ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
いつかのプラモ屋で。
「アオト! ガンプラバトルしようぜ!」
「お、タケシ丁度良い所に! 今やっと新しいガンプラを作ったんだよ」
プラモ屋に遊びにきたタケシに、少年アオトは自慢げな顔で今さっき出来たガンプラを見せ付ける。
そのガンプラはストライクのバックパックにνガンダムのバックパックを装備して、ファンネルが使えるようにしただけのものだった。
それでも、小さな子供の改造としては良く出来た物である。
「お、ファンネルか。良いね、やろうぜ。てかロックな」
「νストライクの初バトルだ!」
「まんまじゃん」
「アオト君の新しいプラモ? 凄いね、見よ見よ!」
ケイスケとユメはそんな二人のバトルを観戦するが、勝負は簡単に終わってしまった。
結果はアオトの完敗。
アオトはガンプラを作るのは誰よりも上手だったが、バトルはそこまで得意ではなかったのである。
「お前、ファンネル使うの下手だろ」
「れ、練習してからもう一度だ! タケシ!」
「ロックな」
それでも、あの頃アオトはガンプラバトルを楽しんでいた。
☆ ☆ ☆
AGE2マグナムと赤いνガンダムがビームサーベルを交じえる。
「調子に乗るな! チャンピオン!!」
その周囲で、νガンダムのファンネルがAGE2マグナムに銃口を向けた。
しかし、ファンネルは全てFファンネルに貫かれ爆散する。
そのFファンネルが切先をνガンダムに向けると、セイヤは舌打ちをしながらキョウヤと距離を取った。
「君は今何をしようとしている、セイヤ」
「何か企んでる奴がそう聞かれて真面目に答える訳ないだろあまちゃんが……。やれ、アオト!!」
「何……?」
突然。
キョウヤのFファンネルが一つ爆散する。
しかし、視界には何も映っていない。何がFファンネルを襲ったのか、素人目には分からなかった。
「───クリアパーツか」
───しかし、キョウヤは素人ではない。
数多の激戦をこなして来たGBNのチャンピオンは、何が起きたのかを一瞬で理解して解答を導き出す。
AGE2マグナムの周囲を囲むように回転するFファンネルが、その
「クリアパーツのファンネルか、よく出来ている……。下か!」
そんなキョウヤに向けて高速で接近してくる機体が一機。速度だけで判断するならMAか可変機だろう。
「イージスか」
そしてキョウヤの視界に入ったのは、カスタマイズされたイージスの姿だった。
イージスは変形を解除すると、両腕のビームサーベルを展開してキョウヤの懐に潜り込む。
「俺達の邪魔をするな……」
「君も、セイヤと同じでGBNを憎んでいるんだな」
鍔迫り合い。
禍々しさすら感じる気迫が、そのイージスから流れ込んできた。
イージスのパイロット───アオトは、一度キョウヤから離れてシールドをAGE2マグナムに向ける。
「……イージスの盾ではない、アレは───レギルスの盾か!」
「……ブレイクビット!」
アオトのイージスの盾は本来の物ではなく、レギルスというMSが使う盾を装備していた。
その盾から、大量の胞子状ビームが展開される。
そのビームの一つ一つが独立して動くビットであり、一度イージスを取り囲むようにして展開されたビットは真っ直ぐにキョウヤのAGE2マグナムに突撃した。
「……ブレイクドラグーン!」
それだけではない。
イージスのスカートから分離したオールレンジ武装───ドラグーンがビットを追従する。
「オールレンジ攻撃に特化させたイージスとは、面白いカスタマイズだ……。それ程の物を作れるのになぜ、GBNを憎む……!」
回避行動を取りながら、キョウヤはアオトに語り掛けた。
NFTにアンチレッドのメンバーとして参加していた機体の中にもイージスが居たのを思い出す。
直接関わった訳ではない為同じダイバーなのかはキョウヤには分からない。
