ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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虎武龍

 イベント戦は始まったばかりだ。

 

 

 交差する光。

 激しい戦闘の中、GBNチャンピオン───クジョウ・キョウヤはとあるダイバーの前に立っていた。

 

 

「やぁ、NFTぶりかな。……セイヤ」

「AVALONのリーダー様が、こんな弱小フォースに何用だ」

 フォースアンチレッドのリーダー、セイヤ。

 彼のフォースもまた、このイベント戦に参加しているフォースである。

 

 そんな彼の前に訪れたキョウヤは、表情を崩さずにこんな言葉を口にした。

 

 

「勿論、ガンプラバトルをしに来たんだ。前回のNFT準優勝者である、君達と」

 真剣な瞳でセイヤの機体───赤く塗装されたνガンダムに視線を向ける。

 セイヤの後ろには他にもアンチレッドのメンバーがいるが、キョウヤの後ろには誰もいない。

 

 それでもキョウヤは表情一つ変えず、セイヤに己の得物を向けた。

 

 

「さぁ、バトルをしよう」

「……分からないな。なんなんだ、お前は」

 光が交差する。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ReBond自軍エリア。

 

 

「惜しかったな。まぁ、俺なら勝ってたけど?」

「本当かー?」

「俺は最強だからな」

 リクに敗れ、戻ってきたケイと話すロック。彼の言葉に疑いの言葉を掛けるイアに、ロックは微塵の迷いもなくそう言い返した。

 

「さて、第七機甲師団とビルドダイバーズには大敗だった訳っすけど。まだまだイベント戦は長いっすからね、次の作戦を決めて行こうっす」

「お、次の戦いか! 次は勝つぞー!」

「ただいまー。ん、イアちゃん。次の戦いの話?」

 次の戦いに向けて気合を入れるイアの隣に、リク達と別れて帰ってきたユメがそう問い掛ける。

 イアは帰ってきたユメの機体と手を繋ぐと「ユメは大活躍だったな!」と親指を立てた。

 

「ありがと、イアちゃん。それで、次はどうするんですか?」

「それを丁度今から決める所だったんすよね」

「ここから近いところでまだ戦ってないのは……虎武龍かねぇ。今度は全員でビルドダイバーズにカチコミって手もあるけど」

 ニャムの言葉に続いてフィールドマップを眺めながらそう口にするカルミア。彼の言葉を聞いて、ケイはリクとの会話を少し思いだす。

 

 

 ──俺も、ウルフさんの所で相打ちみたいになっちゃって──

 

「今なら多分、虎武龍の戦力は半減してると思う。戦うなら虎武龍じゃないか?」

「そうか……確かケイ、お前リクとなんか話してたもんな」

 ビルドダイバーズのリクは虎武龍と戦って撤退している時にケイと出会った。

 つまり、虎武龍は今ビルドダイバーズと戦った傷が癒えていない筈である。

 

 

「ケー君ってもしかして、凄く勝ちに貪欲だったりする?」

「ユメ、知らなかったのか? コイツは死ぬ程負けず嫌いだぞ」

 弱っている相手を叩くという、勝利の為に正し過ぎる選択に若干引くユメ。そんな彼女にロックは昔の事を思い出しながら半目でそう口にした。

 

 思えばケイがガンプラバトルを始めたのだって───

 

 

「───さて、虎武龍が相手となると……今度は俺の出番だな!」

 思い出に浸りながらも、ロックは自信あり気に胸を張る。

 

「なるほど、虎武龍は格闘戦特化のフォースっすからね。ロック氏の力が生きるって事っすか!」

「そうそう。……俺の狙撃センスがな!」

「なんでそうなるんすかね?」

「え? なんか俺間違ってる?」

 メンバー全員に本気で言っているのか、なんて目で見られるロック。

 戦術はともかく、今は虎武龍が体制を整える前に攻撃を仕掛けたい。ReBondのメンバー達は急いで虎武龍の自軍エリア付近に向かうのだった。

 

