のび太転生〜もしも俺が野比のび太になったら〜 作:オロロギス
皆さんは『ドラえもん』という作品をご存知だろうか
運動も勉強も何もかもダメダメな主人公、野比のび太が、未来からやってきた猫型ロボット、ドラえもんと出会い、自身のお先真っ暗な未来を打開すべく、ひみつ道具というのび太のいる世界では絶対に存在し得ない、未来の世界で作られたとても夢のある超便利な道具を使ったりして、コミカルな日常を過ごす物語だ。
最終的にはどうやら、ドラえもんのおかげでのび太は源静香という意中のお相手と結ばれることができ、幸せを手にすることができたようなのだが……俺は正直「物足りなさ」を感じてならない。
作中では、様々なひみつ道具が出てくるのだが、のび太は勿論のこと、その道具を提供するドラえもんもネジが一本抜けているためか、使い方が「幼稚」なのである。そもそも『ドラえもん』は小学生向けの漫画、このようなことを考えるのはご法度である。しかし、それでも俺は登場するひみつ道具を見ては限りない妄想を膨らませてしまう。
例えば、もしもボックスだ、「もしも○○な世界になったら」と、電話することで、願った世界に行くことができるものなのだが、もしもの世界にずっといる事は特に問題無く、もしもボックスが破壊されてもその世界に留まり続けることは可能なため、「もしも全て自分に都合の良い世界になったら」と願うことで、理想世界を何の苦労もせずに手に入れられるはずなのだ。そんな世界を作ってしまえばもう後は自由だ、金が欲しければ都合良く手元に金が入るだろう、女が欲しければ都合良く良い女と出会うだろう、世界征服を願えばもちろんそれも実現するだろうし、アニメ・漫画の世界のキャラ達と会いたければ会えるし、その世界に行くこともできる。
……とまぁ、このようなことを考えてしまうわけだ。他人には恥ずかしくて絶対には話せまい…。
そんな俺は、退屈な高校生活を送るただの凡人だ、のび太ほど馬鹿ではないが、出来杉ほど天才では無い、そんなつまらない人間だ。
俺の名前なんて紹介したところで、みんなには何のメリットも無い。のらりくらりとひたすら日々を浪費し続けるような男だからだ。
「はぁ、暇だ」
俺の口癖のようなものだ、暇で暇で仕方ない。超常現象の一つや二つ起こってくれたって、俺は構わないのだがなぁ。
「早く帰って録画してあるアニメの続きでも見るか……。」
気怠い体を引きずるように、青信号を横断する俺、その時俺は周りの環境に全く関心がいかなかった、異常に気がついたのは、事が終わってからであった。
「(え……?)」
俺の体はいつの間にか宙を待っていた、よく分からない、だが、感覚がとてもスローに感じ始めた。ゆっくりと動く世界の中、俺は初めて自分が置かれてた状況に気がついた。居眠りトラック野郎だった。
「(轢かれた……?俺が………?)」
痛みは不思議と感じてない、いや、おそらくはもうすぐ伝わって来るのだろう、そして、その痛みが伝わる前に、俺の意識は無くなる……。
「(熱い……ぼーっとしてきやがった……)」
そこで、俺の現実での記憶は「終わった。」
****
「!?」
時間がいつもの再生速度に戻った。覚醒するも、不思議な感覚に捉われた。
「体が、怠い……」
気怠さを感じるのはいつものことなのだが……この怠さはいつも以上だな……まぁ、交通事故から覚めた後というのは、こんなもんなんだろうな……?
「……いや、ここ、病院じゃないな」
違和感を抱いた。普通、轢かれた人間は病院に搬送されるもんじゃないのか……?ここは……家、なのか?知らない人の家に俺は今、横になっている……。
「……知らない……?」
いや、俺は今目の前に広がる風景に、見覚えがあった。
「……痛くない、十分に動ける…」
轢かれたのにも関わらず、痛みも包帯も一つも無い体を起こしてみる。
「な、なんだこれ……」
違和感のオンパレードだ、自分が想定していた目線よりも低い位置に起き上がった。まるで、自分の背が縮んでしまったように感じられた……。
「……いや、いや、感じられたではない……縮んでるんだ………!!」
俺は咄嗟に、今自分がいる部屋の扉を開け、階段を駆け下りた。初めて通る道なはずなのに、やはり俺は見覚えがあった。
すぐに洗面台へと向かい、鏡の前へ立った。
「!!!!!!」
そこには………。
野比のび太がいた。
流れるようなテンプレ展開でした。