ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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接近戦なら

 カンダ・カラオの朝は早い。

 

 

「よーし、間に合ったな。てんちょー、帰ったわよー」

 新しいプラモの発売日。

 カラオは日が上るよりも遥か前にトラックを運転し、新商品を運んでくる。

 

 ケイ達が良く集まるプラモ屋。

 アオトの父が経営するこの店に勤める事になったカラオは、ケイ達がGBNをプレイしている時以外はこうして店の手伝いをしていた。

 

 

「流石に新作の発売日は忙しいわねぇ。お、サバーニャ決戦仕様だって。これはロッ君とか喜ぶんじゃない?」

「休日なのに働いてもらって悪いね、カンダ君。本当はケイ君達と一緒にGBNを楽しんで欲しかったんだけど」

「何言ってるのよ店長。そもそも、ケー君達がログインしてる時間こそ本来は忙しい筈なのにおじさんは遊んでるんだぜ? 偶に忙しい時くらいこき使ってちょうだいな」

 カラオの言う通り。

 

 学生であるケイ達がGBNをプレイするのは平日の夕方や休日である。

 当たり前だがその時間こそ店が忙しくなる時間だ。

 

 

「あはは、助かるよ」

「任せて頂戴よ。店長には衣食住なんとかしてもらってる恩もあるんだから」

 カラオはそう言うと、トラックから運んで来た商品を店に並べていく。

 そうしていると、彼の背後から一人の少年が店に入ってきた。

 

 ちなみに、まだ開店時間ではない。

 

 

「こーれ。まだ開店時間じゃ───って、ロッ君かい? 早い、早いよ」

「よ、おっさん。今日は新商品出るって聞いてたからな。早めに店が開くと思ってたんだ」

 少年───タケシは、言いながらカラオをすり抜け並べたてほやほやの新商品を眺め始める。

 

「お、サバーニャじゃん。かっけぇな……。店長、コレ買うわ」

「タケシ君おはよう。GBNの電源付けるから、ちょっと待ってね。サバーニャは割引するよ」

「お、やったぜ」

「おいおいてんちょさん、お得意様だからって流石に甘過ぎやしない?」

「タケシ君達はアオトの大切な友達だからね」

 屈託のない笑顔でそう言いながら、店主はGBNの電源を入れて新商品のガンプラを格安でタケシに渡した。

 

「さーて、今日もGBNで暴れてくるかぁ。おっさんはいつ来るんだ?」

「今日はちょっと店の手伝いで行けないかなぁ。ケー君達によろしく」

「何ぃ? せっかく新技を試してみようと思ったのに」

「そりゃ楽しみにしてるわね。……てかロッ君、今日はやけに早いログインね」

「ケイスケが早く来いって急かすんだよ。なんか、今日ユメカが来れないからって」

 言いながらGBNにログインする準備をするタケシ。

 

「さて、今日は頑張りますかねぇ」

 カラオはそんな彼に手を振りながら、開店の準備を進めるのであった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 GBN。ReBondフォースネスト。

 

 

「しりとりしようぜ……!」

「どうしようもなく暇なんだな」

 デイリーミッションを終えた二人は、特に予定もなくフォースネストで過ごしている。

 あまりじっとして居られるタイプの人間ではないロックは、もうなんでも良いから何かがしたいという状態だった。

 

 ついさっき新しいガンプラを買ってきたという話をしたロックに「なら今日は帰ってガンプラを作る日にするか」と聞いたケイに、ロックは「いや面倒くさいから嫌だ」と突っぱねる。

 ロックはガンプラを作るのが嫌いという訳ではないし、技術も持っているが基本的にはファイトがしたいタイプだ。黙々とガンプラを作るのは性に合わないらしい。

 

 

「そんじゃバトルしようよバトル! ボクも久し振りにバトルしたい!」

「いや、イアは難しいぞ」

「なんでだよぉ!」

「お前は撃破されたらヤバいって話をしたろ。リスポーンありのルールはイベント戦とか人が集まるモードじゃないと設定出来ないんだよ」

 イアの初バトル。

 チャンピオン、クジョウ・キョウヤとのバトルは三人で一人と戦うという特殊なルール故に()()()()設定がされたバトルだったのである。

 三人だけでプレイするとなると、中々どうして都合が付かないのだ。

 

「ドケチ!」

「イアはまた今度な」

 ケイがそう言うと、イアは唇を尖らせながら「だったらケイとタケシのバトルが見たいな!」と目を輝かせる。

 

「ロックな」

 二人は「やってみるか」と声を揃えた。

 

 お互い手の内を知る最高の仲間であり好敵手である。

 稀にこうして手合わせをするのも面白い物だと、ケイはここ最近そう思う事が増えた。

 

 

 思えば彼をGBNに誘って、GPDで戦ったあの日以来。

 何度かロックと戦った事はあるが、完全に一対一で戦ったのはあの時が最後だったかもしれない。

 

 

 

「ガンダムファイトぉぉおおお!!! レディィィゴォォォッ!!!」

 どこで覚えたのやら(分かりきっているが)お決まりの文句を合図に二人のバトルが始まった。

 

