ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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キッカケはあの日

 対面するストライクとダブルオー。

 しかし、お互いに武器は構えずにダイバーの二人は嬉しそうに笑っていた。

 

 

「二人だけなの?」

「他はやられちゃってさ、敗走中って感じかな。そういうリクは?」

「俺も、ウルフさんの所で相打ちみたいになっちゃって」

 ウルフ───と、いえば虎武龍(とらぶりゅう)のタイガーウルフの事だろう。リクやビルドダイバーズの面々の実力は確かに高いが虎武龍のタイガーウルフの事もケイは気になった。

 

 ───しかし、今は違う。

 

 

「なぁ、リク。ここはタイマンにしないか?」

「俺もそうしたいと思ってたところだよ」

 二人は笑いながらも、その瞳に闘志を燃やしていた。勝手に進んでいく会話に、ユメは「え? なんで? えー?」と首を傾げる。

 

 

「二人共、お互いと本気でぶつかり合いたいんだと思う」

 そんなユメの横に機体を並べて、サラはそう口にした。

 

 オフ会の時はこの四人で二対二を繰り広げた仲だが、あの時とは違う。

 自分が本気で作ったガンプラで、本気の相手とぶつかり合いたい。

 

 

 そんな()()()の邪魔をするのは、無粋というものだ。

 

 

「……なるほど」

「私達は見てよ、ユメ」

 そう言って離れる二人を見ながら、ケイはリクにこう提案する。

 

 

「どっちかが撃破されても、ユメもサラも攻撃しないって事で良いよな?」

「そうだね、その方が後腐れもないし。……約束するよ」

 少しずつ距離を取って、気軽な会話の割には闘志を燃やす二人の視線がモニターに映るカウントダウンに向けられた。

 

 

「リク! 頑張って!」

 3

 

「頑張れ、ケー君」

 2

 

「「勝負だ」」

 1

 

「ケイ!!」

「リク!!」

 0

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 刃が交差する。

 

 

 GNソードIIIを薙ぎ払い、距離を取ったケイはライフルモードで射撃をするがリクは直ぐに体勢を立て直してそれを交わした。

 

 

「なんて反応速度だ……。ダブルオースカイ」

「なんてパワーだ……。ストライクBond」

 互いのガンプラと戦うのは初めてである。だからこそ、あの時とは違う手応えに二人は震えていた。

 

 牽制射撃をしつつ、間合いに入る両機体。

 ダブルオーダイバースカイは格闘寄りの万能機に設定された機体である。対するストライクBondも、ダブルオーストライカーにより得意距離は近距離だ。

 

 必然的に接近戦が多くなれば、戦いは激しくなる。二人は戦い始めて二分も立たない内に息を切らしていた。

 

 

 鍔迫り合い。

 ビームサーベルを左手で抜くケイだが、リクはダブルオースカイの脚部装甲からビームを展開してサーベルを蹴り飛ばす。

 

 少し距離が離れた所で、次にケイはアーマーシュナイダーを投擲するがそれもリクはビームシールドで弾き返した。

 しかしその一瞬の隙にケイはバルカンを撃ちながら機体を赤く燃やす。

 

「トランザム!!」

 アーマーシュナイダーを弾く為に産まれた僅かな隙。普通の機体ならそこで詰める事は困難だが、トランザムが使える機体なら話は別だ。

 

 

 しかし、それは同じ()()()()()であるダブルオースカイも同じである。

 

 

「───トランザムインフィニティ!!」

 ダブルオースカイを赤い粒子が包み込んだ。ケイのGNソードIIIをいなす様に交わしたリクは、逆にバスターソードを振り払う。

 

 姿勢制御でそれを交わしたケイは、GNソードIIIを薙ぎ払いリクのダブルオースカイと距離を取った。

 

 

 一瞬の攻防。少しでも気を抜けば、その時点で勝敗は決していただろう。

 

 

 

 赤い粒子を漂わせながら、二機のMSはなんの合図もなしに再び刃を交えた。

 GNソードIIIとバスターソードが火花を散らせ、ストライクとダブルオーの頭部がぶつかり合う。

 

 一度離れると、今度はお互いにビームサーベルを抜刀しソードと二刀流で切りかかった。

 光が斬り合い、離れて、斬り合い───

 

 二人の機体は軌道の残光を残してぶつかり合う。

 ユメとサラはそんな二人を違う表情で見守っていた。

 

 

「ユメは、ケイと一緒に戦いたいんだね」

「サラちゃんは違うの?」

 ふと聞こえた声に、ユメは首を傾げる。

 

 ケイと一緒に戦いたい。

 自分自身も、ガンプラバトルが好きだから。

 

 しかしサラは違うのだろうか。ユメのそんな疑問にサラはこう答えた。

 

 

「私は、リクに楽しんで欲しい。私に沢山の物をくれたリクに、GBNを沢山楽しんで欲しいって思ってるの」

「リク君の事、大切なんだね。あはは、私は我が儘かな?」

「ううん。ユメの気持ち、とっても大事だよ」

 サラの言葉に、ユメは胸の前で手を握る。

 

 

 そうだ、この気持ちはとても大切なものだから。

 だからこそ、今は二人を邪魔してはいけない。

 

 

 

「俺は君に、リクにずっとお礼が言いたかったんだ……!!」

「お礼? なんで?」

 交わる二つの光。

 ケイは刃を向ける相手に、真剣な言葉を投げ掛けた。

 

 

「もう二年くらい前、君が本気で戦っていたあの戦い───第二次有志連合戦がキッカケで、俺はGBNに興味を持ったんだよ。……リクには嫌な話かもしれないけど」

「嫌じゃないよ。あの戦いも、俺には大切な思い出だから!」

 お互いに会話を挟みつつも、戦いからは気を抜かない。

 どちらかが気を抜けば、その時点でどちらかが撃破されて会話も終わる。そんな戦いだった。

 

