ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
時間切れ。
誰かがそう言った。
【time's up】
モニターにそんな文字が映し出される。
「くそ、時間か……セイヤ!!」
「……じゃあな、カンダ」
「アオト! 話を聞いてくれ!!」
「……お前の話なんて、聞かない」
超大規模変則スコア戦はその瞬間幕を下ろした。
機体は転送され、戦場はリセットされていく。
データの波に消える共に手を伸ばしても、その手は届かなかった。
「───カツラギさん、アンチレッドのメンバーのログを確認してくれ」
「キョウヤ? 分かった。……む、これは」
カツラギの前に現れたキョウヤは、カツラギにそんな事を言って目を閉じる。
そしてモニターに映った、今イベント戦でのアンチレッドのメンバーのログを見てカツラギは目を細めた。
「……少数部隊で全てのフォースの接敵し、戦っている。まるで何かを探しているようだ」
「そう、きっと今回彼等がこのイベント戦への招待を受けたのは───」
モニターに映るダイバー達のログ。
その中で数点ほど、赤くチェックが付けられている物がある。
それは今回のイベントに参加しているELダイバー達だった。
「───ELダイバーの皆が所属するフォースを確かめる為なのかもしれない。勿論、これはELダイバーの失踪事件に彼等が関わっているのなら……という話だけどね。カツラギさん、僕達は利用されてしまった」
「……むぅ」
カツラギは頭を抱えてから、もう一度モニターを眺める。
「……アンチレッド、か」
SDガンダムの姿であるにも関わらずその表情が歪んでいるのをキョウヤは感じた。
複雑な感情が渦巻く中で、キョウヤはカツラギに背を向ける。
「……彼等の動きを注視して下さい。僕も、出来る限りの事はやろうと思う」
そう言ってキョウヤはカツラギの元を去った。
同時に、イベント戦のポイント集計が終わったとするアナウンスが流れる。
「……我々の過ちか」
カツラギは再びモニターに視線を移してから、深く目を瞑った。
☆ ☆ ☆
───アナウンスが流れる。
「───超大規模変則スコア戦、優勝フォースは!! フォース、AVALONです!!」
イベント戦の優勝フォースが発表されると、会場は大いに盛り上がりを見せた。
しかし、その中で必死に人々を掻き分けながら周りを見渡す影が数人。
「ニャムちゃん、諦めなって。アイツの事だ、もう此処には居ない」
「それは───そうっすね。楽しむと決めていたのに、結局取り乱してしまったっす」
イベント戦の後半でReBondの前に姿を見せたアンチレッドのメンバー達。
その目的は何だったのだろうか。今となっては聞くことも出来ない。
「アオトの野郎、耳を傾ける気もなかったって感じだったな」
「そうだね……」
「アオト……」
ケイ達三人も、幼馴染みの事を想い固まっている。
今回のイベント戦。
確かにアンチレッドも参加していたが、彼等の目的は楽しむ事の筈だった。
勿論本気でバトルを楽しんでいたし、結果は出せなかったが自分達なりに手応えのあるバトルも出来たし繋がりも増えている。
それでも───
「アオトを止める力が俺達には足りなかった」
ケイもユメも新しい機体を使いこなしているが、アオトに言葉を届けるまでには至っていなかったと反省していた。
ロックは「アオトが聞く気がなかっただけ」だと言うが、そんな彼の言葉にイアは首を傾げながらこう口を開く。
「あの赤いガンプラは、ケイ達と話したがってたけどなー」
「赤いガンプラ?」
「イージスの事か?」
イアの言葉にケイ達は目を丸くした。
ガンプラの声が聞こえるというELダイバーの力。
あまりにも真実味のない話ではあるが、ケイ達はイア以外にもサラという前例が居る事も知っている。
「アオトの作ったイージスが、か」
