ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
ビームサイズを受け止めるヒートホーク。
至近距離でのザクマシンガンを華麗に交わしながら斬撃を放つデュナメスHellは、サブアームを巧みに操るスズのサイコザクレラージェを圧倒していた。
「オラオラどうした!! スナイパー勝負は俺の勝ちになっちまうぜ!!」
「……スナイパーの意味を勉強してこい、この脳筋スナイパー」
押されつつも、ロックの猛攻を耐えている時点でスズの実力には驚かされる。
しかし、それでもやはり至近距離戦ではロックには敵わなかった。切り裂かれ、爆散するサイコザクレラージェ。
しかし、サイコザクを倒したロックのデュナメスは背後から放たれたビームに貫かれて爆散した。
「いぇーい! タケシ撃破!」
「ロックな!! あの野郎!! 漁夫なんて狡い真似しやがって、今そっちにいってやるからな!!」
「僕のZに追いつける物なら追いついてみ───ふげぇ!?」
そんな事を言ったそばから撃破されるイアのZガンダム。彼女の機体を撃破したのは、変形したガイアトリニティを狩るアンディである。
して、そのアンディを追い掛けるアンジェリカのゴールドフレームオルニアス。さらにそのアンジェリカを追おうとするトウドウと、そのトウドウを狙うスズ。
ロックとイアもリスポーンして直ぐに戦場に向かい、フィールド上では常に戦闘の光が耐えなかった。
ルールは簡単。
全員が何度でもリスポーン出来るバトルロワイヤルである。
敵を倒せば一点、倒されるとマイナス一点。制限時間一時間の間に一番多くのポイントを会得した者の勝利だ。
「───さて、どうしたものか」
そんなルールの中、ケイはあまり自分から動こうとはせずに建物の影に隠れている。
広いフィールドという訳でもなく、狙撃手も居て撃破されるだけだとポイントがマイナスになるという点から下手に動かないのは正解ではあった。
しかし、見かけによらずバトルが好きなケイが動かない理由は別にある。
「……バグった」
ケイの機体───ストライクBondはストライカーシステムを装備していなかった。
これが故意にやったならともかく、ケイはちゃんとバトルの前にダブルオーストライカーを装備してプレイするように設定していたのである。
そして、コンソールパネルから開いて自分の機体のプロフィールを開くとダブルオーストライカーは装備されている───にも関わらず、バトルフィールドに立っているストライクBondは何も装備していなかった。
「……なんなんだコレ」
GBNもゲームである以上、バグが少なからず発生するがケイはこんなバグに遭遇したのは初めてである。
撃破されたら治るだろうか───そんな事を思った刹那。
「あ───」
何やら遠方からの狙撃に貫かれ、ケイの素ストライクBondは撃破された。
「───治った……。よし!」
リスポーンすると、ちゃんとダブルオーストライカーが装備されている。
ケイはただのバグだろうと切り替えて、戦場の光の中に飛び込んで行くのであった。
☆ ☆ ☆
戦場で動くという事は、的になると同義である。
して、逆に戦場で動かないのはただの動かない的だ。
撃って、隠れて、移動する。
狙撃手の基本的な動きを、スズは淡々と繰り返していた。
「あの野郎どこ行きやがった! さっきここから撃ってただろ!!」
「お、タケシ発見! バトろうバトろう!」
「ロックな! イアには今用はないってか、どうせここでとろとろしてたら───あ」
「ぎゃぁぁ!? なんでぇぇええ!!」
言っている間に、ロックの目の前で消し炭になるイア。
狙撃ポイントに向かえば狙撃手が居ると思えば、狙撃手を狙ってきた別の相手と戦う羽目になる。
そうなると移動した狙撃手からも狙われるようになる訳で、ロックはデュナメスに乗りながら「スナイパーずるくね!?」と特大ブーメランを投げていた。
最も、彼の狙撃技術ではそのブーメランは返って来ないのだが。
ともすれば、スナイパーから射線を切りながら動く事が強いられる。
戦っている時もその事を頭に入れないといけない為、必然的に考える事が増えるとならば、修行には持ってこいだった。
