召喚獣狂騒曲   作:ソウブ

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†二章†1

 

 

 

 俺は駅前にある大通りの隅で「召喚獣と別れない方法あります。戦う必要はありません」と書いたフリップを持ち、ツキと並んで呼びかけていた。

 ツキの《サモンアビリティ》ならば、召喚者たちを救うことができるのだ。意味のない殺し合いなどしなくていいと、伝える必要がある。

 しかし、召喚者は近くにいれば感知できるが、頻繁に会えるものでもない。こうした人の多い場所で喧伝する必要があると判断した。

 

「救世主はいりませんかー??」

「すごい大それた宣伝だな!」

 

 こんなことをしても、罠だと思われる可能性も高いからあまりする意味はないかもしれないが、しないよりはいいだろう。藁にも縋りたい人とか、頼って来てくれるかもしれない。

 

「でもご主人様、変人にしか思われてないこの針の筵状態はかなり心にくるんだけど」

 

 道行く人々は俺達をアヘン中毒者を見る目をして通り過ぎていくが、誰かを助ける為なのだからこれぐらいは気にしてもらっては困る。

 

「来ないな」

 三時間ぐらい経った頃だろうか、流石に少々疲労し、呟いた。

「まあそうだろうね」

「インパクトが足りないのか?」

「なんでその思考に至ったの?」

「俺なら解決できるぜえぇええええええええええ!!! 最強だぜええええええ!!!!!」

「そんなに叫ばなくていいから!!! 流石に警察呼ばれるよ!!!」

 

「おい貴様!!!」

 知らない男の声が聞こえた。

「釣れたか!!??」

「ポリスメン!?」

 助けを求めた召喚者がついに来たのかと期待を込めて振り向くと、金髪で黒のジャケットを着た、飴をペチャコロと舐めている奴がいた。

 

「最強とか言ってたなあ? 最強はオレだァ……。貴様じゃない。ぶっ殺してやんよゴミムシが……」

「チッ! 違う馬鹿が釣れたか」

「なんだとぉ!! 今オレのことを馬鹿と言ったか貴様あぁ!!!」

「ああ」

「ぶっ殺してやるぜぇ……虫ケラがよォ!」

「また濃いの来たなぁ……(・~・」

 

「オレの名は雷同無頼(らいどうぶらい)。闘争を求める者だ! ただただ戦いたい。戦いこそが我が望み! 我が渇望! オレは、ただこの(たぎ)る思いをぶつけ合いたいだけだ! さあ、バトルだ、殺し合いだ……貴様の名はなんだ? 名を名乗れ」

「ライライか……」

「ライライって呼ぶな!!!!」

「俺の名前は大海代悟(おおみだいご)だ」

「さあ、始めようぜバトルをよォ……」

 

 俺たちはひと気のない路地裏へと足を運んだ。

 

 その間に条件設定は済ませておいた。

 

【勝利条件:雷同無頼のポケットに入っているキットカットを奪い食せ】

 

「マジかよあいつキットカットポケットに入れてんのかよ!!!!! 今から戦うってのに、絶対チョコは溶けるし中のクッキーはボロボロになるぞ!!!!!!」

「そんなこと気にしてる場合じゃないでしょ!」

 

 ―††Summoned Beast Battle Royal††ー

 

 Battle Start…………

 

「来い、ドリルゴン!」

「キョクカチュコアアアアアアアアアアアアア」

 

 人間大の、灰色のドラゴンが、ライライの隣に現出した。

 あれがあいつの召喚獣!

 

「《サモンアビリティ》! 【ピンポイントファイナル】!!!」

「キョチュケクカケエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」

 ドリルゴンが、ドリルの如く超速回転をしながら、突進してきた。

 

「うおわァ!!??」

「危ないご主人様!!!!!」

 俺はツキに横合いから飛びつかれて、ギリギリ回避した。

 ドリルゴンはすぐ横を真っ直ぐ飛んでいった。

 回転して起こした風が俺とツキの髪を強く(なび)かせる。

 

(はや)ッッ過ぎるッッッッ!!!!!!」

 ドリルゴンの回転突進はスピードがあり過ぎる。容易には避けられない。

 あの速さの回転突進をまともに食らったら、一撃でお陀仏だろう。

 

「ツキ、飛べ!」

「はい分かった了解!」

 

 ツキが俺を後ろから抱え、白い翼をはためかせて飛翔する。

 俺達は制空権を得ようとした。

 制空権を取ったものが勝つ。戦争とはそういうものだろう。

 

 だがッッッッ!!!!

 

「そう簡単に有利にさせっかよォォ!!!!」

 

 そんなことはライライも"分かって"いた!!!!

 

「キョケカケコアエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

 ドリルゴンが突っ込んで来る。

 空に向かう俺たちへ!

