ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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聖地ペリシア

 ペリシア・エリア。

 

 

 聖地ペリシア。ここは、GBNの中でもバトルを楽しむガンプラではなく───制作を楽しむビルダーにとっての聖地である。

 

 許可なくガンプラの持ち込みが不可であり、システム的にもバトルが出来ないエリアだ。

 ここではビルダー達が己のガンプラを見せ合ったり、街に飾ったりしてGBNを楽しんでいる。それもまた、この世界の一つの楽しみ方だった。

 

 

「おー! ここは凄いなスズ! 気持ちの良さそうなガンプラがいっぱいだ!」

「……なぜ私が」

 いつものように何かとはしゃぐイアに揺さぶられながら───スズは目を細めて、そんな彼女達を見ながらケイとロックは笑っている。

 

 

 

 イアを連れて、ケイ達はここ───ペリシア・エリアを訪れていた。

 

 彼女をバグから縁遠い安全な場所に運ぼう。

 そういった理由で場所を探していたケイ達にスズが提案したのはこの場所だった。

 

 

 そうしてペリシア・エリアに向かう事になった三人に、言い出しっぺの法則で案内をさせられる事になったスズは目を半開きにして項垂れているのである。

 

 

 

 アンジェリカは「スズも最近は私達以外にもお友達が出来てるのですから、これも知見を広める為と思って三人を案内すると良いですわ! 私達は何かあった時の為に近くに居ますので。バグの件はアンディさん達に任せても?」と、勝手に話を進め。

 頼まれたアンディも二つ返事で了解してしまい、スズに断る余地など残っていない。

 

 諦めて連れて来たは良いが、さてどうしたものかと口を尖らせるスズなのであった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 見上げる程高いMSの数々。

 まるで高層ビルが立ち並ぶが如く、ガンプラの連なる景色は圧巻の一言である。

 

 

「……これ、アンジェのガンプラ」

 スズが三人を案内した場所にあったのは、アンジェリカが作ってペリシア・エリアに飾ってあるガンプラだった。

 

 製造『アンジェリカ・クローデル』提供パリ美術館、と書いてあるボードを見てロックは唖然とする。

 

 

「アイツ本当に凄いビルダーだったんだな」

「……失礼な」

 失言に目を細めるスズだが、彼女は自分の事のように自慢げにこう続けた。

 

 

「……アンジェのガンプラはフランスのなんとか流とかいう凄い流派のガンプラなんだ。アンジェは凄い」

「なんとか流……」

「覚えてないのかよ……」

「……アンジェは凄い、らしい」

 目を細めるスズ。実の所彼女自身も何が凄いのかは分かっていない。

 

 

 ただ、スズは初めてアンジェリカのガンプラを見た時その眼を奪われてしまったのを思い出す。

 アンジェリカのガンプラには理屈では分からない何かがあるのだと、スズは信じて疑わなかった。

 

 

「これは……確か、おーゔぇろん? とかなんとかいう凄い機体を元にアンジェが作った機体らしい。メッサーラと合体するとかなんとか。……良くわからん」

 アンジェリカの作るガンプラ特有の黒いボディカラー。禍々しい雰囲気を持つその機体を見て、ロックは珍しく感動して黙ってガンプラを眺めている。

 

「凄いな」

「……ふん。だろう」

 自慢げなスズに、ロックは唖然としてアンジェリカのガンプラを見上げていた。

 そんなロックの姿が珍しくて、ケイはロックとガンプラを何度も見比べる。

 

 

 そういえば、彼も好きな色が黒でデュナメスHellも黒い塗装が施されていたっけか。

 きっと本質的に趣味が合うのだろうと、ケイは微笑ましいと少し笑った。

 

 

 

「アンジェリカ、凄い奴だったんだな!」

「……アンジェは凄い」

 スズもだが、イアもバトル中に起きたバグでの不安を忘れているように笑っている。

 自分のせいで他人に迷惑を掛けたと思ってしまったのか、バグ発生直後の彼女の表情を思い出してケイは「元気が出て良かった」と言葉を漏らした。

 

「他にも沢山ビルダーのガンプラが見られるし、退屈はしなそうだな」

「シャフリヤールのガンプラもあるんだろ? それ見に行こうぜ」

「シャフリヤール?」

 ロックの言葉に首を傾げるイア。

 シャフリヤールはフォースランキング三位でもあるフォースSIMURUGのリーダーでもあり、ガンプラビルダーとして世界的な実力者である。

 この世界で生まれたイアはそれを知らないが、ガンプラビルドにそこまで執着していないロックですら名前を知っているダイバーだ。知名度はチャンピオンとも同レベルだろう。

 

 

「……凄いビルダー」

「へー、お前がチーム以外の奴を褒めるなんてな」

「……凄い人は凄い。私はお前達も認めている、ロック」

「今なんて?」

「……いや、だから……お前達も認めているって───」

「その後!!」

「……は?」

 食いついて来るロックに困惑の表情を見せるスズ。ケイとイアが首を横に傾けている横で、スズは目を細めながらこう口を開いた。

 

