」

 ツキが後ろから心配げに声をかけてくる。

 俺は振り返りながら応える。

「俺は大丈夫だ、ツ――」

 

「ふざっけんじゃねえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!! このチート野郎があああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

 

 俺は振り返る。

 ライライが、ぶちギレていた。

 

 

 

「オレのバトルを尽く邪魔しやがってえええええええええ!!!!!!!」

「落ち着けライライ」

「貴様を倒さなければ、オレは前に進めない!!!!!」

「俺は戦うつもりはねえ。それに【ウルトラミラクル】を食らった影響でお前は自由に戦えないはずだ。もうオールグールは倒した。戦いは終わったんだ」

「オレが戦いたいから戦うんだ!!!!! 貴様の意見は聞いてない!!!!!!」

 

 パイルバンカーを俺に突き付けるライライ。

 

「これが最終決戦だ!!!!!!!!! 救世主、死ねえ!!!!!!!!!」 

 

 パイルバンカーが射出される。

 

「【ウルトラミラクル】が効いていない?!!?!?!!?!?!?!?」

「オレはそんなもの超越したのだアッ!!!」

 

 なんかいつの間にかパイルバンカー装着してるし、進化して耐性でもついたのか? これだから召喚者は侮れない。

 だが。

 

「ウルトラアッ!」

 

 拳を放ち左のパイルバンカー粉砕!!!!!!!

 

 すべてが効かないわけではない。今の攻撃は効く!

 

「もう戦いはやめだ。ライライ」

「なぜだあァ!!!!!」

「【ウルトラミラクル】の能力が効かないのなら、お前は戦い続けるだろう。なら俺はお前を止めなければならない。俺はお前を殺さなければならなくなる。ここで死んだらもうバトルできないぞ。俺が何度もバトルしてやるから、今はやめねえか」

 まあ殺さねえけど。これ以上積極的に戦いたくもないから説得する。

「そんな消化不良で満足出来たら、今戦ってねえ。これはオレの生き方の問題だ。無茶苦茶やった貴様を倒さねえと、オレはもう全力でバトルできねえ」

 

「そうか。なら、何度でも叩きのめすだけだ」

 

「ご主人様!」

「ツキは見てろ。この戦いは俺一人でライライとしなくちゃならねえんだ」

 

「来い! 救世主!!!!」

 

「ウルトラッ!」

「ドリルゴン!」

 

 右のパイルバンカーが射出され、俺の拳と激突!!!!!!!

 

 右のパイルバンカーも粉砕!

 

 すかさずライライの腹へ拳を叩き込む!!!!!

 

「ぐはあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!!?!?!?」

 

 吹っ飛び転がり仰向けに倒れるライライ。

 

「終わりだ……」

 

「…………………………終わりじゃねェ」

 

「なんだと?」

 

「第三の覚醒!!!!!!! 【チート剥奪】!!!!!!!!!!」

 

「なにぃ!?」

 

「貴様のそのチートがよくねえんだ!!! それさえなければ、オレが勝つ!!!!! この【チート剥奪】は、オレがチートと感じる強大な能力を制限する!!!!!!!」

 

「それもチートだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「子供の喧嘩かな?????????」

 

「今度こそ本当に死ね救世主ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううッッッッ!!!!!!!!!」

 

「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!?!??!?」

 

 パイルバンカーに心臓を貫かれた。

 

 意識が暗くなる。

 

 俺は、死んだ。

 

 

 

 俺は、一面が白に染まった空間にいた。

「ここが、天国か?」

「えぇ……」

 振り向くと、夕奈が憐れみの目で俺を見ていた。

「お兄ちゃん……」

 呆れた目でも見てくる。

 

「お兄ちゃんはこっち側にまだ来ちゃだめでしょ!」

「でもライライに殺されちまったし」

「あんなアホな死に方わたしが許さないよ!!!!!!!」

「そんなこと言われてもな」

「ああもうさっさと帰った帰った! 何十年後かまでわたしは待ってるから!」

 

 意識がまた、遠のいていく。

 

 

 目が覚めると、ツキが泣きながら倒れる俺の顔を覗き込んでいた。

「ツキ」

「わあ!?!?!!?!?! 生き返った!?!?!?!?!?!?!」

「夕奈に叩き返されちまった。まだ生きろとよ」

「……そうか。夕奈ちゃんに助けられたんだね」

 

「ついでに精巣も治してくれたみたいだ」

「よかったね」

 

 ライライは周囲にはいない。

「ライライは?」

「ご主人様を倒して、どっかいっちゃったよ」

 俺を殺したと思ってこの場から去ったのか。

 

「ライライこっわ。頭おかしいんじゃないかあいつ。もう関わらんとこ」

「次会ったらまた殺されそうだね……」

「ああ。だからあいつに二度と出くわさないためにこの町出ようぜ」

「うん。どこ行くの?」

「どこでもいい。とにかく旅に出る」

「そんなお金あるの?」

「まずは旅行のつもりでいい。金が必要になったら親父に振り込んでもらうかその場で稼ぐ」

「学校は?」

「うるせえな!!!!!! 何でもいいだろとにかくこの町から出るんだ!!!!!!!」

 

 

 数日後。俺とツキは旅館でのんびり海鮮料理に舌鼓を打っていた。

 俺の家の近くの駅から電車に乗り、終点まで行って降りた町にあった旅館だ。

 学校は町が大惨事になっていたので休校になっている。

【貪食】を倒したのが俺たちだと知られて騒ぎになるのも嫌だし、しばらく身を隠そう。

 

 突然和室の襖が開けられた。

「いや勝手に逃げないでください」

「うわあ!?( ゚Д゚)」

「お前らいつの間に?」

 

 そこにはしととねちゃんとアリスと雫とシュバルツェスツインドライブが立っていた。

 シュバルツェスツインドライブは犬の大きさになり擬態している。

 

「いっぱい探した……大海さんに、言いたいことがあったから……」

「なんだアリス?」

 

「助けてくれて……ありがとう……」

 アリスが笑った。俺がヒーローで在れた証だ。

「まあ、あたしからもお礼は言ってあげます」

「ししょーが来なかったら多分死んでた……本当にありがとう」

 

 雫が俺の横に座る。

「でも、ししょーのせいであいつ倒せなかったから、今度強いやつと戦わせて」

「雫お前ライライ化してないか!? やめろよ!!!!!! もうあいつの顔は見たくねえ思い出したくもねえ!!!!!!」

 

「それはそうとここまであなたを探し回って滅茶苦茶疲れたのでちんこちょん切ります」

「やっぱりお前それしか言えないんだな!!!!!!!!!」

 

 ギャアギャアガヤガヤドタバタ。

 一気に騒がしくなったな。

 

「ご主人様」

 ツキの声に、振り返る。

「わたしは、ご主人様の役に立てたかな」

 

「お前は最高の召喚獣だよ」

「そう、よかった」

 

 ツキは、幸せそうに微笑んだ。

 

 

 

 

 




 おしまい
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