のび太転生〜もしも俺が野比のび太になったら〜   作:オロロギス

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転生物定番の無双回

……無双…?


ジャイアン死んじゃいやん

 さて、ジャイアン対策としてひみつ道具を使うことになる予定なのだが、ここで少し考えてみよう。俺はドラえもんの出した道具で、めちゃくちゃヤバイ道具は一通り覚えてる……はず、例えば、「ソノウソホント」というひみつ道具がある、この道具は、口に装着する道具で、喋った嘘が全て本当の出来事になるという、神羅万象を覆してしまうほどのチート道具なのだ、ドラえもんと出会って、ソノウソホントが欲しいといえば、おそらくは出してくれるはず……しかし、それだけでジャイアンの脅威を乗り越え、この世界を支配し、さらには全ての次元をも支配することすらも容易になってしまう。そうなると、俺が期待した彩のある夢の世界は、徐々に曇りがかっていき、最後にはまた灰色の世界に戻ってしまうかもしれない……全知全能の最強の存在でい続けることは、きっと俺に、別の意味で退屈な日々を送らせることになってしまうはずだ、そうなってしまっては俺がこの世界に転生してきた意味は無い。俺が欲しいのは何だ?きっとそれは、「刺激」だ、そして「冒険」だ!夢のある楽しい世界を維持し続けるためには……「縛りプレイ」のようなものをする必要があるな。

 例えばだ、上に例として挙げた「ソノウソホント」など、あまりにもチートすぎる道具はなるべく使わないことにしよう、あと、俺は予定としては他のアニメや漫画の世界へ冒険するというのがあるが、その際、その世界にある特殊能力などは自分には一切付加させないようにしよう、あくまでひみつ道具のみで全ての壁を越えていくという形にした方がスリリングも期待できるはずだ……多分。

 

「ただまぁ……。」

 

 自分の体を見下ろす。

 

 貧弱な体、これはさすがに縛り過ぎだ、昔の俺でももう少し軽やかに動けたはずだぞ……?もう疲れを感じる。さすがは野比のび太の体だな……こんなハンディキャップを背負ってあの男はよくもまぁ劇場版などで大冒険が出来たものだ……全くもって感心してしまうよ。

 

「とりあえず、身体能力の向上は目指そう。ランニングや筋トレせずに身体能力を上げる道具、何かあったかな……?」

 

 よし、ドラえもんに会ったらそういった事ができる道具を出してくれるように頼もう。大冒険するうえでは、素でジャイアンに余裕で勝てるくらいの力が無いと他世界に行った時に不安が残る。例えば、ひみつ道具が何らかの形で全て剥奪され、手ぶらで行動しなくてはいけなくなった時、素手でもそれなりに出来る事が無くては、俺ののび太人生はジ・エンドだ。

 

 その時、すぐ後ろにある窓の開く音が聞こえた。

 

 瞬時に理解した。今、俺の後ろに来たのは、ドラえもんだ!絶対そうだ。そう思った途端、心臓の鼓動が一段と速くなった。俺は、これからあのドラえもんと会話することができるんだ。ワクワクが止まらない。早く会いに行こう。生のドラえもん、生のひみつ道具!

 ……おっと、その前に、俺は野比のび太であるということをちゃんと自覚しなければなるまい。いくら見た目が100%純粋な野比のび太であっても、中身は全く別人だからな。もしそれがドラえもんに感づかれてしまった場合、俺は一体どうなるだろうか……正直、想像できない。少なくとも、俺の夢あるライフは実現できなくなるであろう。中身を何らかの方法で、強制的に元の野比のび太になり、良くて俺の自我は元の自分の体に戻る、最悪の場合は……その場で消滅だな。どの道、そんな結末だけは避けたい。

 

「……緊張してくるな」

 

 さっきまでドラえもんに会うことに興奮していたはずなのに、今となってはもう恐怖の対象でしかない。この場を凌ぐためには、今は野比のび太に徹するしかない。俺はのび太だ、野比のび太……ダメダメな野比のび太なんだ……!そうだ、うまいことドラえもんを煽てれば、便利で不思議なひみつ道具を色々と出してくれる。その中には、ドラえもんを永久に俺の思い通りにすることのできる道具だってあるだろう……。その後は、もう野比のび太を演じなくても済むようになるはずだ。今だけの辛抱だ。

 ………四次元ポケットだけを奪うルートも想像してみたが、確かひみつ道具は消耗品で、定期的にメンテナンスに出さなければいけないと原作で言ってた気がする……未来の世界でスムーズにひみつ道具のメンテナンスを受けることができるのは、その道具の保有者たるドラえもんしかおるまい。やはり、ドラえもん自身を俺の手駒にするほか、夢のあるやりたい放題な世界を作り上げることは不可能だ。

 

 よし………やるか。

 

「ど……ドラえも~~~~~~~~~ん!!」

 

 間抜けそうな声で、そう叫んだ。

 

「もぉ~、早々にどうしたんだいのび太くん」

 

 正解だ、やはりドラえもんだった。そして、やっぱり心の中で感動を抱かずにはいられなかった。だが……今はそんな場合じゃない。

 

「実は、かくかくしかじかで……」

 

「え~!?のび太くんのせいで試合に負けて、ジャイアンにまたギッタギタのボッコボコにされかねないから、何か道具を出してくれだってぇ!?それはのび太くんが悪いんだろう?もーしょうがないなぁのび太くんは……」

 

 そう言い、四次元ポケットに手を突っ込むドラえもん。

 

 愚痴愚痴言いながらも、予想通り、こういう時はちゃんと助けてくれるんだなドラえもんは……。というか、のび太らしく振舞おうと意識しすぎてしまったせいか、体を鍛える道具じゃなく、ジャイアンに勝てる道具をせがんでしまった。まぁ……最初は小手調べというやつだ。なんせひみつ道具を始めて触るわけだからな、まずは原作通りっぽい感じの頼み方で臨んだ方が失敗はしないはずだ……。