 

 

 

「───リクの奴、やってくれたぜ。全く」

 アルトロンガンダムをベースに、右肩に金の虎を左肩には銀狼の意匠が施されたガンプラ。ガンダムジーエンアルトロン。

 

 フォース虎武龍のリーダー、タイガーウルフは目を細めて半壊した戦力をどう立て直すか考えている。

 フォースビルドダイバーズとの戦いはどちらが勝ってもおかしくないような接戦だった。故に、勝利したタイガーウルフ本人や仲間の機体達もボロボロである。

 

 こんな所を()()()に狙われでもしたら───なんて嫌な想像をしていたら、アラートと仲間の悲鳴が控えた。

 

 

「今度はなんだ! くそ、これだからこういうイベント戦は!!」

 彼は狼顔の獣人という姿をしているが、その狼の顔の表情を歪ませてアラートの方角を向き叫ぶ。

 蹴散らしてやる───そう身構えた瞬間、視界を光が包み込もうとしていた。

 

「おぉぉ!? くそ!!!」

 慌てて回避行動を取るタイガーウルフ。しかし、その光に仲間が何人も吸い込まれて行く姿が目に映る。

 

 

「この光、アイツじゃないが……。なんてパワーだ」

 思い浮かべた最悪の結果ではないが、攻撃してきた相手の技量を冷静に分析したタイガーウルフは苦笑いを零した。

 漁夫といえば聞こえは悪いが、これもイベント戦ならではの正しい作戦なのだろう。

 

 だからこそ、タイガーウルフはこのイベント戦に参加するのは不本意だった。

 

 

 しかし───

 

 

 

「どうしても貴方の力が必要なのよ、()()()()ちゃん。また力を貸してちょうだい」

「マギーさんにそう頼まれちゃ、仕方がないか」

 本来格闘戦を得意とするタイガーウルフは、このような乱戦の起こりうるバトルは好みではない。

 しかし、マギーに頼まれた事といい、ここ数週間問題になっているというELダイバーの行方不明事件に対してタイガーウルフも思う事があったのである。

 

 

 

「───とはいえ、リク達は普段通りだったが。どうなってんだか。……さて、敵の戦力は」

 ───件の話とは関係なく、フォースランキング五位虎武龍のタイガーウルフもガンプラバトルをこよなく愛するダイバーだ。

 

 参加すると決まった以上、半端な結果は許されない。

 

 

 来る敵は叩き、来ないなら叩きないく。

 それがタイガーウルフがこのイベント戦で決めていた()()だった。

 

 

 

「敵戦力、六機です! 内三機、高速で接近してきます!」

「数が少ねぇな。少数精鋭か……。応戦するぞ!!」

 仲間の言葉に対して自分が一番前に出て拳を突き上げるタイガーウルフ。

 

 ロンメルとは違い自らが先陣を切る戦い方は、ロンメルとは別のベクトルでのカリスマ性を有している。

 仲間の指揮は上がり、熱い熱気が戦闘宙域を包み込んだ。

 

 

 

「アレがタイガーウルフのジーエンアルトロンか……。ユメ、イア、分かってるな?」

「うん。私達は出来るだけ敵の数を減らす役割だよね!」

「まずは弱ってる敵を叩く! リスポーンしてきた奴は抑える! そんでタイガーウルフはタケシに任せる!」

 先行する三機、ケイのクロスボーンストライクBondとユメのダブルオーデルタグラスパーにイアのZガンダム。

 この三機はその高い機動力でタイガーウルフの追従も許さず、その仲間達に攻撃を仕掛ける。

 

 その後方。

 遅れてやってきたニャムとカルミア、そしてロックは機体性能を活かして援護射撃が仕事だ。

 この陣形で道を開いて、タイガーウルフをロックが叩く。それがニャムの考えた作戦だった。

 

 

 