しかしそれが誰であれ、キョウヤには関係なかった。
彼は等しく、全てのダイバーにこのGBNを楽しんで欲しいのである。
「あんたには関係のない事だ……!!」
「そうか……。ならば、目を覚ますと良い」
キョウヤは剣先にFファンネルを集中させ、
イージスのドラグーンやビットは全て消し炭にされ、イージス本体も左足を吹き飛ばされる。
「GBNを、ガンプラを本気で楽しんでいる者達は、君達の企みには屈しない。……だから、僕達と一緒にまたGBNを楽しまないか?」
「……そんなのはあんたの勝手な妄想だ。人は簡単に傷付くし、失う。なんでも完璧なあんたには! 俺達の気持ちなんて分からないんだよ!」
損傷しながら、使える手足のサーベルを全て展開してキョウヤに突撃するアオト。
キョウヤは一度目を瞑って、ゆっくりと目を開き───アオトのイージスを返り討ちにした。
「なぁ、チャンピオン。そういう事だ。お前が何を言っても、俺たちには響かない。……俺達は、必ずこのGBNを破壊する!」
「確かに失った物は取り戻せない。取り返しのつかない物もあるだろう。……しかし、新しくGBNで得られる物もあるんだ! 失ったからといって、誰かから奪う権利を与えられる訳ではない!!」
「そんなものは何も失ってない奴だから言える綺麗事だ!!」
再びぶつかり合うAGE2マグナムとνガンダム。
アオトのイージスが居なくなった事で、その場にいたセイヤの仲間は全滅している。
ここでセイヤを倒そうが、イベント戦のルールでリスポーンするだけだ。
今そうなれば、彼と話す事は今後出来ないかもしれない。キョウヤにセイヤを倒すという選択肢はないが、セイヤはキョウヤの話を聞く気はないだろう。
「……それは一理ある言葉だ。そして、僕もまた人から大切な物を奪おうとした張本人でもある」
第二次有志連合戦。
ビルドダイバーズのサラを、キョウヤはリク達から奪おうとした。
結果リクはサラの命を救い出したが、それは文字通り結果に過ぎない。
「───だからこそ、僕はこれ以上何かが奪われるのを阻止したい。君は僕以上に、失う気持ちが分かっている筈だ!!」
「分かるさ。……だから、お前らにこの気持ちを分からせてやろうってんだよ!! 綺麗事だけ並べて、お前達は本当に何も分かってないって事を教えてやる!!」
「君は自分の苦しみを他の人にも味わえというのか!」
「そうだ!! そうしないと分からないだろ!! だから、人は他人からなんでも奪える!! そういう物なんだよ、世の中ってのはな!!」
「何故だ……。君だって、このGBNを楽しんでいた筈だ……!」
νガンダムの大振りのビームサーベルを交わし、キョウヤはサーベルをνガンダムのコックピットに突き刺す。
話し合いは出来ない。
キョウヤは強く拳を握りながら、首を横に振った。
セイヤが何を言おうと、何をしようと、それを止めるのが自分のやるべき事だと自分に言い聞かせる。
そして、セイヤは爆散寸前のνガンダムの中でこう口にした。
「流石、GBNチャンピオンだな。勝利報酬で良い事を教えてやるよ」
「良い事、だと?」
「……俺達はこのイベント戦では何もする気はない」
「何?」
セイヤの言葉に、キョウヤは目を丸くする。
「君達は、ここ最近Lダイバーが行方不明になるという事件を知っているか?」
「……知ってたらなんだ? お前に話す事はない」
そう言って、セイヤはキョウヤの機体を蹴り飛ばした。
数瞬の後、セイヤの赤いνガンダムは爆散する。
そんな姿を見届けたキョウヤは脳裏に焼き付いた彼の言葉を口にして繰り返していた。
「このイベント戦
キョウヤはそう言って頭を抱え込む。
「彼等がこのイベント戦に参加した理由は───」
キョウヤの中で、辻褄が繋がった。しかし、今気がついても遅かったのである。
イベント戦は既に時間の半分が経過していた。