 挨拶とでもいうばかりに、ピーコック・スマッシャーを連射するケイ。

 ロックは「クロスボーンストライカーか」と目を細めて回避行動を取る。

 

 

 ABCマントを組み合わせて作られたフルクロスという装甲はビームに強い耐性を持っていた。

 デュナメス本来の強みである長距離射撃戦はこのフルクロスで強引に突っ込めば出来なくなる。しかし、ロックと彼のデュナメスHell相手ではそれはむしろ悪手かもしれない。

 

「俺様の射撃戦を封じに来るとはな!」

「それ本気で言ってんの?」

 戦いを見ながらそんなツッコミを入れるイア。ロックの射撃戦能力はイアでもへっぽこだと分かるレベルなのであった。

 

 

「───いや、せっかくだから接近戦の修行でもしようと思ってな!!」

 射撃で牽制しながらロックのデュナメスHellに接近するケイのストライクBond。

 ある程度近付かれると、ロックは「接近戦か、仕方ねぇな」とGNフルシールドを解く。

 

「そうこなくちゃな……!」

「刻んでやるぜ!!」

 展開されるムラマサ・ブラスターとビームサイズが重なり火花を散らせた。

 

 ロックはビームサイズのリーチを活かしてストライクを振り払い、バランスを崩した所で蹴りを入れる。

 一方でケイはクロスボーンストライカーのX字スラスターによるバランスコントロールで直ぐに体勢を立て直すと、ピーコック・スマッシャーを地面に撃ってロックを牽制した。

 

 

「おいおい! 接近戦をするんじゃなかったのかぁ?」

 巻き上がる砂埃に視線を向けながらそう言うロック。しかし、その刹那の後に砂埃の中からビームサーベルを構えたストライクBondが突進してくる。

 

「───ま、そうだとは思ったぜ!!」

 その程度は読んでいるとでも言うように、奇襲に対しても軽く応戦するロック。

 

 ムラマサ・ブラスターならともかく、ビームサーベルではビームサイズのリーチには敵わない。

 ケイの猛攻を受け止め切るロックだったが、ふと頭の中に疑問が浮かんだ。

 

 

「ムラマサ・ブラスターは───」

 なぜケイはビームサーベルで攻撃してくるのか。そんな事を思った次の瞬間、ケイはビームサーベルを投擲してくる。

 そして反射的にそれを弾いたロックの視界からストライクが消えた。

 

 上からの攻撃が迫るアラートが鳴り響く。

 

 

「───上か!?」

 空中でムラマサ・ブラスターを展開したストライクBondが、機体重量を乗せたまま降ってきた。

 

 砂埃に紛れてムラマサ・ブラスターを上空に投げ捨て、ビームサーベルによる奇襲と連撃で気を逸らしてからの本命。ケイらしい機転の効いた攻撃である。

 

 機体重量の乗った攻撃は受け止めるのが難しい。

 これは決まった───ケイやイアはそう思っていた。

 

 

 しかし───

 

 

「わりぃな───」

 ビームサイズを持ち上げ、攻撃を受け止めようという姿勢を取るロック。

 

 そんな事が出来る訳がない。

 そう思ってそのまま攻撃を続行したケイのムラマサ・ブラスターは、攻撃が掠める瞬間に身を逸らしたロックにいなされてしまう。

 

 

「何!?」

「───重い奴にはそれようの戦い方ってのがあるんだよ」

 ───地面にムラマサ・ブラスターを叩きつけたストライクBondにビームサイズを突き刺すロック。

 

 真っ二つにされたストライクBondは爆散し、このバトルの勝者はロックに決まったのだった。

 

 

 

「───なんだ今の!?」

「なんだって、ほら。柔道みたいなもんだ。相手の勢いを利用する訳よ。ま、接近戦なら基本だよな」

 ロックが最後にケイの攻撃に対して行ったのは相手の重量と勢いを使って反撃する技術である。

 主に現実で柔道や相撲、護身術等で有名だがロックが何かそういう習い事をしているなんて話は聞いた事がなかった。

 

「たまに凄いよなタケシ! さっきのなんだ! どこで教わった!」

「ロックな。いや、適当にやったら出来るぞ」

「なんだそれ……」

「本当にたまに凄いな! タケシ!」

「だからロックな!? お前はそもそも俺のリアルを知らないくせに!!」

「あばばばばばば」

 イアの頭をグリグリとするロックを見ながら、ケイはほぼ無傷で立っているデュナメスHellを見上げる。

 

 

「……トランザムすら使わせれなかったかぁ」

 中距離戦を挑んでいたらどうなっていたかは分からないが、やはり接近戦でのロックの強さは彼が知っている中でもトップクラスだ。

 それでも、接近戦だけならかなりの実力差がある事を思い知ってケイは「よし」と拳を握る。

 

 

「タケシ! もう一度だ!」

「だからロックな!? まー、良いけど。コテンパンにしてやるぜ」

「お、またやるのか! 掛け声やってやるぞ!」

 今日一日はまだ長い。

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