「───気に食わないな。なんで俺が態々接近戦をしに行かないといけないんだ」

「それ、そろそろネタで言ってるのか本気で言ってるのか分からないっすよ」

「まぁまぁ、ニャムちゃん。とりあえずはおじさん達の仕事をしようじゃないの」

 アカツキのドラグーン、レッドウルフのミサイルとメガランチャーがケイ達の取りこぼしを次々と落としていく。

 

 しかし、ロックのGNスナイパーライフルはやはり当たりはしても敵を落とす事は全く出来ていなかった。

 

 

「……ケー君、やっぱりタケシ君下手くそだよ」

「あ、あはは。でもタケシはこの後仕事があるから」

「ロックな!! 聞こえてるからな!!」

 幼馴染みを詰る二人。

 

 言いながらもケイ達は疲弊しきった虎武龍の面々を次々と撃破していく。

 そんな相手に、タイガーウルフは表情を引き攣らせていた。

 

 

「───これ以上好きにさせるか……!!」

「イアちゃん!!」

 イアのZガンダムに猛進するタイガーウルフ。そんなイアを庇おうと変形して前に出たユメだが、ジーエンアルトロンの拳に機体を貫かれて彼女は爆散する。

 

 

「おぉぉぉ!? ユメが!!」

「この!!」

 ユメを撃破したタイガーウルフに向けられるケイのピーコック・スマッシャー。しかし放たれたビームは、ジーエンアルトロンの拳で受け止められてしまった。

 

 

「……ま、マジかよ」

「くっそう! よくもユメをやってくれたな!」

 変形し、ビームサーベルを抜くイア。

 Zガンダムが淡い光を放ち、ビームサーベルが巨大化していく。

 

「コイツで真っ二つだ!!」

「遅い!!」

 振り下ろされるビームサーベル。しかし、タイガーウルフは一瞬でZの懐に潜り込んで拳を放った。

 

 

「なんと!?」

「この距離でそんな大振りが通ると思うなよ……!!」

 Zを貫く餓狼の拳。

 

 イアの犠牲を無駄にしない為にその背後からムラマサ・ブサスターを構え突進するケイだが、タイガーウルフは振り向きもせずにケイの攻撃を受け止める。

 

 

「……マジか」

 もはやそんな言葉しか出なかった。

 圧倒的な力の差。この男に接近戦で勝てるダイバーがいるのだろうかと、ケイは表情を引き攣らせる。

 

「……筋は良いが、まだまだ甘い」

 爆散するケイの機体。

 

 後方で射撃戦をしていた三人は、仲間達がやられているのを唖然と見守る事しか出来なかった。

 

 

「ニャムちゃん、逃げようぜ」

「ジブンもそう言おうと思っていた所なんすけどね……」

「次はお前達だ……!!」

「流してくれそうにないっすよ!?」

 三機に向けて猛進してくるタイガーウルフ。

 

 ニャムとカルミアは焦ってけんせい射撃をするが、タイガーウルフはその全てを交わしながら速度を落とさずに向かってくる。

 それはもう山中で狩りをする狼のようだった。

 

 

「───ったく、しょうがねぇな」

 そんな狼に怯まず構える男が一人。

 

 

「ちょこまかと射撃戦をしても、俺は倒せん!!」

「だったら俺様が相手してやるよ!!」

 向かってくるタイガーウルフの前に立つロック。

 

 狙撃機体なんて恐れる事はない。そう思いながら突進するタイガーウルフの前で、ロックのデュナメスHellはフルシールドを展開する。

 

 

「何!?」

「死ぬぜ、俺の姿を見た奴はな……!!」

 フルシールド内に内蔵された数多の格闘兵器。

 

 ビームサイズを展開したデュナメスHellを見て、タイガーウルフは不敵に笑った。

 

 

「───手応えのありしうな奴が居るじゃねーか。俺はタイガーウルフだ。名前を聞かせろ」

「───ロック・リバー。フォースReBondのリーダーにしてクールで格好良い男だ!!」

 拳と刃が重なり合う。

 

 

 接近戦を得意とする二人の激闘が始まった。

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