「ガンプラもだが、腕を上げたか。やるな、ケイ」
「流石、タケシのライバルだ……!」
ノワールの迅雷ブリッツと斬り合うケイ。
彼の前はレフトと、その前はトウドウ、その前はアンジェリカと戦ってきたが、今の所ケイは連勝中である。
「動きが良いな……」
狙撃手を警戒しながら戦っていれば、自然と動きが悪くなる筈だ。しかし、ケイからはそれが感じられない。
どうしてだ、と思うノワールだがその原因は自分にあるのだと気が付いて苦笑いを溢す。
「……なるほど、俺達メフィストフェレスのメンバーが一番スズを警戒してるからな。そこを叩けばスズの射線は俺達に気を使わせて自分はフリーに動けるという事か」
「バレたか」
「……まったく、貪欲なエースだな」
エースと言われ、ケイは目を細めた。
ReBondのリーダーはロックだが、エースが誰だとかは特に気にした事はない。
ロックはリーダーに相応しいくらい強いし、ユメもどんどん力を付けてきている。
ニャムもカルミアも、まともに戦って自分が有利だとは思っていない。
「俺が、エース……」
「エースは力だけが全てじゃない。勿論、ウチのスズみたく本当に自力の高い奴もいる。……だが、エースの仕事は点を取る事だ」
「点を取る?」
「届かない敵にも策を練り、択を通す。相手を倒してチームを有利にするのがエースの力。……俺は、お前にそれが出来ていると思う」
初めてReBondと戦った時、ノワールはケイにスズが負ける事なんて一ミリも考えて居なかった。
条件にもよるかもしれないが、対等に戦えば確かにケイはスズから一本取るのは難しいだろう。
しかし、それでもケイはスズを落として見せた。ユメの助力があったとはいえ、敵のエースを倒してチームを勝利へと導いた。
続く砂漠の犬との戦いでも、その後も───
「お前は間違いなくReBondのエースだ。それを自覚して、責任を持て」
言いながら、ストライクBondの腕を切り飛ばすノワール。
そう言う彼でさえ、ケイは自力だけでは五分あるかどうかである。
それでも───
「───そうだな、そうかもな。……だから、俺は貴方にも勝つ!!」
飛び退いて、地面にイーゲルシュテルンを放ち砂埃を起こさせるケイ。
ノワールは目眩しなどさせまいと、跳び上がったケイを追うようにスラスターを吹かせた。
砂埃でスズからの射線は切れる。ここで仕留める───そう思ったその時、突然視界が開いた。
「……何?」
目の前には全力でスタスターを吹かせるストライクBond。
スラスターからの風圧で砂埃は吹き飛ばされると同時に、ケイはそのまま建物の影に隠れる。
「しまった───なるほどな」
するとどうなるか、ノワールは考えずとも分かっていた。
砂埃も建物もない空中で、一瞬の隙でも
「……流石、エースだな」
ビームスナイパーライフルに貫かれるノワールの迅雷ブリッツ。
その光を頼りに狙撃手の位置を特定し、ケイはトランザムで加速してスズを倒しにいった。
試合終了間際。
戦いは建物が殆ど崩壊する程に激化している。
こうなるとスズも慎重に動くしかないが、それでもやはりこのルール上ポイントを稼ぎやすいのは彼女だ。
堂々たる一位をキープしているが、気を抜いている場合でもない。
そんな彼女の元に寄ってくる影が三つある。
「───ちょ、こっち来ないでよぉ!」
「待て待てー!」
ライトのウイングゼロアビージRを追うイアのZガンダム。その背後から、アンディのガイアトリニティが隙を窺っていた。
「あ、姉さんだ! 姉さん助けてー!」
サイコザクレラージェを見付けるや否や、彼女の元に飛んでいくライト。スズは眉間に皺を寄せながら「厄介な奴らを連れてくるな」と悪態を吐く。
「落ちろ」
「姉さん酷い!!! ぎゃぁぁ!!」
そのまま向けられたスナイパーライフルは、ライトのウイングゼロアビージRを撃墜した。
イアは冷や汗を流しながら「げ! スナイパーが居る!」と踵を返そうとする。
「……逃すか」
既に好機とみたのか、アンディは回り込むようにスズに接近してきていた。
流石のスズもこの二人を同時に相手して勝てるとは思わなかったのか、イアを落としてアンディの接近は甘んじて受ける選択をする。
