ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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予期せぬ戦闘

 爆発音。

 ペリシア・エリア上空でトウドウのクランシェアンドレアに搭乗して待機していたアンジェリカ達の視界にありえない光が映った。

 

 

「今のはなんだ?」

「ペリシア・エリアで戦闘の光だと?」

 目を細めるノワールに、トウドウはコンソールパネルを開いて状況確認をしようとする。

 

 ペリシア・エリアは非戦闘区域で戦いが起きる筈がない場所だ。

 しかし、エリア外からでも分かる程に激しい戦闘が現に行われている。

 

 

「バトルエリアになってるなら僕達も向かおう!」

「バトルエリアになってないよ!」

 追従するウィングゼロアビージに搭乗するレフトとライトがペリシア・エリアに突入しようとするが、システムエラーが起きてMSの動きが止まってしまった。

 

 ペリシア・エリアは許可無くMSの出入りが出来ない。

 なら、どうして戦闘が起きている。

 

 

「スズ!! 応答して下さい。そちらの状況を教えて下さい!!」

 焦った様子で、アンジェリカはスズに通信を送った。

 

 GBNはゲームだから、何か事件に巻き込まれても大抵の事はなんとかなる。

 しかし、スズ達が連れているイアだけは話が別だ。

 

 

「MSではどうにもならん。降りてワッパを使うぞ!」

 トウドウの起点で直ぐに五人はMSを降りる。そんな中で、ペリシア・エリアの戦闘は激化していっていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 放たれる光。

 彼女を守ろうと無意識に伸ばした手は届く筈もなく。

 

 

 しかし、その光がイアを貫く事はなかった。

 

 

「───セラヴィーガンダムシェヘラザード……!!」

 四人の前に現れる一機のMS。

 

 ダブルオーに登場するセラヴィーをカスタマイズしたガンプラが、GNフィールドを展開しイアを攻撃から守る。

 

 

「シャフリヤールさん……!」

「なんでガンプラ出せてんだ!?」

「ペリシア・エリアでのガンプラの持ち込み許可を出す権限は私も持っている。君達にも許可を出した、早くMSに乗りたまえ」

 シャフリヤールの言葉にコンソールパネルを開くと、確かにケイ達もMSに搭乗する許可が降りていた。

 

「イアはスズの機体に乗れ。スズはイアを頼む。タケシはスズのサイコザクに近付く奴を!!」

「……分かった」

「ロックな!!」

 MSに乗る四人。

 

「……なんで、ボクの事……そんな目で見るの。……ボク、君に何か……した? さっきまで、あんなに……あんなに……楽しそうだったのに」

 突然の事に固まっていたイアは、スズのサイコザクレラージェのコックピット内で震えながら口を開く。

 

 

「……イア。モニターを見るな」

「……でも、ボク……あの子達を怒らせて───」

「達?」

 モニターに視線を移すと、信じられない光景がスズの視界に入った。

 

「……全部、動いてるのか?」

 ペリシア・エリアに飾られていた全てのガンプラが起動してスズ達の元に向かって来ている。

 その銃口は全て、スズのサイコザクレラージェに向けられていた。

 

 

「……なんだ、この」

 咄嗟にゲシュマイディッヒパンツァーを構えるスズ。

 このシールドはビーム兵器に強いが、攻撃が全てビームという訳ではない。

 実弾兵装の着弾により揺れる機体の中で、スズはイアに「大丈夫だ」と短く口を開く。

 

「……私を簡単に落とせると思うなよ」

「頼もしいな。タケシ、頼むぞ」

「くそ、突っ込んでる場合じゃねぇ。任せろ、近付いてくる奴は俺が地獄に送ってやるぜ!」

 イアを二人に任せて、ケイはクロスボーンストライクBondのスラスターを吹かせた。

 

 状況を確認する為に高くジャンプすると、思っていたよりも恐ろしい光景が目に入る。

 

 

「……全部こっちに来てるのか? くそ!」

 ペリシア・エリア全てのガンプラが同じ一点に向かおうとしてきていた。

 言いながら、ケイはピーコック・スマッシャーを乱射する。

 

 スズ達に近付けない。まずはそれが優先だ。

 

 

「───けど、どうする。どうにか退路を作らないとこれじゃジリ貧だ」

 ペリシア・エリア全域のMSがスズ───イアの元に向かって来ている。

 

 もしここがペリシア・エリアの端なら後退するだけだが、四人がいたのは最高位のガンプラビルダーシャフリヤールのガンプラが展示してある位置だ。

 その位置はペリシア・エリアのほぼ中央である。よって、ケイ達はペリシア・エリア全域から囲まれる形になってしまっていた。

 

 

「良い判断能力だ。……確か、ケイ君だったか」

「シャフリヤールさん……?」

 ケイの背後に背中合わせで着くシャフリヤールのセラヴィーガンダムシェヘラザード。

 シャフリヤールは辺りを見渡しながら、冷静な口調でこう口を開く。

 

「なるほど、彼女が例のELダイバーという事か」

「……な───違うんです! イアは!」

「私は敵ではない。ケイ君、私は君をタイガーウルフや知り合いに紹介されて知っている。事情は大方察しているし、詳しい事は後で聞こう。まずはここを切り抜けるのが先決だ」