「なんか分かんないけどさ、喧嘩したならちゃんと謝った方が良いぞ。ガンプラが可哀想だ」
「喧嘩した訳じゃねーけどな。……いや? どうなんだ? 喧嘩してるのか?」
イアの言葉にさらに首を傾げるロック。そんな彼を他所に、イアは「はー! 楽しかった!」と両手を広げた。
「……そうだな。楽しかった」
結果だけ見れば残念だったが、このイベント戦は彼等にとって掛け替えの無い経験になったに違いないだろう。
ただ、アンチレッドの動向だけはどうしても気になってしまった。
セイヤはReBondやビルドダイバーズの面々を確認するや、目的は達成したと言っていたのを思い出す。
彼ははいったい何をしようとしているのだろうか。
「お、見付けたぞ! ロック・リバー!」
そんな事を考えていた彼らの元に、狼の獣人の姿をした大男が声を掛けて来た。
「え、タイガーウルフ?」
「イベント戦で戦った凄い人だよね?」
「虎武龍の大将じゃないっすか!!」
何故かロックに話し掛けてきたタイガーウルフの姿に、ケイ達やニャムは目を丸くする。
「お、タイガーウルフじゃねーか! さっそくバトルの誘いかぁ?」
「まてまて、今日は流石にもう遅い。だから、連絡先を交換しようと思って来たんだ」
「オッケー。これ、俺様のIDな」
「おう、助かるぜ!」
タイガーウルフと自然に会話するロックを見て、ケイ達は悩み事が何処かへ吹っ飛んでしまった。
このイベント戦は楽しもう。
そんな事を思い出して、ケイ達は笑い合った。
初めから目的は楽しむ事で、そういう意味では彼らも目的を達成している。
アンチレッドがなんだとかは関係ない。
楽しんで、強くなって、それからアオト達に語りかけるのがReBondが結成した時の目標だった。
だから彼らは何も間違っていない。しっかり、前に進んでいる。
「───これにて、超大規模変則スコア戦を終了致します! なお、今大会の内容は後日配信される予定です。お楽しみに!!」
アナウンスと共にダイバー達は次々とログアウトしていった。
やはりその中にアオト達の姿はない。
「ま、過ぎた事は気にしてもしょうがねーよ」
そう言って、ロックはReBondのメンバーを手で集める。今回のログを見て反省会をしているうちに、イアも含めた五人は杞憂など忘れて本来の目的通りこのイベントを楽しく終わらせる事が出来たのであった。
現実。
「───ELダイバーの蓄積データによるバグ、ですか」
「そうだ。アオト、お前は一年半前のGBNを知らないんだったっけか」
アンチレッドの団員の一人に問いかけたアオトに、団員はそう聞き返す。
「いや、聞いた事はありますよ」
一年と半年前。
第二次有志連合戦は、GBNの内外でも有名な話だ。
バーチャル世界に誕生した新たな生命ELダイバー。
ガンダムにもガンプラにも、GBNにも興味がなくてもこの話題に興味を示す物は多かっただろう。
「なら話が早い。運営がELダイバーを消そうとしたのは、アイツら電子生命体はGBNのサーバーで命としてのデータを蓄積していく訳だが。命っていうか、凄い膨大なデータって言った方が良いか。そんで、GBNのサーバーはその膨大なデータに圧迫された」
「それでバグが起き始めた」
「そういう事だ。あの事件以来、ELダイバーのデータを外に移す技術が確立され、今ELダイバーは保護されている。……ここまで言えば、団長が何をしようとしてるのか分かるだろ」
そう言って団員の男は、両手を上げながらアオトの元から離れていった。
ELダイバーのデータ。
ELダイバーの保護。
ELダイバーの失踪事件。
「ELダイバーの命でGBNのサーバーそのものを破壊する、か」
アオトはそんな言葉を漏らしてから目を瞑る。
「───関係ない。俺は、GBNさえ壊すことが出来ればそれで良いんだ」
少年の瞳は異様な程に真っ直ぐ、前を向いていた。