 ケイが口を開いたのは、この楽しいバトルが終わらないで欲しい───そんな事を思ったからなのかもしれない。

 

 

「そうか……。俺は、GBNを始めるまでずっと孤独だった。大切な友達は居たけど、その友達をずっと一人にして、悩ませて、俺は何も出来なかった……!!」

 ガンプラで友達は一人一生治らない大怪我をして、一人は抱えられないような重荷を背負わされて、もう一人は友達の輪から消えてしまう。

 正直ガンプラを憎む日もあった。ガンプラバトルをしていた自分が許せなかった時もあった。

 

 だけど、あの日───

 

 

「───だから俺達は、俺達の好きを!! 諦めない!!」

 ───リクがサラを救った日。彼のそんな言葉が無ければ、ケイは自分の好きをそのまま諦めていたかもしれない。

 

 

「───リク、君が思い出させてくれたんだ! 俺はどうあがいてもガンプラが好きなんだって。どんな理由で戦っていたとしても、ガンプラが好きなんだって!!」

「───いや、ケイはきっと誰に何を言われなくてもその気持ちだけは失わなかったと思うよ。……だってこんなに楽しいバトルをするんだから!!」

 重なり合う二人の刃。

 機体の性能も、両者の実力も殆ど互角だろう。

 

 

 そうなれば、勝敗を決めるのはお互いの気持ちだ。

 

 

 

「あぁ、俺も楽しいよ。だからこそ、俺は君に勝ちたい! リク!」

「うん。でも、俺も負けないよ! ケイ!」

 リクのダブルオースカイのバスターソードを、粒子の光が包み込んでいく。

 その現象にケイは見覚えがあった。

 

 

「必殺技……!」

 イアの初バトル。

 チャンピオンクジョウ・キョウヤが三人のダイバーを一撃で葬り去った、文字通り必殺技。

 このGBNというゲームはダイバーの気持ちに応えたガンプラがシステムを超える力を発現する事がある。

 

 しかしケイには、その力はまだなかった。

 

 

「それでも……!! トランザムライザー!!」

 GN粒子加速ビームサーベル。ガンダムOOでダブルオーガンダムが劇中使用した、超巨大ビームサーベルである。

 

 GBNの必殺技とは少し違うが、これも強力な武装だ。

 

 

 光を纏ったリクの必殺技と、トランザムライザーがぶつかり合う。

 

 

「負けられない……俺は君に、勝ちたい!!」

「俺も負けない……!!」

「「うぉぉぉおおおおお!!!」」

 重なり合う光と光。

 反発し、周囲は光で包み込まれた。

 

 爆発の様に広がったエネルギーの後、ユメ達の目にケイとリクのボロボロになりながらもまだ赤い光を放っている機体が映る。

 

 

「ケイ!」

「リク!」

「「まだだ……!!」」

 二人の声に反応するように、ケイとリクは機体の力を振り絞ってビームサーベル片手にスラスターを吹かせた。

 

 しかし、お互いにボロボロだった機体がぶつかり合う寸前───

 

 

「───な」

 ケイのストライクBondのトランザムが終了し、粒子の放出が止まる。

 

 勝負を決めたのは思いの力だった。

 あと何かがほんの少しズレていたら、結果は違ったかもしれない。

 

 

「……また負けた、か」

「楽しかったよ、ケイ」

「あぁ……次は勝つ」

 右手をリクに真っ直ぐ向けるケイ。リクはそんな彼とストライクBondを真っ直ぐに見ながらビームサーベルを薙ぎ払う。

 

 

 爆散するケイの機体を見ながら、ユメは少しだけ手に力を入れてからその拳を解いた。

 

 

 

「強いね、リク君」

「うん。でも、ケイも強い。ストライクBondも」

 相変わらず不思議な女の子だと思いながら、ユメはサラの機体の手を引いて彼女をリクの所に連れて行く。

 

 

「ユメさん……」

「だ、大丈夫だよ!? 私もここで攻撃するような事しないから。……んー、でも、少し羨ましかったかも」

「羨ましかった?」

 ユメの言葉に、リクとサラは首を傾げた。そんな二人に、ユメはこう続ける。

 

「男の子って良いなって、少し思っちゃった。多分ね、私もガンプラが好きなんだと思う。ケイ君に勧められて始めたGBNだし、最初はこの世界に立ってるだけで楽しかったのに……」

 現実で足が動かないユメは、この世界に来た時とても幸せな気持ちになった。

 

 自分の足で立って、歩ける。

 そんな当たり前の事が幸せで、また皆で遊べるのが幸せで。

 

 

 だけど、GBNを楽しんでいる内にそれだけじゃ満足出来なくなってしまったのだ。

 

 

「私もケー君みたいに熱くなりたいなって。そんな事思っちゃった。……えへへ、二人とも凄かったよ。アニメのバトルみたいだった」

「そっか。ユメさん、今度は俺もユメさんと戦いたいよ」

「うん、ありがとう。でもね……リク君を倒すのはケー君だから!」

 ケイと同じように、ユメは右手の拳をリクに向ける。

 

 そんな彼女を見てリクはまた楽しそうに笑った。

 

 

「分かった。また戦おうって、ケイに言っておいて」

「うん。それじゃ、またね!」

 変形して自軍エリアに向かうユメ。

 

 

「ストライクBond、か。……きっともっと強くなるよね。俺も、もっと頑張りたいな」

 そんな彼女を見送るリクは、ボロボロになったダブルオースカイと共に拳を握る。

 

 

 もっと強くなりたい。

 ダブルオーだけじゃない、色々な場所から聞こえるそんな()にサラは笑みを見せるのであった。

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