 イアのせいでまたこのバグが起きているなら、シャフリヤールはイアを処分しようとするかもしれない。

 そう思ったケイだがシャフリヤールの言葉に胸を撫で下ろして、後で不快な考えをした事を謝ろうと首を横に振った。

 

「そ、そうですね」

「時間を稼いでくれ。私が突破口を開く。君は彼女を守れ」

「分かりました!」

 言われた通り、ケイはスラスターを吹かせてイア達に近付こうとしているMSに肉薄する。

 

 ムラマサ・ブラスターを展開して砲撃を放とうとしていたガナーザクウォーリアを真っ二つにすると、反転しながらガラッゾをピーコック・スマッシャーで撃ち抜いた。

 

 

「次!!」

 振り向くと、バルバトスルプスとレッドフレーム改が得物を振り下ろしてくる。

 なんとかムラマサ・ブラスターで受け止めるが、二対一とはいえ出力が足りずに押し切られそうになった。

 

「そりゃそうだよな……ここのガンプラは、ビルダーが本気で作ったガンプラだ。オートで動いてるとはいっても……強い、けど!!」

 足払いをしてバルバトスを転がすと、ケイはレッドフレーム改のタクティカルアームズを受け流すようにして転んだバルバトスに叩き付ける。

 そのままバランスを崩したレッドフレームをムラマサ・ブラスターで切り飛ばすと、ケイは再びジャンプして辺りにピーコック・スマッシャーを連射した。

 

 周囲を囲まれている以上、一方だけを押しているだけでは意味がない。

 

 サイコザクレラージェは要塞にすれば隙が少ないし、ロックのデュナメスHellも居るが一度に戦える相手は限られている。

 今はケイがどれだけ近付いて来る敵を減らせるか、そこが問題だった。

 

 

「今はシャフリヤールさんを信じるしかない……出し惜しみはするな!」

 スラスターの出力もビームの出力も最大にして応戦するが、それでもケイの攻撃を抜けてスズの元に向かうMS。

 接近するダハック、試作三号機をロックが切り裂く。続くベルガギロスをスズのビームスナイパーライフルが貫き、ビームサーベルを構えて突貫してきたGセルフをロックが止めてスズがビームバズーカで撃ち抜いた。

 

 

「くそ、何体居るんだよ!」

「……口より手を動かせ!」

「動かしてるっての!!」

 ダブルオークアンタフルセイバーをビームサイズで切り飛ばしながら、ティエレンタオツーを蹴り飛ばすロック。

 蹴り飛ばしたティエレンをザクマシンガンで蜂の巣にしながら、スズは側面から来た敵の攻撃をヒートホークで受け止める。

 

「……コイツは」

「おいおいソレ、お嬢様のガンプラじゃねぇ!?」

 スズのサイコザクレラージェに切り込んできたのはアンジェリカの作ったオーヴェロンだった。

 

 構えられた盾から放たれたビームを、スズはゲシュマイディッヒパンツァーで逸らす。

 

「アイツ盾からビーム出したぞ!?」

「……知ってる機体で助かった。けど、アレは強い。アンジェの作ったガンプラだから」

「そんな事言ってる場合かよ……。いや、ソレの相手は俺がやるから、スズは自衛頑張ってくれ!」

 言いながらオーヴェロンに肉薄するロック。

 機体性能が反応速度に直結しているのか、彼女の言う通りオーヴェロンの動きは周りのガンプラとも一回り違うように感じた。

 

 

「コイツは……やべぇな! トランザム!!」

 トランザムで切り掛かるロック。

 

 しかし、オーヴェロンはその全てを受け止めてロックの機体を蹴り飛ばす。

 

 

「なんて反応速度だ!? でも───行かせるかよ!!」

 ロックを蹴り飛ばしてスズの元に向かおうとするオーヴェロン。

 

 やはり狙いはイアなのだろうか。

 

 

「ソイツが何したってんだよ! イアはな、お前らの事だって大好きなんだぞ!!」

 サイコザクに辿り着く前にオーヴェロンを止めるロック。

 

 そんな彼を見ながら、スズは周りの敵を近付かないようにサブアームを全て展開して迎撃姿勢を取った。

 

 

「ボクは……」

「……大丈夫、ケイもロックも負けない。私も、負けない」

 言いながら、力強く操縦桿を握るスズ。

 

 強気な事を言ったが、少しずつ押されているのは目に見えている。

 ケイもロックも充分以上に戦っているが、それでも敵が多過ぎるのだ。

 

 

「───くそ!!」

 ロックのトランザムが限界時間を迎える。

 

「───エネルギーが!?」

 ケイのピーコック・スマッシャーとムラマサ・ブラスターの出力が限界を迎える。

 

 

 トランザムが終わろうと、隙のない構えで機動力の低下を抑えるロック。

 使えなくなったピーコック・スマッシャーを投げつけて、ビームの出ないただの実剣になったムラマサ・ブラスターとビームサーベルを構えるケイ。

 

 限界を超えても二人は戦い、そして───

 

 

 

「───良く耐えた、後はこの私が道を開く!!」

 シャフリヤールはそう高らかに声を上げ、その銃口をペリシア・エリアの一番近い出口に向けた。

 

 

「吹けよシムーン! アルフ・ライラ・ワ・ライラ!!」

 光が、道を作る。

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