ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
ロンメルが警戒していたのは太陽炉を積んでいたデルタプラスだ。
トランザム。
その莫大な力は確かに脅威である。しかし、使用限度がある以上その一点さえ潰してしまえば恐るものは何もない。
だからロンメルはデルタグラスパーを攻撃しようとした。そのデルタには既に太陽炉が装備されていないとも知らずに。
武器を構えた時、妙な気はしたのである。
通常太陽炉から放たれる緑色の粒子が、狙いを定めたデルタから放たれていない事に。
「───トランザム!!!」
「───何!?」
そうして気が付いた時には、
☆ ☆ ☆
咄嗟に身を引いて、ロンメルは
「くそ……交わされた!」
ライフルこそ失ったが、反応が遅れた不意打ちにしてはあまりにも軽症だ。
しかし、トランザムの猛攻は続く。
「ここで一気に落とす!!」
「まさか換装して間合いに入ってくるとは……!! なるほど、ストライカーパックという事か。それは盲点だった」
ロンメルは即座にプラズマナイフを構え、トランザム中のストライクBondの攻撃を受け止めた。
さしものグリモアレッドベレーだが、トランザム中の機体には速度もパワーも劣っている。
これなら行ける、とケイは踏み込んだ。
「素晴らしい作り込みだ、ロンメル隊に誘いたいくらいだよ。……しかし!」
踏み込んでくるケイのストライクを、ロンメルのグリモアレッドベレーは両足の脛部追加装甲であるシザークローを展開───まるで猛禽類の脚のようにストライクBondを掴んで押さえ付ける。
「な!?」
「切り札は王将を囮にしてでも落とす」
いくらトランザム中の機体でも、作り込まれたグリモアレッドベレーの拘束から逃れるには多少の時間が掛かるものだ。
その多少な時間でも、ロンメルの指揮は無駄にしない。
既に周囲でロンメルの護衛に当たっていた部隊が、ケイのストライクBondに銃口を向ける。
「くそ……!」
「やらせるな! ガイアトリニティ隊、全機フルブラスト!! 全戦力を流し込め!!」
しかし、ロンメル隊のMSとの間にアンディ達が立ち塞がった。
部隊は既に半壊、しかし周囲のロンメル隊から時間を稼ぐ事は出来る。
当のアンディも左腕等が損傷していてまともに動ける訳ではない。
今ロンメルを倒せるのはケイだけだ。
アンディ達が時間を稼いでくれている間に、敵将を討つ。
「このぉ……!!」
「なに……!!」
シザークローから逃れたケイは、GNソードIIIを構えてグリモアレッドベレーの片足を切り飛ばした。
そのまま猛進。
トランザムの圧倒的な機動力でロンメル相手に互角以上に斬り合いを制していく。
「トランザムの時間にも余裕はある……。このまま行けば……行ける!!」
「凄まじい勝利への執着……! まさかこれ程とは……!」
斬り合うストライクBondとグリモアレッドベレー。
トランザム中のストライクBondと互角に鍔迫り合いをするロンメルは流石の一言だが、それでも少しずつケイがロンメルを押していた。
「行け! 少年!! 勝利への道を───ぬぉ!?」
被弾するアンディのガイアトリニティ。
周囲のガイアトリニティ隊はほぼ全滅するが、ケイはロンメルの機体を弾き飛ばして体勢を崩させる事に成功する。
もう一撃。
「これで……終わりだぁ!!」
GNソードIIIがグリモアレッドベレーを貫こうとしたその時だった。
「───あと一歩、足りなかったな」
「何!?」
ストライクの頭上から、銃弾の雨が降り注ぐ。
フェイズシフト装甲でなんとか機体の損傷は抑えられたが、想像だにしない弾幕にケイは身を引く事しか出来なかった。
「なんで───な?」
もう少しで───そんな思いで自らの攻撃を阻んだ銃弾の雨に視線を向ける。
そこにあったのは、まるで宇宙という空を覆い尽くす雲のような大量のMSだった。
「我が先鋭よ、敵を撃滅せよ……!」
突然現れた大軍は、ロンメルの指示で再び銃弾の雨を降らせる。
「くそ、なんで……どこから」
「リスポーンした部隊を纏めて連れて来たって事だよ、少年。僕達は一歩遅かったのさ」
「リスポーン、そうか」
これらの部隊は初めから控えていた訳ではなかった。
砂漠の犬とReBondが攻撃を仕掛けた後、あるいは前。
ロンメル隊のMSは確かに少しずつ撃破されていたが、それも全て撃破後一分でリスポーンが完了する。
両フォースがフォースランキング二位の部隊に対して有利に事を進められていたのは、ロンメル隊のMSが殆ど損傷していた点が大きい。