 

「スーパー手ぶくろ~~!」

 

 その名の通り、手袋の形状をしたひみつ道具を出すドラえもん。これは知ってるぞ、これは当たりひみつ道具だ。

 

「この手袋をはめると───」

 

 ドラえもんの解説が始まったが、聞かなくてもいい。簡単に言えば、この手袋をはめるだけで、馬を一頭丸々持ち上げることができてしまうほど肉体が強化される道具だ。手にはめるから効果は手だけに及ぶのかと思うかもしれないが、そうではなく、装着者の肉体全身を強化するものなのだ。これは、他作品の世界に行く際には絶対に持っていきたい道具の内の一つだな……。

 

「───という道具なんだ、でものび太くん、くれぐれも道具の悪用はしないようにしてくれよぅ?」

 

 ちょうど説明が終わったようだ。早速着けてみようか……。

 

「うわぁっ、すごい!」

 

 こ、これは驚いた、さっきまで貧弱だった体が一気にオリンピック選手くらいの体に……いや、もっとそれ以上の肉体に変わったような感覚だ。これが、ひみつ道具……恐るべし、だな。

 

「ありがとうドラえもん!行ってくるよ!」

 

 

****

 

 

 さぁ実践だ。ジャイアンってのはどこにいるんだか───

 

「おいのび太ぁ!」

 

 おっ、幸先良いな、タイミングも。ジャイアンの登場だ。おまけに後ろには、にっくたらしい顔したスネ夫まで揃って。なんていうか、こいつらもなぁ、中々学習しないよな。のび太にはドラえもんがいるんだぞ?ドラえもんがいるってことは色んなひみつ道具が揃ってるわけだ、もうこの時点で力の差は歴然のようなものなんだが……。まぁ、本物ののび太くんは、マジもんのバカだもんな……そりゃ舐められるか。

 

「やぁジャイアン、この間は悪かったね」

 

 挑発するように、お道化た感じで言ってみた。

 

「悪いもクソもあるか!お前のせいでうちはボロ負けだ!」

 

 毎度毎度思うが、ジャイアン達は何で運動音痴なのび太を野球に誘うんだろうな、絶対へまやらかすのなんて火を見るよりも明らかなのに。

 

「この間の試合が終わったらすぐ逃げやがって、覚悟しやがれ!」

 

 ケンシロウの如く、手をポキポキと鳴らすジャイアン、そして、またもやうざったい顔でニタニタとこっちを見るスネ夫。いやぁ、漫画で見てる時はなんとも思わなかったが、実際にこの2人に因縁吹っ掛けられると、すっげぇ腹立つな……。

 

 そうこう考えてる間に、ジャイアンの拳が俺の顔ド真ん中に放たれる。

 

 コイツ……ジャイアンもさ……小学生だとしてもよ、眼鏡かけてる相手の顔面殴るか普通?殴る方も痛いだろ。とりあえず、俺はこの「スーパー手ぶくろ」の効果がきちんと働いていることを確認できた、確かに、ジャイアンの一発は、痛くも痒くも無いな。

 

 さて、転生後の初めての「無双」だな。………いや、これに関しては、原作でもよくある流れだし、新鮮味もクソもないけどな……。

 

 ジャイアンの腕を払い、こちらも鳩尾あたりに一発入れてみる。

 

「うぐおぉっ!?!」

 

 うわ、鈍い音がした。ま、まぁ……骨は折れてない……はずだよな……?小学生相手に、高校生がこんなことをするってのは、何ともまぁ罪悪感というか……どーにもスッキリしねぇな……。

 

 俺の一発がよほど効いたのか、ばたりと倒れるジャイアン。………ん?これ、死んでないよな?な??

 

「う、うわぁ!ジャイアンがやられたぁ~~~~!ママァ~~~~~~~~~!!!」

 

 お馴染みのセリフと共に逃げ去るスネ夫。うん、今はそれどころじゃないんだわ。

 

「……ジャ、ジャイアン……?お~~い……?生きてる~?」

 

 脈を測ってみる。うん、大丈夫だ。呼吸は……うん、こっちも大丈夫だ。良かった良かった。逆に冷や汗かいちまったよ……。

 

「………しかし、これがひみつ道具の力、か……。」

 

 このウェイト差を、こうも簡単に覆せてしまうのは、本当に驚きだ……。

 

 …………しかしこの手ぶくろ、ずっとはめてないとこの力は発揮できないんだよな……何とかして、手ぶくろを取ってもこの力を発揮し続ける方法は無いだろうか……。ここからだな、機転の利かせ方は……。ドラえもんに連続して二つ目の道具をねだるのは、原作でも見たことないし、出してくれるのかどうか分からないから……ドラえもんを俺の眷属にする方法も考えねば。

 

「まだまだ山場は乗り越えそうにないな……ここからが正念場だ」

 

 これほど、気を緩められないドラえもんワールドがあっただろうか。

 

 俺は絶対に達成してやる、この世界の掌握を……!




私の文章力の無さのために、困惑している読者の方々もいらっしゃるかもしれませんので、ここで主人公の目的を簡単に書いておきます。

・主人公は、他作品の世界へ行ってみたい。

・それなりに上位の存在にはなりたいけど、全知全能絶対最強にはなりたくない。(最強すぎると退屈になるかもしれないから。)

・ドラえもんワールドでは、何不自由無く暮らせるくらいにはなっておきたい。
→「野比のび太」という身体の強化とドラえもんの眷属化をとりあえずは達成したい。

……こんな感じです、もし他にもよく分からないことがあれば、感想欄でお願いします……。

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