ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
長い一日の始まり
トコトコと浮き足で、ヒメカはデパートの入り口へ向かう。
「おねーちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。自動ドア開けてくれてありがとね」
ゆっくりと車椅子で進むユメカの為に、ヒメカは周りの人に頭を下げて道を開けてもらっていた。
そんな妹の優しさに嬉し恥ずかしながら、ユメカはデパートに入っていく。
道が開ければヒメカが車椅子を押してくれるので問題ないが、人の多いデパートに車椅子で来るのは大変だ。
それでもユメカがここに来たのは、先週のイベント戦の為に妹の誘いを断ってしまった詫びでもある。だから、今日GBNはお休みだ。
「よいしょ……ふぅ」
「私が押してくから大丈夫だよ! おねーちゃん。今日はどのお店見よっかなぁ」
「うん、ありがと。どうしようねー」
「おねーちゃんとデート! おねーちゃんとデート!」
「あはは、はしゃぎ過ぎだよ」
家から近いとは言えないデパートまでやって来て疲れてしまったが、この妹の笑顔の為なら頑張れる。
「今日は一日使って色んなお店回ろうね!」
「う、うへー。が、頑張ろうかなぁ……」
それに、最近GBNばかりで体力が落ちて来ているかもしれない。少しは体を動かさないといけないと思う、ユメカなのであった。
☆ ☆ ☆
GBN。ReBondのフォースネスト。
「おっす、ケイ。ユメは?」
「今日はデパートだって」
「あー、ヒメカちゃんか。そういや昨日学校でそんな事言ってた気がすんな」
超大規模変則スコア戦から一週間後。
今日も今日とてGBNにログインしているケイとロック。そんな彼等を見て、イアはポツンとした表情でこう口を開く。
「二人共暇なのか?」
「え」
「は」
素っ頓狂な反応をした二人に、イアはさらにこう続けた。
「所謂、
「い、いやいや。ほら、ニャムさんも毎日来てるだろ?」
「今日はニャム居ないぞ」
焦った声で言うロックにそう返すイア。言われてみれば、フォースネストにはイアを含めた三人しか居ない。
「な、なんで!? おっさんも居ないし!!」
「ニャムさんは大学の課題を進めたいってのと、カルミアさんはプラモ屋のバイト。今日は在庫整理とか色々で忙しいらしくて来れないんだって」
「そういやログインする前にそんな事言ってた気がするな……。さっさとこっち来たくて殆ど内容書いてなかったわ」
ロックはカルミアが今働いているプラモ屋、つまりアオトの父の家からGBNにログインしているのでカルミアの事は頭の片隅にあったがましかニャムがログインして来ないとは思っていなかったのである。
ここ半年、ほぼ毎日GBNにログインしていた二人だがReBondを結成してからこんなにメンバーがログインしてないのは初めての事だった。
「ReBond解散の危機か!? 俺のリーダー力が足りなかったってか!? お、終わりだぁ!! フォース解散だぁ!!」
「お、落ち着けタケシ。たまにはそんな事もあるって。ほ、ほら、とりあえず深呼吸しろ。な?」
「いや、お前が一番落ち着けよ。GBNで深呼吸もくそもねーよ」
大袈裟な反応を見せるロックの隣で、ケイはガクガクと震えている。なんやかんや、ケイが一番GBNを楽しんでいるというのは最近のロックの見解だった。
「───ともあれ、今日は何すっかなぁ」
ケイを落ち着けて、イアと三人でフォースネストの中で話すロック。
イベント戦も終わった直後で、直近に特に目標はない。
普段の平日は適当にデイリーミッション等を進めてから二、三戦バトルをしたら終わってしまうが今日は休日である。
ニャム達のように現実で特にやる事のない二人には時間が有り余り過ぎていた。
「とりあえず、デイリーミッションとかやるか?」
「まぁ、黙ってても仕方ないしな。イア、観戦モード付けるからバックアップしてくれ」
「オッケー、任せてくれ!」
そんな訳で、二人はイアに手伝ってもらいながらミッションをこなす事に。
選ばれたミッションは敵ボスMSの撃破が目標のミッションである。
ステージ奥に待ち構えるボスに辿り着くには、ステージに点在するMS達の猛攻を潜り抜けるか全てを撃破していかなければならない。
丁度ケイがユメと初めてGBNでクリアしたミッションと同じような内容である。
「えーと、ボスキャラはさざびー? 取り巻きはぎらどーが、ボスの前でやくとどーがってのが出現するってさ」
「サザビーか。んで、ボスの護衛がクェスとギュネイって事だな」
「逆襲のシャアって感じだな。α・アジールとかが邪魔で入って来たりしたらとんでもない難易度になってたかもしれないけど」
サザビーさえ撃破すればミッションはクリアだが、今回は別にミッションをクリアするのが目的ではなかった。
ミッションではポイントを稼げば稼ぐ程多くの報酬が貰える。
GBNはその報酬でアイテムを買ったり食事を楽しんだり、機体の改造改修も出来るのでポイント稼ぎは重要だ。
GBNを始めたてのあの頃ならともかく、今ミッションをやるなら