引かれる引き金。
イアの機体を光が貫こうとしたその時だった。
「……あれ?」
「……なんだ?」
Zに直撃する筈だった光は、突然空中に現れた謎の光に飲み込まれる。
まるで地上に突然宇宙が現れたかのような、光を吸い込むかのように光る暗い光。
それは、出現するなり周りの物を粉々にしながら吸収し始めた。
「うわぁ!?」
「これは、まずいやもしれ───ぬお!?」
バグ───にしては、異常な光景である。
まるでブラックホールのような光に、イアのZが取り込まれようとしていた。
イアも本能的に不味いと思っているのか、一生懸命離脱しようとしているがどうも機体のコントロールが上手く開かないようである。
「なんだよアレ!?」
「イア……!! タケシ、トランザムで!!」
「分かってるよ!! ロックな!!」
それを見た二人は、トランザムを使ってイアを助けに向かった。二機の出力で何とか光からZを引き剥がす事が出来たが、未だに光は周りの物を吸収している。
「アンディさん……!」
「あぁ、悪いがバトルを強制終了させてもらうぞ……!」
バトルのオーナーであるアンディがバトルを強制修了させると、フィールドがリセットされて光も何処かへ消えてしまった。
その場に集まったケイ達は、ついさっき自分達が戦っていた時もバグが発生した事を皆に伝える。
「───彼女はELダイバーだったね。事情も聞いているから、大方の想像は着いた」
そういうアンディの言葉に、ケイはハッとした。
「さっきのバグの原因は、君だね」
「ボクが……?」
「あ、アンディさん───」
「落ち着きたまえ。別にとって食おうなんて思ってない。……ELダイバーが保護されるべき尊い存在だということは皆が理解している」
そう言うと、アンディは周りを見渡して少し考えるそぶりを見せてからこう続ける。
「……だが、対策は取らないといけない。勿論GBNではなくイアちゃんを守る為の対策だ。サーバーに負荷が掛かってバグが起きているなら、彼女を一旦サーバー負荷の少ない場所に移す方がいい。彼女の安全を確保したら、運営に相談しよう」
「でもよ、運営はサラを消そうとしたんだろ? おっさんの言ってたレイアって奴も……」
アンディの提案に訝しげな表情でそう返事をするロック。彼の脳裏には、昔の事を話すカルミアの辛そうな表情が浮かんでいた。
「イアは俺達の大切な仲間だ。誰にも手は出させねぇ」
「タケシ……」
「ロックな───イア……?」
いつも通りのツッコミを入れた所で、イアが珍しく不安そうな表情をしていてロックは唖然とする。
「……ボクが、この世界を壊してるって事?」
「いや、それは───」
「そうだな」
「お、おいケイ!」
誤魔化そうとするロックの言葉を遮って、彼女の言葉を肯定するケイ。
しかしケイは、不安そうなイアの頭を撫でながらこう続けた。
「それでも、俺達は絶対にイアを守る。他の誰が敵になっても、俺達は絶対にイアの仲間だから」
「ケイ……」
「水臭いですわよ。私達もお友達じゃないですか」
「……ユメが言ってた。……GBNの皆は、この世界の全てが大好きな仲間だって」
「僕達はもう間違えない。二年前の悲しいぶつかり合いはもう沢山だからね」
アンジェリカ達はそう言って、ケイ達に手を伸ばす。
イアは皆の仲間だ。だから、絶対に守る。
ここにいる者も、今ここに居ない仲間も、GBNを楽しむ皆がきっと同じ事を言ってくれる筈だ。
「だから、とりあえずは安全な場所にイアちゃんを移動させよう。君達はイアちゃんの近くにいてあげた方が良いし、行動は僕達がするさ」
「でも、イアちゃんを何処に移動させるんですの?」
アンディの言葉に首を傾げるアンジェリカ。彼女のその疑問にはトウドウがこう答える。
「話を聞くに、サーバーへの負荷はやはりガンプラバトル中が高いのだろう。現実で作り出したガンプラを動かす技術だから、負荷の大きさは分かる。……ともすれば、ガンプラバトルが発生せずガンプラが動く事もない場所に行くのが正解だ」
「と、いうと?」
「……心当たりがある」
問い掛けるケイに、珍しく積極的に片手を上げてそう答えたのは───スズだった。