「……ロック?」

「うぉぉぉおおおお!! スズ!! いやスズ師匠!! スズさん!! そうだ!! 俺はロック!! ロック・リバーなんだ!!」

 泣きながら崩れ落ちるロックを見て、スズは表情を引き攣らせながら後退る。

 

 

「……なんだ、コイツ」

「ロックって呼ばれるの珍しいから……。あはは、なんかごめん」

 もはやネタにしていたが、ロックと呼ばれるのが泣くほど嬉しいとは。

 イアも含めてチームでも彼をロックと呼んでくれるのはニャムとカルミアしか居ないので、感動してしまったのかもしれない。

 

「ロックって誰だ? タケシ」

「俺だよ!!」

 そんな事もお構いないイアの言葉にツッコミを入れるロック。そんな光景を見てスズは「……不憫だな」と素直な感想を漏らすのだった。

 

 

 一向はその後、ペリシア・エリアのガンプラを眺めて歩く。

 

 アンディからの連絡によれば、今マギーを呼んで話をしている所のようだ。

 早急に解決策が見つかれば良いが、話はどうなっているのだろうか。

 

 

「おー! このガンプラ凄い!! 凄く、暖かい気持ちでいっぱいになってる!! ここにあるガンプラ、全部あったかいな!!」

 そんな中で、イアはペリシア・エリアを堪能している。

 ガンプラの声が聞こえる彼女にとって、丹精込めて作られたガンプラの聖地は居心地が良い場所だった。

 

 

 

「お、これがシャフリヤールの作品か。まぁまぁだな」

「……なぜ上から目線」

「俺の師匠、タイガーウルフのガンプラと比べちまうとなぁ」

「いつのまに弟子になったんだよ」

 前回のイベント戦で、タイガーウルフと連絡先を交換したロックはその後ケイ達の知らない所で交流していたらしい。

 あのロックがGBNでトップクラスの格闘センスを持つタイガーウルフの元で修行しているというのだから、彼のこれからの成長が楽しみである。

 

 

「───って訳で、タイガーウルフ師匠が今度ケイ達の面倒も見てくれるって言ってたからよ。今度格闘戦の修行でもしに行こうぜ」

「……お前は狙撃の練習をしろ」

 半目のスズに「俺の狙撃は完璧だが?」と真顔で首を傾げるロック。

 どこからそんな自信が湧いて来るんだと呆れる三人。

 

 そんな彼らに、背後から一人の男が話しかけてきた。

 

 

「タイガーウルフに稽古をつけてもらうなんて、脳味噌が筋肉に代わってしまうだけだよ。彼なんかより、私の元に来ると良い」

「なんかだとぉ!? てか誰だテメェ!!」

 タイガーウルフを小馬鹿にするような言葉に、ロックは振り向きながら息を荒げる。

 

 振り向いた彼等の目の前にいたのは、長髪美形な青年の頭の上に獣の耳を生やした男性アバターだった。

 

 

「あなたは……確か」

「ケイ、知り合いか?」

「いや。……えーと、多分シャフリヤールさんですよね?」

 イアの問いに、ゆっくりとそう口を開くケイ。

 

「え、本物?」

 彼の口にした言葉に、ロックは目を丸くする。

 

 

「本物だとも。昔はアバターを隠していたが、今は公表しているよ」

 ガンプラビルド界隈では有名どころも有名なシャフリヤールだが、彼は一昔前まではGBNで素性を隠して活動していた。

 彼を名乗る偽物が現れて問題になった事が原因で素性を公表したのだが、その問題がこのペリシア・エリアでの出来事だった事を思い出し一人懐かしむように目を閉じるシャフリヤール。

 

 

「そんな事より、せっかく君達も素晴らしい愛を持ってガンプラを作る事ができるビルダーなんだ。タイガーウルフではなく、この私の元で───」

 して、このシャフリヤール。タイガーウルフとは犬猿の仲な事で有名である。

 

 喧嘩する程仲が良いというが、それはさておき。

 シャフリヤールがタイガーウルフより自分の元で修行してみないかとケイ達を誘おうとしたその時───まるで地震が起きたかのように世界が揺れ始めた。

 

 

「───なんだ?」

 言葉を止め、シャフリヤールは怪訝な表情で辺りを見渡す。

 

 GBNはガンプラバトルの世界だ。

 特別イベントでもない限り地震は起きないが、MS同士の戦いで地面が揺れる事くらいは珍しくない。

 

 

 しかしここはペリシア・エリア。

 許可無くガンプラを持ち込む事も出来ず、バトルも禁止のエリアである。だから、本来このような揺れが発生する筈などないのだ。

 

 

 

「おわ、地震か!?」

「……何かの演出?」

 立っているのがやっとの揺れに、ロックとスズも辺りを見渡して状況を整理しようと試みる。

 

「あのガンプラ……なんで───」

「イア? な、なんだ!?」

 イアの言葉に振り向くケイ。その視線の先では───

 

 

 

「───なんで、あのガンプラ……怒ってる」

 ───ガンプラの一つが動き出し、イアに向けられる銃口。

 

 

「イア!!!」

 その銃口は迷いなく、引き金を引かれた瞬間光を放った。




あけましておめでとうございます。
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