しかし、撃破されたMSがリスポーンして戻ってきた事によりロンメル隊は完全な戦力を持って戦闘を行う事が出来るようになる───というのが、知将ロンメルの鼠取り作戦の最後のプロセスだった。
「───確かに君達には想像以上のポイントを奪われてしまった。だが、私の戦略はここに完遂される。これで完全な舞台のまま次の作戦に移れるのだからな。……その前に、残りの鼠を駆除して少しでもポイントを稼がせて貰おう」
「なるほど、初めから僕があなたを狙う事を計算の上で舞台の立て直し目的の戦略を立てたという事か……。いやぁ、参ったよ大佐。降参だ」
勝敗は決している。
今の攻撃でアンディの部隊は壊滅して、アンディしか残っていない。
この状況からロンメル隊に勝つ術はアンディにはなかった。
───しかし。
「───と、言うとでも思ったか! 大佐!」
「来い、アンディ」
ボロボロの機体で、背に大軍を控えたロンメルに猛進するアンディ。
「あ、アンディさん! 無茶ですよ!」
「無茶は承知! しかし、男にはな、戦わなければいけない時があるのだよ少年! 君は今その時ではない。……後は、分かるな?」
アンディがそう言うと同時に、ユメのデルタグラスパーが高速で飛んできてケイのストライクBondを拐う。
ストライクを逃さまいと部隊に指示を出そうとしたロンメルだが、アンディの突撃でそれどころではなくなってしまった。
「ユメ!?」
「これ以上ロンメルさんのフォースにポイントを上げたくないって事、なんだよ! 多分。私達二人だけでも逃げよう」
アンディはまだ勝つ気でいるのだろう。
このイベント戦はより多くポイントを取ったフォースが勝利するのだ。
今ここで負けたとしても、イベント戦で負ける訳ではない。
「なるほど、分かった。……俺達の負けだな」
「あはは、そうだね」
戦闘宙域を一気に離脱するケイとユメ。その二人を追う機体はなく、二人は無事に離脱する。
「大佐……!!」
「アンディ……!!」
そしてアンディは、ロンメルの一撃に敗れ───この戦いに敗北するのだった。
「───勝てなかったなぁ」
ケイは敗戦からの帰路、ため息を吐きながらそんな言葉を漏らす。
しかしそのため息も気持ちが悪いものではなく、むしろケイは清々しい気分で前を見ていた。
「凄かったね、フォースランキング二位の第七機甲師団」
「アンディさんも凄かったけど、ロンメルさんはもっと凄かった……。俺達も今以上に頑張らないとな」
アンディの戦略は見事だったと言って良いだろう。けれどカルミア達が作ってくれた隙も、アンディ達が作ってくれた時間も、あと少し───後一歩届かなかった。
「もう少しだったもんね」
「でも、悪くなかったと思う。反省点は沢山あるし、確かに俺はもっとやれた事がある筈だけど。……これはゲームなんだから次に活かさないとな」
悔しい気持ちは確かにある。
けれど、そうやって下を向いていたって何も変わらないのは分かっていた。だから、ケイは前だけを見る。
「待ってケー君。何か来るよ」
「追っ手か? このまま自軍エリアに帰りたかった所だけど……」
下は向かないが、イベント戦に勝ちたい気持ちは変わらない。
他のフォースにポイントを渡すのは不本意だからこそ、こうして二人は逃げて来たのだから。
ただ、ロンメル隊の追っ手にしてはレーダーの反応がおかしい。全く別方向から二機のMSが接近しているのが分かった。
「……GN粒子」
視覚に入るそのMS。
ダブルオーガンダムをベースに作られた機体と、まるで人形のような機体が一機ずつ。
その姿にケイは見覚えがあった。
「まさか……」
「───こんな所で会えるなんて思ってなかったよ、ケイ」
ダブルオースカイ。
それが偶然にも現れた、新しいライバルの機体である。
第二次有志連合戦。
ケイがGBNに興味を持つキッカケになった戦いの中心にいた人物。そのキッカケがなければ、今こうしてユメやロック───沢山の仲間達とGBNを楽しんでいる自分は居ない。
彼はケイにとって、自分の運命を変えた人物でもあった。
「───俺もだよ、リク」
ビルドダイバーズのリク。
二人はモニターに映るお互いの目を真っ直ぐに見る。
オフ会でダイバーシティに出向いた日。
再び戦おう───今度はお互いの本当の力で。そんな約束がまだ今、果たされようとしていた。
この作品も遂に100話めまで来てしまいました。週一投稿をざっと二年。あっという間ですね。しかし、まだまだ続きそうです。150話か、200話か……。とにかく終わらせたい気持ちもありますが、ひとまずはゆるりと続けていこうと思います。
読了ありがとうございました。