 

「ぐっ、回避だ!」

「合点……!(`・ω・´;」

 

 ツキは下へ飛んで突進を回避した。少しでも上に逃げようとすればすぐにまた【ピンポイントファイナル】を放って来るだろう。今度こそ命中させられるかもしれない。そうなったらお陀仏だ。制空権は取れない。封じられた。

 引野の時と同じだ。まず一番いい手を敵は潰してくる。

 

 しかし、飛ぼうが飛べなかろうが、どちらにしろ【ウルトラミラクル】を決めなければ俺達に勝機はない。ライライへ接近しキットカットを奪えなければ、敵を殺さずに勝利するということができない。そして人を殺せば、俺は俺自身の人生で負けることになる。

 

 だが、近づけない。

 

 ドリルゴンはスピードが常軌を逸している上、【ピンポイントファイナル】を今まで連発してきている。驚異のスタミナだ。

 

 近づけなければ、奴のキットカットを奪うことができない。

 どうすれば……。

 

「くそっ……」

「ご主人様……(´・ω・`)」

 

「おい貴様」

 ライライが話しかけてくる。

「自らのことを救世主とか抜かしてたな」

 

「あ、そこから聞いてたんだ(・.・;」

 俺は人の多い大通りで自分は救世主だと、召喚獣と別れないで戦うことを止められると喧伝していた。

 

「どうした救世主ゥ」

 ライライは整った顔を嫌らしく歪めて(わら)う。

「その程度でメシアを名乗るとは、片腹痛いぞ!!」

「なんだと?」

 俺は人を救うヒーローだ!!!! 夕奈と約束したんだ!!!!!

「キョキャクチョケエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

「【ピンポイントファイナル】」

 また、灰色の竜の超速回転突進が、迫る。

 

 俺達は路地裏にあった建物の陰へ身を躍らせた。

 バゴオッッ!!

 しかし建物の外装を破壊して、ドリルゴンは猛追して来る。

「くそぉ! 馬鹿にしやがって!!」

「ひぃぃぃっ」

 

 それからも【ピンポイントファイナル】は放たれ続け、俺達は路地裏の建物。障害物を楯にして避けていく。

 

 バゴバゴバゴバゴバゴバゴバゴバゴバゴォッッッッッッ!!!!!!!!

 

 しかし障害物は破壊され続ける。

 

 バッゴォォォォンッッッ!!!

 

 やがて、破壊され尽くし、俺達は追い詰められる。

 ジリ貧状態を続ければ最終的に追い詰められるのは必然だった。

 

 決定打が、ない。

 

「ご主人様、何度も何度も一直線に突進とか、馬鹿の一つ覚えみたいな攻撃なのに、なんでこんなに強いの!!??」

「シンプルに突き詰めたものは思いもよらない強さを出すことがあるんだよ――――」

 ツキの悪態に応じていたら、一つだけ策を思いついた。

 

「【ピンポイントファイナル】!!!!」

 また、回転突進がやって来る。

 

「ツキ、行くぞ!」

「うん!」

 

 ギリギリで、突進を回避した。

 そして!!! 俺達はそのままライライへと突っ込んでいく!! 走っていく!!!

 

「【ピンポイントファイナル】!!!!!」

 

 ライライは焦ってドリルゴンへ回転突進を放たせた。

【ピンポイントファイナル】は、一直線にドリルの如き突進を繰り出す技だ。

 そう、一直線に"超速"で!!!!

 一点に突進し飛んでいくということは、一度突進したらしばらく止まれないということ!

 車は急には止まれない!!!!! その応用!!!!!!!

 

 そして俺たちは今、後ろにドリルゴン、前にライライ、その真ん中が俺たちという位置にいる。

 ドリルゴンを一度飛ばせて、後ろに飛んで行ったところで、ドリルゴンと奴の直線状に立ったのだ!!!!!

 

 そして、俺達が接近してきたことでライライは焦り【ピンポイントファイナル】を放たせた。

 

「それが、お前の間違いだ!!」

 俺はライライを指差す。

 ツキに抱えて飛んでもらい、横に避ける。

 ドリルゴンはライライへ向けて、そのドリルの突先で貫かんと突進していく!

「馬鹿め! 自らの召喚獣の手で倒されるがいい!」

 

「バカは貴様だバカ虫がァ!!!!!」

 

 突進はライライへ命中するかに思われた。しかし、ドリルゴンはライライの目の前で、慣性の法則を無視し停止した!!

 そして何事も無かったかのようにライライの隣に並び立ったのだ!!!!

 

「なん……だと……」

「召喚獣が主人を傷つけるわけがないだろうが? そんなことも分からないのかこの下等召喚者が!!!!!!」

「クソッッッッッ!!!!!! 俺の考えが甘かったか!!」

 戦闘不能にさせてキットカットを奪おうと考えたが、これでは無理だ。大怪我をさせる覚悟さえしてたってのにッッ……。

「ご主人様、落ち着いて。まだ、頑張れるよ。わたしは、どこまでも。だから、希望はまだあるよ」

「ああ……」

 

「希望などない! 終わりだ、救世主! 【ピンポイントファイナル】!!」

 ドリルゴンが迫る。俺達は先までのように横へ避けようとする。しかし、ドリルゴンは今までと違う動きをした。

 

 ドリルゴンは地面に突撃したのだ! 

 破砕されたコンクリートの破片が飛来する!!

 完全に、不意打ちだった。

「ぐへああ!!??」

「きゃあああ!?」」

 飛び散った破片が俺達の体に当たる。二人して地面に転がった。

 

「ハッハァッ!! 無様だなあ虫ケラァ!」

 

 傷つき倒れた俺たちに、ドリルゴンは頭を向け狙いを定めている。

 

「これで、いつでも俺は、もう貴様を殺せるぜぇ?」

 

 やっべぇなぁ……やばいぜ……。

 

 

 

 

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