「ケイ、ストライカーは?」
「エクリプスでギラドーガを倒してポイント稼ぎだな。ボスサザビーはちょっとタケシに頑張ってもらうけど」
「任せろって。けど、ロックな」
言いながらミッションの準備をした二人は、コンソールパネルから【MissionStart】のボタンを選んだ。
転送される二人を見送ってから、イアは自分のコンソールパネルを開いてナビゲートモードに移行する。イアのコンソールパネルに、二人分のメインモニターとレーダー等が映し出された。
ミッションではAIナビゲーターを利用する事が出来るが、AIナビゲーターよりも生身の感性を持った仲間のダイバーにナビゲートしてもらった方が確実である。
「ふっふっふ、ボクはAIとは違うのだよ! AIとは!」
「そんな言葉どこで覚えたんだ……。ニャムさんか」
「ニャムさんだろうな」
「───ぶぇっくしゅん!! あれ? なんでしょう。私、誰かに噂されてたりします?」
現実で
MissionStart
「カルネージストライカー……!」
ミッションが始まると同時に、スラスターを吹かしながら極限進化形態のカルネージストライカーを展開するエクリプスストライクBond。
次の瞬間放たれたビーム砲は、ケイから見て右側にいた大隊をほぼ壊滅させる。
さらに同時に放たれたエクリプスクラスターのミサイルにより、左側の部隊も半壊。
火力だけに関して言えばケイのエクリプスストライカーはカルミアのレッドウルフをも上回る性能だ。
問題は手数と弾幕の持続能力で、カルネージストライカーはそう何発も使える武装ではない。エクリプスクラスターに関しては使い切りの武装である。
そうなるとそうなるとフルバースト後の武装はブラスターカノンとヴァリアブル・サイコ・ライフルのみだ。
ケイの中でコレはネックな所だが、中々良い改修案が浮かばずにいる。
ついでにユメ曰くエクリプスは重くて足が遅くなるからあまり装備したくないとの事。
ユメも前に出るようになってからバトルを楽しむタイプになってきたなと、ケイは苦笑いしながらも内心は喜んでいた。
「タケシ、行け!」
「ロックな! イア、俺のレーダーに映った残存戦略をケイに連絡してくれ」
「もうやってるぜ! ケイ、タケシから十時の方向に漏らした敵が集まってる!」
「ミサイルが届かなかった位置か。タケシ、援護するから当たるなよ!!」
「お前ら良い加減ロックって呼べよ!!」
言いながらイアの言った方角に気を向けて回避運動を取りながら進むロック。
数秒遅れてミサイルや弾丸がロックのデュナメスHellを掠めるも、その殆どはケイのライフルで撃ち落とされる。
「よっしゃ、サザビー行くぜ!」
「失敗するなよ。俺は残りを叩いてる!」
言いながら、ケイはイアのナビゲートを元に残存戦力に火力を集中させた。
「最速クリアタイム頂きだぁ!! トランザム!!」
ある程度近付いてからトランザムを使用したロックは、サザビーに向けてビームサイズを振り下ろそうとする。
しかし、赤いヤクトドーガが盾を構えてサザビーの前に立ちはだかった。
「何故邪魔をする! クェス!」
「それ使い所違う!」
ケイのツッコミを無視して、ロックは放たれたファンネルをビームサーベルで切り飛ばす。
もう一機、深緑色のヤクトドーガが現れると流石にロックも苦い表情でサザビーから距離を取った。
「マジで邪魔なんだが!」
「そういうもんだろ! タケシ、サザビーも見ろ!」
「あ? うわ!?」
イアの忠告を聴いてサザビーに視線を向けると同時に、メガ粒子砲が放たれデュナメスHellの右足が吹き飛ばされる。
「だから言ったのに!」
「ご忠告痛み入るぜ!! んなろう、どうしてやろうか」
「ケイがもう少しで射程内まで行けるから、援護射撃で二機を退かしてもらおう! そこでガツンと行こうぜ! あと十秒使って二機をボスから離して!」
「無茶振りだろ! やるけどな!!」
言いながらヤクトドーガにサーベルを大振りに見せて距離を取らせるロック。
「やっちゃえケイ!」
「タケシ、サザビーを!」
「だからロックだってのぉぉおおお!!!」
連射されるヴァリアブル・サイコ・ライフル。二機のヤクトドーガは撃破こそ出来ないもののサザビーからかなり距離を取らされた。
そうなれば後はロックの仕事である。
「シャア! 覚悟!!」
振り下ろされるビームサイズをビームサーベルで受け止めようとするサザビー。
その刃が触れ合う直前、ビームサイズを手放して姿勢を落としながら、ロックはGNソードIIショートとビームサーベルでサザビーを切り裂いた。
【MissionComplete】
「「「よっし!」」」
同時に拳を突き上げる三人。
フォースネストに戻ってきたケイとロックはミッションのスコアを見て「スコア更新出来ねー」「ヤクトドーガ落とせなかったしな」と反省会を開く。
そんな二人を見ながら、イアはふと悪気もなくこんな言葉を呟くのだった。
「んで、今日は二人だけでなんかするのか?」
「あ、忘れてた……」
「これ終わったらやる事ないって現実逃避してたのに、お前って奴は……」
長い一日は始まったばかりである。